2013-12-04

ジョン・ル・カレ


 1冊読了。

 62冊目『寒い国から帰ってきたスパイ』ジョン・ル・カレ:宇野利泰訳(ハヤカワ文庫、1978年)/実は20代で一度挫けている。たった今読み終えた。感無量。宇野は明治生まれのため癖の強い表現が気になるが50ページくらい進むと慣れる。ジョージ・スマイリーの名が要所要所で登場する。初めてフリーマントルを読んだ時と似た感情が湧いてくる。原書は1963年の末に刊行されたというから、ジョン・F・ケネディ暗殺(11月22日)の頃だ。私が生まれた年でもある。ちょうど半世紀が経つ。米ソの冷戦はヨーロッパを東西に分断した。その象徴がドイツであった。主人公のアレック・リーマスはイギリス諜報部員で二重スパイとして東独の撹乱工作を命じられる。ところが乗りかかった船は思わぬ方向へ動き出す。リーマスは東独へ送られることとなった。冷戦時代はスパイの黄金期であった。イアン・フレミングはスーパーマンスパイ(ジェームズ・ボンド・シリーズ/1953年~)を創作した。そしてル・カレはスパイのリアリズムを描いてみせた。二人とも実際の諜報活動に従事していた過去を持つ。イギリスの作家ではサマセット・モームやグレアム・グリーンも元スパイである。リーマスがコミュニストのリズ(恋人)に対して共産主義批判をする。それは手駒として扱われる自分自身に突きつけられた言葉でもあった。国家や組織というメカニズムに翻弄される人間像を描いて、半世紀後に読んでも色褪せることのない古典となっている。1963年のゴールド・ダガー賞(英国推理作家協会が選ぶ最優秀長編賞)に輝く。それどころか同協会が2005年に発表したダガー・オブ・ダガーズ賞(歴代ゴールド・ダガー賞の最高峰)に選ばれた。1965年にはアメリカ探偵作家クラブ賞(MWA賞)最優秀長編賞も受賞。

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