2013-10-26

『 南京事件「証拠写真」を検証する』東中野修道、小林 進、福永慎次郎(草思社、2005年)





南京事件「証拠写真」を検証する

「南京大虐殺」とは、昭和12年12月の南京戦のさいに、6週間にわたって日本軍による虐殺、暴行、略奪、放火が生じたとの主張だ。近年の研究によってその根拠は揺らいできた観があるが、先日、南京市にある「南京大虐殺記念館」をユネスコの世界文化遺産に登録申請しようという構想が報道されたように国際社会では史実として定着しつつある。これについては今日まで「大虐殺の証拠写真」として世に出た写真の果たした役割が小さくない。

 本書は東中野修道・亜細亜大学教授と南京事件研究会写真分科会がこうした写真143枚をとりあげ、3年がかりでその信頼度をはかった検証報告だ。いわゆる「証拠写真」の総括的検証がなされたのは初めてのこと。延べ3万枚を超える関連写真との比較検証・照合からわかったことは、これらの写真の半数近くが、南京戦の翌年に中国国民党中央宣伝部が戦争プロパガンダ用に作った2冊の宣伝本に掲載されたものだったことだ。しかもそのうちの数枚は『支邦事変画報』など、当時日本の写真雑誌に載った従軍カメラマン撮影の写真をそのまま使い、略奪や無差別爆撃、強制労働の写真であるかのようなキャプションに付け替えられていた。「日本兵」の軍服の細部や被写体の影の有無から合成あるいは演出写真と判明したものもある。さらに戦後、南京裁判に提出されたという16枚の写真については、写っている人物の身長と影の比率から、撮影時期を5月末か6月初めと特定。「大虐殺」発生時との矛盾が判明した。また16枚の画面サイズの計測によってフィルム本数を割り出し、写真提供者の証言との食い違いを明らかにしている。こうして著者たちは、あらゆる角度から検証を加えたうえで「証拠として通用する写真は1枚もなかった」との結論を導き出した。本書の公正な検証プロセスを読めば、この結論には誰もが頷かれることだろう。

百人斬り競争
「百人斬り競争」事件について日本人が知らなければならない「本当」のこと:渡邉斉己

真剣な言葉が胸を打つ/『PRAYERS』『TOTAL』Tha Blue Herb


 BOSS THE MC(ILL-BOSSTINO)はいつでも本気で真剣な言葉を吐く。その青々しいまでに真っ直ぐな姿勢が胸を打つ。



PRAYERS [DVD]



TOTAL

【HMVインタビュー】 ILL-BOSSTINO ( THA BLUE HERB ) 『PRAYERS』|HMV ONLINE

自由と所有/『怒り 心の炎の静め方』ティク・ナット・ハン


 ブッダとその時代の僧や尼僧たちは三着の衣と一つの鉢しか持っていませんでしたが、彼らはとても幸せでした。それは、彼らには最も貴重なもの――自由があったからです。

【『怒り 心の炎の静め方』ティク・ナット・ハン:岡田直子訳(サンガ、2011年)】

 ティク・ナット・ハンは世界を代表する仏教者の筆頭格ともいうべき人物である。「行動する仏教」または「社会参画仏教」(Engaged Buddhism)の命名者でもある。映像からは温厚篤実そのものといった印象を受ける。話し方も実に穏やかで威圧感がまったくない。たぶん権威を嫌う人物なのだろう。

 これを三衣一鉢(さんねいっぱつ)と称する。出家とは世俗の象徴である家庭生活を捨てることだ。そして修行僧は乞食行(こつじきぎょう)を営む。彼らが目指す山頂は悟りの境地である。そのために物欲の否定からスタートするわけだ。

 今、恐るべきスピードで富の集中が進んでいる。先進国における格差拡大の要因はそれ以外に見当たらない。つまり格差の拡大は富の収奪を意味する。

 富裕層が使いきれないほどの富を更に膨らませている。人間の欲望には限りがない。世界から飢えがなくならないのも欲望が膨張し続ける証拠であろう。

 大航海時代(15~17世紀)に始まる資本主義こそは欲望のビッグバンともいうべき大事件であった。その後は植民地主義、黒人奴隷、インディアン虐殺、アメリカ建国まで一直線上にある。

 余談が過ぎた。富裕層は心の安心を富で量る。逆から見れば彼らの富は不安に支えられているといってよい。なぜなら富が失われてしまえば彼らには何も残らないからだ。後継者が失敗する可能性もある。それゆえ彼らは独自のネットワークを形成する。ま、秘密結社やサロンみたいな代物だ。ヨーロッパの歴史は教会と秘密結社の歴史といっても過言ではない。

 不安ゆえにネットワークを作る。そして不安ゆえに秘密を共有する。そんな彼らが落ち着いてぐっすりと眠れるわけがない。彼らの富は貧しき者たちの疲弊と死によって築かれているのだから。

 富める者は富によって不自由である。所有と自由は相反する価値であることを我々は知らねばならない。

怒り(心の炎の静め方)

怒りは人生を破壊する炎
所有
無である人は幸いなるかな!/『しなやかに生きるために 若い女性への手紙』J・クリシュナムルティ

トム・ロブ・スミス、綿本彰、矢上裕、金哲彦、ル・クレジオ、ファリード・ザカリア、他


 11冊挫折、5冊読了。

民主主義の未来 リベラリズムか独裁か拝金主義か』ファリード・ザカリア:中谷和男〈なかたに・かずお〉訳(阪急コミュニケーションズ、2004年)/竜頭蛇尾。ただし4分の3だけ読んでも十分お釣りがくる。民主主義の発生についてはフランス・ドゥ・ヴァール著『あなたのなかのサル 霊長類学者が明かす「人間らしさ」の起源』が参考になる。

秘密結社』綾部恒雄〈あやべ・つねお〉(講談社学術文庫、2010年)/アウトライン的内容。たぶん労作だ。巻末の「世界秘密結社事典」が有益。

儀礼としての消費 財と消費の経済人類学』メアリー・ダグラス、バロン・イシャウッド:浅田彰〈あさだ・あきら〉、佐和隆光〈さわ・たかみつ〉訳(講談社学術文庫、2012年)/たぶん良書。ひょっとしたら名著かも。しかしながら私の知識ではついてゆけず。

意味の変容・マンダラ紀行』森敦(講談社文芸文庫、2012年)/文章がしつこい。

海を見たことがなかった少年 モンドほか子供たちの物語』ル・クレジオ:豊崎光一、佐藤領時訳(集英社文庫、1995年)/訳文が肌に合わず。ある作家の初めて読む作品に挫折してしまうと他の作品を読む気が失せる。その意味でも翻訳が重要だ。

悪魔祓い』ル・クレジオ:高山鉄男訳(岩波文庫、2010年)/こちらは翻訳が素晴らしい。ル・クレジオによるインディアン讃歌だ。類を見ない文体の華麗さである。後半は飛ばし読み。ちょっと濃過ぎる。

ボルツマンの原子 理論物理学の夜明け』デヴィッド・リンドリー:松浦俊輔訳(青土社、2003年)/翻訳名は統一してもらいたいもんだ。『そして世界に不確定性がもたらされた ハイゼンベルクの物理学革命』(デイヴィッド・リンドリー)と比較すると控えめな内容で華に欠ける。3分の1ほどで挫ける。

帰ってきたソクラテス』池田晶子(新潮文庫、2002年)/ソクラテスが現代社会の問題に答える、という設定が巧い。若い人にはオススメ。

唐詩選(上)』前野直彬〈まえの・なおあき〉注解(岩波文庫、2000年)/10年後に再読しようと思う。唐詩選偽作説についても率直に書かれている。ただ偽作であったとしてもこれに優る入門書はあるまい。

ディアスポラ』グレッグ・イーガン:山岸真訳(ハヤカワ文庫、2005年)/巨匠グレッグ・イーガンのSFはとにかく難しい。哲学書並みだ。

たいした問題じゃないが イギリス・コラム傑作選』行方昭夫〈なめかた・あきお〉編訳(岩波文庫、2009年)/全然面白くなかった。

 48、49冊目『エージェント6(上)』『エージェント6(下)』トム・ロブ・スミス:田口俊樹訳(新潮文庫、2011年)/トム・ロブ・スミスに外れはない。今のところは。レオ・デミドフ三部作の完結編。矛盾を抱えた家族が国家に翻弄される様を見事に描いている。ラストまでしっかり謎を残し、ミステリの王道をゆく。

 50冊目『DVDで覚えるシンプルヨーガLesson』綿本彰〈わたもと・あきら〉(新星出版社、2004年)/ヨガを習いにゆくと思えば安いものだ。入門書としてはよい出来だと思う。見ていると簡単そうなんだが、実際にやると中々きつい。私は「サルのポーズ」で一旦あきらめ、煙草を吸いながらDVDを見終えた。ヨガの難点は時間のかかるところ。

 51冊目『DVDで覚える自力整体』矢上裕(新星出版社、2005年)/あまりよくない。ヨガの方が断然いい。

 52冊目『「体幹」ウォーキング』金哲彦〈きん・てつひこ〉(講談社、2010年)/それほど大したことは書いていないのだが、肩甲骨と骨盤の姿勢について卓見が示されている。これだけでも読む価値あり。「胸を張る」のではなく「肩甲骨を寄せる」といううのがミソ。

2013-10-23

『毛沢東の大飢饉 史上最も悲惨で破壊的な人災 1958▶1962』フランク・ディケーター:中川治子訳(草思社、2011年)

毛沢東の大飢饉  史上最も悲惨で破壊的な人災 1958-1962

「15年以内にイギリスを追い越す」と宣言した毛沢東が始めた「大躍進」政策は、人肉食すら発生した人類史上まれに見る大飢饉と産業・インフラ・環境の大破壊をもたらした。香港大学人文学教授が中国各地の公文書館を精査。同館所蔵の未公開資料と体験者の証言から「大躍進」期の死者数を4500万(大半が餓死者。うち250万人が拷問死、裁判なしの処刑死)にのぼると算出。中国共産党最大のタブーの全貌を明らかにし、北京が震撼した衝撃の書!

2013-10-22

Firefoxでブックマークの並べ替えができない~リセット~フォント設定



2013-10-20

『現代オカルトの根源 霊性進化論の光と闇』大田俊寛(ちくま新書、2013年)

現代オカルトの根源:霊性進化論の光と闇 (ちくま新書)

 ヨハネ黙示録やマヤ暦に基づく終末予言、テレパシーや空中浮揚といった超能力、UFOに乗った宇宙人の来訪、レムリアやアトランティスをめぐる超古代史、爬虫類人陰謀論――。多様な奇想によって社会を驚かせる、現代のオカルティズム。その背景には、新たな人種の創出を目指す「霊性進化論」という思想体系が潜んでいた。ロシアの霊媒ブラヴァツキー夫人に始まる神智学の潮流から、米英のニューエイジを経て、オウム真理教と「幸福の科学」まで、現代オカルトの諸相を通覧する。

神智学協会というコネクター/『仏教と西洋の出会い』フレデリック・ルノワール