2016-01-16
ジュリオ・トノーニ、マルチェッロ・マッスィミーニ、ウッドハウス暎子
3冊読了。
6、7冊目『日露戦争を演出した男 モリソン(上)』『日露戦争を演出した男 モリソン(下)』ウッドハウス暎子(東洋経済新報社、1988年/新潮文庫、2004年)/『北京燃ゆ 義和団事変とモリソン』同様、修士論文が元になっているので読み物としては面白くない。しかしながら資料的価値が極めて高く、日本近代史なかんずく日露戦争を知るためには外せない一冊だ。ジョージ・アーネスト・モリソンはロンドン・タイムズの記者でオーストラリア生まれ。彼の日記と手紙を中心に日露戦争の経緯を描く。七つの海を制覇した大英帝国はボーア戦争で国力に翳(かげ)りを見せ始めた。ドイツ、ロシア、アメリカの力が英国に迫ろうとする。イギリスは極東で南下しようとするロシアを阻むだけの余裕がなかった。自国の安全保障上の必要から日英同盟を締結するに至る。イギリスの「栄光ある孤立」は幕を下ろす。モリソンはタイムズ紙を通して親日反露報道を繰り返し、日露を戦争させるべく誘導する。ただし現在のアメリカを牛耳るユダヤ・メディアのような嘘は感じられない。国家から兵士に至るまでロシアの不道徳ぶりは凄まじかった。国境線が長いこととも関係しているように思われる。小村寿太郎外相が臨んだポーツマス条約も熾烈な外交戦であったことがよく理解できた。イギリスのボーア戦争とアメリカのイラク戦争が重なる。強大国が衰える時、戦乱を避けることはできない。世界の覇権はまたしても東アジアで戦火を交えることだろう。文庫解説は櫻井よしこ。ついこの間読んだ菅沼本でも紹介されていた。
8冊目『意識はいつ生まれるのか 脳の謎に挑む統合情報理論』ジュリオ・トノーニ、マルチェッロ・マッスィミーニ:花本知子〈はなもと・ともこ〉訳(亜紀書房、2015年)/『ユーザーイリュージョン』の後に読むのがいいだろう。思考実験の鋭さは欠くが、実際の実験の結果が凄い。経頭蓋磁気刺激法(TMS)で「ほぼ」意識の在り処(か)を突き止めたと見てよい。中だるみはあるものの最終章は一気読みだ。「高度な情報の統合性」は五蘊仮和合(ごうんけわごう)そのままである。生命もまた「高度な細胞の統合性」と考えることができそうだ。
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