2016-02-12

佐伯啓思


 1冊読了。

 19冊目『自由と民主主義をもうやめる』佐伯啓思〈さえき・けいし〉(幻冬舎新書、2008年)/再読。三島由紀夫の死によって浮かび上がる日本社会の問題と、9.11テロが突きつけた国際社会の問題が重なって見える。三島が死んで(1970年)右翼が滅び、連合赤軍事件(あさま山荘事件〈1972年〉と山岳ベース事件〈1971-72年〉)で左翼が亡んだと考えてよさそうだ。その後、進歩的文化人はサヨクに姿を変え、バブルが崩壊した1990年代になってようやく保守が台頭する。

2016-02-10

別宮暖朗、兵頭二十八


 1冊読了。

 18冊目『大東亜戦争の謎を解く 第二次大戦の基礎知識・常識』別宮暖朗〈べつみや・だんろう〉、兵頭二十八〈ひょうどう・にそはち〉(光人社、2006年/光人社NF文庫、2012年)/別宮・兵頭本は初めて読む。メインは別宮で兵頭が加筆。微に入り細を穿(うが)つ視線で歴史の精確を期す。兵頭本にも共通するが「大東亜戦争は侵略戦争」「天皇陛下に戦争責任はない」との主張。読み物としては面白味がなく、ある程度の知識が求められる。今までどうもすっきりしなかった靖國神社の問題が初めてストンと腑に落ちた。霊璽簿主義の不合理を突き、しかも戦後これが崩れ、天皇陛下の裁可なしで陸軍省・海軍省の役人と宮司の独断で霊璽簿への追記が可能になった。更に我が国には無名戦士の墓がなく固定廟堂(びょうどう)が存在しない、との指摘には肝を消した。

2016-02-09

『サハラに死す 上温湯隆の一生』が文庫化

サハラに死す――上温湯隆の一生 (ヤマケイ文庫)

 前人未踏の熱砂の海に単身で挑み、志半ばで青春の幕を閉じた幻の名著 サハラ砂漠は古くから交易路が発達し、主にトアレグ族によるキャラバンが盛んだった。だがそれは主に縦断であり、横断は達成されていなかった。上温湯隆〈かみおんゆ・たかし〉は、1973年1月25日、モーリタニアの首都ヌアクショットを出発、1頭のラクダのみを連れ、ガイドなしという挑戦だった。しかし、マリでそのラクダが死亡して中断、ナイジェリアのラゴスで時事通信社ラゴス支局に身を寄せ、体力の回復と資金調達に当たる。4月、横断再開のためラクダを購入してラゴスを出発、メナカよりの手紙を最後に消息を絶ってしまう。そのとき発見された手記を元に長尾三郎が構成を担当し、『サハラに死す』が出版された。当時、大きな反響を呼び、若者からは「バイブル」とまで言われた。

『サハラに死す 上温湯隆の一生』長尾三郎編

佐伯啓思


 1冊読了。

 17冊目『自由と民主主義をもうやめる』佐伯啓思〈さえき・けいし〉(幻冬舎新書、2008年)/これは勉強になった。出だしがわかりやす過ぎて胡散臭く感じたが、後になれば深慮遠謀であることがわかる。産経適塾という学生向けの講演を編んだもの。順序としては藤原正彦『国家の品格』、『日本人の誇り』、馬渕睦夫の後に読むのがよい。西田幾多郎を持ち出すところがやや突飛に感じたが、福澤諭吉の脱亜入欧の意味はよくわかった。最大の瑕疵は愛国にまつわる様々な英語を吟味しておきながら、民主制を民主主義と表記していることだ。

2016-02-07

トム・ロブ・スミス


 1冊挫折。

偽りの楽園(上)』トム・ロブ・スミス:田口俊樹訳(新潮文庫、2015年)/田口俊樹の翻訳がいつも以上に悪く、読むに堪えない。10ページからの1ページ半で「ぼく」が15回出てくる。まるで木魚のようだ。

2016-02-06

辨野義己、武田知弘、他


 12冊挫折、2冊読了。

児玉誉士夫 巨魁の昭和史』有馬哲夫(文春新書、2013年)/有馬哲夫の文章には面白味がない。

獄中獄外 児玉誉士夫日記』児玉誉士夫〈こだま・よしお〉(広済堂出版、1974年)/今ひとつ乗れなかった。びっくりしたのだが林房雄が巻末に「児玉誉士夫小論」を寄せている。

戊辰戦争の史料学』箱石大〈はこいし・ひろし〉編(勉誠出版、2013年)/会津・庄内両藩がプロイセンに蝦夷地もしくは日本の西海岸にある領地を売ろうとしていた。最新資料による研究所だが、史料学なので読み物としての魅力は皆無である。

からくり民主主義』高橋秀実(新潮文庫、2009年)/ただのエッセイとは思わなかった。解説は村上春樹。

つかめないもの』ジョーン・トリフソン:古閑博丈〈こが・ひろたけ〉訳(覚醒ブックス、2015年)/非二元(ノン・デュアル)を調べようと思ったのだが、つかみどころのない文章で放り投げてしまった。帯にある著者の顔写真も好きになれず。

アフリカの日々 やし酒飲み(池澤夏樹=個人編集 世界文学全集1-8)』イサク・ディネセン、エイモス・チュツオーラ:横山貞子、土屋哲〈つちや・さとる〉訳(河出書房新社、2008年)/どちらも有名な小説だが、どうも乗れず。『やし酒飲み』は再読するかも。

図書館のプロが教える〈調べるコツ〉 誰でも使えるレファレンス・サービス事例集』浅野高史編、かながわレファレンス探検隊(柏書房、2006年)/期待外れ。Googleの方が強力だ。

覚書 幕末の水戸藩』山川菊栄〈やまかわ・きくえ〉(岩波文庫、1991年)/左翼ぶりを遺憾なく発揮している。冒頭で「生瀬の乱」を紹介している。参照→『神無き月十番目の夜』飯嶋和一

忘れたことと忘れさせられたこと』江藤淳(文藝春秋、1979年/文春文庫、1996年)/どうも江藤の文章が肌に合わない。三島由紀夫の自決を「軍隊ごっこ」「病気」と評したことと関係しているのかもしれぬ。

新心理学講座 4 宗教と信仰の心理学』小口偉一〈おぐち・いいち〉編(河出書房、1956年)/戦後の新宗教各団体をスケッチしたような代物で、「心理学」を名乗るほどの高みに至っていない。本書では匿名になっているが池田大作と小泉隆の入信動機が紹介されている。

創価学会 その思想と行動』佐木秋夫、小口偉一〈おぐち・いいち〉(青木書店、1957年)/そこそこ誠実さはあるものの、如何せん左翼傾向が顕著で鼻白んでしまう。

オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より』岡田斗司夫〈おかだ・としお〉 FREEex(幻冬舎新書、2012年)/朝日新聞の週末別冊版「be」(ビー)に掲載された「悩みのるつぼ」を解説した本。昨今、岡田のゲス振りがネット上で露見しているが、やはりこの人は頭がよい。伝説と化した「父親が大嫌いです」との相談が冒頭で紹介されている。ただ、この人の文体についてゆけず。若者向けの芸風なのだろうが、軽薄な文体が鋭さを淡くしてしまっている。更に人生相談の種明かし的な姿勢は共感よりも嫌悪感を抱く人が多いのではないか。

あなたを天才にするスマートノート』岡田斗司夫(文藝春秋、2011年)/今まで読んできたノート本ではピカ一である。早速今日から実践している。私の場合はスマート(賢明)よりもセンス(感覚)を重んじる。右ページに記録をつけ、左ページは空けておく。若い人なら5行日記から始めるのがよかろう。

 15冊目『ヒトラーの経済政策 世界恐慌からの奇跡的な復興』武田知弘〈たけだ・ともひろ〉(祥伝社新書、2009年)/何とナチスドイツは高福祉国家であった。「必読書」入り。『ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く』、『ファストフードが世界を食いつくす』の後に読むのがよい。学術書ではないこともあって言いわけが目立つのが唯一の難点だ。

 16冊目『大便通 知っているようで知らない大腸・便・腸内細菌』辨野義己〈べんの・よしみ〉(幻冬舎新書、2012年)/腸内細菌入門。わかりやすい文章が頭のよさを窺わせる。便秘気味の女性は必読のこと。ウンコは黒いほど健康状態が悪く、黄色っぽいのがいいそうだよ。あと水に沈むのもよくないらしい。「大便をデザインする」という言葉に痺れる(笑)。