2008-10-19

幼少期の歪んだ価値観が肉体を破壊するほどのストレスと化す/『身体が「ノー」と言うとき 抑圧された感情の代価』ガボール・マテ


『悲鳴をあげる身体』鷲田清一
『ことばが劈(ひら)かれるとき』竹内敏晴

 ・幼少期の歪んだ価値観が肉体を破壊するほどのストレスと化す
 ・ストレスにさらされて“闘争”も“逃走”もできなくなった人々
 ・ストレス依存
 ・急性ストレスと慢性ストレス
 ・心のふれあい

『生きぬく力 逆境と試練を乗り越えた勝利者たち』ジュリアス・シーガル
『身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法』べッセル・ヴァン・デア・コーク
『クレイジー・ライク・アメリカ 心の病はいかに輸出されたか』イーサン・ウォッターズ
『心と体を強くする! メガビタミン健康法』藤川徳美
『最強の栄養療法「オーソモレキュラー」入門』溝口徹
『食事で治す心の病 心・脳・栄養――新しい医学の潮流』大沢博
『オーソモレキュラー医学入門』エイブラハム・ホッファー、アンドリュー・W・ソウル
『ストレス、パニックを消す!最強の呼吸法 システマ・ブリージング』北川貴英
『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本 目・耳・口・鼻の使い方を変えるだけで身体の芯から楽になる!』藤本靖
『あなたはプラシーボ 思考を物質に変える』ジョー・ディスペンザ
『カシミールの非二元ヨーガ 聴くという技法』ビリー・ドイル
『瞬間ヒーリングの秘密 QE:純粋な気づきがもたらす驚異の癒し』フランク・キンズロー

虐待と知的障害&発達障害に関する書籍
必読書リスト その二

 珍しい名前なんでアジア人かと思いきや、カナダ人医師だった。「ストレス理論」の提唱者ハンス・セリエ博士の弟子でもある。

「2200円でソフトカバーはねーだろーよ」と思ったが、400ページあったので許そう。

 自己免疫疾患やALS、はたまた乳癌やアルツハイマー型痴呆症までが、ストレス由来の可能性があると指摘している。

 ハンス・セリエ博士がストレス学説を発表したのは、1936年(昭和11年)の『ネイチャー』誌上(「種々の有害作用から生ずる一症候群」)でのこと。そんなに古かったんだね。で、誤解している人が多いが、ストレスそのものは否定されるべき代物ではない。人間には「適度なストレス」が必要とされている。

 問題は負荷の掛かり方だ。例えば互いに好意を抱いている男女がいたとしよう。やがて、二人の間には愛情が芽生え、ムフフという関係になる。この時点でムフフは快感だ。時は移ろい、四季は巡る。ある時、女性の中に秘められていた性的嗜好が目を覚ます。女は鞭とローソクを用意して男を縛り上げたのだった。男が感じたのは痛みだけであった。とまあ、性的なコミュニケーションと暴力ですら、力の加減によるものなのだ。

 そもそも、産道を通る時だってストレスを感じたであろうし、我々は24時間地球に引っ張られているのである。自分の体重ですらストレスの要因となりかねない。ストレス解消のために食べる→体重が増える→膝関節と靴底に負荷が掛かる→またぞろ食べる、これがストレス性デブの無限スパイラルだ。数年後には地面の中に足がめり込んでいることだろう。

 メアリーのからだは、彼女の心ができなかったことを実行していたのではないだろうか? 子供のころは無理やり押しつけられ、大人になってからは進んで自分に課してきた執拗な要求――常に自分より他者を優先する生き方――を拒絶するということを。1993年、医学コラムニストとして初めて『グロー、アンド・メイル』紙に執筆した記事で、私はメアリーのケースを採りあげ、今ここに記したような見解を披露した。そしてこう記した。「ノーと言うことを学ぶ機会を与えられずにいると、ついには私たちのからだが、私たちの変わりにノーと唱えることになるだろう」。コラムには、ストレスが免疫系におよぼす悪影響に関する医学論文もいくつか引用しておいた。

【『身体が「ノー」と言うとき 抑圧された感情の代価』ガボール・マテ:伊藤はるみ訳(日本教文社、2005年)】

 価値観は選べない。なぜなら、生まれて来る時に親を選ぶことができないからだ。人は誰もが「正しくありたい」と望み、「正しくあろう」と努力する。ところが、そうした正義感が教条主義と化せばストレスとなってしまう。「大義のために死ね」ってことだ。

 ところが「正しい行為」が習慣化されていると、行動しない場合、更なるストレスに襲われる。こうなると背水の陣どころか、四方八方すべて海だ。がんじがらめの緊縛プレイ。縛り上げられたマゾは、動くだけでもロープが食い込み身体が痛む。

 このような人生を歩むことによって、「ノー」と言えなくなる。だが、負荷は掛かり続ける。そして、信号機が黄色になるように、ウルトラマンの胸のカラータイマーが点滅するように、肉体がシグナルを発する。これが病気だ、というのが本書の骨子。

 かなり説得力がある。私なんぞは完全に鵜呑みにしている。本のページ数に限りがあるためと思われるが、反対意見を紹介すれば、更なる説得力が増すことだろう。女性で、その辺の下らないカウンセラーに金を払っている人がいれば、本書を読んだ方がましだ。自分を理解する一助となることだろう。

2008-10-06

真の民主政とは/『民主主義という錯覚 日本人の誤解を正そう』薬師院仁志


 ・民主的な議員選出法とは?
 ・統治形態は王政、貴族政、民主政
 ・現在の議会制民主主義の実態は貴族政
 ・真の民主政とは
 ・理性の開花が人間を神に近づけた
 ・選挙と民主政
 ・貴族政=ミシュランガイド、民主政=ザガットサーベイ

『悪の民主主義 民主主義原論』小室直樹

 これが答え――

 ここまで言えば、ルソーが「抽籤による選任法は民主政の本質にかなう」と考えた理由は、もはや説明するまでもあるまい。全有権者(母集団)の縮図は、無作為抽出(ランダムサンプリング)によって構成する以外にはないのである。社会調査の常識が教えるとおり、標本抽出(サンプリング)は、あくまでも無作為(ランダム)でなければならない。ルソーが「抽籤による選任法は民主政の本質にかなう」とする理由もまた、「誰が選ばれるかは一切人間の意志と無関係」だからというものである。
 全体(母集団)に忠実な縮図を構成するためには、一切の人為的要因を排除しなければならない。あえて極端な言い方をすれば、全員による民会には周囲から嫌われているタイプの人間も参加する以上、議会や会議もまた、そのような人間を実社会と同じ比率で参加させなければならないというわけである。だから、直接民主制をモデルにし、その論理を延長するならば、選挙のような人為的介入は、むしろ排除すべきものとならざるを得ない。

【『民主主義という錯覚 日本人の誤解を正そう』薬師院仁志〈やくしいん・ひとし〉(PHP研究所、2008年)】

 民主政=全民衆の縮図であるなら、ルソーは正しい。だが、ルソーは民主政を手放しで肯定したわけではなかった。ルソーが望んだのは貴族政だった。民主政が通用するのは、限定された狭い地域という考えだった。つまり、民主政=全員参加。

 とすれば、正しい民主政の選挙法は、裁判員制度みたいな感じになりそうだ。随分と突飛に思うが、それでも今よりはましな政治になることだろう。なぜなら、民衆は政治家ほど愚かではないからだ。

 数年前から考えているのだが、真面目な高校生を議員にした方が、この国はよくなると思う。間違いなくよくなるよ。

精神疾患は本当に脳の病気なのか?/『精神疾患は脳の病気か? 向精神薬の化学と虚構』エリオット・S・ヴァレンスタイン


 ・精神疾患は本当に脳の病気なのか?
 ・「ブードゥー教の呪いで人が死ぬ」ことは科学的に立証されている
 ・相関関係=因果関係ではない

『〈正常〉を救え 精神医学を混乱させるDSM-5への警告』アレン・フランセス
『クレイジー・ライク・アメリカ 心の病はいかに輸出されたか』イーサン・ウォッターズ
『コレステロール 嘘とプロパガンダ』ミッシェル・ド・ロルジュリル
『身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法』べッセル・ヴァン・デア・コーク
『うつ消しごはん タンパク質と鉄をたっぷり摂れば心と体はみるみる軽くなる!』藤川徳美
『心と体を強くする! メガビタミン健康法』藤川徳美
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス
『アルツハイマー病 真実と終焉 “認知症1150万人”時代の革命的治療プログラム』デール・ブレデセン
『最強の栄養療法「オーソモレキュラー」入門』溝口徹
『食事で治す心の病 心・脳・栄養――新しい医学の潮流』大沢博
『オーソモレキュラー医学入門』エイブラハム・ホッファー、アンドリュー・W・ソウル
『闇の脳科学 「完全な人間」をつくる』ローン・フランク

必読書リスト その二

「脳の病気」ってえのが、最近の学説だとばかり思い込んでたよ。それを検証したのが本書である。

 米国の精神医学界はその主張を、「母親に責任あり」から「脳に責任あり」に変えたと言われている。精神障害の原因が家庭における初期経験に根ざしていると考えられていたのはさほど昔のことではない。だが現在では、脳の化学的なバランスのくずれが原因であるという考え方が、専門家にも一般の人にも受け入れられるようになっている。現在の通説では、統合失調症の原因は神経伝達物質のドーパミンの過剰、うつ病はセロトニンの不足であり、不安障害やその他の精神障害は、他の神経伝達物質の異常によるものということになる。脳の神経化学的現象が、精神障害の原因であるだけではなく、個性や行動が人によって違うのはなぜかをも説明できると信じられている。20〜30年の間にこのような根本的な変化がいかに生じたのだろうか。得られている証拠とこの理論はつじつまが合うのか。生化学的な説明を行い、薬の投与による治療を推し進めることは、誰の利益になり、この利益はいかに推し進められているのか。精神障害を生化学的に説明し、あらゆる心理学・行動学的問題の対処に薬への依存度を増していくことの長期的に見た意味合いとは何か。本書はこれらの問題に答えようとするものである。

【『精神疾患は脳の病気か? 向精神薬の化学と虚構』エリオット・S・ヴァレンスタイン:功刀浩〈くぬぎ・ひろし〉監訳、中塚公子訳(みすず書房、2008年/新装版、2018年)】

 脳の化学的バランスの問題だとすれば、治療法は投薬ということになる。何を隠そう、この構図を描いたのは薬品メーカーだった。資本にものを言わせて、どのような手段を講じたか。追って紹介する予定である。

 しかしながらエリオット・S・ヴァレンスタインは、決して薬を否定しているわけではない。杜撰なデータを引き合いにして、多くの患者を惑わすなと主張しているのだ。

 精神疾患について書かれた本ではあるが、薬品メーカーによる広告・宣伝戦略が患者を食い物にしている様がよく理解できる。



『ガン食事療法全書』マックス・ゲルソン
『べてるの家の「当事者研究」』浦河べてるの家

2008-10-05

現在の議会制民主主義の実態は貴族政/『民主主義という錯覚 日本人の誤解を正そう』薬師院仁志


 ・民主的な議員選出法とは?
 ・統治形態は王政、貴族政、民主政
 ・現在の議会制民主主義の実態は貴族政
 ・真の民主政とは
 ・理性の開花が人間を神に近づけた
 ・選挙と民主政
 ・貴族政=ミシュランガイド、民主政=ザガットサーベイ

『悪の民主主義 民主主義原論』小室直樹

 前回、「意志決定者の数によって王政・貴族政・民主政が決まる」と学んだ。すると、現在の議会制民主主義が実は民主主義ではないことが発覚する。

 ともあれ、古代アテナイ型の分類法に従えば、今日の議会制民主主義は、本来の民主政ではなく、むしろ貴族政だということになってしまう。国権の最高機関にして唯一の立法機関である議会が、全員ではなく、ごく一部の者によって構成されているからである。
 とはいえ、現実問題として、大きな国では、全有権者が一堂に会して直接話し合うことなど不可能であろう。だからこそ、ルソーは、「一般に民主政は小国に適する」と指摘したのである。直接民主制、あるいは、少なくともそれに近い制度を実施しようとすれば、そうならざるを得ないだろう。

【『民主主義という錯覚 日本人の誤解を正そう』薬師院仁志〈やくしいん・ひとし〉(PHP研究所、2008年)】

 どう? 参ったでしょ? わたしゃ、1000回くらいタップしたよ(ウソ)。我々が民主主義だと錯覚していた議会制民主主義は、政策の意思決定には関与しておらず、議員を決めているだけだ。言われてみりゃ、確かにそうだよなー。

 で、なぜモンテスキューやルソーが「民主政治=くじ引き」と考えたのか? 答えは次回にて。

2008-10-04

統治形態は王政、貴族政、民主政/『民主主義という錯覚 日本人の誤解を正そう』薬師院仁志


 ・民主的な議員選出法とは?
 ・統治形態は王政、貴族政、民主政
 ・現在の議会制民主主義の実態は貴族政
 ・真の民主政とは
 ・理性の開花が人間を神に近づけた
 ・選挙と民主政
 ・貴族政=ミシュランガイド、民主政=ザガットサーベイ

『悪の民主主義 民主主義原論』小室直樹

 現代日本の我々が考える貴族政とは、「貴族としての身分」を保障された面々による政治ということになる。だが、これがそもそもの間違い。

 古代のアテナイでは、統治形態を三つに分類して考えるのが一般的であった。すなわち、王政、貴族政、民主政の三つである。この分類法自体は、それほど違和感を与えるものではあるまい。むしろ、問題は、この分類が何を第一の基準にしていたのかという点にある。
 その解答を極めて単純に言うならば、意志決定者の数だということになろう。具体的には、それが一人なのか、一部なのか、全員なのかということである。王政には一人の支配者がおり、貴族政には一部の支配者がいる。それに対して、全員参加の民主政が、「人民による支配」なのだというわけである。

【『民主主義という錯覚 日本人の誤解を正そう』薬師院仁志〈やくしいん・ひとし〉(PHP研究所、2008年)】

 言われなければ一生気づかないまま人生を終えていたことだろう。つまり、選挙制度と民主主義の間には何の関係もないってことだ。「へぇボタン」があったら、ぶっ壊れるまで叩いてやるところだ。多分、政治家の連中も気づいていないだろーね。あな、恐ろしや。



パレートの法則/『新版 人生を変える80対20の法則』リチャード・コッチ
最後の元老・西園寺公望/『幣原喜重郎とその時代』岡崎久彦
政党が藩閥から奪った権力を今度は軍に奪われてしまった/『重光・東郷とその時代』岡崎久彦