2015-05-01

日米経済戦争の宣戦布告/『この国の権力中枢を握る者は誰か』菅沼光弘


『日本はテロと戦えるか』アルベルト・フジモリ、菅沼光弘:2003年
『この国を支配/管理する者たち 諜報から見た闇の権力』中丸薫、菅沼光弘:2006年
『菅沼レポート・増補版 守るべき日本の国益』菅沼光弘:2009年
『この国のために今二人が絶対伝えたい本当のこと 闇の世界権力との最終バトル【北朝鮮編】』中丸薫、菅沼光弘:2010年
『日本最後のスパイからの遺言』菅沼光弘、須田慎一郎:2010年

 ・IAEA(国際原子力機関)はアメリカの下部組織
 ・日米経済戦争の宣戦布告
 ・田中角栄の失脚から日本の中枢はアメリカのコントロール下に入った

『この国の不都合な真実 日本はなぜここまで劣化したのか?』菅沼光弘:2012年
『日本人が知らないではすまない 金王朝の機密情報』菅沼光弘:2012年
『この国はいつから米中の奴隷国家になったのか』菅沼光弘:2012年
『誰も教えないこの国の歴史の真実』菅沼光弘:2012年
『この世界でいま本当に起きていること』中丸薫、菅沼光弘:2013年
『日本を貶めた戦後重大事件の裏側』菅沼光弘:2013年

 1990年代に入ってアメリカの最大の敵であったソ連邦が崩壊し、東西冷戦が終結しました。それによってアメリカの外交戦略も大きく転換することになります。このときジョージ・H・W・ブッシュ(父)政権のCIA長官だったロバート・ゲイツは、「ソ連という最大の標的がなくなったいま、CIAは何をやるのか」と議会で問われて、こう答えました。「これまでわれわれはソ連との冷戦に80%以上の能力を費やしてきたが、これからはわれわれのインテリジェンス能力の60%以上を経済戦争のために使う」と。
 ゲイツがいった経済戦争の相手はどこかといえば、これは世界第2位の経済大国にのし上がってきた日本以外にない。日本に対する日米経済戦争の宣戦布告です。
 ブッシュを破って1993年に大統領となった民主党のビル・クリントンもまた、経済政策を最優先課題に掲げて、選挙戦中に「われわれはソ連に勝って冷戦は終った。しかし本当の勝利者はわれわれではない。日本とドイツだ」と、その後の対日政策を象徴するようなことをいっています。米ソ冷戦の谷間で日本とドイツはぬくぬくと平和を享受し、アメリカに対抗できるような巨大な経済力をつくり上げてきた。その「平和の代償」はいただくよ、といったのです。

【『この国の権力中枢を握る者は誰か』菅沼光弘(徳間書店、2011年)】


日本にとって危険なヒラリー・クリントン」の続き。キリスト教文化圏は「始めに言葉ありき」(新約聖書「ヨハネによる福音書」)で、言外に含むところが少ない。ま、「ない」と思っていい。彼らにとっては「言葉が全て」である。こうした宗教的・文化的差異を弁えないところに日本外交の悲劇がある。

 クリントン政権の日米経済戦争は菅沼本で必ず取り上げられる。「戦争」とは勝つために手段を選ばぬことを意味する。中には殺された人もいたかもしれない。CIAは世界中で暗殺を遂行してきた。最大のテロ集団と指摘する声も多い。

 日本の経済発展は戦略に基づくものではなく漁夫の利であった。アメリカがベトナム戦争で疲弊し、公民権運動で揺れる中、日本人はひたすら働いた。アメリカが戦争を始めるたびに日本の仕事は増えた。マレーシアではマハティール首相が「ルック・イースト政策」を実施した。「日本に見倣(なら)おう」というわけだ。日本は第二次世界大戦に敗れてから奇蹟的な復興を遂げた。

 そんななかでクリントン政権は国家経済会議(NEC)を組織する。これは経済面でのアメリカの安全保障を考え、アメリカの利益を守るための器官です。その議長の席に就いたのが世界最大級の投資銀行ゴールドマン・サックスの共同会長で、ウォール街の天才と称されたロバート・ルービンです。ルービンは後に財務長官に就任しますが、彼の下で働いていたローレンス・サマーズもルービンの後を継いで後に財務長官になり、また現在のオバマ政権で財務長官を務めているティモシー・ガイトナーもまたこのときのメンバーです。つまりNECはアメリカの経済・財務の逸材を集結して構成された機関で、それらが一丸となって対日経済戦略に乗り出してきたわけです。
 彼らは日本経済について徹底的に調べ、分析し、これに対処するための戦略を考えた。CIAもまた経済担当職員を大挙して日本に送り込み、経済だけでなく、日本の企業形態や社会の特質、文化にいたるまで、あらゆるインテリジェンスを駆使して徹底的に調べ上げた。そして到達した結論の一つが、大蔵省の存在でした。
 ヴォーゲルの『ジャパン・アズ・ナンバーワン』も、実は同じことを指摘しています。この本は、なるほど日本の高度経済成長の要因を分析し、日本的経営を高く評価していますが、日本人が浮かれて喜ぶような本ではなく、そんな日本を野放しにしてはいけない、潰さなければいけないという警告の書でもあったのです。ヴォーゲルは、日本の経済を主導しているのは大蔵省や通産省の優秀な役人たちだと見抜いていました。





 こうしてバブル景気はあっと言う間に崩壊し、「失われた10年」がその後20年続くこととなる。この間も日本はアメリカを同盟国と信じ、安全保障を委ねてきた。お人好しというよりは馬鹿丸出しである。日本経済を牽引してきた大蔵省と経産省は解体された(中央省庁再編)。日本の国富はアメリカに奪われ続けた。

 青森県にある米軍三沢基地のエシュロンはソ連や中国の情報ではなく、日本の情報を収集するようになる。「戦争」であるがゆえにアメリカはあらゆる技術を駆使して、日本経済の破壊を目論んだ。

 アメリカは1990年代後半にITバブルに沸き、2000年代には住宅バブルとなる。そして2007年にサブプライム・ショック、翌2008年にはリーマン・ショックに見舞われ、資本主義は激しく揺れる。アメリカはマネーそのものから手痛いしっぺ返しを食らった。その後、世界は金融緩和・通貨安競争によって「100年に一度の危機」を乗り越えたかのように見える。だが、そうは問屋が卸さない。じゃぶじゃぶの緩和マネーが氾濫を起こすのはこれからだ。

この国の権力中枢を握る者は誰か
菅沼光弘
徳間書店
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2015-04-30

ブライアン・セルズニック、レスリー・ヴァリアント


 1冊挫折、1冊読了。

生命を進化させる究極のアルゴリズム』レスリー・ヴァリアント:松浦俊輔訳(青土社、2014年)/科学本に迷ったら松浦俊介の訳本を辿ればよい。外れが少ない。これは名著。レスリー・ヴァリアントは計算機学・応用数学の教授。チューリング賞も受賞している。流麗な文章だが、かなり手強い。私は歯が立たなかった。それでも「必読書」に入れ、「情報とアルゴリズム」にも加えた。挫けたのは私の知的レベルに問題があるためで本の問題ではないからだ。頑張れば読めるのだが、修行し直すことにした。尚、1ページの7行目に「与えられたのではななく」との誤植がある。青土社も随分といい加減になったものだ。

 41冊目『ユゴーの不思議な発明』ブライアン・セルズニック:金原瑞人〈かねはら・みずひと〉訳(アスペクト文庫、2012年)/子供に読ませる場合は奮発してハードカバー版を買ってあげたい。500ページのうち、何と300ページほどがイラストである。ま、絵本だと思っていい。まだ映画が誕生したばかりの時代である。身寄りのいないユゴー少年とからくり人形の物語だ。鉛筆で描かれたイラストが映画のカットのようにダイナミックな構図で読者に迫る。これはオススメ。「必読書」入り。マーティン・スコセッシ監督が映画化した『ヒューゴの不思議な発明』も必ず見たい。

手に余る自負/『突然の災禍』ロバート・B・パーカー


『レイチェル・ウォレスを捜せ』ロバート・B・パーカー
『初秋』ロバート・B・パーカー
『チャンス』ロバート・B・パーカー

 ・手に余る自負

『スクール・デイズ』ロバート・B・パーカー

「とにかく、あんたは、驚くほど端的な言い方をするな」
「時間の節約になる」

【『突然の災禍』ロバート・B・パーカー:菊池光〈きくち・みつ〉訳(早川書房、1998年/ハヤカワ文庫、2005年)以下同】

 シリーズ第25作目。複数の女性からセクハラで訴えられた元夫を助けて欲しいとスーザンから頼まれる。スペンサーは現在の恋人であるが夫ではない。はたから見ると微妙な立場だが、スペンサーは微妙な男ではない。手に余る自負を抱えている。自己顕示欲全開である。

 訴えた女性の夫に辣腕弁護士がいた。フランシス・ロナンという人物だった。

「彼はなにか意見を述べた?」
「フム、と言ったよ」
「それがどういう意味なのか、多少なりとも判ってるの?」
「彼は、この仕事は危険に満ちていることを、遠回しに言っていたのだ、と思う」
「フム」リタが言った。
「かもしれない」
「ロナンに会った、と言ったかしら?」
「言った」
 リタが微笑した。「それで、話し合いはうまくいったの?」
「あまりうまくはいかなかった」
 彼女の笑みがますます大きくなった。「あなたはそれ相応に敬意を表したの?」
「あんたは不快なくだらない小男だ、と言ったよ」
 リタが大声で笑い、ツイードを着た男が二人、タラ料理から顔を上げて彼女を見ていた。リタが彼らの視線を捉えて見返すと、二人がタラに目を戻した。
「笑うつもりじゃなかったのよ」リタが言った。「実際にとても真剣な問題なんだけど、驚いたわね! あなたとフランシス・ロナン」まだ微笑しながら首を振っていた。「素晴らしい組み合わせだわ。あなたは彼に劣らず傲慢だから」
「それに、おれのほうが背が高い」
「彼には用心してよ」リタが言った。「これまで相手にしたどんな人間の場合より、用心して」
「判ってる。それに、彼はおれに用心する必要があるかもしれない」

 リタ・フィオーレは『告別』、『蒼めた王たち』、『悪党』にも登場する美人弁護士。

 この会話にスペンサーの性格がよく表れている。騎士道精神と子供染みた強がり。暴力がユーモアを支えている。そして彼は相手がどんな大物でも怯えることがない。マチズモの毒を中和するのは知性である。スペンサーは詩を愛する男でもあった。

「きみはそんなにタフである必要はないんだ」
「物事について、ひ弱な女性のステレオ版になりたくない」
「タフ、というのは、事の前後に、それについてどんな気持ちになるか、ではなく、なにをするか、なのだ。きみはとてもタフだよ」
「自分の過去については、さほどタフではなかったわ」彼女が言った。

「ステレオ版」との訳はおかしい。「ステレオタイプ」で構わないだろう。菊池光はカタカナの使い方にも違和感を覚える。

 スペンサーがスーザンに説くのは「タフな精神」ではなく「行為としてのタフ」である。足を止めなければ思い悩む時間もない。

 若い頃は堪能できたが、大の大人が読むにはチト甘すぎる。それでもスペンサーの諧謔(かいぎゃく)精神にはニヤリとさせられてしまう。ホークも健在だ

 そのつもりになれば、ホークは、クー・クラックス・クランに潜入することができる。

 それは無理だ。ホークは黒人なのだから(笑)。

突然の災禍 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

2015-04-29

宮城谷昌光


 1冊読了。

 40冊目『香乱記(四)』宮城谷昌光(毎日新聞社、2004年/新潮文庫、2006年)/舌なめずりをしながらゆっくりと読み終えた。新聞小説のせいか、いつものような歴史の遠景を淡く描く終わり方をしていない。ドラマは太い線を描いて絶たれる。田横と眷属は壮絶な末期を迎える。楚漢戦争にあって項羽に屈することなく、劉邦にも迎合しなかった男がいた。巨大組織に身を置く者ほど味わいが深いと思う。項羽の冷酷と劉邦の多淫を思えば、田兄弟の施政は光芒を放つ。天下を取った劉邦は項羽以上の残虐非道を為した。

日本にとって危険なヒラリー・クリントン/『この国はいつから米中の奴隷国家になったのか』菅沼光弘


『日本はテロと戦えるか』アルベルト・フジモリ、菅沼光弘:2003年
『この国を支配/管理する者たち 諜報から見た闇の権力』中丸薫、菅沼光弘:2006年
『菅沼レポート・増補版 守るべき日本の国益』菅沼光弘:2009年
『この国のために今二人が絶対伝えたい本当のこと 闇の世界権力との最終バトル【北朝鮮編】』中丸薫、菅沼光弘:2010年
『日本最後のスパイからの遺言』菅沼光弘、須田慎一郎:2010年
『この国の権力中枢を握る者は誰か』菅沼光弘:2011年
『この国の不都合な真実 日本はなぜここまで劣化したのか?』菅沼光弘:2012年
『日本人が知らないではすまない 金王朝の機密情報』菅沼光弘:2012年
『国家非常事態緊急会議』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄:2012年

 ・フリーメイソンの「友愛」は「同志愛」の意
 ・日本にとって危険なヒラリー・クリントン

『誰も教えないこの国の歴史の真実』菅沼光弘:2012年
『この世界でいま本当に起きていること』中丸薫、菅沼光弘:2013年
『神国日本VS.ワンワールド支配者』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄
『日本を貶めた戦後重大事件の裏側』菅沼光弘:2013年

 売国奴という言葉がありますが、国家観を持たない人間は平気で国を売ります。自分では国を売るという意識もないまま、「親米」だの「親中」だのと体(てい)のいい言葉の裏で、国を売って平然としています。私はこれまでどれほどそういう政治家を見てきたか。本当に嫌になるくらい見てきました。

【『この国はいつから米中の奴隷国家になったのか』菅沼光弘(徳間書店、2012年)以下同】

 今から30年ほど前までは「愛国心」という言葉が右翼を示すキーワードであった。この国は戦争に敗れて以来、「国を愛すること」すら許されなかった。

 本多勝一〈ほんだ・かついち〉の「菊池寛賞を改めて拒否しなおす」(『潮』1983年11月号)に感激した私は、当然のように彼が批判する山本七平からは遠ざかった(『殺す側の論理』すずさわ書店、1972年)。浅見定雄の『にせユダヤ人と日本人』(朝日文庫、1986年)にも私は手を伸ばした。時代の風は左側から吹いていた。それに断固として異を唱えたのが渡部昇一〈わたなべ・しょういち〉や谷沢永一〈たにざわ・えいいち〉であった。彼らは「右翼」と目された。

 菅沼の指摘は右左の問題ではない。政治家が国益よりも私益を重んじたとの一点にある。新聞・テレビ・企業がこれに続くのは当然であろう。祖国は売り物と貶められた。

 日韓関係についてもそうです。例の従軍慰安婦の問題について、ヒラリー・クリントン国務長官が従来の「コンフォート・ウーマン(慰安婦)」という英語の呼称を「セックス・スレイブ(性奴隷)」にするしかないと言いはじめています。
 これは韓国の圧力によるもので、アメリカのニュージャージー州とニューヨーク州の2ヵ所には、旧日本軍従軍慰安婦の記念碑が建てられています。いずれも公共施設の中です。そこには「20万人の韓国の若い女性が日本帝国政府に拉致されてセックス・スレイブになった」と書かれている。せいぜい数万人とされていたのがいまや20万人になっているのです。
 日本政府はこれを撤去するように申し入れていますが、アメリカはまったく撤去しようとしません。
 この記念碑を見たアメリカ人は、これはひどい、日本は許せないとなるでしょう。それを受けてヒラリー・クリントンはセックス・スレイブと言い出した。
 李明博大統領は来年2月で任期は終りですが、韓国というのは政権の末期になると必ず反日の気運を高めることになります。まして李明博政権は身内の収賄事件などが発覚してボロボロですから、世論を反日に向けさせて自分に矛先が向かないようにしています。それにアメリカも加担しているわけです。


「米国は,アメリカ合衆国下院121号決議の成立と,ヒラリークリントンやバラクオバマの声明によって,韓国の売春婦(政府と売春婦の両方)をサポートした」(アメリカ人ジャーナリストのマイケル・ヨンさんの日本語のブログ)。

 バブル景気に酔い痴れる日本に対して「経済戦争」を仕掛けたのが夫君のビル・クリントンであった(『この国の権力中枢を握る者は誰か』菅沼光弘)。その妻女が親日家であるとは考えにくい。夫婦揃って左派的要素が強いことでも知られる。

 慰安婦問題を歴史的事実としないためにも、「いわゆる慰安婦問題」と表記することが望ましい。結果的に見ればアメリカにおける韓国のロビー活動に我が国が敗れたということだ。

 本来であれば朝日新聞の慰安婦虚報が明らかになった時点で、これをテコに全国民的な歴史検証を開始すべきであった。アメリカ議会に対するロビー活動も必要だとは思うが、まずきちんとした英語情報を書籍やウェブサイトの形で日本から発信すべきである。

渡部昇一の考える、いわゆる慰安婦問題について

 そもそもなぜ慰安婦が必要になったか? 兵士に強姦させないためである。こんな簡単な理屈もわからなくなっている。欧米やロシアの場合は徹底的な強姦を行う。ノルマンディー上陸作戦に参加した米軍兵士たちはフランス人女性を思う存分犯した(AFP 2013-05-27)。ヒトラー率いるナチス・ドイツを破ったロシア軍も手当たり次第にドイツ人女性をレイプした。老女までもが犠牲となった。

 東京裁判史観を完全に払拭することなしに戦後レジームからの脱却はあり得ない。現段階では正確な自国の歴史を述べる機会すら与えられていないのが日本の現状である。

この国はいつから米中の奴隷国家になったのか
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