2016-08-13

鳥居民、養老孟司、マハーシ長老、藤本靖、藤平光一、林えいだい、山本周五郎、他


 7冊挫折、8冊読了。

絶望と歓喜「親鸞」 仏教の思想10』増谷文雄〈ますたに・ふみお〉、梅原猛(角川書店、1970年/角川文庫ソフィア、1996年)

古仏のまねび「道元」 仏教の思想11』高崎直道、梅原猛(角川書店、1969年/角川文庫ソフィア、1997年)

永遠のいのち「日蓮」 仏教の思想12』紀野一義〈きの・かずよし〉、梅原猛(角川書店、1969年/角川文庫ソフィア、1997年)/以上でシリーズ全巻終了。初期仏教から鎌倉仏教までを捉える試みはよいと思うが断片的で体系を欠く。梅原の趣味的要素が強いが、1970年前後という時期を思えば、仕事としては評価できる。ただしシリーズ中盤以降の失速は否めない。

友達の数は何人? ダンバー数とつながりの進化心理学』ロビン・ダンバー:藤井留美訳(インターシフト、2011年)/期待外れ。軽妙だが洒脱ではない文体で好き嫌いが分かれる。

呼吸で心を整える』倉橋竜哉(フォレスト2545新書、2016年)/パッとしない。

呼吸法の極意 ゆっくり吐くこと』成瀬雅春(BABジャパン、2005年)/「プラーナ粒子を見る」のところでやめる。神智学会の教義が出てきてびっくりした。

宇宙論大全 相対性理論から、ビッグバン、インフレーション、マルチバースへ』ジョン・D・バロウ:林一〈はやし・はじめ〉、林大〈はやし・まさる〉訳(青土社、2013年)/100ページほど残してやめた。良書。短いページ数で様々な宇宙論を紹介している。インフレーション・モデルで佐藤勝彦の名前が出てこないのは「やはり」といった印象である。林一・大は親子なのだろうか? 文章が時々おかしくなっている。

 115冊目『松風の門』山本周五郎(新潮文庫、1973年)/表題作と「鼓くらべ」が忘れ難い。それにしてもバラエティに富んだ短篇集である。実験的な作品もある。丸山健二に足りないものが全てあるような気がする。

 116冊目『証言 台湾高砂義勇隊』林えいだい(草風館、1998年)/良書。高砂隊ものでは一番おすすめ。なんと霧社事件の証言も多い。台湾原住民は理蕃政策・皇民化教育で天皇陛下に忠誠を尽くすようになる。高砂義勇隊は正式な部隊ではなく位も軍属であったが、ジャングル戦で縦横無尽に活躍した。彼らがいなければもっと多くの人々が殺戮されたことだろう。まず証言者の名前が胸を打つ。台湾名・日本名・中国名の三つが記載されているのだ。わずか数十年のうちに翻弄されてきた台湾の運命を思わずにはいられなかった。台湾原住民は部族(社)によって言葉が異なるため、日本語は戦後も使われていた。死ぬまで軍歌を口ずさみ、日本の演歌を愛した人々が多かったという。日本で死んだ精神は台湾に生き残った。

 117冊目『氣の呼吸法 全身に酸素を送り治癒力を高める』藤平光一〈とうへい・こういち〉(幻冬舎、2005年/幻冬舎文庫、2008年)/文章がいい。実績も多い。王貞治・高見山・千代の富士といったスポーツ選手が藤平の指導を受けている。呼吸法自体は実に単純で、単純ゆえの難しさがある。呼吸法の概念がよく理解できる。

 118冊目『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本 目・耳・口・鼻の使い方を変えるだけで身体の芯から楽になる!』藤本靖(さくら舎、2012年/講談社+α文庫、2016年)/良書。著者は気づいていないようだがヴィパッサナー瞑想に近い。読むだけだとピンと来ないが実際にやってみるとその効果に驚かされる。耳を引っ張るマッサージもよい。

 119冊目『ミャンマーの瞑想 ウィパッサナー観法』マハーシ長老:ウ・ウィジャナンダー大僧正訳(国際語学社、1995年/アルマット新装版、2011年)/名(みょう)と色(しき)の関係が初めてわかった。一度挫けたのだが意を決して一気に読んだ。少しずつ実践しているのだが直ぐに飽きてしまう(笑)。悟りの段階がきちんと示されていて目標を設定しやすい。気になったのは2点。一つは集中と書いてあるが、「注意」とすべきだろう。もう一つは「――したい」という念はダメだとスマナサーラ長老が書いている。主観ではなく客観で捉えよ、と。

 120冊目『ブッダの集中力 役立つ初期仏教法話9』アルボムッレ・スマナサーラ(サンガ新書、2008年)/集中とはサマタ瞑想のことである。念仏(ブッダの姿を念じる)という発想には疑問が残る。

 121冊目『養老孟司特別講義 手入れという思想』養老孟司(新潮文庫、2013年/白日社、2002年『手入れ文化と日本』改題)/手入れとは里山理論である。子育て・自然が講演の共通テーマであるが、情報論・宗教論を盛り込んでいるところが凄い。

 122冊目『日米開戦の謎』鳥居民〈とりい・たみ〉(草思社、1992年/草思社文庫、2015年)/評価の難しい本だ。それ相応の知識がなければ鵜呑みにせざるを得ない。「だろう」「はずだ」「違いない」のオンパレードである。ただし、その想像は事実から遠く離れたものではない。鳥居は市井の研究家のようだ。膨大な資料を読み込んで果敢に挑む姿勢には好感が持てる。永野修身〈ながの・おさみ〉を知りたかったのだが、それほど詳しくは書かれていない。徳富蘇峰〈とくとみ・そほう〉が世論に与えた影響の大なるも初めて知った。陸軍と海軍の分裂状態も詳しく描かれている。

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