2020-04-06

国家は必ず国民を欺く/『ザ・レポート』スコット・Z・バーンズ監督・脚本・製作


・『ゼロ・ダーク・サーティ』キャスリン・ビグロー監督

 ・国家は必ず国民を欺く

『闇の眼』ディーン・R・クーンツ


 9.11テロの容疑者に対してCIAが行ってきた拷問の実態を調査する委員会がオバマ政権下のアメリカ上院で立ち上げられた。CIAが関係者との面談を禁じたため共和党は直ぐに撤退した。ブッシュ政権の罪を暴くことに後ろ暗い気持ちもあったことだろう。主人公は調査スタッフのリーダーに指名されたダニエル・J・ジョーンズだ。アクセスできる情報は文書・Eメールのみ。しかもコピーの持ち出しが許されていない。5年間に渡る調査を経てCIAの蛮行が明らかになった。二人の心理学者が説くEIT(強化尋問テクニック)という手法を用いて容疑者を尋問するのだ。その理論はやすやすと拷問を正当化した。

 逮捕されたのは容疑者とすら言えない人々だった。自白を強要するために水責めが行われる。顔面をタオルで覆って水を掛けるだけだが水中で溺れるのと同じ効果がある。結果的にCIAは科学的根拠もなく、尋問の経験すらない心理学者に8000万ドル以上を支払った。

 5年間かけて作った報告書は公開されることがなかった。ダニエル・J・ジョーンズは様々な圧力に屈することなく情報公開への道を探る。

 この作品は実話に基づいている。

CIAの拷問は「成果なし」 実態調査で分かったポイント

 ワシントン(CNN) 米上院情報特別委員会は9日、米中央情報局(CIA)が2001年の同時多発テロ以降、ブッシュ前政権下でテロ容疑者らに過酷な尋問を行っていた問題についての報告書を公表した。報告書は拷問が横行していたことを指摘し、その実態を明かしたうえで、CIAが主張してきた成果を否定している。

同委員会は「強化尋問」と呼ばれた手法を検証するため、5年間かけて630万ページ以上に及ぶCIA文書を分析し、約6000ページの報告書をまとめた。今回公表されたのは、その内容を要約した525ページの文書。この中で明かされた事実や結論のうち、重要なポイント8点を整理する。

1.「強化尋問」には拷問が含まれていた

同委員会のダイアン・ファインスタイン委員長は報告書の中で、CIAに拘束されたテロ容疑者らが02年以降、強化尋問と称する「拷問」を受けていたことが確認されたと述べ、その手法は「残酷、非人間的、屈辱的」だったと指摘。こうした事実は「議論の余地のない、圧倒的な証拠」によって裏付けられたとの見方を示した。

ベトナム戦争で拷問された経験を持つマケイン上院議員も9日の議会で、報告書の内容は拷問に相当すると言明した。

CIAは厳しい尋問手法が「命を救った」と主張してきたが、報告書はこれを真っ向から否定している。

2.拷問はあまり効果がなかった

「CIAの強化尋問は正確な情報を入手するうえで有効ではなかった」と報告書は指摘する。

CIAは強化尋問が効果を挙げたとする20件の例を掲げているが、報告書はそれぞれの例について「根本的な誤り」が見つかったと主張。こうした手法で得られた虚偽の供述をたどった結果、テロ捜査が行き詰まることもあった。CIAが拷問などによって入手した情報は容疑者らの作り話か、すでに他方面から入っていた内容ばかりだったという。

これに対してCIAは9日、当時入手した情報は「敵への戦略的、戦術的な理解」を深めるのに役立ち、現在に至るまでテロ対策に活用されていると反論した。

3.ビンラディン容疑者の発見は拷問の成果ではない

国際テロ組織アルカイダの指導者オサマ・ビンラディン容疑者を捕らえた作戦に、強制的な手法は不可欠だったというのがCIAの主張だ。

これに対して報告書は、同容疑者の発見につながった最も正確な手掛かりは、04年にイラクで拘束されたハッサン・グルという人物が拷問を受ける前の段階で明かしていたと指摘。拷問がなくても必要な情報は得られたとの見方を示す。

4.拷問の末、低体温症で死亡したとみられる拘束者もいた

CIAは拘束者らを消耗させるために、眠らせないという手法を取った。最長180時間も立たせたまま、あるいは手を頭の上で縛るなど無理な姿勢を維持させて睡眠を妨害した。

肛門から水を注入したり、氷水の風呂につからせたりする手法や、母親への性的暴行などを予告する脅迫手段も使われた。

排せつ用のバケツだけを置いた真っ暗な部屋に拘束者を閉じ込め、大音量の音楽を流す拷問もあった。

02年11月には、コンクリートの床に鎖でつながれ、半裸の状態で放置されていた拘束者が死亡した。死因は低体温症だったとみられる。

こうした尋問を経験した拘束者たちはその後、幻覚や妄想、不眠症、自傷行為などの症状を示したという。

同時多発テロの首謀者、ハリド・シェイク・モハメド容疑者は少なくとも183回、水責めの拷問を受けた。

アルカイダ幹部のアブ・ズバイダ容疑者が水責めで一時、意識不明の状態に陥ったとの報告もある。同容疑者に対する水責めを撮影した映像は、CIAの記録から消えていた。

5.CIAはホワイトハウスや議会を欺いていた

CIAの記録によれば、ブッシュ前大統領は06年4月まで強化尋問の具体的な内容を知らされていなかった。強化尋問の対象とされた39人のうち、前大統領が説明を受けた時点で、38人がすでに尋問を受けていたとみられる。CIAに残された記録はなく、これよりさらに多くの拘束者が対象となっていた可能性もある。

報告書によると、CIAはホワイトハウスや国家安全保障チームに対し、強化尋問の成果を誇張、ねつ造するなど「不正確かつ不完全な大量の情報」を流していた。司法省が強化尋問を認めた覚書も、虚偽の証拠に基づいて出されたという。

6.担当者は十分な監督や訓練を受けていなかった

収容施設の監督は経験のない若手に任され、尋問は正式な訓練を受けていないCIA職員が監視役もいない状態で行っていた。

報告書によれば、CIA本部の許可なしで強化尋問を受けた拘束者は少なくとも17人に上った。腹部を平手打ちしたり、冷たい水を浴びせたりする手法は司法省の承認を受けていなかった。ある収容施設で少なくとも2回行なわれた「処刑ごっこ」について、CIA本部は認識さえしていなかった。

7.同時テロ首謀者への水責めは効果がなかった

CIAは同時テロを首謀したモハメド容疑者から、水責めによって情報を引き出したと主張する。しかし当時の尋問担当者によれば、同容疑者は水責めに動じる様子をみせなかった。水責めを終わらせるために作り話の供述をしたこともあるという。

8.尋問手法を立案した心理学者らは大きな利益をあげた

強化尋問の手法開発に協力した2人の心理学者は05年、尋問プロジェクトを運営する企業を設立し、09年までに政府から8100万ドル(現在のレートで約97億円)の報酬を受け取った。

2人ともアルカイダやテロ対策の背景、関連する文化、言語などの知識については素人だったという。

CNN 2014.12.10 Wed posted at 12:38 JST

 びっくりしたのだがダイアン・ファインスタイン役の女優がそっくりである。実際のダニエル・J・ジョーンズ(Daniel J. Jones)は元上院議員のようだ。


 アメリカの実態は中国と遜色がない。かつてのソ連を思わせるほどだ。CIAはブッシュ大統領に知らせることなく拷問を繰り返していた。強大な権力は自分たちの過ちを隠蔽し、平然と偽りの大義を主張する。その意味から国家は必ず国民を欺くと言ってよい。共産主義も資本主義も成れの果てが全体主義に至るのは人類の業病(ごうびょう)か。オーウェルが描いた『一九八四年』は決して他人事ではない。

 何と言ってもキャスティングが素晴らしい。カットバックもユニークで脚本も秀逸だ。エンドロールでニヤリとさせられることは請け合いだ。地味ではあるが映画作品としては『ボーン・シリーズ』より上だ。

2020-04-05

マスク2枚の真相






なぜ政府は「布マスク2枚」を配るのか - ITmedia NEWS

2020-03-30

勝者敗因を秘め、敗者勝因を蔵す/『日本の敗因 歴史は勝つために学ぶ』小室直樹


『新戦争論 “平和主義者”が戦争を起こす』小室直樹
『日本教の社会学』小室直樹、山本七平
『日本国民に告ぐ 誇りなき国家は滅亡する』小室直樹
『陸奥宗光とその時代』岡崎久彦

 ・勝者敗因を秘め、敗者勝因を蔵す

『戦争と平和の世界史 日本人が学ぶべきリアリズム』茂木誠

日本の近代史を学ぶ
必読書リスト その四

 勝者敗因を秘め、敗者勝因を蔵(ぞう)す。
 勝った戦争にも敗(ま)けたかもしれない敗因が秘められている。敗けた戦争にも再思三考(さいしさんこう)すれば勝てたとの可能性もある。
 これを探求して発見することにこそ勝利の秘訣(ひけつ)がある。成功の鍵(かぎ)がある。行き詰まり打開の解答がある。これが歴史の要諦(ようてい)である。(まえがき)

【『日本の敗因 歴史は勝つために学ぶ』小室直樹〈こむろ・なおき〉(講談社、2000年/講談社+α文庫、2001年)以下同】

 21世紀の日中戦争はもはや時間の問題である。マーケットはチャイナウイルス・ショックの惨状を呈しており、4月に底を打ったとしても実体経済に及ぼす影響は計り知れない。既にアメリカでは資金ショートした企業が出た模様。既に東京オリンピックの延期が決定されたが、国民全員が納得せざるを得なくなるほど株価は下落することだろう。そして追い込まれた格好の中国が国内の民主化を抑え込む形で外に向かって暴発するに違いない。

 小室直樹は学問の人であった。自分の知識を惜し気(げ)もなく若い学生に与え、後進の育成に努めた。赤貧洗うが如き生活が長く続いた。あまりの不如意に胸を痛めた編集者が小室に本を書かせた。こうしてやっと人並みの生活を送れるようになった。日本という国には昔から有為な人材を活用できない欠点がある。小室がもっと長生きしたならば中国が目をつけたことと私は想像する。

 日本はアメリカの物量に敗(ま)けたのではない。たとえば、ミッドウェー海戦において、日本は物量的に圧倒的に優勢だった。それでも日本は敗けた。ソロモン消耗戦においても、アメリカの物量に圧倒されないで、勝つチャンスはいくらでもあった。
「勝機(しょうき/勝つチャンス)あれども飛機(ひき/飛行機)なし」などと、日本軍部は、勝てない理由を飛行機不足のせいにしたが、この当時、ソロモン海域(ウォーターズ)における日本の飛行機数はアメリカに比べて、必ずしもそれほど不足してはいなかった。
 アメリカの物量に敗けた。これは、敗戦責任を逃れるための軍部の口実にすぎない。
 あの戦争は、無謀な戦争だったのか、それとも無謀な戦争ではなかったのか。答えをひとことでいうと、やはり、あの戦争は無謀きわまりない戦争だった。
 しかし、無謀とは、小さな日本が巨大なアメリカに立ち向かったということではない。腐朽官僚(ロトン・ビューロクラシー)に支配されたまま、戦争という生死の冒険に突入したこと。それが無謀だったのである。
 明治に始まった日本の官僚制度は、時とともに制度疲労が進み、ついに腐朽(ふきゅう)して、機能しなくなった。軍事官僚制も例外ではない。いや、軍事官僚制こそが、腐朽して動きがとれなくなった。典型的なロトン・ビューロクラシーであった。
 そんな軍部のままに戦争に突入したのは、たしかに無謀だった。その意味で、あの戦争は「無謀」だったのである。

 大東亜戦争の敗因が腐朽官僚にあったとすれば、戦後の日本は「敗者敗因を重ねる」有り様になってはいないだろうか。特に税の不平等が極めつけである。官僚は省益のために働き、天下りを目指して働いている。巨大な白蟻といってよい。日本のエリートがエゴイズムに傾くのは教育に問題があるのだろう。やはり東大が癌だ。

 侍(さむらい)は官僚であった。語源の「侍(さぶら)ふ」は服従する意だ。責任を問われれば切腹を命じられた。個人的には主従の関係性を重んじるところに武士道の限界があると思う。主君が道に背けば大いに諌め、時に斬り捨てることがあってもいいだろう。

 日本は談合社会であり腐敗しやすい体質を抱えている。特に戦後長く続いた自民党の一党支配は政治家を堕落させた。金券腐敗は田中角栄の時代に極まった。そんな政治家に仕えている官僚が腐敗せずにいることは難しい。政官の後を追うように業も落ちぶれたのはバブル崩壊後のこと。日本からノブレス・オブリージュは消えた。

 国防を真剣に考えることのない国民によって国家は脆弱の度を増す。この国の国民は隣国からミサイルが飛んできても平和憲法にしがみついて安閑と過ごしている。日中戦争は必至と考えるが、負けるような気がしてきた。

呪術の本質は「神を操ること」/『日本人のためのイスラム原論』小室直樹


・『国民のための経済原論1 バブル大復活編』小室直樹 1993年
・『国民のための経済原論2 アメリカ併合編』小室直樹 1993年
・『小室直樹の中国原論』小室直樹 1996年
『小室直樹の資本主義原論』小室直樹 1997年
『悪の民主主義 民主主義原論』小室直樹 1997年
・『日本人のための経済原論』小室直樹 1998年
『日本人のための宗教原論 あなたを宗教はどう助けてくれるのか』小室直樹 2000年
『日本人のための憲法原論』小室直樹 2001年
『数学嫌いな人のための数学 数学原論』小室直樹 2001年

 ・呪術の本質は「神を操ること」

・『イスラーム国の衝撃』池内恵
『イスラム教の論理』飯山陽

 このモーセとの対話にかぎらず、古代イスラエルの神はなかなか自分の名前を明かそうとしない。
 たとえば、アブラハムの子孫のヤコブに対してもそうだった。
 ヤコブというのは、イスラエル民族の直接の先祖とされる男なのだが、この人物のところにある夜、神が現われて彼と格闘をする。
 結局、ヤコブが神を負かしてしまうのだが、このとき彼が神に「どうかあなたの名前を教えてください」と尋(たず)ねるのである。
 すると神は、
「なぜわたしの名前を知りたいのだ」
 と言ったきり、本当の名前を教えなかったとある(「創世記」三二)。
 なぜ、神はモーセにもヤコブにも、自分の名前を教えなかったのか。
 また、なぜ神は十戒の中で「あなたの神、主(しゅ)の名をみだりに唱(とな)えてはならない」と命令したのか。
 それは呪術(じゅじゅつ)につながるからだ。
 マックス・ウェーバーは当時のエジプトにおいて、「もしもひとが神の名を知って正しく呼ぶなら神が従(したが)うという信仰」(『古代ユダヤ教』内田芳明訳)があったことを指摘している。
 つまり、神の本名(この場合、ヤハウェ)を呼び、そこで願い事をする。そうすれば、神は人間の願いをかなえてくれるというわけだ。
 呪術の本質は、神をして人間に従わせるということにある。
 その目的をかなえるために、神の名前を呼ぶ、あるいは火を焚(た)く、生贄(いけにえ)を差し出す、呪文を唱えるなどの方法が古来“開発”されてきた。
 こうした呪術を知っている人のことを、普通は呪術者とか魔術師と呼ぶわけだが、実は古代宗教の神官(しんかん)というのも、みな呪術者のようなものである。

【『日本人のためのイスラム原論』小室直樹〈こむろ・なおき〉(集英社インターナショナル、2002年)以下同】

 密教の特徴は呪術性にあると私は考える。鎌倉仏教はむしろ日本密教と呼ぶのが正確だろう(ただし禅宗は除く)。祈祷(呪法)・曼荼羅(絵像、木像)・人格神の3点セットが共通している。

 呪術の本質が「神を操ること」と喝破した慧眼には恐れ入った。私は長らく祈りと悟りについて思索してきたが「祈りが一種の取り引き」であり、欲望から離れることを教えたブッダに背く行為であることは理解できた。それが「神を操ること」であるならば人は神の上位に立ってしまう。仏教でいえば「法(真理)を操ること」になるのだ。

 こうした呪術は古代エジプトだけにあったわけでは、もちろんない。
「宗教のあるところ、かならず呪術あり」と言ったほうがいいくらいだ。
 人間というのはわがままだから、とうにかして自分の都合のいいように物事を動かしたがる。だからこそ、呪術がはびこり、大きな力を持つようになるというわけだ。
 そこで、心ある宗教者ならこうした呪術を何とか追放しようと試みる。
 たとえば仏教においてもそうである。
 仏教は本来「法前仏後」(ほうぜんぶつご)の構造を持つのだから、釈迦(しゃか)といえども、この世の法則を動かすことはできない。
 したがって、仏を操る呪術が出てくる余地はないのだが、その代わりに超能力は存在する。  仏教ではそれを「五神通」(ごじんつう)と呼ぶ。(中略)
 こうした神通力は釈迦自身も持っていたのだが、釈迦はけっして神通力の開発を奨励(しょうれい)しなかった。
 というのも、超能力は修行を深めていけば、自然に備(そな)わるものであって、それを目的に修行するのは本末転倒(ほんまつてんとう)になるからである。神通力ほしさに修行するなど、外道(げどう)の行なうことであるというのが仏教のスタンスであった。
「であった」と過去形でなぜ書いたかといえば、こうした釈迦の精神は仏教の普及とともに失(うしな)われていったからである。
 ことに決定的だったのは大乗(だいじょう)仏教の成立である。
 すでに述べてきたように、仏教は本来、修行によって救済を得るというのがその本旨(ほんし)であった。だから、悟りを得ようとすれば、いきおい出家をしてサンガに入ることが求められたわけである。
 だが、仏教が広がるにつれて、多数の在家信者(ざいけしんじゃ)が生まれてくると、そうは言っていられなくなった。出家しなくても、悟りを得る方法はないのかという要求が高まったのである。
 そこで生まれたのが大乗仏教であったわけだが、仏教の大衆化は否応(いやおう)なく呪術の発達を促(うなが)した。護摩(ごま)を焚(た)き、あるいは呪(じゅ)を唱(とな)えることで仏(ほとけ)や菩薩(ぼさつ)を動かし、自分の願いをかなえようとする方法が開発されるに至(いた)ったのである。
 また、仏教を各地に普及させるため、超能力も積極的に使われるようになった。中国で仏教が広まったきっかけも、インドからきた浮図(ふと/仏教僧)が驚くべき超能力を使ったからに他ならない。

 日本に仏教が伝わった時は超能力ではなく医学が使われた。私はブッダを思慕する者ではあるが仏教徒ではない。戒律と修行が悟りにつながるとは到底思えないのが大きな理由だ。ブッダに近侍(きんじ)したアーナンダ(阿難)が悟りを開いたのはブッダ死後のことである。

 悟りには段階がある(『悟りの階梯 テーラワーダ仏教が明かす悟りの構造』藤本晃)。しかしながら預流果(よるか)に至った人すら私は出会ったことがない(『悟り系で行こう 「私」が終わる時、「世界」が現れる』那智タケシ)。仏教徒を名乗るのであれば、せめて悟ったか悟っていないのかをはっきりと表明すべきだろう。

 繰り返されるマントラ(真言)は輪廻そのものにすら見える。