2冊読了。
6、7冊目『
暗殺者(上)』『
暗殺者(下)』ロバート・ラドラム:山本光伸訳(新潮文庫、1983年)/「こんなものか」と思った。やはり歳月が目を肥やすのか。最初に読んだ時からもう30年以上が経つ。それから4回か5回読んでいる。映画の『ボーン・シリーズ』3部作も3回ほど見ている。ま、そうは言っても下巻は風呂で読み終え、気がついたら3時間半も入っていたことになる。国際謀略ものといえば、ラドラムとデイヴィッド・マレルの二大巨匠が直ぐ思い浮かぶが、その後に続く作家が見当たらない。クライブ・カッスラーはスケールが劣るし、スティーヴン・ハンターは肌が合わない。本作は舞台回しと細部は実にいいのだが、人物造形が平板で陰影に欠ける。せめてビリエール将軍ほどの個性を主人公にも施してもらいたかった。「その物腰はいかにも軍人然としていて、彼が動くにつれて周囲の空間にひび割れが生じ、見えない壁が次々にくずれ落ちていくかのようだった」(下巻、104頁)。CIAの古参であるアレクサンダー・コンクリンが米国の病理を体現している。彼はジェーソン・ボーンと直接会い、記憶喪失だと聞かされても耳を貸さなかった。それどころか更にボーンの命を奪おうと躍起になった。映画『ボーン・アイデンティティ』は翻案作品ともいうべき代物で、映画作品としては駄作である。しかし本書の雰囲気を実によく表現している。大体、カルロス(イリッチ・ラミレス・サンチェス)が出てこない上、ボーンの恋人であるマリーの背景も全く違う。そしてやたらとカーチェイスが続く品のない作風だ。
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