2011-05-03

中野剛志、ウィリアム・カムクワンバ、スティーヴン・ウェッブ、大正大学仏教学科、ルネ・フェレ


 過去ログごと引っ越そうとたくらんだのだが、面倒なのでやめた。五十の坂に近づきつつあるので、ムダな仕事に時間を費やすと人生が短くなってしまう。ってなわけで、書評と雑文はこちらに書き、はてなダイアリーはニュースとリンクをメインにする予定。動画は「斧チャン」へ。一つのブログを三本立てにしたってわけ。「クリシュナムルティの智慧」は保留。ま、書評ったってメモ書きに毛の生えたような代物だが参考にしていただければ、これ幸い。

 4冊挫折、1冊読了。

 挫折15『自由貿易の罠 覚醒する保護主義』中野剛志〈なかの・たけし〉(青土社、2009年)/中野はやはり文章がよくない。論文調で読みにくい。もっと軽いものを書いた方がいいと思う。

 挫折16『風をつかまえた少年 14歳だったぼくはたったひとりで風力発電をつくった』ウィリアム・カムクワンバ/田口俊樹訳、池上彰解説(文藝春秋、2010年)/これはいい本だ。ただし50歳近い大人が読むべき作品ではないだろう。アフリカ人の文章は口承の伝統があるので実に読みやすい。気持ちが豊かになる。

 挫折17『広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由 フェルミのパラドックス』スティーヴン・ウェッブ/松浦俊輔訳(青土社、2004年)/フェルミのパラドクスを勉強しようと思って読んでみた。半分過ぎたところで中止。トピックごとの章立てとなっているので全体の物語性に欠け、山がない。科学的思考を学ぶには好著といえる。

 挫折18『仏教とはなにか その思想を検証する』大正大学仏教学科編(大法輪閣、1999年)/前半100ページが素晴らしい。あとの200ページは大体知っているから私には必要がなかった。仏教の入門書としてはよくできている。記述も正確だ。仏教が学問として深まらないのは、宗派や教団が阻害しているため。

 32冊目『クリシュナムルティ 懐疑の炎』ルネ・フェレ/大野純一訳(瞑想社、1989年)/発売元はめるくまーる社。フランス人らしく哲学的アプローチを試みているが上手くいっているとは言い難い。そう思うのは、私が哲学的素養を欠いているためかもしれない。クリシュナムルティ本はこれで48冊目。

2011-05-01

古本屋の殴り書き:リンク集

ここは更新停止➡https://sessendo.hatenablog.jp/entry/2022/03/19/160843

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2011-04-22

キルギス議会でヒツジが生贄に 「紛争の悪霊払った」


 キルギス議会で21日、ヒツジ7頭が殺されて生贄としてささげられたことが分かった。昨年の民族間紛争による「悪霊」を、議場から払うための儀式だったという。
 同議会の報道官はAFPに対し「議員は、議場から悪霊を追い払うことを求めている」と話した。
 キルギスでは、昨年4月に多数の死者を出した反政府勢力による騒乱で、当時のクルマンベク・バキエフ(Kurmanbek Bakiyev)大統領が失脚。同年6月には事態は大規模な民族間抗争に発展した。
 ある議員は、生贄の儀式は議員の主導の下に行われ、イスラム教の聖職者が昨年の紛争の犠牲者に祈りを捧げたと説明。「ヒツジの肉は、高齢者や孤児の保護施設、モスクに送られる事になっている」と話した。

AFP 2011-04-22

2011-03-04

知の系譜を教える秀逸なディスカッション/『知性の限界 不可測性・不確実性・不可知性』高橋昌一郎


『死生観を問いなおす』広井良典
『ゲーデルの哲学 不完全性定理と神の存在論』高橋昌一郎
『理性の限界 不可能性・確定性・不完全性』高橋昌一郎

 ・知の系譜を教える秀逸なディスカッション

『感性の限界 不合理性・不自由性・不条理性』高橋昌一郎

宗教とは何か?
必読書 その三

「哲学は神学の婢女(はしため)である」といったのはトマス・アクィナス(1225-1274年)だ(『神学大全』)。天使的博士、ミスター・スコラ哲学が吐き捨てるように言ったかどうかは定かではない。

 ま、これが中世の常識だ。西洋の学問体系は神を証明するために発達したといえる。教会がアリストテレス哲学を採用した影響も大きい。大学教育におけるリベラル・アーツ(一般教養)は元来「人間を自由にする学問」という意味で、起源は古代ギリシアにまでさかのぼる。これまた西洋のルネサンスにおいて、完全に神を目指す方向へ牽引(けんいん)されてしまった感がある。

 哲学は難解だ。言葉をこねくり回しているようにしか見えない。「お前らだけで勝手にやってろ!」と言いたくなる。哲学が社会を動かす原動力たり得るのであれば、もっと人口に膾炙(かいしゃ)されてしかるべきだ。「一体誰が哲学をしているというんだ? えっ、ソクラテスさんよ!」とずっと思っていた。

 でも本当は哲学って、「丁寧にものを考えること」なんだよね。だから哲学には翻訳者が必要だ。もちろん【私のための】翻訳者である(笑)。

 そこで高橋昌一郎の出番となる。私のようなレベルからすると、哲学者よりも高橋の方が天才に見えるくらいだ。教師ってえのあ、こうでなくっちゃね。学問の世界には「橋を架ける人」が不可欠だ。橋を渡れば広大な世界が開けるのだから。

 本書は『理性の限界 不可能性・確定性・不完全性』に続くもので、ディスカッション形式を通してウィトゲンシュタイン、ポパー、ファイヤアーベントを解説する。

カント主義者●それでは聞くが、「語りうることは明らかに語りうるのであって、語りえないことについては沈黙しなければならない」という結論そのものの扱いは、どうなるのかね? この結論は、有意味なのかね、それとも無意味なのかね?
 この結論は、まさにウィトゲンシュタインが自己の哲学的判断を表明した「哲学の命題」であって、「自然科学の命題」ではない。ということは、この命題自体が「無意味」ということになるじゃないか!

【『知性の限界 不可測性・不確実性・不可知性』高橋昌一郎〈たかはし・しょういちろう〉(講談社現代新書、2010年)以下同】

 ウィトゲンシュタインの言葉は形而上学の終焉を告げるものだった。言語化された途端、それは「語り得る」ことになるのだ。意識とは言葉である。無意識は言葉の届かぬ世界だ。それは宇宙のように暗い広がりをもつ。

論理実証主義者●そうです。ウィトゲンシュタインは、『論理哲学論考』の最後で、次のように述べています。
「私の命題は、それを理解する読者がそれを通り抜け、その上に立ち、それを見下ろす高さに達したとき、最後にはそれが無意味であると悟る。(いうなれば、梯子〈はしご〉を登り終えた後に、その梯子を投げ捨てなければならない。)読者は、私の命題を克服しなければならない。そのとき読者は、世界を正しく見るだろう」とね……。

 まるで神が人間に言葉を与えた理由を述べているようではないか。ウィトゲンシュタインには言葉の限界が見えていたのだろう。言葉はコミュニケーションの道具にすぎない。それゆえ常に何らかの違和感を覚えながらも言葉を手繰ってしまう。正確な表現であったとしても、言葉自体が翻訳機能であることは避けられない。

 私はポール・ファイヤアーベントの名前を本書で初めて知った。

方法論的虚無主義者●奨学金の切れた2年後には、ポパーがファイヤアーベントを助手に任命しようとしたが、彼はそれを断ってウィーンへ戻った。

哲学史家●当時の哲学界の状況でポパーの助手になるということは、将来的にも非常に有益な選択だったはずですが、なぜ断ったのですか?

方法論的虚無主義者●なぜなら、ファイヤアーベントは、ポパーの取り巻き連中に我慢できなくなったからだよ。ポパーの弟子たちは、批判的合理主義者であることを宣言し、自分の描く論文には可能な限りポパーの著作から引用し、議論のスタイルもポパーの文脈で行うことが当然だと考えていた。ファイヤアーベントは、このような「ポパー教の信奉者」たちにウンザリしたわけだよ。

方法論的虚無主義者●ファイヤアーベントの「哲学」というか「生き方」は、つねに問題を徹底して極端に突き詰める点にある。彼は、方法論的アナーキズムを科学や哲学ばかりでなく、合理主義や西洋文明一般にまで推し進め、そこから彼が導いた結論は、単に科学理論ばかりでなく、あらゆる知識について、優劣を論じるような合理的基準は存在しないというものだった。

 いやはや、こんなイカした学者がいたとは(笑)。彼の言葉がいくつか紹介されているが、いずれも衒学(げんがく)趣味を破壊する小気味よさに溢れている。タコツボに下される鉄槌といったところ。

 高橋昌一郎のペンは時折脱線し、読者のあたまを解きほぐしてくれる。これがまた軽妙洒脱なアクセントとなっている。

 知の系譜がある。学問は先人が血の滲むような格闘の果てに築いたものだ。西洋の場合は教会の束縛もあり、一筋縄ではいかない。彼らはまさしく時代の巌(いわお)にノミを振るった。そして小さな穴から光が射し込んだ。光を浴びるかどうかは、あなたの自由だ。

2011-02-15

宗教の原型は確証バイアス/『動物感覚 アニマル・マインドを読み解く』テンプル・グランディン、キャサリン・ジョンソン


『人間この信じやすきもの 迷信・誤信はどうして生まれるか』トーマス・ギロビッチ

 ・宗教の原型は確証バイアス
 ・自閉症者の可能性

『人類の起源、宗教の誕生 ホモ・サピエンスの「信じる心」がうまれたとき』山極寿一、小原克博
『AIは人類を駆逐するのか? 自律(オートノミー)世界の到来』太田裕朗

宗教とは何か?
必読書 その五

 正真正銘の神本(かみぼん/神の如く悟りを得られる本)だ。著者のテンプル・グランディンは、オリヴァー・サックス著『火星の人類学者 脳神経科医と7人の奇妙な患者』(吉田利子訳、早川書房、1997年)のタイトルになっている人物。自称「火星の人類学者」は自閉症(※アスペルガー症候群と思われる)の女性動物学者であった。

 これは凄い。とにかく凄い。本書とトール・ノーレットランダーシュ著『ユーザーイリュージョン 意識という幻想』とレイ・カーツワイル著『ポスト・ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるとき』を合わせて、「科学本三種の神器」と私は名づけたい。

 網羅、渉猟、越境の度合いが生半可でないのだ。本物の知性は統合に向かうことがよく理解できる。緻密さや細部で勝負する知性はカミソリみたいなもので、切れ味は鋭いものの骨肉を断ち切るところまで及ばない。それに対して豊かな広がりをもつ知性は、専門領域を通して高い視点を示すことで世界の風景を変える。

 テンプル・グランディンは自閉症患者が動物の気持ちを理解できるとしている。彼女は幼い頃から動物の感情を知っていたのだ。大人になるまでそれが特殊な能力であることに気づかなかったという。ここから様々な動物の生態を通して人間との違いや人類の歴史を綴っている。

 まあ、一回こっきりの書評で紹介できる作品ではないため、時間が許す限り何度でも書いてみせるよ(笑)。数多(あまた)ある驚天動地の内容で最も驚かされたのがこれ──

 動物と人間は、「確証バイアス」と学者が呼ぶものを、生まれつきもっていることがわかっている。ふたつの事柄が短時間のあいだに起こると、偶然ではなくて、最初の事柄が2番目の事柄を引き起こしたと信じるようにつくられているのだ。
 たとえば、食べ物が出てくる直前に明かりがつくボタンつきのかごにハトを入れると、ハトはすぐに、食べ物を手に入れようとして、明かりがついたボタンをつつくようになる。これは、確証バイアスによって、最初のできごと(ボタンの明かりがつく)が2番目のできごと(食べ物が出てくる)を引き起こしていると考えるようになるからだ。ハトは、たまたま何回かボタンをつついて食べ物が出てくると(ボタンの明かりがついているときに、かならず食べ物が出てくるので)、こんどは、明かりがついているときにボタンをつつくから食べ物が出てくるという結論を出す。
 ハトの行動は、ウサギの足のお守り〔行為のまじないとして持ち歩くウサギの左の後ろ足〕を持っていたらチームが野球の試合に勝てると考える人に似ている。それで、B・F・スキナーはこういった行為を「動物の迷信」と呼んだ。ピッチャーがウサギの足を持っていたときに登板した試合で勝ったのは、ハトが明かりがついたボタンをつついたあとに何回が食べ物を手に入れたのと同じことだ。どちらの場合も、相関関係が原因だと考えた。

【『動物感覚 アニマル・マインドを読み解く』テンプル・グランディン、キャサリン・ジョンソン:中尾ゆかり(NHK出版、2006年)以下同】

確証バイアス confirmation bias

 既に何度も紹介済みだが、相関関係と因果関係の混同である。

相関関係=因果関係ではない/『精神疾患は脳の病気か? 向精神薬の化学と虚構』エリオット・S・ヴァレンスタイン

 つまり脳というシステムは、相関関係を因果関係に仕立てることで物語を創造していると言い換えることも可能だ。例えば歴史は権力者のトピックにすぎない。それゆえ歴史の大半は戦争という糸で紡がれている。圧倒的に膨大な量がある一般人の日常が年表に記されることは、まずない。捨象、切り捨て、無視ってわけだ。

「理想的年代記」は物語を紡げない/『物語の哲学 柳田國男と歴史の発見』野家啓一
歴史が人を生むのか、人が歴史をつくるのか?/『歴史は「べき乗則」で動く 種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学』マーク・ブキャナン

 確証バイアスが組みこまれているために生じる不都合は、根拠のない因果関係までたくさん作ってしまうことだ。迷信とは、そういうものだ。たいていの迷信は、実際には関係のないふたつの事柄が、偶然に結びつけられたところから出発している。数学の試験に合格した日に、たまたま青いシャツを着ていた。品評会で賞をとった日にも、たまたま青いシャツを着ていた。それからとは、青いシャツが縁起のいいシャツだと考える。
 動物は、確証バイアスのおかげで、いつも迷信をこしらえている。私は迷信を信じる豚を見たことがある。

 ここでいう「迷信」とは「非科学的」という意味であろう。だとすると殆どの宗教は迷信になる。なぜなら因果関係を証明することができないからだ。幸不幸の原因は神が下したものかも知れないし、家の方角の善し悪しかも知れないし、単なる偶然かもしれないのだ。

 たまたま朝一番でつけたテレビの番組で星座占いをしていたとしよう。あなたのラッキーカラーはピンクだ。ピンクのものさえ身につけておけば万事が上手く運ぶ。昨日、上司から叱られ、恋人と喧嘩をしたあなたの脳は敏感に反応することだろう。で、ピンクのネクタイを締め、颯爽と出社する。

 こうして一日の中の好ましい出来事は「ピンクのネクタイのおかげ」となるのだ。

予言の自己成就/『世界は感情で動く 行動経済学からみる脳のトラップ』マッテオ・モッテルリーニ
人間は偶然を物語化する/『人間この信じやすきもの 迷信・誤信はどうして生まれるか』トーマス・ギロビッチ

 占いを信じる人は、占いに沿った思考となり、占いに当てはまらない事実は印象に残らなくなる。このようにして「占い物語」という人生が進んでゆく。

 ところが、ほかの豚も、これまた確証バイアスにもとづいて、囲いの中の餌桶にまつわる迷信をこしらえる。私が見ていたときには、何頭かが餌用囲いまで歩いていって扉が開いているときに中に入り、それから餌桶に近づき、地面を踏み鳴らしはじめた。足を踏み鳴らしつづけていると、そのうち頭がたまたま囲いの中のスキャナーにじゅうぶんに近づいて、タグが読みとれ、餌が出てきた。どうやら豚は、たまたま足を踏みならしていたときに餌が出てきたことが何回かあって、餌にありつけたのは足を踏み鳴らしたからだという結論に達していたらしい。人間と動物はまったく同じやり方で迷信をこしらえる。わたしたちの脳は、偶然や思いがけないことではなく、関連や相互関係を見るようにしくまれている。しかも、相互関係を原因でもあると考えるようにしくまれている。わたしたちは生命を維持するうえで知っておく必要のあるものや、見つける必要があるもの学ばせる脳の同じ部分が、妄想じみた考えや、陰謀じみた説も生み出すのだ。

 これだ。多分ここから宗教が生まれたのだ。宗教という現象は人間特有のものではなかったのだ。とすると宗教感情がいかに脳の深い部分にあるか知れようというもの。動物にもあるわけだから新皮質より下部にあることだろう。きっと情動も絡んでいるはずだ。

 とはいうものの物語なしで我々は生きてゆけない。はっきりと書いておくが、かつて宗教が人類を救ったことは一度もなかった。聖書や仏典が伝えられてから2000年以上も経過しているが、今尚人類は争い合っている。

 混乱はバラバラの物語が衝突し合っている姿といってよい。同じ宗教を信じていても考え方は違うだろうし、それこそ人の数だけ思想や価値観が存在するのだ。

 まして高度な社会になればなるほど、幸不幸はヒエラルキーや経済性に依存してしまう。我々の幸不幸は比較の中にしかない。

 結局、情報と情報をどう結び合わせるかという問題なのだろう。「私」という情報をどう扱うか? エゴイズムと無縁の物語はあるのか? 人生からそんな宿題を与えられているような気がする。



テンプル・グランディン:世界はあらゆる頭脳を必要としている
物語の本質〜青木勇気『「物語」とは何であるか』への応答
人間の脳はバイアス装置/『隠れた脳 好み、道徳、市場、集団を操る無意識の科学』シャンカール・ヴェダンタム
「信じる」とは相関関係に基づいて形成された因果関係の混乱/『哲学者とオオカミ 愛・死・幸福についてのレッスン』マーク・ローランズ
無意味と有意味/『偶然とは何か 北欧神話で読む現代数学理論全6章』イーヴァル・エクランド
偶然性/『宗教は必要か』バートランド・ラッセル
合理性を阻む宗教的信念/『思想の自由の歴史』J・B・ビュァリ:森島恒雄訳
脳神経科学本の傑作/『確信する脳 「知っている」とはどういうことか』ロバート・A・バートン
宗教学者の不勉強/『21世紀の宗教研究 脳科学・進化生物学と宗教学の接点』井上順孝編、マイケル・ヴィツェル、長谷川眞理子、芦名定道
スロットマシンプレーヤーの視点/『ゾーン 最終章 トレーダーで成功するためのマーク・ダグラスからの最後のアドバイス』マーク・ダグラス、ポーラ・T・ウエッブ
カーゴカルト=積荷崇拝/『「偶然」の統計学』デイヴィッド・J・ハンド