2016-07-23

津波のメカニズム/『人が死なない防災』片田敏孝


『人はなぜ逃げおくれるのか 災害の心理学』広瀬弘忠
『新・人は皆「自分だけは死なない」と思っている 自分と家族を守るための心の防災袋』山村武彦

 ・東日本大震災~釜石の奇蹟 生存率99.8%
 ・釜石の子供たちはギリギリのところで生き延びることができた
 ・津波のメカニズム

気づき(アウェアネス)に関する考察

 津波は、断層が動いて、海の中で海底の地形が変化することで起きます。よく、10メートルとか15メートルの津波が来たといいますね。なぜそんなに大きな波が起こるのかということについて説明します。
 海の中で断層ができますね。例えば、3メートルの断層ができる。すると、そのまま海面の水も3メートルの段差がつきます。この段差が津波そのものとなります。これがそのまま移動していくわけです。ただ、普通の波は周期が短いので、海がしけたときに「今日の海上は5メートルの波です」ということを聞きますが、家を壊すほどのものではありません。波長が短いので、ザバッと来て、それで終わりです。ところが津波の高さ5メートルというのは、もはや波ではないわけですね。波だけれども、ものすごく周期が長い。無尽蔵の水が一挙に入ってくる。そうすると、陸地に、海から水の壁が大挙して押し寄せてくる。海からの大洪水となって、家々を全部壊し、瓦礫にして流していく。それが津波の恐さです。
 例えば、海底の段差が3メートルなら最初の津波は3メートルです。ところが実際に陸地に上がってくるときには、これが5メートル、7メートル、10メートルと、大きい波になる。
 津波は、海底の深いところでは時速800キロぐらいのスピードで伝播していくので、チリ津波は丸一日あれば日本に来てしまうわけですね。けれども、浅くなると急ブレーキがかかります。水深500メートルで新幹線並み、100メートルで電車並み、10メートルで人間が走るぐらいのスピードになる。そうなると、津波は背後からすごいスピードで来るのに、進む前面で急ブレーキがかかってしまう。そのため次から次へと津波が積み重なって、どんどん高くなっていく。向こうの沖合に白波が立ったと思ったら、目の前に来たときに波が急に立ち上がってくるのは、こうしたメカニズムに則(のっと)ったことなのです。

【『人が死なない防災』片田敏孝(集英社新書、2012年)】

 無知は恐ろしい。波浪と津波が全くの別物だったとは。チリ津波の場合、ハワイにぶつかることで内側に角度をつけた波が日本で収束するという。


 被災地を飲み込んだ大津波のメカニズムを初めて知った。片田の防災教育が「知は力なり」(フランシス・ベーコン)を証明した。知ることは備えることでもある。知っていれば対処できる。

 動物は恐怖を感じると闘争か逃走かを迫られる(ウォルター・B・キャノン)。安全に慣れきって本能の力が弱まると立ちすくんでしまう。東日本大震災の教訓は「逃げ遅れたら死ぬ」という単純な事実である。

 そして助かるべくして助かった人々と、たまたま助かった人々が存在する。多くの証言集は運のよさを示すだけで学べることが少ない。むしろ迂闊さを際立たせる内容となっている。本書が稀有なのは災害に対する正しい姿勢が即座の行動を生み、ほぼ100%といってよい人々が大災害を生き延びた事実にある。そんな小中学生たちが必ずや東北の未来を照らすことだろう。





人が死なない防災 (集英社新書)

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