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2014-10-12

血で綴られた一書/『生きる技法』安冨歩


『原発危機と「東大話法」 傍観者の論理・欺瞞の言語』安冨歩

 ・血で綴られた一書
 ・心理的虐待

『消えたい 虐待された人の生き方から知る心の幸せ』高橋和巳
『君あり、故に我あり 依存の宣言』サティシュ・クマール
『ザ・ワーク 人生を変える4つの質問』バイロン・ケイティ、スティーヴン・ミッチェル

虐待と知的障害&発達障害に関する書籍
必読書リスト その二

 しかし、私が受けてきた教育は学んだ学問の大半は、この簡単なことを隠蔽するように構成されていました。ですから、この簡単なことを見出すのが、とても大変だったのです。

【『生きる技法』安冨歩〈やすとみ・あゆむ〉(青灯社、2011年)以下同】

 昨年は同い年ということで1位にした佐村河内守〈さむらごうち・まもる〉にまんまと騙されてしまったわけだが、何と安冨も同い年であった。そして今年の1位はよほどのことがない限り本書で決まりだ。『原発危機と「東大話法」 傍観者の論理・欺瞞の言語』(明石書店、2012年)の柔らかな視点と剛直な意志の秘密がわかった。

 タイトルの「技法」はテクニックのことではない。エーリッヒ・フロム著『愛するということ』の原題"The Art of Loving"に由来している。つまり「生の流儀」「生きる術(すべ)」という意味合いだ。

 サティシュ・クマールが説く依存は調和を志向しているが、安冨がいう依存はストレートなものだ。クマール本は綺羅星の如き登場人物の多彩さで読ませるが、私はさほど思想の深さを感じなかった。これに対して安冨の精神性の深さは思想や哲学を超えて規範や道に近い性質をはらんでいる。もちろん著者はそんなことは一言も書いていない。その謙虚さこそが本物の証拠である。

【命題1-1】★自立とは、多くの人に依存することである

 このトリッキーな命題から本書は始まる。人々の心に根強く巣食う執着を揺さぶる言葉だ。命題は以下のように次々と深められる。

【命題1-2】★依存する相手が増えるとき、人はより自立する

【命題1-3】★依存する相手が減るとき、人はより従属する

【命題1-4】★従属とは依存できないことだ

【命題1-5】★助けてください、と言えたとき、あなたは自立している

 ここで安冨は自分の人生を振り返り、親や配偶者から精神的な虐待を受けてきたことを明けっ広げに述べる。そこから文字が立ち上がってくる。魂の遍歴と精神の彷徨(ほうこう)を経て、いわば血で綴られた一書であることに気づかされるためだ。安冨の柔らかな精神は自分自身と対峙(たいじ)することで培われたのだろう。

 私はたぶん安冨と正反対の性格だ。そもそもハラスメントの経験がない。若い時分から態度がでかいし、何かあったらいつでも実力行使をする準備ができている。そんな私が読んでも心が打たれた。否、「撃たれた」というべきかもしれない。なぜなら、自分自身と向き合うという厳しさにおいて私は安冨の足元にも及ばないからだ。

 朱序弼〈シュ・ジョヒツ〉との出会いを通して、この命題は見事に証明される。そしてハラスメントを拒絶した安冨の人間関係は一変した。価値観とそれに伴う行動が変われば世界を変えることができるのだ。

 もう一つだけ紹介しよう。

 友だちを作るうえで、何よりも大切な原則があります。それは、

  【命題2】☆誰とでも仲良くしてはいけない

ということです。これが友だちづくりの大原則です。誰とでも仲良くしようとすれば、友だちを作るのはほぼ絶望的です。なぜかというと、世の中には、押し付けをしてくる人がたくさんいるからです。誰とでも仲良くするということは、こういった押し付けをしてくる人とも、ちゃんと付き合うことを意味します。

 私は幼い頃からやたらと悪に対して敏感なところがあり、知らず知らずのうちにこれを実践してきた。たぶん父親の影響が大きかったのだろう。30代を過ぎると瞬時に人を見分けられるようになった。日常生活において善を求め悪を斥(しりぞ)ける修練を化せば、それほど難しいことではない。抑圧されるのは人のよい人物に決まっている。結果的にその「人のよさ」に付け込まれるわけだ。拒む勇気、逃げる勇気がなければハラスメントの度合いは限りなく深まる。何となく心が暗くなったり、重くなったりする相手とは付き合うべきではない。その理由を思索し、見極め、自分で決断を下すことだ。慣れてくると数秒で出来るようになる。

 人生や生活で何らかの抑圧を感じている人は必ず読むこと。アダルトチルドレンやハラスメント被害者は本書を書写することで精神科の名医と同じ効果を得ることができるだろう。いかなる宗教者よりも安冨は真摯に自分と向かい合っている。

 一つだけケチをつけておくと(笑)、ガンディーや親鸞はいただけない。ガンディーは国粋主義者であり、カースト制度の擁護者でもあった。アンベードカルを知ればガンディーを評価することはできない(『アンベードカルの生涯』ダナンジャイ・キール)。鎌倉仏教についてもブッダから懸け離れた距離を思えば再評価せざるを得ないだろう。

 私からは、『ザ・ワーク 人生を変える4つの質問』バイロン・ケイティ、スティーヴン・ミッチェル、『子供たちとの対話 考えてごらん』J・クリシュナムルティ、『ブッダのことば スッタニパータ』中村元訳を薦めておこう。

2014-09-16

岩本沙弓、安冨歩


 2冊読了。

 62冊目『円高円安でわかる世界のお金の大原則』岩本沙弓〈いわもと・さゆみ〉(翔泳社、2009年)/迷うことなく必読書に指定。2冊買って1冊友人にプレゼントしたいくらいだ。これに優る為替入門書はない。ただし勘違いしないで欲しいのだが外国為替証拠金取引(FX)入門ではない。岩本は既に休筆宣言をしているが、英気を養って一日も早い執筆再開を願うものである。

 63冊目『生きる技法』安冨歩〈やすとみ・あゆむ〉(青灯社、2011年)/衝撃の一書だ。昨年は同い年ということで1位にした佐村河内守にまんまと騙されてしまったわけだが、何と安冨も同い年であった。そして本年の1位は本書となりそうだ。著者は東大教授という肩書をかなぐり捨てて、自分自身の魂の遍歴と精神の彷徨を綴る。『原発危機と「東大話法」』の柔らかな眼差しは自分自身と対峙することで手に入れたものだった。人生や生活で何らかの抑圧を感じている人は必ず読むこと。アダルトチルドレンやハラスメント被害者は本書を書写することで精神科の名医と同じ効果を得ることができるだろう。いかなる宗教者よりも安冨は真摯に自分と向かい合っている。その姿勢に頭を垂れる。なるべく早めに書評をアップする。

2013-12-31

2013年に読んだ本ランキング


2012年に読んだ本ランキング
2013年に読んだ本

 ウーム、こうして一覧表にしておかなければ何ひとつ思い出すことができない。加齢恐るべし。これが50歳の現実だ。ランキングは日記ならぬ年記みたいなものだ。自分の心の変化がまざまざと甦(よみがえ)る。ニコラス・ジャクソン著『タックスヘイブンの闇  世界の富は盗まれている!』を書き忘れていたので、今年読了した本は66冊。

 まずはシングルヒット部門から。

  『人生がときめく片づけの魔法』近藤麻理恵
  『写真集 野口健が見た世界 INTO the WORLD』野口健
  『日本文化の歴史』尾藤正英
  『本当の戦争 すべての人が戦争について知っておくべき437の事柄』クリス・ヘッジズ
  『心は孤独な数学者』藤原正彦
  『人間の叡智』佐藤優

 再読した作品は順位から外す。

  『なぜ投資のプロはサルに負けるのか? あるいは、お金持ちになれるたったひとつのクールなやり方』藤沢数希
  『金持ち父さん貧乏父さん アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』ロバート・キヨサキ、シャロン・レクター
  『自己の変容 クリシュナムルティ対話録』クリシュナムルティ

 次に仏教関連。『出家の覚悟』は読了していないが、スマナサーラ長老の正体を暴いてくれたので挙げておく。

  『出家の覚悟 日本を救う仏教からのアプローチ』アルボムッレ・スマナサーラ、南直哉
  『つぎはぎ仏教入門』呉智英
  『知的唯仏論』宮崎哲弥、呉智英

 これまた未読本。何とはなしに日蓮と道元の関係性を思った。歯が立たないのは飽くまでも私の脳味噌の問題だ。

  『宮廷人と異端者 ライプニッツとスピノザ、そして近代における神』マシュー・スチュアート

 以下、ミステリ。外れなし。

  『寒い国から帰ってきたスパイ』ジョン・ル・カレ
  『催眠』ラーシュ・ケプレル
  『エージェント6』トム・ロブ・スミス

 格闘技ファン必読の評伝。ただし内容はド演歌の世界だ。

  『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』増田俊也

 宗教全般。

  『ドアの向こうのカルト 九歳から三五歳まで過ごしたエホバの証人の記録』佐藤典雅
  『宗教の秘密 世界を意のままに操るカラクリの正体』苫米地英人

 マネー本は良書が多かった。興味のある人は昇順で読めばいい。

  『新・マネー敗戦 ドル暴落後の日本』岩本沙弓
  『為替占領 もうひとつの8.15 変動相場制に仕掛らけれたシステム』岩本沙弓
  『マネーロンダリング入門 国際金融詐欺からテロ資金まで』橘玲
  『タックス・ヘイブン 逃げていく税金』志賀櫻
  『タックスヘイブンの闇 世界の富は盗まれている!』ニコラス・ジャクソン
  『サヨナラ!操作された「お金と民主主義」 なるほど!「マネーの構造」がよーく分かった』天野統康
  『マネーの正体 金融資産を守るためにわれわれが知っておくべきこと』吉田繁治
  『紙の約束 マネー、債務、新世界秩序』フィリップ・コガン
9位『〈借金人間〉製造工場 “負債"の政治経済学』マウリツィオ・ラッツァラート

 新しい知識として。

  『アフォーダンス 新しい認知の理論』佐々木正人

 政治関連。増税に向かう今、高橋本は必読のこと。

  『民主主義の未来 リベラリズムか独裁か拝金主義か』ファリード・ザカリア
  『官愚の国 なぜ日本では、政治家が官僚に屈するのか』高橋洋一
  『さらば財務省! 政権交代を嗤う官僚たちとの訣別』高橋洋一
10位『危機の構造 日本社会崩壊のモデル』小室直樹

 宮城谷昌光。

  『青雲はるかに』(上下)宮城谷昌光
  『太公望』(全3冊)宮城谷昌光

 ディストピアとオカルト。

  『科学とオカルト』池田清彦
  『われら』ザミャーチン
8位『すばらしい新世界』オルダス・ハクスリー

 科学関連。まあ毎年毎年驚くことばかりである。

3位『そして世界に不確定性がもたらされた ハイゼンベルクの物理学革命』デイヴィッド・リンドリー
  『量子が変える情報の宇宙』ハンス・クリスチャン・フォン=バイヤー
7位『インフォメーション 情報技術の人類史』ジェイムズ・グリック
2位『宇宙をプログラムする宇宙 いかにして「計算する宇宙」は複雑な世界を創ったか?』セス・ロイド

 宗教原始と宇宙創世の世界。ブライアン・グリーンの下巻は挫折。必ず再チャレンジする。

5位『神々の沈黙 意識の誕生と文明の興亡』ジュリアン・ジェインズ
6位『宇宙を織りなすもの 時間と空間の正体』ブライアン・グリーン

 初期仏教関連。

  『原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一話』アルボムッレ・スマナサーラ
  『原訳「スッタ・ニパータ」蛇の章』アルボムッレ・スマナサーラ
4位『シッダルタ』ヘルマン・ヘッセ

 やはり同い年ということもあって佐村河内守を1位としておく。

1位『交響曲第一番』佐村河内守

2013-08-03

佐村河内守、震災犠牲者への追悼ソナタが完成


 作曲家・佐村河内守氏が、東日本大震災の犠牲者へ追悼の思いを込めて作曲した新作「ピ­アノ・ソナタ第2番」完成発表会を開いた。佐村河内氏は、30代半ばで聴力を失い、絶­対音感を頼りに創作を続ける作曲家。震災後、自身の「交響曲第1番 HIROSHIMA」が被災地で"希望のシンフォニー"と呼ばれていることを知り、音­楽家として力になりたいと考えていたところ、母を津波で失った少女との出会いがきっか­けとなり「ピアノのためのレクイエム イ短調」を作曲。その作品をベースに、すべての被災者にささげる長大なピアノソナタを­完成させたという。韓国のピアニスト、ソン・ヨルムを招き、曲の一部を披露した佐村河­内氏は、「通常のレクイエムとは逆に、亡くなった人の苦しみ、悲しみ、怒りを聞いても­らいたいと思った」と、曲に込めた思いを語った。


佐村河内守:魂の旋律~HIROSHIMA×レクイエム [DVD]

魂の旋律 ~音を失った作曲家~
NHKオンデマンド
佐村河内守

文庫化『交響曲第一番 闇の中の小さな光』佐村河内守〈さむらごうち・まもる〉(幻冬舎文庫、2013年)

交響曲第一番 闇の中の小さな光 (幻冬舎文庫)

「NHKスペシャル」、TBS「金スマ」で大反響! 日本中に衝撃を巻き起こす全聾の天才作曲家の感動の自伝。

 被爆二世の作曲家である著者は、すべてをなげうって音楽のためだけに生きてきた。35歳のとき、両耳の聴力をすべて失うという悲劇が彼を襲う。絶望と虚無の淵に沈む彼を立ち直らせたのは、目の不自由なある少女との運命の出会いだった。そして彼は、深い闇の中にいる者だけに見える"小さな光"に導かれ、奇跡の大シンフォニーをつくりあげた――。

佐村河内守

2013-02-07

佐村河内守


 1冊読了。

 8冊目『交響曲第一番』佐村河内守〈さむらごうち・まもる〉(講談社、2007年)



 今年の1位はこれで決まりだ。セス・ロイド著『宇宙をプログラムする宇宙』も凄いが、やはり感動の深さが違う。佐村河内は私と同い年である。つまり同じ時代を呼吸しながら生きてきたわけだ。その時自分は何をしていたか。瞬時に記憶が蘇る。幼少時の過酷なピアノ稽古、弟の交通事故死、単身上京しホームレスとなりながらも独学で音楽を修める。襲いくる偏頭痛と耳鳴り。そして遂に音は途絶えた。聾者(ろうしゃ)となっても耳鳴りは止まない。闇は果てしなく底が知れなかった。佐村河内は精神に変調を来たし、糞尿まみれとなりながらも作曲を手放さなかった。「交響曲第1番《HIROSHIMA》」完成直後に自殺未遂。そして「交響曲第2番」の完成後にも自殺未遂をしている。彼を救ったのは障害をもつ少女だった。奇蹟は184ページで訪れる。だが試練の波はその後も執拗に押し寄せた。修羅、という言葉では足りない。佐村河内は正真正銘の地獄を生き、今もそこにとどまっている。彼の絶対音感が生む「闇の音」が鳴り響く。死と隣り合わせの位置から生の歓びが噴き上げる。これはもうCDを買うしかあるまい。願わくは土田世紀に漫画化してもらいたい。

佐村河内守:交響曲第1番 HIROSHIMAシャコンヌ ~佐村河内守 弦楽作品集鬼武者

2013-01-08

佐村河内守作曲「交響曲第1番《HIROSHIMA》」


 何と、佐村河内守〈さむらごうち・まもる〉は全聾であった。私と同い年であるが凄まじい半生を歩んでいる。



佐村河内守:交響曲第1番 HIROSHIMA交響曲第一番

佐村河内守
ベートーヴェンの再来