2014-06-12

ドル基軸通貨体制とは/『新・マネー敗戦 ――ドル暴落後の日本』岩本沙弓


『円高円安でわかる世界のお金の大原則』岩本沙弓

 ・大英帝国の没落と金本位制
 ・日本の資産がアメリカに奪われる理由
 ・ドル基軸通貨体制とは

『あなたの知らない日本経済のカラクリ 対談 この人に聞きたい!日本経済の憂鬱と再生への道』岩本沙弓

 日本人の我々にとって外国為替が米ドルに対して何円、という表示に違和感を覚える方はいないだろう。為替の中心となるのはあくまでも米ドル、調整するのは我々円の方、長年それで通してきたゆえ、習慣として身についてしまっているからだ。しかし、実は当たり前にしてきたこのドル中心の現在の為替システムというのは、実は非常に偏った通貨システムである。町中のお店、デパート、スーパーマーケット、通常であればモノを売る側がモノの値段をつけている。それに従えば、為替市場でもモノを作って売る側の通貨に合わせるほう(ママ)が自然ではなかろうか。
 仮に、モノを買う側の米国が日本円で支払いをしていたらどうなるか。まず日本製の車を買うために米国人が外国為替市場で手持ちのドルを円に替えるので、日本製品の需要があればあるほど為替市場ではドル売り・円買いが発生し、ドル安となる。極論だが、プラザ合意でみたような為替介入などの人為的操作をしなくてもドル安の状況が生まれ、輸入品に対する米国国内産業の競争力が出てくることになり、輸入品と国内製品との均衡点が為替レートに反映されたはずだ。
 日本のメーカーとしては実際に車を売る、家電を売る市場が米国ならば、顧客の使用する米国ドルに合わせて商売をするべき。なるほど、それも一理ある。事実、今でも日本の輸出企業の多くが円ではなく外貨ベースで決済を行っているのもそのためだ。
 であるならば、我々日本人が買い手に回った場合はどうであろう? 牛肉やオレンジ、小麦を米国から買う場合、はたして消費者である我々に合わせて円で彼らは売ってくれるだろうか? 最近では企業によっては円ベースで取引をする場合も増えてきたものの、基本的には買う側の我々が円を売ってドルを調達し、そのドルを使って購入する、モノを買う場合でも相手が提示するドル価格に合わせてこちらが調整役に回っている。
 これは何も日本だけではない。小麦やトウモロコシなどの農産物、そして為替や金利の先物取引をはじめとしてデリバティブ商品が上場されているシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)は今や世界最大の取引所である。ここでの取引に使用されるのは全てドル建てなのである。為替の先物取引で日本円を取引しようが、ユーロを取引しようが、差額決済はドルで行うのだ。例えば商品価格の高騰で市場がにぎわいを見せれば商品決済がドルで行われるため、ドルの需要が増えるのである。重要なのはモノでもサービスでも米ドル表示であるということである。米国がモノを作らなくてもドル買い需要を喚起できるシステムが成立しているのである。
 日本人がモノを買うにしても、売るにしても値段がドル表示となっている限り、通貨の変動リスクは輸出入いずれの場合も日本サイドが持つことになる。このような非常に偏った通貨制度のもとで我々は経済活動を行っていると認識する機会もないままこれまで過ごしてきたわけだが、我々が気づかなったところに、米国にとって基軸通貨国としての最大のメリットがある。これこそが米国の力の源泉である。

【『新・マネー敗戦 ――ドル暴落後の日本』岩本沙弓〈いわもと・さゆみ〉(文春新書、2010年)】

 たまげた。供給サイドに合わせれば為替は自然調整されるというのだ。つまり為替レートは実需に応じて動くわけだ。現在でも実需筋の動向がマーケットを動かすという指摘もある。

為替の価格変動要因/『矢口新の相場力アップドリル【為替編】』矢口新
貿易黒字は円高トレンドを示す

 矢口新〈やぐち・あらた〉は名著『実践 生き残りのディーリング 変わりゆく市場に適応するための100のアプローチ』にも書いている。差金決済を目的とした日計り(デイトレード)と異なり、実需筋のポジションは反対売買(決済)されない。つまりそのポジションは消える。為替相場はゼロサムゲームなので通常は10人の買いと10人の売り(※本当は人数ではなくポジション数)が存在する。買い(ロング)のうち二人が実需筋と仮定しよう。彼らはマーケットで決済しないため、実態としては8人の買いとなる。買い持ち全員が決済しても、売りが二人残るわけだから価格には下落圧力が掛かる。

 消えたポジションは侮ることができない。価格圧力は永遠にのし掛かる。実需筋のポジションが相殺してどちらに傾いているかは貿易収支に現れる。だが金融経済のマネーが既にGDPの4倍にまで膨れ上がっている現在、実需筋よりも投機マネーの影響力が圧倒的に大きい。


 岩本沙弓が単純な理屈で突いてるのはドル基軸通貨体制の矛盾である。なぜ石油や武器を中心に商品先物(コモディティ)に至るまでドルで決済する必要があるのか? 確かに第二次世界大戦後はドルしか信用に値する通貨はなかった。半世紀以上を経た現在、ユーロやポンドおよび円、豪ドル、カナダドルは十分世界で通用するはずだ。

 リーマン・ショックでドルの信用は揺らいだ。実際に米国内でゴールドによる支払いが一部で認められたほどである。IMFは日本の財政赤字に茶々を入れてくるが、世界最大の赤字国はアメリカであり、限りなく印刷され続けてきたドルがただの紙くずになる日もそう遠いことではあるまい。

新・マネー敗戦―ドル暴落後の日本 (文春新書)

『史上最大の株価急騰がやってくる!』増田俊男
『日本経済大好況目前!』増田俊男
エンロン破綻という経済戦略/『大相場、目前!! これから株神話が始まる!』増田俊男

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