2011-06-15

グレッグ・ルッカ


 1冊読了。

 37冊目『耽溺者(ジャンキー)』グレッグ・ルッカ:古沢嘉通〈ふるさわ・よしみち〉訳(講談社文庫、2005年)/アティカス・コディアック・シリーズの番外編で、ブリジット・ローガンが主役となっている。解説で北上次郎(目黒考二)が絶賛している。「ようやくブリジットに会えた! それが何よりもうれしい」と。金のために書かれたような文章だ。まったく信用ならない。鼻ピアスで身長が185cmのブリジットはシリーズ第1作に登場した時からやさぐれたキャラクターとして描かれている。そうであったにせよ、グレッグ・ルッカは本書で禁じ手を犯した。作品に対して作家は神の位置を占める。登場人物を堕落させたり蹂躙(じゅうりん)することは最もたやすい。つまり私に言わせれば、著者がブリジットを汚(けが)してしまったのだ。このためアティカスの配慮が優柔不断にしか見えない。ライザの身勝手さも底が浅く、そうならざるを得ない人間心理が描けていない。文書がいいから読めるものの、ストーリー性という点では全く評価することができない。

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