2012-02-22

パスカル・ボイヤー


 1冊読了。

 11冊目『神はなぜいるのか?』パスカル・ボイヤー:鈴木光太郎、中村潔訳(NTT出版、2008年)/ハアー、読み終えてしまった。428ページ上下二段。今年の1位はこれで決まりだ。パスカル・ボイヤーは恐るべき寝技師である。認知科学と進化心理学を武器に、読者の関節をギシギシ締め上げる。私は全く身動きができなくなった。抑えつけられたというよりは金縛りに近かったのかもしれない。宗教の始原にアプローチした経典本だ。ステップとしては「宗教とは何か?」で紹介した通り、リチャード・ドーキンスから順番で読むのが望ましい。宗教という宗教が文学の立場に甘んじ、科学的検証を怠ってきたことがよくわかる。宗教はクラシック音楽みたいなものだ。進化することがない。本書を読むとニーチェの「神は死んだ」という言葉も捨て台詞に思えてくる。パスカル・ボイヤーは神が生まれた地点を明らかにしつつある。私が思いついた「宗教OS論」が心的システムとして完璧なまでに考え尽くされている。それにしてもNTT出版の「叢書コムニス」は紙質が悪く、せっかくの企画が台無しとなっている。ボリュームからすれば4000円は決して高いとは思わないが、この紙はねーだろーよ。

【追記】原書は2001年に刊行されており、リチャード・ドーキンス(2006年)やダニエル・C・デネット(2006年)に先んじている。嚆矢(こうし)といってよい。

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