2008-08-30

第三次中東戦争がナチ・ホロコーストをザ・ホロコーストに変えた/『ホロコースト産業 同胞の苦しみを「売り物」にするユダヤ人エリートたち』ノーマン・G・フィンケルスタイン


 ・目次
 ・エリ・ヴィーゼルはホロコースト産業の通訳者
 ・誇張された歴史を生還者が嘲笑
 ・1960年以前はホロコーストに関する文献すらなかった
 ・戦後、米ユダヤ人はドイツの再軍備を支持
 ・米ユダヤ人組織はなりふり構わず反共姿勢を鮮明にした
 ・第三次中東戦争がナチ・ホロコーストをザ・ホロコーストに変えた
 ・1960年代、ユダヤ人エリートはアイヒマンの拉致を批判
 ・六月戦争以降、米国内でイスラエル関連のコラムが激増する
 ・「ホロコースト=ユダヤ人大虐殺」という構図の嘘
 ・ホロコーストは「公式プロパガンダによる洗脳であり、スローガンの大量生産であり、誤った世界観」
 ・ザ・ホロコーストの神聖化
 ・ホロコーストを神聖化するエリ・ヴィーゼル
 ・ホロコースト文学のインチキ
 ・ビンヤミン・ヴィルコミルスキーはユダヤ人ですらなかった

『人種戦争 レイス・ウォー 太平洋戦争もう一つの真実』ジェラルド・ホーン
『ヒトラーの経済政策 世界恐慌からの奇跡的な復興』武田知弘

 第三次中東戦争は「六日戦争」とも呼ばれ、わずか6日間の戦闘でイスラエルは占領地域を4倍にまで拡大した。

 すべてが変わったのは、1967年6月の第三次中東戦争(六月戦争)からだ。誰に聞いても、ザ・ホロコーストがアメリカ・ユダヤ人の生活と切っても切れないものになったのはこの紛争後のことだという意見がほとんどだ。標準的な説明では、この変化は、六月戦争におけるイスラエルの極度の孤立と脆弱さがナチによる絶滅計画の記憶を蘇らせたため、とされている。しかし実際は、この分野は当時の中東における力関係を表わしてはいないし、アメリカ・ユダヤのエリートたちとイスラエルの間の深まりゆく関係の本質も伝えてはいない。
 主だったアメリカ・ユダヤ人組織は第二次世界大戦後、冷戦でのアメリカ政府の優先事項に従ってナチ・ホロコーストを軽視した。そしてそれとまったく同じ理由から、イスラエルに対する姿勢についても、彼らはアメリカの政策と歩調を合わせたのである。アメリカ・ユダヤのエリートたちは最初、ユダヤ人国家というものに根深い不安を抱いていた。その最たるものは、ユダヤ人国家が「二重の忠誠心」という嫌疑を裏付けることになるのではないかという恐れだった。(※イスラエルは国家成立後、西側陣営に加わったものの、イスラエル指導層のほとんどが東ヨーロッパ系の左翼であったため、ソヴィエト陣営につく懸念を払拭できなかった。当時はアメリカもイスラエルとは距離を置いていた)

【『ホロコースト産業 同胞の苦しみを「売り物」にするユダヤ人エリートたち』ノーマン・G・フィンケルスタイン:立木勝〈たちき・まさる〉訳(三交社、2004年)】

 中東におけるイスラエルと、極東における日本は地政学上無視できない位置にあるという点で似ている。しかしながら決定的に異なるのは、日本人が黄色人種であることだ。日本にとっての外交はアメリカが大半を占めているが、アメリカにとっての日本は数多い同盟国の一つに過ぎない。

 第三次中東戦争でイスラエルが圧倒的な勝利を収め、米国のユダヤ・エリートは同盟関係を深めることに全力を注いだ。アメリカという国は、「世界の警察」というよりは、「暴力にものを言わせるボス」という存在だが、民主主義の宗主国である以上、世論を無視することは絶対にできない。そこで、自分達が描いた物語に誘導するべく、情報操作が始まる。

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2008-08-28

残酷なまでのユーモアで階層社会の成れの果てを描く/『ピーターの法則 創造的無能のすすめ』ローレンス・J・ピーター、レイモンド・ハル


『反社会学講座』パオロ・マッツァリーノ

 ・残酷なまでのユーモアで階層社会の成れの果てを描く

『パーキンソンの法則 部下には読ませられぬ本』C・N・パーキンソン
『新版 人生を変える80対20の法則』リチャード・コッチ

必読書リスト その三

 階層社会におけるエントロピー増大の法則といった内容。教育学博士であるローレンス・J・ピーターが編み出した法則とは以下のもの――

 階層社会では、すべての人は昇進を重ね、おのおのの無能のレベルに到達する。

【『ピーターの法則 創造的無能のすすめ』ローレンス・J・ピーター、レイモンド・ハル:渡辺伸也訳(ダイヤモンド社、2003年、新装版、2018年)以下同】

 やがて、あらゆるポストは、職責を果たせない無能な人間によって占められる。

 仕事は、まだ無能レベルに達していない者によって行なわれている。

 管理職が無能な理由が明快に解き明かされている。人間には無限の可能性が秘められているが、不特定多数の人々は人間には限界があることを雄弁に物語っている(笑)。文章にするとピーターの法則は、悪い冗談のように思えるが、極めて数学的な概念である。社長や代表取締役までの段階は数える程度しかないものの、サラリーマンにとっては無限に続く階段のようなものだろう。

 この世に生を享けた以上、人は必ず老いる。太陽も必ず沈む。その意味でローレンス・J・ピーターが奨励する“創造的無能”は、太陽を正午の時間で止めてしまうような無謀さを露呈している。しかしながらその本意は、欲望に任せて昇進を遂げるよりは、自分の才能を発揮しながら楽しい人生を歩むよう促しているのだろう。

 パオロ・マッツァリーノ著『反社会学講座』と併せて読めば、社会学の天才になれるかもよ。

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2008-08-24

米ユダヤ人組織はなりふり構わず反共姿勢を鮮明にした/『ホロコースト産業 同胞の苦しみを「売り物」にするユダヤ人エリートたち』ノーマン・G・フィンケルスタイン


 ・目次
 ・エリ・ヴィーゼルはホロコースト産業の通訳者
 ・誇張された歴史を生還者が嘲笑
 ・1960年以前はホロコーストに関する文献すらなかった
 ・戦後、米ユダヤ人はドイツの再軍備を支持
 ・米ユダヤ人組織はなりふり構わず反共姿勢を鮮明にした
 ・第三次中東戦争がナチ・ホロコーストをザ・ホロコーストに変えた
 ・1960年代、ユダヤ人エリートはアイヒマンの拉致を批判
 ・六月戦争以降、米国内でイスラエル関連のコラムが激増する
 ・「ホロコースト=ユダヤ人大虐殺」という構図の嘘
 ・ホロコーストは「公式プロパガンダによる洗脳であり、スローガンの大量生産であり、誤った世界観」
 ・ザ・ホロコーストの神聖化
 ・ホロコーストを神聖化するエリ・ヴィーゼル
 ・ホロコースト文学のインチキ
 ・ビンヤミン・ヴィルコミルスキーはユダヤ人ですらなかった

『人種戦争 レイス・ウォー 太平洋戦争もう一つの真実』ジェラルド・ホーン
『ヒトラーの経済政策 世界恐慌からの奇跡的な復興』武田知弘

 第二次世界大戦後、米ソの冷戦構造が世界を支配した。アメリカでは反共ヒステリーともいうべきマッカーシズム旋風が吹き荒れ、赤狩りに血道をあげた。米ユダヤ人組織は、反共の旗幟(きし)を鮮明にして同胞であるユダヤ人をも生贄(いけにえ)として差し出した。

 アメリカ・ユダヤのエリートたちのあいだで最終的解決の話題がタブーだったのには、もう一つ理由がある。左翼のユダヤ人が、冷戦でドイツと同盟してソヴィエト連邦と対峙することに反対で、こちらはナチの問題を持ち出すことをやめなかったからである。ナチ・ホロコーストの記憶は共産主義の理想と結びついた。ユダヤ人と左翼を同一視するステレオタイプの見方に縛られて――実際に1948年の大統領選挙では、進歩派候補ヘンリー・ウォーラスの得票数の3分の1はユダヤ人によるものだった――アメリカ・ユダヤのエリートたちは躊躇なく、同胞のユダヤ人を生贄として反共産主義の祭壇に捧げたのである。危険分子と疑われたユダヤ人の名簿を政府機関に提供することで、AJCとADLは積極的にマッカーシーの魔女狩りに協力した。AJCはローゼンバーグ夫妻の死刑を容認する一方で、月間機関誌『コメンタリー』に、夫妻は「本当の」ユダヤ人ではないという社説を掲載した。
 国内外の左翼とつながっていると見られることを恐れた主流ユダヤ人組織は、反ナチだったドイツ社会民主党との協力にも反対し、ドイツ製品の不買運動や元ナチ党員の合衆国入国に反対する大衆デモへの協力までも拒んだ。その一方で、プロテスタント牧師で反ナチ運動の指導者だったマルティン・ニーメラーは、ナチ強制収容所で8年を過ごし、当時は反共産主義運動に参加していたにもかかわらず、訪米中にアメリカ・ユダヤの指導者たちから誹謗中傷された。ユダヤのエリートたちは、自分たちの反共姿勢の信用度を上げようと躍起になり、ついには「共産主義と闘う全米会議」のような右翼過激派組織に参加して財政的に支えるようになり、ナチ親衛隊の元隊員の入国も見てみぬふりをしたのである。

【『ホロコースト産業 同胞の苦しみを「売り物」にするユダヤ人エリートたち』ノーマン・G・フィンケルスタイン: 立木勝訳(三交社、2004年)】

 訳文が拙く、途中でわかりにくくなっているが、米国内で極右の立場になることで保身を図ったのだろう。「だが、なぜ?」という疑問が湧いてくる。そこまで、ユダヤ・エリート達が臆病にならざるを得なかった理由は何なのか?

 ただ、共産主義者という新たなスケープゴートが狩りの対象となったことで、ナチスによる迫害の記憶がまざまざと甦ったことは容易に想像がつく。人類の歴史はいつだって犠牲者を必要としてきた。暴力という本能をいまだにコントロールできないところを踏まえると、人類の宿命と言っていいのかも知れない。

 ユダヤ人にとっては、率先して赤狩りに取り組むことが、自分達にとっての保険だったのだろう。ただし、このことがユダヤ人組織に限られたことかどうかは確認する必要がある。狂った風が吹けば、身を屈めてじっとしているか、風に吹かれてよろけるのが人の常。殊更、非難すべきこととは思えない。

 米国のユダヤ・エリートが大博打を打つのは、もう少し後のことである。

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