2015-12-31

2015年に読んだ本ランキング


2008年に読んだ本ランキング
2009年に読んだ本ランキング
2010年に読んだ本ランキング
2011年に読んだ本ランキング
2012年に読んだ本ランキング
2013年に読んだ本ランキング
2014年に読んだ本ランキング

 ・2015年に読んだ本ランキング

2016年に読んだ本ランキング

 数日前からピックアップしたところ、たちまち60~70冊ほどになってしまった。今年は読了本が多かったため、1/3ほどのヒット率と見てよい。思い切って10冊に絞ろうとしたのだが、やはり無理であった。20冊にするのも難しかった。順位はつけているがそれほど大差があるわけではない。心に受けた衝撃度を基準にした。何か書こうかと思ったのだが、腱鞘炎がぶり返してきているので読書日記へのリンクのみとした。一年間ご愛読いただき誠にありがとうございました。伏して御礼申し上げる次第です。それでは皆さん、よいお年を。

 20位『生ける屍の結末 「黒子のバスケ」脅迫事件の全真相』渡邊博史
 19位『龍馬の黒幕 明治維新と英国諜報部、そしてフリーメーソン』加治将一
 18位『明治維新という過ち 日本を滅ぼした吉田松陰と長州テロリスト』原田伊織
 17位『平成経済20年史』紺谷典子
 16位『パール判事の日本無罪論』田中正明
 15位『言挙げせよ日本 欧米追従は敗者への道』松原久子
 14位『記憶喪失になったぼくが見た世界』坪倉優介
 13位『休戦』プリーモ・レーヴィ
 12位『決定版 国民の歴史(上)』『決定版 国民の歴史(下)』西尾幹二
 11位『父、坂井三郎 「大空のサムライ」が娘に遺した生き方』坂井スマート道子
 10位『創られた「日本の心」神話 「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史』輪島祐介
 9位『インテリジェンス戦争の時代 情報革命への挑戦』藤原肇
 8位『日本人のための憲法原論』小室直樹
 7位『F機関 アジア解放を夢みた特務機関長の手記』藤原岩市
 6位『逝きし世の面影』渡辺京二
 5位『日本の戦争Q&A 兵頭二十八軍学塾』兵頭二十八
 4位『消えたい 虐待された人の生き方から知る心の幸せ』高橋和巳
 3位『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』岸見一郎、古賀史健
 2位『人間科学』養老孟司
 1位『ある明治人の記録 会津人柴五郎の遺書』石光真人

ある明治人の記録―会津人柴五郎の遺書 (中公新書 (252))

中央公論新社
売り上げランキング: 38,073

2015-12-30

勝海舟


 1冊読了。

 178冊目『氷川清話』勝海舟:江藤淳〈えとう・じゅん〉、松浦玲〈まつうら・れい〉編(講談社学術文庫、2000年)/再読。あと50ページほど残しているが明日には読み終えるだろう。会津戦争を知った今となっては驚くほど勝の言葉が響いてこない。原田伊織著『明治維新という過ち 日本を滅ぼした吉田松陰と長州テロリスト』の影響が予想以上に大きいと見える。原田は「ただの法螺吹き」と勝を断じているが、確かに言葉の軽さは否めない。その剽軽(ひょうきん)さを除けば、どこか佐藤優と似ている。肝心なことは隠し通して、言葉で煙に巻いてしまうタイプだ。教養に名を借りた情報戦略といったところか。松浦のせせこましい脚注も自らの正しさを声高に主張しているようでみっともない。明日は今年のランキングを書く予定なので、読書日記はこれにて打ち止め。皆さん、よいお年を。

ネルソン・マンデラは「世界の警察」を拒否/『アメリカの国家犯罪全書』ウィリアム・ブルム


『人間の崩壊 ベトナム米兵の証言』マーク・レーン
『動くものはすべて殺せ アメリカ兵はベトナムで何をしたか』ニック・タース
・『だれがサダムを育てたか アメリカ兵器密売の10年』アラン・フリードマン
『9.11 アメリカに報復する資格はない!』ノーム・チョムスキー
『エコノミック・ヒットマン 途上国を食い物にするアメリカ』ジョン・パーキンス
『アメリカ民主党の崩壊2001-2020』渡辺惣樹

 ・ネルソン・マンデラは「世界の警察」を拒否

『ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く』ナオミ・クライン
『人種戦争 レイス・ウォー 太平洋戦争もう一つの真実』ジェラルド・ホーン

必読書リスト その二

ネルソン・マンデラ 1997年

 なぜ傲慢にも、どちらへ行くべきか、どの国と友好関係を結ぶべきか、われわれに指図できるのだろう。カダフィは私の友人だった。われわれが孤立していたときに、支援の手をさしのべてくれた。一方、今日、私がここに来ることを阻止しようとした人々は私の敵だ。そうした人々は何の道徳ももっていない。一つの国が世界の警察としてふるまうことを、われわれは受け入れることはできない。
(Wahington Post, November 4, 1997, p.13,)

【『アメリカの国家犯罪全書』ウィリアム・ブルム:益岡賢〈ますおか・けん〉訳(作品社、2003年)】

【ワシントン西田進一郎】オバマ米大統領はシリア問題に関する10日のテレビ演説で、「米国は世界の警察官ではないとの考えに同意する」と述べ、米国の歴代政権が担ってきた世界の安全保障に責任を負う役割は担わない考えを明確にした。

 ただ、「ガスによる死から子供たちを守り、私たち自身の子供たちの安全を長期間確かにできるのなら、行動すべきだと信じる」とも語り、 自らがシリア・アサド政権による使用を断言した化学兵器の禁止に関する国際規範を維持する必要性も強調。 「それが米国が米国たるゆえんだ」と国民に語りかけた。

 大統領は、「(シリア)内戦の解決に軍事力を行使することに抵抗があった」と述べつつ、8月21日にシリアの首都ダマスカス近郊で化学兵器が使用され大量の死者が出たことが攻撃を表明する動機だと説明した。「世界の警察官」としての米国の役割についても「約70年にわたって世界の安全保障を支えてきた」と歴史的貢献の大きさは強調した。

【毎日新聞 2013年9月11日】

 ソース(オバマ大統領の演説のトランスクリプト)だと「アメリカは世界の警察ではない」となっている。わざわざ「同意する」を付け足した西田進一郎の狙いは何だったのか? しかも「the world's policeman」だから「世界の警察官」とすべきだろう。


「世界の警官」は「世界の暴力団」でもあった。警察は公権力だがアメリカの場合は単なる武力(暴力)に過ぎない。大統領となったネルソン・マンデラがどれほどアメリカに苦しめられたかは、ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』に詳細がある。

 約半年後の2014年4月、オバマ大統領が来日した。それ以降、安倍政権がやったことといえば、特定秘密保護法と集団的自衛権の行使容認を含む安全保障関連法の成立である。きっと「自分の国は自分で守れや」とでも言われたのだろう。で、当然のように中国が前へ出てくる。かつて核保有国同士が戦争をしたことはないから、アメリカとしては日本を中国にぶつけるつもりだろう。南シナ海か尖閣諸島あたりで。

 アメリカが警官をやめたのはカネがないからだ。アメリカの国防予算は2012-2021年まで削減が義務づけられている。とすれば世界は多極化か極のない世界に向かわざるを得ない。アメリカが一歩下がることでヨーロッパの地政学的リスクが高まれば、たぶん中国・ロシアが台頭する。

 そして米国の利上げ政策によって新興国マネーはアメリカに集まる。どこをどう考えてみても「世界は沈む」と結論せざるを得ない。「沈める」ところにアメリカの戦略があるのだろう。2016年は「暴落の年」と考えてよい。

アメリカの国家犯罪全書
ウィリアム ブルム
作品社
売り上げランキング: 256,683

ヒロシマとナガサキの報復を恐れるアメリカ/『日本最後のスパイからの遺言』菅沼光弘、須田慎一郎
誰も信じられない世界で人を信じることは可能なのか?/『狂気のモザイク』ロバート・ラドラム

坂井スマート道子、フランツ・カフカ、他


 5冊挫折、2冊読了。

市民政府論』ロック:鵜飼信成〈うかい・のぶしげ〉訳(岩波文庫、1968年)/加藤節〈かとう・たかし〉訳の方がよい。

2000円から始める!! ふるさと納税裏ワザ大全』金森重樹〈かなもり・しげき〉監修(綜合ムック、2014年)/単なるカタログ。手抜き編集。参考にならず。

偽のデュー警部』ピーター・ラヴゼイ:中村保男訳(ハヤカワ文庫、1983年)/冒頭でチャップリンが登場する。文体が合わず。

化城の昭和史 二・二六事件への道と日蓮主義者(上)』寺内大吉(毎日新聞社、1988年/中公文庫、1996年)/血盟団事件~五・一五事件~二・二六事件を日蓮主義というテーマで描く。しかも主人公の「改作」という渾名(あだな)の記者が左翼の尾崎秀実〈おざき・ほつみ〉という趣向を凝らす。3/4ほどで挫ける。事件そのものがあまり面白くない。寺内大吉は浄土宗の僧侶。

憲法と平和を問いなおす』長谷部恭男〈はせべ・やすお〉(ちくま新書、2004年)/先般、国会に参考人として招かれた人物。文章がよくない。で、たぶん左翼。政教分離(66ページ)、愛国心(69ページ)、天皇制(93ページ)に関する記述からそう判断した。例えばドイツでは税金が教会に渡っている。また愛国教育をしていないのは世界でも日本くらいだ。肝心なことを世界と比較せずに道徳的な次元で批判するのが左翼の常習性である。

 176冊目『絶望名人カフカの人生論』フランツ・カフカ:頭木弘樹〈かしらぎ・ひろき〉編訳(飛鳥新社、2011年/新潮文庫、2014年)/『生ける屍の結末 「黒子のバスケ」脅迫事件の全真相』といい勝負だ。昔、「可不可」というペンネームを思いついたことがあったが、どうやら実際のご本人は「過負荷」であった模様。渡邊博史はカフカになれる可能性を秘めていると思う。

 177冊目『父、坂井三郎 「大空のサムライ」が娘に遺した生き方』坂井スマート道子(産経新聞出版、2012年)/親父の本より面白かった。娘をもつ親は必読のこと。零戦エースパイロットの凄まじいばかりの注意力が遺憾なく子育てに発揮されている。坂井三郎は「生きる不思議」を悟っていたのだろう。型破りな教えの数々が「生命の危険回避」を旨としている。リスク管理の見事な教科書。坂井を半死半生の目に遭わせた米軍パイロットとの邂逅も感動的だ。「必読書」入り。

2015-12-28

脳卒中が起こった瞬間/『奇跡の脳 脳科学者の脳が壊れたとき』ジル・ボルト・テイラー


『壊れた脳 生存する知』山田規畝子
『46年目の光 視力を取り戻した男の奇跡の人生』ロバート・カーソン
『動物感覚 アニマル・マインドを読み解く』テンプル・グランディン
『神々の沈黙 意識の誕生と文明の興亡』ジュリアン・ジェインズ
『ユーザーイリュージョン 意識という幻想』トール・ノーレットランダーシュ
『脳はいかにして〈神〉を見るか 宗教体験のブレイン・サイエンス』アンドリュー・ニューバーグ、ユージーン・ダギリ、ヴィンス・ロース
『悟りの階梯 テーラワーダ仏教が明かす悟りの構造』藤本晃
『未処理の感情に気付けば、問題の8割は解決する』城ノ石ゆかり
『マンガでわかる 仕事もプライベートもうまくいく 感情のしくみ』城ノ石ゆかり監修、今谷鉄柱作画
『ザ・メンタルモデル 痛みの分離から統合へ向かう人の進化のテクノロジー』由佐美加子、天外伺朗
『無意識がわかれば人生が変わる 「現実」は4つのメンタルモデルからつくり出される』前野隆司、由佐美加子
『ザ・メンタルモデル ワークブック 自分を「観る」から始まる生きやすさへのパラダイムシフト』由佐美加子、中村伸也
『左脳さん、右脳さん。 あなたにも体感できる意識変容の5ステップ』ネドじゅん

 ・脳卒中が起こった瞬間

ジル・ボルト・テイラー「脳卒中体験を語る」
『脳は奇跡を起こす』ノーマン・ドイジ
『脳はいかに治癒をもたらすか 神経可塑性研究の最前線』ノーマン・ドイジ
『ザ・ワーク 人生を変える4つの質問』バイロン・ケイティ、スティーヴン・ミッチェル
『人生を変える一番シンプルな方法 セドナメソッド』ヘイル・ドゥオスキン
『わかっちゃった人たち 悟りについて普通の7人が語ったこと』サリー・ボンジャース
『悟り系で行こう 「私」が終わる時、「世界」が現れる』那智タケシ
『二十一世紀の諸法無我 断片と統合 新しき超人たちへの福音』那智タケシ
『覚醒の炎 プンジャジの教え』デーヴィッド・ゴッドマン

悟りとは
必読書リスト その五

 集中しようとすればするほど、どんどん考えが逃げて行くかのようです。答えと情報を見つける代わりに、わたしは込み上げる平和の感覚に満たされていました。わたしを人生の細部に結びつけていた、いつものおしゃべりの代わりに、あたり一面の平穏な幸福感に包まれているような感じ。恐怖をつかさどる脳の部位である扁桃体が、こうした異常な環境への懸念にも反応することなく、パニック状態を引き起こさなかったなんて、なんて運がよかったのでしょう。左脳の言語中枢が徐々に静かになるにつれて、わたしは人生の思い出から切り離され、神の恵みのような感覚に浸り、心がなごんでいきました。高度な認知能力と過去の人生から切り離されたことによって、意識は悟りの感覚、あるいは宇宙と融合して「ひとつになる」ところまで高まっていきました。むりやりとはいえ、家路をたどるような感じで、心地よいのです。
 この時点で、わたしは自分を囲んでいる三次元の現実感覚を失っていました。からだは浴室の壁で支えられていましたが、、どこで自分が始まって終わっているのか、というからだの境界すらはっきりわからない。なんとも奇妙な感覚。からだが、固体ではなくて液体であるかのような感じ。まわりの空間や空気の流れに溶け込んでしまい、もう、からだと他のものの区別がつかない。認識しようとする頭と、指を思うように動かす力との関係がずれていくのを感じつつ、からだの塊はずっしりと重くなり、まるでエネルギーが切れたかのようでした。

【『奇跡の脳 脳科学者の脳が壊れたとき』ジル・ボルト・テイラー:竹内薫〈たけうち・かおる〉訳(新潮社、2009年/新潮文庫、2012年)】

2012年に読んだ本ランキング」の第3位である。出版不況のせいで校正をしていないのかもしれない。「なんて、なんて運が」が見過ごされている。

 急激な脳血管障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)の総称を脳卒中という。ジル・ボルト・テイラーは浴室で倒れた。フラフラになりながらも何とか電話まで辿り着き、同僚に連絡するも既に呂律(ろれつ)が回らなくなっていた。

 論理や思考から解き放たれた豊かな右脳世界が現れる。それは自他が融(と)け合う世界だった。左脳は分析し序列をつける。

「科学者は、体験談を証拠とはみなさない」(『なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのか』スーザン・A・クランシー)。しかし脳科学者の体験であれば一般人よりも客観性があり有用だろう。

 神は右脳に棲む(『神々の沈黙 意識の誕生と文明の興亡』ジュリアン・ジェインズ)。ただし注意が必要だ。教祖の言葉も、統合失調症患者のネオ・ロゴス(『死と狂気 死者の発見』渡辺哲夫)も右脳から生まれる。右脳にも裏と表があるのだろう。ジル・ボルト・テイラーの体験を普遍の位置に置くのは危険だ。

 それでも傍証はある。

「閉じ込め症候群」患者の72%、「幸せ」と回答 自殺ほう助積極論に「待った」

 文学的表現ではなく、本当にただ「いる」だけ、「ある」だけでも幸せなのだ。「比較と順応がないとき、葛藤は姿を消します」(『キッチン日記 J.クリシュナムルティとの1001回のランチ』マイケル・クローネン:高橋重敏訳)。左脳の特徴である論理・分析・体系化が「悟り」を阻んでいるのだろう。我々が願う幸福の姿は左脳的で、社会における位置や他人からの評価に彩られている。

 悟りとは「世界を、生を味わうこと」だ。ジル・ボルト・テイラーの体験は本覚論の正当性(『反密教学』津田真一)を示す。なぜなら悟るべきタイミングは「今、ここ」であり、彼岸は此岸(しがん)の足下(そっか)に存在するからだ。悟りとは山頂に位置するのではない。現在の一歩にこそ求められるべきものである。

 次に戒律というテーマが見えてくるわけだが私の手には余る。




序文「インド思想の潮流」に日本仏教を解く鍵あり/『世界の名著1 バラモン教典 原始仏典』長尾雅人責任編集、『空の思想史 原始仏教から日本近代へ』立川武蔵
病気になると“世界が変わる”/『壊れた脳 生存する知』山田規畝子

2015-12-25

菅沼光弘、ヨハン・テオリン、他


 6冊挫折、2冊読了。

会津落城 戊辰戦争最大の悲劇』星亮一〈ほし・りょういち〉(中公新書、2003年)/テレビマンの性(さが)はそう簡単に変わらぬようだ。星亮一は会津宣伝マンか。今後読む予定なし。

神々の明治維新 神仏分離と廃仏毀釈』安丸良夫〈やすまる・よしお〉(岩波新書、1979年)/細部にこだわりすぎて全体が見えない。キリスト教と日蓮宗不受不施派の禁止~寺請制度といった前提が描かれていないため廃仏毀釈事件簿の印象が強い。

地獄の虹 新垣三郎 死刑囚から牧師に』毛利恒之(毎日新聞社、1998年/講談社文庫、2005年)/『月光の夏』に感動した勢いで毛利恒之の著作に手をつけたのだが、パッとしない。テレビなんぞで真実を伝えられるわけがない(14ページ)。

占領下の言論弾圧』(現代ジャーナリズム出版会、1969年/増補版、1974年)/参照資料。松浦総三は共産党員らしい。「天皇の軍隊」などと書いている。左翼の言論が信用ならないのは人々を誘導するプロパガンダ性にある。彼らは天皇制打倒や社会主義化という目的を伏せながら、もっともらしい善意を振りかざして破壊活動を行う。人間を自由にしない思想・宗教はすべてイデオロギーと化す。そしてイデオロギーが人間を手段化する。

江戸時代』大石慎三郎〈おおいし・しんざぶろう〉(中公新書、1974年)/主要な大型治水工事の大半は戦国時代に行われたという。社会のグランドデザインを重視した内容。50ページほどしか興味が続かず。

冬の灯台が語るとき』ヨハン・テオリン:三角和代〈みすみ・かずよ〉訳(ハヤカワ・ポケット・ミステリ、2012年)/労多き作業にケチをつけるのは心苦しいが翻訳が悪すぎる。

 174冊目『黄昏に眠る秋』ヨハン・テオリン:三角和代〈みすみ・かずよ〉訳(ハヤカワ・ポケット・ミステリ、2011年/ハヤカワ文庫、2013年)/一度挫けている。とにかく翻訳がわかりにくい。軽く100ヶ所以上はあるだろう。リライトするだけでベストセラーになることだろう。老人たちが捜査をするという設定に無理があり、しかも登場人物の殆どが愚か者ときている。それでもラストのどんでん返しには度肝を抜かれた。次作の『冬の灯台が語るとき』にも直ぐ手を伸ばしたが、とても読めた文章ではない。

 175冊目『日本人が知らない地政学が教えるこの国の針路』菅沼光弘(KKベストセラーズ、2015年)/ウクライナ政変とイスラム国に関する情報を中心に米中の動きを解説する。例の如く語り下ろし。後藤健二さん殺害の裏側にMI5の暗躍ありとしている。中国が対日感情を和らげたのは、既に日本を格下国家と見なしているため。

映画『ZEITGEIST : ADDENDUM 』(ツァイトガイスト・アデンダム)2008年


映画『ZEITGEIST(ツァイトガイスト) 時代精神』2007年

 ・映画『ZEITGEIST : ADDENDUM 』(ツァイトガイスト・アデンダム)2008年

映画『ZEITGEIST : MOVING FORWARD』2011年

2015-12-22

宗教学者の不勉強/『21世紀の宗教研究 脳科学・進化生物学と宗教学の接点』井上順孝編、マイケル・ヴィツェル、長谷川眞理子、芦名定道


岡野潔「仏陀の永劫回帰信仰」に学ぶ
『業妙態論(村上理論)、特に「依正不二」の視点から見た環境論その一』村上忠良

 ・宗教学者の不勉強

『身心変容技法シリーズ① 身心変容の科学~瞑想の科学 マインドフルネスの脳科学から、共鳴する身体知まで、瞑想を科学する試み』鎌田東二編

【衣服を着た神の姿】最近の研究は思わぬところから人間の身体や生活洋式の変化の過程を推測するようになっている。たとえば人類が体毛を失ったのは300万年ほど前で、服を着るようになったのが7万年ほど前という推測がある。これはシラミの研究から導かれたもので、陰部に棲むケジラミと頭部に棲むアタマジラミのDNA分子解析と、アタマジラミから分かれたコロモジラミの分子解析による。
 つまり人類の体毛がなくなったので、ケジラミとアタマジラミは分離され、別々の進化をした。また服を着るようになったので、アタマジラミからコロモジラミが分化し、もっぱら衣服に棲むようになったということである。衣服着用は、出アフリカした人類の寒冷地への進出を可能にしたと考えられる。そうすると、神とか霊的存在の表象において擬人化がいつ始まるかは不明にしても、それらが衣服をまとった姿で表象されるのは、7万年より新しくなければならないという推測が成り立つ。

【『21世紀の宗教研究 脳科学・進化生物学と宗教学の接点』井上順孝〈いのうえ・のぶたか〉編、マイケル・ヴィツェル、長谷川眞理子、芦名定道〈あしな・さだみち〉(平凡社、2014年)】


枕には4万匹のダニがいる/『人類が知っていることすべての短い歴史』ビル・ブライソン

 狙いはよいのだが勉強不足だ。井上は「あとがき」で肩をそびやかしているが、とてもそんなレベルではない。ESS理論ミラーニューロンなどが目を惹いた程度。リチャード・ドーキンス、アンドリュー・ニューバーグ、ジル・ボルト・テイラーを横断的に紹介している。

神経質なキリスト教批判/『神は妄想である 宗教との決別』リチャード・ドーキンス
脳は神秘を好む/『脳はいかにして〈神〉を見るか 宗教体験のブレイン・サイエンス』アンドリュー・ニューバーグ、ユージーン・ダギリ、ヴィンス・ロース
ジル・ボルト・テイラー「脳卒中体験を語る」

 なんとジル・ボルト・テイラーの書評もまだ書いていなかったとは(涙)。

 各人による各章がバラバラで統一感を欠く。季刊誌にするような代物といってよい。科学から宗教に対するアプローチと比べるとその浅さに驚愕の念すら覚える。

 中野毅〈なかの・つよし〉の論文「宗教の起源・再考 近年の進化生物学と脳科学の成果から」の方が有益である。この分野の書籍については以下に一覧を示す。

宗教とは何か?

ユーザーイリュージョン 意識という幻想』や『ポスト・ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるとき』、『動物感覚 アニマル・マインドを読み解く』を押さえていない宗教学者は不勉強の誹(そし)りを免れない。また、ジル・ボルト・テイラーの『奇跡の脳 脳科学者の脳が壊れたとき』は、必ずジュリアン・ジェインズ著『神々の沈黙 意識の誕生と文明の興亡』から考証する必要があるのだ。

 そしてこのテーマは「情報とアルゴリズム」に向かう。科学と宗教は時間を巡る地平において肩を並べ得る。教義といえども情報である。すなわち宗教とは人類が発明した最も古い形のアルゴリズムなのだ。

2015-12-20

菅沼光弘、北芝健、池田整治


 1冊挫折、1冊読了。

映像のポエジア 刻印された時間』アンドレイ・タルコフスキー:鴻英良〈おおとり・ひでなが〉訳(キネマ旬報社、1988年)/ツイッターで知った一冊。1/3ほど飛ばし読み。本の作りが立派で重厚。菊判でありながら、何とページの余白が1/3を占める。そういう勿体の付け方が文章にも見られる。時間と記憶に関する記述は大変参考になった。尚、タルコフスキー作品は1本も観たことがない。

 173冊目『NIPPON消滅の前にこれだけは知っておけ! サバイバル・インテリジェンス』菅沼光弘、北芝健〈きたしば・けん〉、池田整治(ヒカルランド、2015年)/菅沼も賞味期限切れか。松本サリン事件の被害者となった河野義行さんについて、「宗教団体Sの信者で、奥さんも婦人部長かなにかやっていたんです。ところが、あのころ、組織がD寺と分かれて」(185ページ)との菅沼発言は大丈夫なのだろうか? Sは創価学会としか読めないし、D寺は大石寺〈たいせきじ〉を「だいせきじ」と誤読したのだろう。婦人部長との役職名もそれを補強する。菅沼と北芝の話は面白いのだが、池田が極端な陰謀論者のため鼎談の出来はよくない。定価1750円は高すぎる。巻末には「刊行記念講演会」のお知らせがあり料金は7000円となっている。

ウッドハウス暎子


 1冊読了。

 172冊目『北京燃ゆ 義和団事変とモリソン』ウッドハウス暎子(東洋経済新報社、1989年)/柴五郎ものに必ず引用される文献で、論文にエピソードを盛り込んだ労作。満州人名や清国の地名が読みにくいのだが、柴五郎が登場すると俄然読む速度がはやまる。主役はタイムズ紙特派員ジョージ・アーネスト・モリソンだが、中身はモリソンの目を通した日本人讃歌といってよい。何にも増して当時の国際関係における虚々実々の駆け引きがよくわかった。現在に至る日本外交の主体性喪失は三国干渉にあったのだろう。義和団事変(北清事変)で既に日露の衝突は避けられない命運にあったことも理解できた。前著『日露戦争を演出した男 モリソン』も読まねばなるまい。

2015-12-19

これは安い

(デヴィッド・アーキー)DA男性パンツ CLASSICシリーズ 綿 立体成型ボクサー 4枚組(L,グレー) [並行輸入品](デヴィッド・アーキー)DA男性パンツ BAMBOOシリーズ 竹繊維メンズボクサー 4枚組(S,ブラック+ダークグレー) [並行輸入品](デヴィッド・アーキー)DA男性パンツ DOCTORシリーズ セパレート式 モダール素材 ボクサー セット 4枚組(M,ライトグレイ) [並行輸入品](デヴィッド・アーキー)DA男性パンツ MASTERシリーズ モダール素材ボクサー メンズ下着4枚組(S,ブルー+レッド) [並行輸入品]

Take Fiveスポーツインナーウエア上下セット(Basic) (Black, M)(テスラ)TESLA [防寒・保温]  長袖シャツ 冬用起毛 コンプレッションウェア パワーストレッチ アンダーウェア(テスラ)TESLA  [防寒・保温] スポーツタイツ 冬用起毛  コンプレッションウェア パワーストレッチ アンダーウェア

輪島祐介、アーナルデュル・インドリダソン、他


 11冊挫折、2冊読了。

やせる!血糖値が下がる!「タマネギ」レシピ』(マキノ出版、2013年)/「タマネギ氷」が目新しい。要ミキサー。薬効強調路線。マキノ出版はオカルト健康系で知られる。悪い本ではないが少し離れた位置から読むべきだろう。

山川 詳説日本史図録』詳説日本史図録編集委員会編(山川出版社、2013年)/良書。

山川 詳説世界史図録』詳説世界史図録編集委員会編(山川出版社、2014年)/良書。世界地図の移り変わりが面白い。地球環境の変化も視点がよい。

オルタード・カーボン(上)』リチャード・モーガン:田口俊樹訳(アスペクト、2010年)/文庫本。造語センスについてゆけず。田口の訳文はもたもたした感じがあってあまり好きではない。

詳説世界史研究』木下康彦、木村靖二、吉田寅編(山川出版社、2008年)/微妙。冴えがない。面白味のない参考書といった体裁。

変見自在 スーチー女史は善人か』高山正之(新潮文庫、2011年)/著者名の正字は「はしご高」。声の悪さ、話しぶりの不透明さがとにかく好きになれない人物である。エッセイの主題は歴史の真実よりも朝日新聞を叩くところにある。それでも世界各国に身を置いてきただけあって時折、優れた知見を光らせる。

業務スーパーに行こう!』株式会社エディキューブ編(双葉社、2013年)/ほぼカタログ。知らない商品がいくつもあった。ま、店の規模にもよるのだろう。自社生産の多さには驚いた。

流れ図 世界史図録ヒストリカ』谷澤伸、甚目孝三、柴田博、高橋和久編(山川出版社、2013年)/図録は人によって好き嫌いが分かれる。安い(929円)とはいえ、使わぬ物を買うのは愚かである。図書館で参照してから選ぶとよい。

最新世界史図説タペストリー』桃木至朗監修、帝国書院編集部編、川北稔(帝国書院、2015年)/『ヒストリカ』よりはこちらが好み。

ホームには誰もいない 信念から明晰さへ』ヤン・ケルスショット:村上りえこ訳(ナチュラルスピリット、2015年)/ノンデュアリティ(非二元)という言葉を調べるために読む。具体的なワークの件(くだり)で挫折。スピリチュアリズムというスタイルから離れる必要があるように思う。

日本の軍閥 人物・事件でみる藩閥・派閥抗争史』(別冊歴史読本、2009年)/写真と図のみ評価。記事はバラバラでまとまりを欠く。柴五郎は不遇な時期が長かった、とある。薩長閥についてもよくわからず。

 170冊目『緑衣の女』アーナルデュル・インドリダソン:柳沢由実子訳(東京創元社、2013年)/単行本で出すだけの価値あり。CWAゴールドダガー賞とガラスの鍵賞受賞。半世紀前の事件を巡って現在と過去が交錯する。それにしても暗く重々しい。アイスランドの気候もさることながら、破綻の中で辛うじて踏みとどまる家族の姿がのしかかってくる。主人公のエーレンデュルにもさほど魅力はない。っていうか魅力的な人物は見当たらない。で、そこにリアリズムを感じるかといえばそれほどでもないんだな、これが(笑)。それでも読ませる。ぐいぐい読ませる。一日半で読み終えた。

 171冊目『創られた「日本の心」神話 「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史』輪島祐介(光文社新書、2010年)/いやはや面白かった。戦後の風俗を巡る書籍で本書に並ぶものはない。井上章一著『つくられた桂離宮神話』を軽々と凌駕する。渡辺京二著『逝きし世の面影』、水野和夫著『資本主義の終焉と歴史の危機』に伍するレベルである。批判の鋭さにおいても一級品だ。しかも嫌味がない。「之を知る者は之を好む者に如(し)かず。之を好む者は之を楽しむ者に如かず」(『論語』)の手本といってよい。該博な知識がオタク性をまといながらも、恐るべき下半身の力で学術性を堅持している。輪島は1974年生まれでありながら、左翼勢力が文化を通してプロパガンダを行ってきた事実をも穿(うが)つ。恐れ入りました。「必読書」入り。

2015-12-11

紺谷典子、山崎正友、他


 2冊挫折、2冊読了。

骨風』篠原勝之(文藝春秋、2015年)/第43回泉鏡花文学賞受賞作品。あまりピンと来なかった。父親に虐待された過去と見舞いに行った現在とが混沌としていてわかりにくい。「オレ」とか「ゲージツ」という言葉も耐え難い。

声に出して読みたい日本語 1』齋藤孝(草思社、2001年/草思社文庫、2011年)/良書。センスがよい。飛ばし読みで終わったが半分以上は読んでいる。齋藤はプレゼンテーション能力が高い。

 168冊目『闇の帝王、池田大作をあばく』山崎正友(三一新書、1981年)/著者は元創価学会顧問弁護士。矢野絢也著『乱脈経理』を軽々と超える内容だ。こなれた文章で自分が携わってきた汚れ仕事を赤裸々に暴露している。創価学会の政治力は集票力もさることながら、池田の札束攻勢にあることがよくわかる。宗教団体というよりは手口が広域暴力団に近い。毎日新聞の内藤国夫が池田にインタビューしている事実を初めて知った。

 169冊目『平成経済20年史』紺谷典子〈こんや・ふみこ〉(幻冬舎新書、2008年)/やっと読み終えた。新書ながら400ページのボリューム。専門家の矜持が静かな怒りの焔(ほのお)となってメラメラと燃え上がる。小泉政権時代にテレビから抹殺された一人である。小泉・竹中コンビによる日本経済破壊の失政に鉄槌を落とす。日本の政治とマスコミの現状を知るための教科書といってよい。住専問題については私も当時、総合雑誌の特集号などを読んでフォローしているつもりであったが、まるでわかっていなかった。明治維新から小泉政権に至る近現代史の解明が待たれる。「必読書」入り。