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2018-07-26

科学革命を推進し、現代文明を支えるガラス/『世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史』スティーブン・ジョンソン


『人類が知っていることすべての短い歴史』ビル・ブライソン
『人類を変えた素晴らしき10の材料 その内なる宇宙を探険する』マーク・ミーオドヴニク

 ・科学革命を推進し、現代文明を支えるガラス

必読書リスト その三

 これはグーテンベルクの発明がたどった不思議に並行する道筋である。印刷が長年、科学革命と結びつけられている理由はいくつかある。ガリレオのような異端者とされる人たちの小論文や専門書が、教会の批判にとらわれることなくアイデアを広めることができ、最終的にその権威を弱体化させた。同時に、グーテンベルクの聖書から数十年を経て発展した引用と参照のシステムは、科学的手法を応用するにあたって不可欠のツールになった。しかしグーテンベルクの発明は、別のあまり知られていないところでも、科学の前進を促している。すなわち、レンズ設計の可能性、ガラスそのものの可能性を広げたのだ。私たちは二酸化ケイ素の特異な物理的特性を、自分の目ですでに見えていたものを見るのに初めて利用しただけでなく、持って生まれた人間の視力の限界を超越してものを見ることができるようになった。

【『世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史』スティーブン・ジョンソン:大田直子訳(朝日新聞出版、2016年)以下同】

 これは気がつかなかった! 印刷技術には誰もが注目するがガラス(二酸化ケイ素)が科学革命の推進力であったとは。眼鏡の発明が1284年頃のイタリアとされているので、ルネサンス(14世紀イタリア発)の導火線となった可能性も高そうだ。

 現在、あなたが住んでいる部屋を見回せば、二酸化ケイ素があるからこそ存在するもの、もっと言えばケイ素という元素そのものに依存しているものが、軽く100個は手の届くところにあるだろう。窓や天井にはまっているガラス、カメラつきスマホのレンズ、コンピューターの画面、マイクロチップやデジタルクロックが入っているものすべて。1万年前の日常生活の化学に登場する主役を選ぶとしたら、上位の序列は現在と同じになるだろう。私たちは炭素、水素、酸素のヘビーユーザーである。しかしケイ素はクレジットタイトルにさえ出てこないかもしれない。ケイ素は地球上にふんだんにある――地殻の90パーセント以上がケイ素化合物でできている――が、地球上の生命体の自然な代謝にはほとんどなんの役割も果たさない。私たちの体は炭素に依存しているし、私たちのテクノロジーの多く(化石燃料やプラスチック)も同じ依存関係にある。しかしケイ素の必要性は現代になってから強まったものだ。

 細いガラスの糸を作る実験が繰り返され、チャールズ・ヴァーノン・ボーイズが19世紀末に約27メートルのガラス繊維を作り出した。驚くべきはその繊維の強靭さであった。次の世紀の半ばにはガラス繊維が撚(よ)り合わされてグラスファイバーとなる。奇蹟の新素材は「家の断熱材、衣類、サーフボード、クルーザー、ヘルメット、最新のコンピューターのチップを接続する回路基板、エアバスの主要ジェット機」に使われている。そしてインターネットをつなぐ光ファイバーもまたガラス繊維でできている。「ワールド・ワイド・ウェブはガラスの糸で織り上げられているのだ」。

「ガラス」「冷たさ」「音」「清潔」「時間」「光」の六つに焦点を当て、全く新たな角度から文明を切り取ってみせる手並みが鮮やかである。こうした良書を読むと、白人の説明能力の高さにたじろいでしまう。私が知る限りではポピュラーサイエンスの分野だと日本人に勝ち目はない。

2012-05-26

米国で疲れも恐怖も感じない兵士を作るプロジェクトが進行中


 戦場で一切疲れも恐怖も感じない兵士。これは近未来のロボット兵士の話ではない。現在、米国防総省の資金提供のもと、生身の人間で実際に行なわれているニューロ・サイエンス(神経科学)の研究だ。「将来、人間の身体と機械が物理的に結合する可能性がある」。そう語る米大統領の生命倫理委員会上級スタッフ、ジョナサン・D・モレノ博士が、近未来兵器「操作される脳」の実態を明らかにする。

 恐怖心のない兵士を作るプロジェクトで、研究者が着目しているのが、心臓病の治療薬として用いられるβ(ベータ)ブロッカー(交感神経β受容体遮断薬)だ。この薬は交感神経のアドレナリン受容体のうち、β受容体のみに遮断作用をするものだが、この薬を服用していると感情が平坦になることが分かっている。そこで暴行被害などで精神的外傷ストレス障害(PTSD)を負った人に、心理療法やカウンセリングと共にβブロッカーを与えることが行なわれるようになった。

 βブロッカーには情緒的な激しい感情の記憶を遮断する作用があるようだ。否定する科学者も一部にいるが、そのうち改良が進めば戦場の兵士に有効になると多くの科学者が思っている。

 民間の科学者の中には、米国防総省国防高等研究計画局(DARPA=ダーパ)から資金提供を受けるこれらの研究は問題だと指摘する者がいる。マインドコントロールの実験台になっていると批判する声もある。しかし、例えば脳と機械を融合させるブレイン・マシン・インターフェースの研究は、義肢などの補綴器具の開発に寄与するはずだし、睡眠不足防止プログラムの研究は、眠りたい時だけに眠りたいという人の需要を掘り起こすだろう。さらにアルツハイマー病などの脳疾患に対する理解が進み、画期的な治療法が見つかる可能性がある。

 その一方で兵士の感情をコントロールするといった研究を突き詰めていけば、人間であるとはどういうことかという倫理的な命題に突き当たることは確かだ。こうした問題については、神経科学者、当局関係者、一般市民の代表などが、慎重かつ冷静に議論していく必要があるだろう。

『SAPIO』2012年4月25日号

 フーム、究極のポジティブシンキングというわけか。人間のオズマ化が進行中。大多数の人々は「操作される対象」と化す。

 小田嶋隆の言葉を思い出さずにはいられない。「我々ゲーマーは、戦争みたいな、洗練度の低い、質の悪いゲームにはつき合わない。せいぜい高見の見物を決め込んで、嘲笑するだけだ」(『パソコンゲーマーは眠らない』)。

 国家という権力システムが国民を労働者、兵士、ロボットに仕立てるのであれば、この世界に「社会」などというものは存在しない。テクノロジーの進歩はことごとく「人間を手段化」する方向へ向かうのもおかしな話だ。むしろ権力を解体する方向へとシフトすべきだろう。

 権力は富の集中となって具体的な姿を現す。使い切ることもできない資産を有する彼らが、世界中に貧困をばらまいているのだ。発展途上国から搾取し続けているのはアメリカ、イギリス、フランスであり、こうした国々に不幸な世界を築いた真犯人がいることは疑問の余地がない。

 彼らの手からテクノロジーを奪い返す必要がある。さもなければ、生まれたばかりの赤ん坊にチップを埋め込まれるような時代がすぐそこまで来ている。

マイクロチップ
マイクロチップを脳に埋め込んで人をコントロールする。
脳に埋め込んだマイクロチップでロボットアームを操作する猿
ロボットが人間の代わりに売春すると家庭円満になる!?
レイ・カーツワイルが描く衝撃的な未来図/『ポスト・ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるとき』レイ・カーツワイル

マインド・ウォーズ 操作される脳

2011-08-13

皮膚に貼るだけ、医療もスパイ活動も変える超薄型電子パッチ

ees

 タトゥー感覚で皮膚に貼るだけで、医療からコンピューターゲームまで、果てはスパイ活動さえも変革してしまうマイクロ電子技術を開発したと、米、中、シンガポールの国際研究チームが11日の米科学誌サイエンス(Science)に発表した。

 厚さ50ミクロン未満、髪の毛1本よりも薄いパッチ状の「表皮電子装置(epidermal electronic system、EES)」は、皮膚と同じくらい柔らかく、重さはゼロに近い。皮膚に貼ればワイヤレスでその人の脳や心臓、筋組織の活動を監視でき、従来のような分厚い電極を装着しなくて済む。のどに貼れば、音声作動式のコンピューターゲームを90%以上の精度で操作できるという。

 のりも粘着性物質も使っていないが、分子と分子を結合させるファンデルワールス力を利用しているため、長時間にわたって皮膚に張り付けておくことが可能。使用電力も非常に少なく、極小の太陽電池を搭載するか周辺を飛び交う電磁波を拾うことで作動するという。

 開発に携わった米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(University of Illinois at Urbana-Champaign)のジョン・ロジャース(John Rogers)教授(材料工学)は、「電子工学と生物学の区別をうやむやにする技術だ」と語った。

 喉頭疾患患者の発話を補助したり、内密な話をしたい時に声を出さずに交信するための装置として使う可能性も秘めている。睡眠時無呼吸症候群の患者や新生児医療が必要な赤ちゃんへの使用、けが・やけどを治療する電子ばんそうこうの役割も期待できるかもしれない。

「最終的には、皮膚に貼っても感知できないほど皮膚と一体化した装置を開発したい」と、ロジャース教授は話している。

AFP 2011-08-12

 グレッグ・イーガンの世界が現実になりつつある。脳内に埋め込まれるのも時間の問題か。

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