古本屋の殴り書き(旧)
「ただ独り、不確かな道を歩め」エリアス・カネッティ
2015-08-24
作り物の世界/『それでも夜は明ける』スティーヴ・マックイーン監督
懐かしい名前と思いきや、まったくの別人であった。英語の綴りは一緒だが日本語名は俳優を「スティーブ」と表記する。19世紀半ばにあった実話で原作は本人による手記。自由黒人であったソロモン・ノーサップが白人に騙され奴隷となる。英語タイトルは原作と同じで『Twelve Years a Slave』(12年間、奴隷として)。尚、余談ではあるが奴隷を「slave」というのは白人奴隷であった
スラブ人
に由来する。スティーヴ・マックイーン監督は黒人である。彼はソロモン・ノーサップの体験を知って衝撃を受けた。
狭い小屋の中で奴隷たちが雑魚寝をしている。隣で寝ていた女が主人公に口づけをし、手をつかんで股間に導く。が、男は拒んだ。冒頭の場面だが意味が理解できない。最初の違和感が別の違和感につながり、主人公が背伸びした状態で木に吊るされているシーンで私はDVDを止めた。前代未聞のことである。奴隷たちにリアリティを感じない。どう見ても作り物の世界である。
「除名されたのはCityArtの編集者アルモンド・ホワイト。彼はマックィーン監督が受賞スピーチをしている間、『お前なんかしがないドアマンか清掃作業員だ。ファック・ユー、俺のケツにキスでもしてろ』と叫んだという」(
シネマトゥデイ
)。アメリカの人種差別は根深い。私としては白禍論を唱えざるを得ない。世界を混乱に導いてきたのは白人とキリスト教だ。
マニフェスト・デスティニー
に取り憑かれた彼らは自分の姿を省みることがない。
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