2019-02-20

ジョン・ガードナー、徳岡孝夫、ミヒャエル・ネールス


裏切りのノストラダムス』ジョン・ガードナー:後藤安彦〈ごとう・やすひこ〉訳(創元推理文庫、1981年)/数十年ぶりに再読。訳文に少々乱れあり。ま、責めは出版社の校正が負うべきだろう。ドイツがフランスを陥落した後、フランス人女性がドイツ兵と性的関係(具体的な記述はない)を結ぶことを「この種の『協力』」と書いている(180ページ)。またドイツが非戦闘員を殺傷する場面あり。フィクションだから嘘と考えるのは短絡的だ。こうした記述を受け入れるヨーロッパの世相を理解すべきだろう。

「戦争屋」の見た平和日本』徳岡孝夫〈とくおか・たかお〉(文藝春秋、1991年)/著者は三島由紀夫が最後に連絡を取った記者の一人。毎日新聞、サンデー毎日の元記者。「『ビルマの竪琴』と朝日新聞の戦争観」(313ページ)。1985年7月に書かれたもの。米軍の原子力空母エンタープライズの佐世保入港に賛成した竹山道雄を朝日新聞が叩きまくった出来事の概要がわかる。投書も紹介している。嘘と捏造(ねつぞう)を繰り返し、言論弾圧をしてきたのが朝日新聞の歴史といってよい。

アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス:鳥取絹子〈とっとり・きぬこ〉訳(筑摩書房、2018年)/翻訳がよくスリリングな内容だ。記憶を司る海馬は死ぬまで成長し続けるという。アルツハイマー病が海馬を破壊する原因は文明にありとしている。「食べ物、運動、知的活動、社会との接触」における欠乏を補うことで初期アルツハイマーは改善できる。

2019-02-19

トイレ掃除は高度な動き/『人生、ゆるむが勝ち』高岡英夫


『悲鳴をあげる身体』鷲田清一
『ことばが劈(ひら)かれるとき』竹内敏晴
『だれでも「達人」になれる! ゆる体操の極意』高岡英夫
『高岡英夫の歩き革命』、『高岡英夫のゆるウォーク 自然の力を呼び戻す』高岡英夫:小松美冬構成

 ・トイレ掃除は高度な動き

『究極の身体(からだ)』高岡英夫
『身体構造力 日本人のからだと思考の関係論』伊東義晃

身体革命
必読書リスト その二

 おそらく大半の人が、掃除や洗濯は好きではないでしょう。
 私は毎日必ず、自宅の洗面所とトイレの掃除をしています。日によっては私が使うたび、多いときには1日に4~5回も掃除をすることがあります。
 そのたびに何をやっているかというと、便器の内側をブラシでササッと掃除するのです。1日4~5回もやると、洗剤を使わなくても水だけで汚れが落ちてしまいます。そして、トイレットペーパーのミシン目1間隔分だけを使ってトイレの床をすみずみまでふき掃除するのです。これを使ってサッサッサとふくだけで、床一面がピカピカになります。なぜかというと、床が汚れていないからなのです。
 ほこりはすみっこにたまりがちですが、毎日ふき掃除をしていればまったく汚れません。現実には汚れていないけれど、そうやってふいていくのです。
 突然トイレ掃除の話になって、何がいいたいのかとお思いでしょうが、もう少しおつきあいください。
 トイレ掃除はほとんどの人がイヤがることですよね。汚れやすいし、狭く、そのうえ便器の形が複雑だから、体をクネクネさせないと、便器の億までうまく掃除ができません。
 床のふき掃除だって、変に力んで力まかせにこすり過ぎるとトイレットペーパーが破れてしまいますし、便器もきれいになりません。
 つまり、トイレ掃除は、力加減を考えながら手を動かす、けっこう高度な動作なのです。あざやかに体をくねらせて、サッサとやるこの動作自体は、ゴルフでボールを打ったり、テニスでサーブを打ったりする難しい動きと同じぐらい、もしかすると勝るかもしれないほど高度な動きなのです。
 体を魚のようにくねらせるこの動作は、健康だけでなく、さらにはスポーツや高度な機能を開発していく体操に自然となっている。毎日、便器の複雑なところに、いかに鮮やかに体をサッと差し入れて、いかに短い時間の中できれいにするか。さっとふいて、さっとトイレから抜け出してくるか。こうしたことが自分の健康にも、若返りにも、高能力にも役立っているわけなのです。
 そう考えたら、トイレ掃除をやらないなんて、なんてもったいないことだろうと思うのです。

【『人生、ゆるむが勝ち』高岡英夫(マキノ出版、2005年)】

 掃除は努力が100%報われる稀(まれ)な行為だ。掃除はやった分だけ必ずきれいになる。物理世界ではエントロピーが増大し続けるが、これに逆らう唯一の存在が生命体である。乱雑さを整える(=エントロピーを逆行させる)掃除はその象徴的な行為といってよい。ブッダの弟子チューラパンタカ(周利槃特〈すりはんどく〉)は掃除をきっかけにして悟りを得たと伝えられる。

 掃除には体をゆるめるだけではなく、心をゆるめる効用もあります。汚いものに積極的にかかわっていきますから、そのぶんだけ心のバランスがとれてくる。人間としてのバランスがとれてくるから、周囲との人間関係もよくなります。
 人間には汚い部分、きれいごとではすまない部分がたくさんあります。
 そうした自分の汚いところに自分自身で触れないで、気がつかないようにフタをしてしまうのが、いまの社会のあり方だと思うのです。
 ですから、きれいごとですませるというか、とにかく汚いことには触れない、汚いものは避けて通るという人生を子どものころから送っていると、人としてのバランスが失われていきます。

 巧みな説明だが言い過ぎだ。清掃会社に勤める人々全員が善人というわけでもあるまい。それでも尚、心を打たれるのは部分的な真理があるためだろう。

 面接をするよりも部屋を見た方がその人物を理解できるという。ただし言いわけをさせてもらうと男は汚れに対する耐性が高い。いかに乱雑な家に住んでいたとしても悪臭が漂わなければ大目に見るべきだ。いや、大目に見てくれ(笑)。

 今日から喜んでトイレ掃除をすることをここに誓うものである。

2019-02-18

パンク対策:チューブ交換~CO2ボンベ(インフレーター)


ロードバイク~乗る前に必ずマスターしておくべきこと

 ・パンク対策:チューブ交換~CO2ボンベ(インフレーター)

 実はまだパンクの経験がないため繰り返しこれらの動画を見ている。尚、CO2は抜けやすいため、帰宅後は必ずガスを抜いて空気を入れ直すこと。






【タイヤのラベルをバルブの位置に合わせる】

2019-02-17

「あげる」と「やる」/『日本人の矜持 九人との対話』藤原正彦


『妻として母としての幸せ』藤原てい
『天才の栄光と挫折 数学者列伝』藤原正彦
『祖国とは国語』藤原正彦
『国家の品格』藤原正彦

 ・「あげる」と「やる」

『夫の悪夢』藤原美子
『日本人の誇り』藤原正彦

藤原●彼らも一種のエリートなのですから、日本の期待を背負っているんだという気概を少しは持ってくれないと困りますね。

曽野綾子●私もそう思います。彼らを送り出すために、税金も含めて、さまざまな人がさまざまなバックアップをしてきた。それを自覚した人間になってほしい。
「自分を褒めてあげたい」(※筆者註:有森裕子の発言が誤って伝わったもの)なんて、誰が最初に言い出したのか。気持ちが悪い言葉ですね。ああ言われたら、こちらは「ああ、そうですか」と言い返すしかない。自分自身への評価は沈黙のうちにするべきことです。そもそも「褒めてあげたい」という日本語が間違っている。正しくは「褒めてやりたい」ですよ。「子供にお菓子をやる」のであって、「子供にお菓子をあげる」のではない。

藤原●いい齢した大人の使う言葉ではありませんね。

曽野●それと、いまの日本の教育で欠けていると思うのは、「人を疑え」ということですね。それは他人を拒絶せよ、ということではない。むしろ、人間を信じ、人間とかかわりを持つためには、まず疑わなくてはならないのです。たとえば、子供が知人に誘拐されたり、殺されたりする事件が起きると、必ず「人を信じられないとはなんと悲しいことでしょう」というコメントが登場しますが、人はもともと信じられないものなんです。

【『日本人の矜持 九人との対話』藤原正彦(新潮社、2007年/新潮文庫、2009年)】

 齋藤孝、中西輝政、曽野綾子、山田太一、佐藤優、五木寛之、ビートたけし、佐藤愛子、阿川弘之らとの対談集。どれも滅法面白い。佐藤優に冴えがないのは保守派の藤原を警戒したためだろう(笑)。五木寛之なんぞは自虐史観の持ち主だが、古い歌謡曲を巡るやり取りには阿吽(あうん)の呼吸すら感じた。

 記憶があやふやなのだが冒頭の「彼ら」とは多分オリンピック選手のことだろう。私が曽野綾子と接するのは実に『誰のために愛するか』(青春出版社、1970年)以来のことである。クリスチャンと左翼の親和性が高いのはつとに指摘されるところだが、曽野綾子は珍しく保守論客である。しかも多くの物議を醸(かも)してきた。あまり好きな人物ではないが藤原が選ぶのだからそれなりの理由があるのだろう。

 先程「誰々に物をあげる」という場合の「あげる」が「上げる」でいいのかどうかを調べていた。

人に物をあげるの、「あげる」にはどの漢字を使うのが正しいですか??上げる... - Yahoo!知恵袋

 で、ふと曽野の指摘を思い出したというわけ。読んだ時、ハッとした。意外と気づかないものである。その気づかないところに不明の不明たる所以(ゆえん)があるのだろう。

 私が長らく曽野綾子を敬遠してきたのは、まだ保守が右翼と思われていた時代背景の影響が強い。ま、注目を集めるために極論を述べることは決して珍しいことではない。また保守系女性論客は明らかに叩かれやすい傾向があり、普段は言論の自由を声高に主張する左翼どもが平然と言論を抑圧している。

「あげる」と「やる」という言葉遣いの狂いにも、戦後の悪しき平等主義が影を落としている。

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腸内細菌で自閉症の症状を緩和することができる/『できない脳ほど自信過剰 パテカトルの万脳薬』池谷裕二


『進化しすぎた脳 中高生と語る〔大脳生理学〕の最前線』池谷裕二
『脳はなにかと言い訳する 人は幸せになるようにできていた!?』池谷裕二
・『脳はなにげに不公平 パテカトルの万脳薬』池谷裕二

 ・腸内細菌で自閉症の症状を緩和することができる

『脳はバカ、腸はかしこい』藤田紘一郎

 腸内細菌で自閉症の症状を緩和することができる――。そんなネズミの実験データが発表されました。カリフォルニア工科大学のマツマニアン博士らが先々月の「セル」誌に発表した論文です。
 腸と脳は密接に関係しています。腸内細菌も精神状態に影響を与えることはすでに知られています。しかし、自閉スペクトラム症(ASD)はいわゆる発達障害の一種です。つまり生まれつきの症状です。これが腸内細菌で治療できるとはどういうことでしょうか。今回の発見を私なりに消化するまでに時間を要しました。
 発見の端緒は「合併症」の丹念な調査にあります。2年前にハーバード大学のコハネ博士らは1万4000人のASDの方を集め、彼らが他にどんな病気を患っているかを調べたのです。すると炎症性腸疾患という慢性の腸炎を併発している率が高いことがわかりました。腸炎の原因は十分にはわかっていませんが、一因は腸内細菌であろうと考えられています。
 この発見に、近年のミクロビオーム研究が加担します。最新の検査技術を用いると、大量の腸内細菌を一斉に調べ上げることができます。腸内にどんな細菌が住んでいるか(ミクロビオーム)が一網打尽にわかります。その結果、ASDの方のミクロビオームは健常者のものとは異なっていました。
 もちろん、これだけでは、ミクロビオームが原因でASDになったのか、あるいは逆に、ASDの方に偏食があるからミクロビオームが変化しているのかはわかりません。ヒトでこれを確かめるわけにはゆきません。そこでマツマニアン博士らは、ネズミの実験に切り替えることにしました。その結果、ミクロビオームこそがASDの症状の一因だという結論を得たのです。もう少し詳しく説明しましょう。
 ASDの原因の一つは感染です。生まれる前、まだ母親の胎内にいるときに感染すると、ASDの危険率がぐんと上昇します。その証拠に、妊娠中の母ネズミに感染炎症を生じさせると、生まれてきた仔はヒトのASDにそっくりな症状を示します。社交的な行動が減っているだけでなく、なんとミクロビオームまで変化しているのです。
 そこで博士らは、大腸炎を改善することが知られている「バクテロイデスフラジリス」という細菌を、生まれてきたばかりの仔マウスに与えました。するとマクロビオームが改善され、驚くべきことに、成長してもASDの症状を示さなかったのです。
 炎症性腸疾患は、ASDだけでなく、うつ病やある種の知的障害などにも見られる症状です。今回のデータは、これまで対処が難しかった精神疾患や発達障害への治療の糸口になるかもしれません。

【『できない脳ほど自信過剰 パテカトルの万脳薬』池谷裕二〈いけがや・ゆうじ〉(朝日新聞出版、2017年)】

『週刊朝日』に連載された科学コラム「パテカトルの万脳薬」の2013年9月6日号~2014年12月26日号掲載分で、『脳はなにげに不公平 パテカトルの万脳薬』の続篇。

瓢箪から駒が出る」とはこのことか。「ランプから魔神」でもよい。

 我々の思考はどうしても特定の部位に目を向けてしまう。脳、血管、神経、臓器など。腸内細菌は口から入ったもので作られる。お腹の中の赤ちゃんは無菌状態である。帝王切開の出産が問題なのは産道を通る時に口から入る母体の菌を取り入れることができないためだ。

 私が子供の時分は菌といえばバイ菌を意味したが、ヨーグルトでお馴染みのビフィズス菌が善玉菌として菌のイメージを書き換えた。人体の細胞は60兆個といわれる(最新の説では37兆個→気になる数字をチェック! 第9回 『37,000,000,000,000(37兆)個』|北キャンレポート|R&BPマガジン|北大リサーチ&ビジネスパーク推進協議会/同数説もあり→「体内細菌は細胞数の10倍」はウソだった | ナショナルジオグラフィック日本版サイト)。しかし実はそれを上回る数の細菌が人体を構成している。

「私」という存在を固定化し確定したものと考えるところに思考の過ちがあるのだろう。もっと淡くて曖昧な状態・現象が統合されて「私」という仮想が現実の姿に見えているだけなのだ。これを諸法無我という。

 精神疾患や知的障碍は人体のみならず家族や社会との関係にも大きな影響を及ぼす。悩みや苦しみが関係性から生じ、喜びや楽しみもまた関係性から生じる。今ここにあるのは関係性だけなのかもしれない。

できない脳ほど自信過剰
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