2011-09-19

双子のパラドックス


 ニュートンの運動法則は空間内の絶対的位置という概念にとどめをさしてしまった。一方、相対論は絶対時間を排除してしまった。そこで何が起こるか、双児を例にとって考えてみよう。双児の一方が山の上に移り住んでおり、もう一方は海辺にとどまっているとすれば、前者は後者よりも速く齢をとるだろう。したがって二人が再会することがあれば、そのときには一方が他方よりも老いていることになる。この例では年齢の違いはごくわずかだが、双児の一方が光速にほぼ等しい速さの宇宙船に乗って長い旅に出るとすれば、違いはずっと大きくなる。旅から帰ってきたとき、彼は地球に残っていた兄弟にくらべてずっと若いだろう。この現象は双児のパラドックスと呼ばれているが、これをパラドックスと感じるのは実は、心の底に絶対時間の概念が巣食っているからなのである。相対性理論では唯一の絶対時間なるものは存在しない。そのかわりに、個人はめいめいが独自の時間尺度をもっているが、これはその人がどこにいるか、どのような運動をしているかによって決まるのである。

【『ホーキング、宇宙を語る ビッグバンからブラックホールまで』スティーヴン・ホーキング:林一〈はやし・はじめ〉訳(早川書房、1989年/ハヤカワ文庫、1995年)】

Wikipedia
双子のパラドックスについて

ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで (ハヤカワ文庫NF)

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