2014-08-11

化物世界誌と対蹠面存在否定説の崩壊/『科学と宗教との闘争』ホワイト:森島恒雄訳


キリスト教を知るための書籍

 ・権威者の過ちが進歩を阻む
 ・化物世界誌と対蹠面存在否定説の崩壊

『思想の自由の歴史』J・B・ビュァリ:森島恒雄訳

 神が保障した法皇の《無過失性》によってこの古い神学的見解はあらためて再確認され、人間は地球の片側だけに存在するものだという説はこれまで以上に正統的となり、教会にとっていっそう尊重すべきものとなった。(8世紀)

【『科学と宗教との闘争』ホワイト:森島恒雄訳(岩波新書、1939年)以下同】

 これを対蹠面(たいせきめん)存在否定説という。対蹠とは正反対の意で、対蹠地というと地球の裏側を指す。当時のヨーロッパではまだ地球が球形であるとの認識はなかった。そのため対蹠【面】との訳語になっているのだろう。ただしギリシャでは紀元前から地球は丸いと考えられていた。

 神が万物を創造したとする思考において世界とは聖書を意味する。つまり聖書に世界のすべてがあますところなく記述されており、あらゆる学問を神の下(もと)に統合した。これが本来の世界観である。決して世界が目の前に開いているわけではなく、価値観によって見える外部世界は大きく変わるのだ。

 当時、神の僕(しもべ)である人間はヨーロッパにしか存在しないものと考えられていた。そしてヨーロッパから離れれば離れるほど奇っ怪な姿をした化け物が棲息していると彼らは想像した。これを化物世界誌という(『聖書vs.世界史 キリスト教的歴史観とは何か』岡崎勝世)。

ヘレフォード図(クリックで拡大)→化物世界誌を参照せよ

 しかし、1519年にいたって、科学は圧倒的な勝利を博した。マゼランがあの有名な航海を行なったのである。彼は地球がまるいことを実証した。なぜなら、彼の遠征隊は地球を一周したからだ。彼は対蹠面存在説を実証した。なぜなら、彼の乗組員は対蹠面の住民を目撃したのだから。だが、これでも戦いは終らなかった。信心深い多くの人々は、それからさに200年の間この説に反対した。

 これが世界観の恐ろしいところだ。ひとたび構築された物語があっさりと事実や合理性を拒絶するのだ。ただしマゼランの世界一周が化物世界誌と対蹠面存在否定説崩壊の端緒となったことは間違いない。

 クリストファー・コロンブスがアメリカ大陸の島に上陸したのは1492年のこと。インディアンと遭遇した彼らが戸惑ったのは、インディアンの存在が聖書に書かれていなかったためであった。

 信心深い人々は妄想を生きる。ニュートンを筆頭とする17世紀科学革命はまだ神の支配下にあった。しかし魔女狩りの終熄(しゅうそく)とともに、科学は神と肩を並べ、やがて神を超える(何が魔女狩りを終わらせたのか?)。

 例外はアメリカで今尚ドグマに支配されている(『神と科学は共存できるか?』スティーヴン・ジェイ・グールド)。世界の警察を自認する国が妄想にとらわれているのだから、世界が混乱するのも当然だ。


「エホバの証人」と進化論

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