2011-06-25

人格障害(パーソナリティ障害)に関する私見


 私見であって試論に非ず。これから述べることは飽くまでも私見であって学術的根拠はない。裏づけとなるのは私の感覚であることを予(あらかじ)め断っておく。この手の言葉は悪口として使われるケースがあるので、取り扱いには重々注意されよ。

 世界保健機関 (WHO) によって公表された「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」(ICD)によれば人格障害は10タイプに分類される。

ICD-10(第10版/1990年発表)による分類

 ここからは日本精神神経学会の基準にもとづいて「パーソナリティ障害」と表記する。

 私は今まで7~8名のパーソナリティ障害者と接してきた。統計を出すにはいささか数が少ないのだが、パーソナリティ障害を素早く見抜くことで被害を減らすことには意味があると信ずる。

 10タイプのうち、「反社会性」と「境界性」というのがキーワードになると考えられる。なお「反社会性」とは社会性の欠如を示したものであって、社会への反発やプロテスト(抗議)という意味合いではない。

 次に「境界性」だが、これは自他の境界が曖昧なため、周囲がびっくりするような行動や、相手を傷つける言動が顕著な特性である(境界例〈ボーダーライン〉とは異なる)。

 問題はここからで、注意をしても理解できず、著しく罪悪感を欠如しており、他者への想像力・共感が働かない。

 取り敢えず私の文章では、パーソナリティ障害を「自己と他者の境界が曖昧なため、周囲との軋轢(あつれき)を生んでしまうコミュニケーション障害」と定義しておく。

 これは完全な私見となるが、私はパーソナリティ障害を広汎性発達障害の症状として考えている。大雑把にいってしまえば「軽度の自閉症」である。

 実は意外と簡単に見分ける方法がある。それは「決まった手順の作業」が行えないということだ。例えば車から降りる時にドアをロックするといったことが彼らはできない。ドライバーに対する配慮を欠き、車上荒らしに遭うかもしれないという想像力が働かないためだ。

 簡単な作業であっても手順を覚えることができない人は、作業の意味や前後の流れを理解していない。そしてこれこそが社会性なのだ。

 普通に注意しても謝らない。謝ったとしても言葉に気持ちが入っていない。それどころか、「エ、どうして私が悪いの?」という態度を示すことが多い。

 問題行動から導かれるのは前頭葉の機能疾患であろう。これが遺伝要因(先天性)によるものか環境要因(後天性)によるものなのかは実に微妙だ。ただ、努力や改善を促す意味では環境要因と考えた方がよいと思われる。

 病因について考えてみよう。ミラーニューロンと自閉症との関連性は憶測の域を出ていないそうだ。しかし自己鏡像認知(自己鏡映像認知とも)から手繰ることは可能だ。

 高度な知能をもつ動物は鏡に映った自分を認識することができる。類人猿、イルカ、ゾウなどで確認されており、自我の概念があるものと考えられている。これを自己鏡像認知という。ちなみにサルにはない。また重度の精神病患者も認識できない。

 いずれも群れを形成することから、自己鏡像認知と高度な社会性との関連が指摘されている。「鏡に映った自分」を認識できる能力は、「相手の瞳に映った自分」を想像できる能力でもあろう。自己を客観視することで社会性は維持される。「他人に迷惑をかけてはいけません」ってわけだ。

 ヒトの場合、3歳前後から自己鏡像認知が働く。幼児を対象とした実験では、自己鏡像認知ができる子供ほど慰めなどの援助行動をすることが確認されている(『共感の時代へ 動物行動学が教えてくれること』フランス・ドゥ・ヴァール)。

 自閉症の場合は完全に生きている世界が異なる。常識や伝統的価値観は全く通用しない。異なる世界観を受け入れた上で、互いの存在を認めることが重要だ。

 パーソナリティ障害は自閉症と一般人との間に位置している。

 長くなってしまったので結論を述べよう。パーソナリティ障害は陰気臭い人物よりも、むしろ人気者の中に多く存在する。有り体に申せば、周囲からチヤホヤされてお高くとまったタイプに多い。エネルギッシュ&パワフル。ただしスタミナにはムラがある。

 パワーハラスメントの加害者はパーソナリティ障害だと考えてよい。被害者には隷属的傾向が窺える。アダルトチルドレンがパワハラ被害に遭うと地獄絵図となる。パーソナリティ障害は善悪の概念が乏しいことから長らく「サイコパス」(精神病質)と呼ばれてきた。

 一番わかりやすいのはお笑い芸人の世界だ。自他の境界が曖昧なため礼儀を弁えず、粗暴な振る舞いが目立つ。島田紳助、明石屋さんま、太田光などが典型的だ。お笑いの世界は保守的な上下関係が築かれているので、君臨する人物がパーソナリティ障害だと、コミュニティそのものが「いじめ文化」を形成する。

 ホリエモンやヒロユキを見て、彼らが罪悪感を欠いていることに気づかない人はパワハラ被害者予備軍だ。また、テレビに出演しているタレントの殆どはパーソナリティ障害だと私は思っている。

 政治家にも多い。石原慎太郎は小泉首相のことをテレビカメラの前で「純ちゃん」と呼んでいた。石原夫人の親戚と小泉の実弟が結婚しているので少なからず縁戚関係に当たる。石原は自分を大きく見せるために首相をちゃん付けで呼んだのであろうか? 違うね。公私の区別がつかないのだ。パーソナリティ障害者は周囲のあらゆることを「プライベート化」してしまう。一度や二度会っただけで、やたら馴れ馴れしい言葉遣いをする人物もこのタイプである。

 尚、パーソナリティ障害は治る見込みがない。厳しく注意したり、上手くなだめたりしながら、付き合ってゆくしかない。

人格障害(パーソナリティ障害)を知る

 ・人格障害・パーソナリティ障害
 ・人格障害
 ・境界性人格障害
 ・人格障害の治療とは
 ・パーソナリティー障害あれこれ

心理的虐待/『生きる技法』安冨歩

野生動物の自己鏡像認知

人格障害(パーソナリティ障害)を知る


人格障害(パーソナリティ障害)に関する私見

平気でうそをつく人たち―虚偽と邪悪の心理学良心をもたない人たち (草思社文庫)境界性人格障害(BPD)のすべて

モラル・ハラスメント―人を傷つけずにはいられないモラル・ハラスメントが人も会社もダメにする毒になる親 一生苦しむ子供 (講談社プラスアルファ文庫)

診断名サイコパス―身近にひそむ異常人格者たち (ハヤカワ文庫NF)自閉症裁判 レッサーパンダ帽男の「罪と罰」 (朝日文庫)香水―ある人殺しの物語 (文春文庫)

精神科医がたじろぐ「心の闇」/『平気でうそをつく人たち 虚偽と邪悪の心理学』M・スコット・ペック
『自閉症裁判 レッサーパンダ帽男の「罪と罰」』佐藤幹夫
反社会性人格障害の見事な描写/『香水 ある人殺しの物語』パトリック・ジュースキント
『アメリ』心理的虐待/『生きる技法』安冨歩

土本典昭、パトリシア・ハイスミス


 2冊挫折。

 挫折32『土本典昭 わが映画発見の旅 不知火海水俣病元年の記録』土本典昭(日本図書センター、2000年)/左翼思想っぽい文章に馴染めず。

 挫折33『11の物語』パトリシア・ハイスミス:小倉多加志〈おぐら・たかし〉訳(ハヤカワ文庫、2005年)/そこそこ面白いのだが途中でやめる。人生の残り時間が限られているため。いずれの短篇も独白調のため、被害妄想に付き合わされているような疲れを覚える。デュ・モーリアを知らなければ面白く読めたかもね。『太陽がいっぱい』はそのうち読む予定。

2011-06-24

佐藤仁


 1冊挫折。

 挫折31『ギャンブルの経済学』佐藤仁(かに心書、2007年)/文章が軽すぎる。

2011-06-23

ジョセフ・ブルチャック


 1冊読了。

 41冊目『それでもあなたの道を行け インディアンが語るナチュラル・ウィズダム』ジョセフ・ブルチャック:中沢新一、石川雄午訳〈いしかわ・ゆうご〉(めるくまーる、1998年)/中沢新一の名前を見て迷ったが、表紙に惹かれて購入。これほどの面構えは中々お目にかかれない。写真も多数掲載。厳しい寒風と灼熱の太陽に耐えた彼らの風貌が、私のだらけた姿勢を正す。我々は文明の美酒に酔い痴れ、肉体も精神も贅肉(ぜいにく)でたるんでいる。精霊よ蘇れ、と思わずにはいられない。