2019-08-14

選挙と民主政/『民主主義という錯覚 日本人の誤解を正そう』薬師院仁志


 ・民主的な議員選出法とは?
 ・統治形態は王政、貴族政、民主政
 ・現在の議会制民主主義の実態は貴族政
 ・真の民主政とは
 ・理性の開花が人間を神に近づけた
 ・選挙と民主政
 ・貴族政=ミシュランガイド、民主政=ザガットサーベイ

『悪の民主主義 民主主義原論』小室直樹

 代議制民主主義の定義に従えば、選挙で選ばれた者の発言力が大きければ大きいほど、その社会は民主的だということになり、選挙で選ばれてもいない者の圧力が幅を利かせるような社会は、極めて非民主的だということになる。国王であれ貴族であれ資本家であれ労働組合であれ宗教団体であれ市民団体であれ、選挙で選ばれてもいない者が、選挙で選ばれた者たち以上の発言力を持つのであれば、そもそも普通選挙で代表者を選ぶ意味など全くないのである。
 もちろん、それらの意見や立場を無視してよいというのではない。だが、選挙で選ばれた者たちが決定し、全体の奉仕者がそれを実行するという原則だけは、最大限に尊重されなければならないのである。

【『民主主義という錯覚 日本人の誤解を正そう』薬師院仁志〈やくしいん・ひとし〉(PHP研究所、2008年)】

 それを書いた薬師院仁志が朝まで生テレビで橋下徹大阪市長(当時)に噛み付いたのには驚かされた(【朝生】に見る左翼知識人の無知と無恥 橋下改革断固支持: 依存症の独り言)。薬師院は左翼である。著書に『社会主義の誤解を解く』(2011年)があることからも明らかだ。

 薬師院が民主政を説くところに彼の二段階革命を推進する意志を見る。つまり共産党支持者であることが自動的に導かれる。

「社会主義の誤解を解く」のは勝手だが、社会主義国家が数千万単位で同胞を殺戮してきた事実は動かない。スターリン、ヒトラー、毛沢東、ポル・ポトの罪を彼はどう捉えているのか?

 社会主義は失敗した。左翼はその失敗から何一つ学ぼうとしない。その硬直した思考が時代から取り残されてゆく最大の原因だ。

 上記テキストは正しいのだが、薬師院の立ち位置からすると「党の方針に逆らうな」という共産党的エトスに過ぎない。

2019-08-13

社会心理学における最初の実験/『服従実験とは何だったのか スタンレー・ミルグラムの生涯と遺産』トーマス・ブラス


『服従の心理』スタンレー・ミルグラム

 ・服従心理のメカニズム
 ・キティ・ジェノヴィーズ事件〜傍観者効果
 ・人間は権威ある人物の命令に従う
 ・社会心理学における最初の実験

『権威の概念』アレクサンドル・コジェーヴ

権威を知るための書籍

 社会心理学の起源は古いが、実験科学としての社会心理学の歴史は新しく、たかだか100年程度のものに過ぎない。社会心理学における最初の実験は、ノーマン・トリプレットという心理学者によってなさたとされて、その論文は、1897年の『アメリカン・ジャーナル・オブ・サイコロジー』に掲載されている。トリプレットは、人が釣り竿のリールを回すという作業をするときには、一人でするよりも、他の人と競争するときの方がもっと早いということを実験によって示して見せた。

【『服従実験とは何だったのか スタンレー・ミルグラムの生涯と遺産』トーマス・ブラス:野島久男、藍澤美紀〈あいざわ・みき〉訳(誠信書房、2008年)】
 これはマラソンでも同様の結果が出る(『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家 53歳でもサブスリー』みやすのんき)。一方、自転車のロードレースの場合は空気抵抗を避けるために先頭が入れ替わる。

 競争するから早くなるというよりも同調性が働くのだろう。一種の共鳴・共振である。

 社会心理学は実験によって科学となった。ところが心理学そのものは実証性を欠いたまま物語の位置にとどまっている。精神科ほどデタラメな仕事はない。ただ大量の薬を処方して患者を無気力にしているだけだ。しかもこの業界は製薬会社にコントロールされている(『精神疾患は脳の病気か? 向精神薬の化学と虚構』エリオット・S・ヴァレンスタイン )。

 過去の僧侶は現代の医師へと姿を変えた。人々はただ信じ、額づき、そして犠牲となる。

2019-08-12

人間は権威ある人物の命令に従う/『服従実験とは何だったのか スタンレー・ミルグラムの生涯と遺産』トーマス・ブラス


『服従の心理』スタンレー・ミルグラム

 ・服従心理のメカニズム
 ・キティ・ジェノヴィーズ事件〜傍観者効果
 ・人間は権威ある人物の命令に従う
 ・社会心理学における最初の実験

『権威の概念』アレクサンドル・コジェーヴ

権威を知るための書籍

 このびっくりするような実験は、今現在に至るまで心理学の歴史のなかで重要なものとして、議論を巻き起こし続けている。なぜならば、人は権威のある人物に命じられれば、力で強制されなくても破壊的な行動をしてしまうことがあること。そして、悪意もなく異常でもない人が、非道徳的で非人間的な行為を行うことがあり得ると言うことが明らかになったからである。さらにいえば、ミルグラムの実験は、個人の道徳性について私たちが思っていたことを根本から揺るがせてしまった。道徳的なジレンマに直面したとき、普通は、人は良心に従って行動すると考える。しかし、権力が社会的な圧力を加えているような状況では、私たちが持っている道徳概念などはたやすく踏みにじられてしまうことをミルグラムの実験は劇的な形で示したのである。

【『服従実験とは何だったのか スタンレー・ミルグラムの生涯と遺産』トーマス・ブラス:野島久男、藍澤美紀〈あいざわ・みき〉訳(誠信書房、2008年)】

 道徳心を塊(かたまり)にしたような若い男がミルグラム実験に参加したと仮定しよう。彼は被験者に与える電圧の上昇を頑なに拒んだ。「続行してください」。若者は突如として恐るべき勢いで白衣の男に襲い掛かった。まず小指の骨を折り、軽く鼻の下にパンチを加え、猛然と喉仏に手刀を叩き込んだ。白衣の男は既に事切れていた。若者は実験に関与していた人々を全て殺害し、更にはミルグラムをも撲殺した。こうして人間の道徳心は見事に証明された。

 心理学の実験が胡散臭いのは人々の反応を見下す実験者の眼差しが原因だ。彼らは箱庭みたいな特殊な状況を設定し、易々(やすやす)と人間を語ってみせる。ミルグラム実験によっていくばくかの死人が出てしまうと思い込んでしまえば、上述したような男性が出てきてもおかしくはない。とすると極限状況における暴力やテロ行為を容認せざるを得ない結果となろう。

 私が知る限り良心を行動に移せるのは暴力的傾向の強い男性である。例外は鹿野武一〈かの・ぶいち〉くらいなものだろう。

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内気な人々が圧制を永続させる/『服従の心理』スタンレー・ミルグラム


 ・服従の本質
 ・束縛要因
 ・一般人が破壊的なプロセスの手先になる
 ・内気な人々が圧制を永続させる
 ・アッシュの同調実験

『服従実験とは何だったのか スタンレー・ミルグラムの生涯と遺産』トーマス・ブラス
『権威の概念』アレクサンドル・コジェーヴ
『マインド・コントロール』岡田尊司
『マインド・ハッキング あなたの感情を支配し行動を操るソーシャルメディア』クリストファー・ワイリー

権威を知るための書籍
必読書リスト その五

 圧制を永続させるのは、自分の信念を行動に移せない内気な人々である。

【『服従の心理』スタンレー・ミルグラム:山形浩生〈やまがた・ひろお〉訳(河出書房新社、2008年/河出文庫、2012年/同社岸田秀訳、1975年)】

 すなわち倉前盛通〈くらまえ・もりみち〉が言うところの小善人である(『悪の論理 ゲオポリティク(地政学)とは何か』)。「寄らば大樹の陰」という生き方は消極的になることで遺伝的優位性を確保する戦略なのかもしれない。戦乱の中で勇気を発揮する者はほぼ確実に死ぬ。戦時であれば臆病者の方が生存率が高まる(『病気はなぜ、あるのか 進化医学による新しい理解』ランドルフ・M・ネシー&ジョージ・C・ウィリアムズ)。

 近代において最も圧制(圧政)・服従に成功したのは社会主義国家であった。ナチスドイツ、ソ連、中国に共通するのは粛清の嵐である。ヒトラーは600万人の大量殺戮を行ったが、スターリンや毛沢東に至っては数千万単位で自国民を虐殺している(※中国は政策ミスによる餓死も含む)。

 去る参議院選挙でNHKから国民を守る党が1議席を取った。これは強制的に受信料を徴収するNHKの【圧制】に「ノー!」という声を上げた国民が一定数存在した事実を物語る。かつてNHK受信料を拒否していたのは左翼であった(『NHK受信料拒否の論理』本多勝一、1977年)。ところが放送終了時に流していた国旗国家放映の阻止に成功すると今度は番組が反日に傾いた。その後、NHK本局内には中国共産党の中央電視台日本支部が同居するに至った。これは中共の謀略機関である。他にも韓国放送公社、アメリカABCテレビ、オーストラリア放送協会にスペースを貸しているようだがスパイ防止法のない日本で外国メディアとの協力関係は情報漏洩の危険が高すぎる。

 NKHK受信料の支払いが国民の義務であればそれは税と考えてよかろう。一特殊法人に徴税権があるのはどう考えてもおかしいし、一特殊法人のための法律(放送法)があるのはもっとおかしい。