2016-09-25

鳥居民


 1冊挫折。

鳥居民評論集 昭和史を読み解く』鳥居民〈とりい・たみ〉(草思社、2013年/草思社文庫、2016年)/書評、対談、評論を収録。谷沢永一御大も評価しているとは恐れ入った。近衛文麿の再評価に目を瞠(みは)る。工藤美代子との対談も。ところどころ飛ばしながら読んだ。正味2/3ほどか。『近衛文麿「黙」して死す』と『われ巣鴨に出頭せず 近衛文麿と天皇』まで手を伸ばすべきかどうか。推論はいい。だが断定的な文章がいただけない。情報過多が生んだ自信なのか。谷沢との対談は市井の歴史家に対する手加減があると思う。尚、鳥居には『昭和二十年』という大作がある(全14冊)。

2016-09-24

養老孟司、他


 2冊挫折、1冊読了。

ストレスに負けない最高の呼吸術 システマ式シンプルブリージングワーク100』北川貴英(エムオン・エンタテインメント、2015年)/タイトルに難あり。呼吸術というよりはエクササイズである。スロトレ好きにはお薦めできる。

神秘の世界 超心理学入門』宮城音弥〈みやぎ・おとや〉(岩波新書、1961年)/石原慎太郎著『巷の神々』で引用されていた一冊。超能力を科学が検証した内容。読み物としてはつまらない。不思議な能力が次々と紹介されているが、悟りとは無縁と言わざるを得ない。私としては超能力よりも、眼が見えることの方がはるかに不思議だと思う。例えば何かを言い当てることができたとしよう。「だから何なの?」という感想しか湧かない。奇異が感動に結びつくことはないだろう。

 144冊目『脳という劇場 唯脳論・対話篇』養老孟司〈ようろう・たけし〉(青土社、1991年/新装版、2005年)/旧版はバブル末期の刊行だが杜撰極まりない。同じ文章が出てきたり、巻末対談者一覧から山根一眞が抜け落ちている。出版社も結局はメディアということか。内容は文句なしの面白さ。覚え書きとして記すと、中村雄二郎・吉本隆明・米長邦雄・高木隆司・大島清・中村桂子・多田富雄・荒俣宏・香山壽夫・胡桃沢耕史・南伸坊・丸谷才一・太田治子・菅谷規久雄・古井由吉・山根一眞の16人。これだけ多いとページ数が少なくなるのは致し方ないが、対談の醍醐味は十分伝わってくる。

2016-09-23

J・クリシュナムルティ、ロバート・B・パーカー、カーリン・アルヴテーゲン、武田邦彦、他


 10冊挫折、4冊読了。

もういちど読む山川日本史』五味文彦、鳥海靖編(山川出版社、2009年)/読む価値なし。

もういちど読む山川日本戦後史』老川慶喜〈おいかわ・よしのぶ〉(山川出版社、2016年)/左巻きが掛かっている。2016年でこの内容を出版するセンスを疑う。

謎とき日本近現代史』野島博之(講談社現代新書、1998年)/塾講師の雑談といった体裁。

新・雨月 上 戊辰戦役朧夜話』船戸与一〈ふなど・よいち〉(徳間書店、2010年/徳間文庫、2013年)/個人的には会津にしか興味がないのであまりピンと来なかった。

葦笛の鳴るところ』福永十津〈ふくなが・とつ〉(眞人堂、2015年)/第1回丸山健二文学賞受賞作品。選者は丸山本人で賞金はない。それどころか応募するだけで5000円取られる。ゴリゴリ、カチカチの文体で読むに堪えず。文章も設定も丸山とそっくりだ。やたらと改行の多いところまで。文学賞を拒んできた丸山が自分の名を冠する文学賞を与えるという矛盾は老いによるものか。

沈黙』ロバート・B・パーカー:菊池光〈きくち・みつ〉訳(早川書房、1999年/ハヤカワ文庫、2005年)/スペンサー・シリーズをずっと読んできたが初めて挫折した。女性を「美人」と表現する陳腐さに差別意識が出ている。菊池光の訳もやたらと英語の発音に忠実で異様な表現が目立つ。もうロバート・B・パーカーから卒業だな。

奇跡の自然 三浦半島小網代の谷を「流域思考」で守る』岸由二〈きし・ゆうじ〉(八坂書房、2012年)/自然保護運動の側面が強い。市民の匂いがすると反射的に私は逃げたくなる。小網代(こあじろ)の写真集を出せばといいと思う。養老孟司との対談を収録。

当事者研究の研究』石原孝二編(医学書院、2013年)/論文集で有名どころとしては熊谷晋一郎の名前がある。また向谷地生良〈むかいやち・いくよし〉を交えた座談会も。冒頭を飾る石原孝二の文章がとてもよい。やや専門的な内容。

生命に仕組まれた遺伝子のいたずら 東京大学超人気講義録 file2』石浦章一(羊土社、2006年)/面白いのは最初だけ。それでも読む価値はある。

現実を生きるサル 空想を語るヒト 人間と動物をへだてる、たった2つの違い』トーマス・ズデンドルフ:寺町朋子訳(白揚社、2014年)/期待外れ。心理学者という立場が考察をあやふやなものにしている。スティーブン・ピンカーが好きな人にはおすすめできる。

 140冊目『裏切り』カーリン・アルヴテーゲン:柳沢由実子〈やなぎさわ・ゆみこ〉訳(小学館文庫、2006年)/一度挫けている。インディアンの部分だけ確認しようと思ったのだが、豈図らんや面白かった。ただし語り手の揺れが気になる。各章ごとに視点は一つにすべきだろう。時折別人の視点が混入する。結末が安易に感じるが、ミステリとしては及第点といったところ。

 141冊目『ナポレオンと東條英機 理系博士が整理する真・近現代史』武田邦彦(ベスト新書、2016年)/ホームページを叩き台にしているせいか、底の浅い読み物にとどまっている。ちょっともったいない。読まないよりは読んだ方がいいかな、といった代物。

 142冊目『ポットショットの銃弾』ロバート・B・パーカー:菊池光〈きくち・みつ〉訳(ハヤカワ文庫、2006年)/ロバート・B・パーカーも本書で最後かな。菊池の訳も異常である。「にゃっと笑った」が10ヶ所ほど。直させない出版社がおかしいと思う。大物すぎて注意もできなかったのか?

 143冊目『生と覚醒(めざめ)のコメンタリー 3 クリシュナムルティの手帖より』J・クリシュナムルティ:大野純一訳(春秋社、1984年/新装版、2005年)/再読。本書を読めばブッダの対機説法が決して浅い位置にとどまるものでなかったことがよくわかる。たとえ相手の機根に応じて法を説いたとしても覚者は真理に迫ることができる。