2012-07-31

目撃された人々 28



目撃された人々(旧)

2012-07-30

目撃された人々 27


 声が美しかった。そして豊かな響きがあった。声だけ聴いていると60代半ばの女性とは思えなかった。ただし時折、優しい性格が裏目に出て自信のなさそうな態度が見受けられた。初めて会った頃からそれが気になって仕方がなかった。

 オフィスでもスリッパを引きずるように歩き、年齢に不相応なほど猫背がひどかった。

 さほど親しいわけでもなく個人的なことは殆ど知らない。にもかかわらず私の気を惹く何かがあった。

 多分、中年期以降に何かしらの不条理や不遇を経験してきたのだろう。その見えない生乾きの傷が、彼女の声を通して私の胸に響いてくるのだ。

 人は生きる気力を失った瞬間に姿勢が歪む。地球の引力に負けてしまうためだ。背骨は悲哀のカーブを描いて湾曲する。

 苦しい胸の内を彼女は手放していないことだろう。あるいは死ぬまで抱えてゆく覚悟を決めているのかもしれない。

 そんなことをつらつら思っていると、背中をさすりながら「私が一緒に泣いてあげるよ」と言いたい衝動に駆られる。

 私自身が精神的にタフなことと関係しているかどうかはわからぬが、心に傷を負っている人を見るとどうしても放っておけなくなる。

 お孫さんの写真を見せてくれた時は少女のように微笑んでいた。しかし孫の存在は人生の重力を跳ね返す力とはなり得ないことだろう。

 不幸の本質は悲哀と恐怖である。そこから離れるためには誰かに話す必要がある。「話す」が「離す」に通じるからだ。

目撃された人々(旧)

夕陽とラクダ

fantastic of The desert

 私がtumblrを始めてから最も多くリブログされたのがこの画像である。今日現在で433noteとなっている。

 雲のかかった夕陽がラクダたちの輪郭に光沢を与える。太陽が今日一日の生を終えて死に至る時、天と地は闇へ向かって溶け合い一つとなる。静かで穏やかな世界。いたずらに死を恐れる人は、きっと生が脅(おびや)かされているのだろう。



 他の写真も素晴らしいのでまとめて紹介しよう。以下、「dhahi alsaeedi's photostream」より。

The story of a thousand nights and night

Dreamy World

The magic of the desert

Imagination of the Middle East !!

cameleer

Undated

水上を往くラクダ

ドイツ市民も「再稼働反対!」


マイケル・ベイジェント、リチャード・リー、バイロン・ケイティ、小坂国継、バン・K・タープ、大熊一夫


 4冊挫折、1冊読了。

テンプル騎士団とフリーメーソン アメリカ建国に到る西欧秘儀結社の知られざる系譜』マイケル・ベイジェント、リチャード・リー:林和彦訳(三交社、2006年)/「はじめに」の文章が妙に言い訳がましく、長ったらしいのでやめた。

探すのをやめたとき愛は見つかる 人生を美しく変える四つの質問』バイロン・ケイティ:水島広子訳(創元社、2007年)/『ザ・ワーク 人生を変える4つの質問』に続く著作。これは女性向けだと思われる。前著を読んでいる人は不要だろう。文体の違いに驚く。

西田幾多郎の思想』小坂国継〈こさか・くにつぐ〉(講談社学術文庫、2002年)/良書である。まず文章がいい。アプローチの仕方も初心者に親切だ。西田哲学に興味がある人は本書から入るのがよいと思う。私はさほど関心がない。

タープ博士のトレード学校 ポジションサイジング入門 スーパートレーダーになるための自己改造計画』バン・K・タープ:長尾慎太郎監修、山下恵美子訳(パンローリング、2009年)/洒脱な文章でぐいぐい読ませる。良心的な本の作りだが写真がみすぼらしい。初級・中級者向けメンタルトレーニングとしては満点に近い内容だと思う。

 39冊目『つくりごと 高齢者福祉の星岩川徹逮捕の虚構』大熊一夫(創出版、2012年)/あの『ルポ・精神病棟』(朝日文庫、1981年)の大熊一夫である。怒りのあまり一晩で読んでしまった。我が国の民主主義の現状を知りたいなら、柳川喜郎著『襲われて 産廃の闇、自治の光』と本書を真っ先に読むべきだ。ど田舎の村社会は強い者に従う。そして検察と警察が罪を捏造(ねつぞう)するのだ。法治国家を名乗りながら日本では法が機能していない事実がよく理解できる。裁判官という人種は魑魅魍魎も同然で良心はおろか、常識すら持ち合わせていないと見える。

『DAYS JAPAN』2012年08月号 「とどろく『再稼働反対』の声」

DAYS JAPAN (デイズ ジャパン) 2012年 08月号 [雑誌]

目次

アニマルワールド
小さなお友達
写真/アフロ

とどろく「再稼動反対」の叫び
写真/野田雅也、小原直史、東京新聞

トピックス
福井県●民意ふりきり大飯再稼動
写真/津田壮章、森祐一
沖縄県●オスプレイ配備計画に断固反対を
写真/PANA通信社

球美(くみ)の里 オープン

特集 大インド・人間紀行
①混沌の中、脈動する人々
写真・文/アーコ・ダッタ
②生命の奥底から
写真・文/高橋邦典
③日本の若者による記録への挑戦
写真/林直樹、井田裕基、川上真、中川智之、龍神孝介、中川諒、伊藤淳子、宮森昭子(DAYSフォトジャーナリスト学校第3期生)
滝澤早苗(DAYSフォトジャーナリスト学校第1期生)
文/中川智之

無視される犠牲と差別の責任者
文/大田昌秀
写真/浅見裕子、米空軍/PANA通信社

連載 チェルノブイリとフクシマ 第7回
福島の母たちから沖縄・久米島へ
文/鈴木薫

コラム「OUTLOOK」
6.29の伝え方にみる各紙の市民メディア度
文/斎藤美奈子

スーダン・ヌバ山岳地帯
強く美しい地の民
写真・文/フランチェスコ・ジゾラ

私の取材機材 47 海野和男

バックナンバー・定期購読・専用バインダーのご案内

おばあちゃんと猫18  西瓜と夏のお昼寝
写真・文/伊原美代子

コラム「おしどりマコ・ケンの実際どうなの!?」
飯舘村仮設住宅 自治会費の謎

DAYSフォローアップ
「あの記事」のその後を伝えます

フィリピン
違法金鉱山に働く
写真・文/丹羽理

営みの地球 89
昆虫たちの時間
写真・文/海野和男

編集後記/次号予告、お知らせ

表紙:Photo by Masaya NODA/JVJA
関西電力大飯原子力発電所の再稼働に反対して、首相官邸前で行われたデモの空撮写真。2012年6月29日

シリア革命の背後にアメリカ


2012-07-28

ジャレド・ダイアモンド著『銃・病原菌・鉄 1万3000年にわたる人類史の謎』が文庫化

文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫) 文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)

 アメリカ大陸の先住民はなぜ、旧大陸の住民に征服されたのか。なぜ、その逆は起こらなかったのか。現在の世界に広がる富とパワーの「地域格差」を生み出したものとは。1万3000年にわたる人類史のダイナミズムに隠された壮大な謎を、進化生物学、生物地理学、文化人類学、言語学など、広範な最新知見を縦横に駆使して解き明かす。ピュリッツァー賞、国際コスモス賞、朝日新聞「ゼロ年代の50冊」第1位を受賞した名著、待望の文庫化。

 世界史の勢力地図は、侵略と淘汰が繰り返されるなかで幾度となく塗り替えられてきた。歴史の勝者と敗者を分けた要因とは、銃器や金属器技術の有無、農耕収穫物や家畜の種類、運搬・移動手段の差異、情報を伝達し保持する文字の存在など多岐にわたっている。だが、地域によるその差を生み出した真の要因とは何だったのか? 文系・理系の枠を超えて最新の研究成果を編み上げ、まったく新しい人類史・文明史の視点を提示した知的興奮の書。

マイケル・サンデル著『これからの「正義」の話をしよう いまを生き延びる哲学』が文庫化

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 「1人を殺せば5人が助かる。あなたはその1人を殺すべきか?」。正解のない究極の難問に挑み続ける、ハーバード大学の超人気哲学講義“JUSTICE”。経済危機から大災害にいたるまで、現代を覆う苦難の根底には、つねに「正義」をめぐる哲学の問題が潜んでいる。サンデル教授の問いに取り組むことで見えてくる、よりよい社会の姿とは? NHK『ハーバード白熱教室』とともに社会現象を巻き起こした大ベストセラー、待望の文庫化。

ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業〔上〕(ハヤカワ・ノンフィクション文庫) ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業〔下〕(ハヤカワ・ノンフィクション文庫) それをお金で買いますか――市場主義の限界 NHK DVD ハーバード白熱教室 DVD BOX [DVD]

大津いじめ問題 加害少年親が撒いたビラが遂に掲載される!



被害届、大津署が受理拒否 大津中2自殺

Bcause I am a Girl 2011 男の子の役割 (日本語字幕版)~プラン・ジャパン

「幼なじみの98%がギャングになりました。そのうち60%はすでに亡くなり、残りは刑務所に入っています。2%はまだギャングを続けています」ウィリアム(エルサルバドル)


プラン・ジャパン

2012-07-25

権威を知るための書籍


     ・キリスト教を知るための書籍
     ・宗教とは何か?
     ・ブッダの教えを学ぶ
     ・悟りとは
     ・物語の本質
     ・権威を知るための書籍
     ・情報とアルゴリズム
     ・世界史の教科書
     ・日本の近代史を学ぶ
     ・虐待と知的障害&発達障害に関する書籍
     ・時間論
     ・身体革命
     ・ミステリ&SF
     ・必読書リスト

「自分は権威とは無縁だ」――そう思っている人は既にコントロールされる側に身を置いていると考えてよい。権威と権力は異なる。権力が外圧性・暴力性を帯びているのに対して、権威は内発的に従わせる力を持っている。我々は知識人、専門家、技術者、すなわちオーソリティの言説を疑おうとしない。原発だって事故が起こるまではさほど疑問も抱かなかったはずだ。

 少々畑違いの書籍も入っているが、ま、古本屋の良心だと思っていただければ、これ幸い。

 権威のメカニズムを解体するには、ここから「物語」を読み解く必要がある。

物語の本質~青木勇気『「物語」とは何であるか』への応答



『無責任の構造 モラルハザードへの知的戦略』岡本浩一
『権威主義の正体』岡本浩一
『人間この信じやすきもの 迷信・誤信はどうして生まれるか』トーマス・ギロビッチ
『ユーザーイリュージョン 意識という幻想』トール・ノーレットランダーシュ
『服従の心理』スタンレー・ミルグラム
『権威の概念』アレクサンドル・コジェーヴ
『一九八四年』ジョージ・オーウェル
『ルワンダ大虐殺 世界で一番悲しい光景を見た青年の手記』レヴェリアン・ルラングァ

スタンレー・ミルグラム著『服従の心理』が文庫化


服従の心理 (河出文庫)
スタンレー ミルグラム
河出書房新社
売り上げランキング: 73,746

 これは河出書房新社の大盤振る舞いといってよい。

『服従の心理』スタンレー・ミルグラム

Hand Shadows - on KurdistanTV


 影絵というシンボルがマンダラ思索にヒントを与えてくれる。


WWF(世界自然保護基金)ジャパン

Best of Just For Laughs Gags - Best Jesus Pranks


 信じる者は救われ……そして騙される(笑)。「オー・マイ・ゴッド!」。

陳満咲杜、蓮村誠、臼井幸治、チャック・ホーガン


 2冊挫折、1冊読了。

着物トレーダーを卒業せよ 陳満咲杜の為替の真実』陳満咲杜〈ちん・まさと〉(青月社、2008年)/スーパーのチラシみたいな表紙、著者の経歴も本人によるものと思われるが、まるで履歴書の抱負のようだ。紙質が悪い上、活字も読みにくい。以下引用――「神の見えざる手」というのは、スミスの『国富論』の中に出てくる言葉で――などと臆面もなく書いているが原文に「神の」という枕詞は存在しない。1+1=2みたいな内容ばかりで何も書いてないに等しい。amazonの評価も眉に唾して見た方がよい。

黄金のアーユルヴェーダ・セルフマッサージ 1日10分 伝統のデトックス法で奇跡の美肌』蓮村誠、臼井幸治監修(河出書房新社、2006年)/「九鬼 純正太白胡麻油」を使ったセルフマッサージ。読んだだけで、まだ行っていない。ま、やるとしたら「マルホン 太白胡麻油」を買う予定。こっちの方がずっと安い。ふくらはぎの筋肉痛を何とかしようと思って開いてみたのだが、ちょっと畑違いであった。美肌はどうでもいいが、自分の身体を知るためにやってみる価値はあると思う。

 38冊目『流刑の街』チャック・ホーガン:加賀山拓朗訳(ヴィレッジブックス、2011年)/文章は素晴らしいのだがストーリー展開と主人公の造形がダメだ。実にもったいないと思う。序盤の硬質な緊張感が中盤からダレ始める。で、最終的には安っぽいパルプ小説になっているのだ。主人公のニール・メイヴンにリーダーとしての資質はなくても構わないが、あまりにもヒーロー的な要素に欠けている。復讐も中途半端だ。ボスのロイスと麻薬捜査官のラッシュも見分けがつかない。散々文句を並べておいたが、警句を思わせる文章を味わうだけでも損はない。

2012-07-22

金色の抽象画


 金色(こんじき)に輝く水をバックに無数の格子が画面を埋めている。まるで大自然が描いた抽象画のようだ。水と草は生の象徴でありながらも、影を強調しているため死が前面に出ている。一本一本の草という存在は意味をなさず、完全に環境と融け合う。ここに生と死の分離はない。

First Day of 2012

ジャック・ロンドン、西田幾多郎、檜垣立哉、中江兆民、リチャード・コッチ


 5冊挫折。

海の狼』ジャック・ロンドン:関弘訳(トパーズプレス、1996年)/出だしのテンポが悪い。翻訳の文体も馴染めず。

思索と体験』西田幾多郎〈にしだ・きたろう〉(岩波文庫、1980年)/愛児を亡くした一文のみ読む。他は歯が立たず。

西田幾多郎の生命哲学 ベルクソン、ドゥルーズと響き合う思考』檜垣立哉〈ひがき・たつや〉(講談社現代新書、2005年)/好著。文章がいい。しかしながらクリシュナムルティを知った後で西田哲学は不要と判断した。おかげでベルクソンとドゥルーズも読む手間が省けた。

一年有半・続一年有半』中江兆民:井田進也校注(岩波文庫改版、1995年/東京博文館、1901年〈中江篤介〉)/有名な冒頭の文章だけ読む。兆民の遺著。序文を弟子の幸徳秋水が書いている。大逆事件で日本の自由民権運動は死んだのかもしれない。

新版 人生を変える80対20の法則』リチャード・コッチ:仁平和夫、高遠裕子訳(阪急コミュニケーションズ新版、2011年/阪急コミュニケーションズ、1998年)/数年前なら貪るように読んだことだろう。タイミングが遅かった。チト、手垢のついた感が否めない。実際に我がものとするには少々訓練を要することだろう。簡単なことほど難しい。これはオススメ。

やる気スイッチがある場所


2012-07-21

アドルフ・ヒトラーとジョン・F・ケネディの演説



 驚くべきことにヒトラーの演説は結論部分が、ケネディの大統領就任演説と一致している。

 だからこそ、米国民の同胞の皆さん、あなたの国があなたのために何ができるかを問わないでほしい。 あなたがあなたの国のために何ができるかを問うてほしい。

大統領就任演説(1961年) ジョン・F・ケネディ




 とすると第二次世界大戦後のアメリカとユダヤ資本はヒトラーの実績から多くを学んだ可能性がある。ジョン・F・ケネディの父親ジョセフ・P・ケネディやジョージ・W・ブッシュ大統領の曽祖父にあたるジョージ・ウォーカーはヒトラーを支持していた。

 私はノーマン・G・フィンケルスタイン著『ホロコースト産業 同胞の苦しみを「売り物」にするユダヤ人エリートたち』を読み、ヒトラーを悪の代名詞として扱う言説を一切信用しなくなった。尚、ヒトラーを生むに至るまでのドイツの情況については以下の書籍が詳しい。

文庫 アメリカはなぜヒトラーを必要としたのか (草思社文庫)
菅原 出
草思社
売り上げランキング: 145,277

ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナリオ 影の支配者たちがアジアを狙う
宋 鴻兵
武田ランダムハウスジャパン
売り上げランキング: 136,074

通貨戦争 影の支配者たちは世界統一通貨をめざす
宋 鴻兵
武田ランダムハウスジャパン
売り上げランキング: 161,206

アメリカ経済界はファシズムを支持した/『アメリカはなぜヒトラーを必要としたのか』菅原出
ジョン・F・ケネディ
ガンジーがヒトラーへ宛てた手紙「我が友よ」

白バラ抵抗運動~ハンス・ショルの覚悟/『「白バラ」尋問調書 『白バラの祈り』資料集』フレート・ブライナースドルファー編


 のちにゲシュタポの尋問でも自供しているとおり、ハンス・ショルは積極的な抵抗運動をすることを決断していた。「〔……〕私は国家の市民として、自分の国家の運命に対して無関心でいたくないと思ったので、自分の信条を頭のなかで考えているだけではなく、行動に表わそうと決意しました。それで私はビラを書き、印刷することを思い立ったのです。
 私がビラを印刷し、配布しようと決意した時、そのような行動が、現在の国家に反する行為であることは自覚していました。私は、内面からわきおこるやむにやまれぬ気持ちでこうしなくてはならないと確信し、その内面的な責務は、兵士として宣誓した忠誠の誓いよりも重要なものだと考えていました。それによって、どのようなことを自分が被らなくてはならないかはわかっており、このことで自分の命を失うことも覚悟していました。」

【『「白バラ」尋問調書 『白バラの祈り』資料集』フレート・ブライナースドルファー編:石田勇治、田中美由紀訳(未來社、2007年)】

 この覚悟はギロチンによる処刑で実行された。何と清冽な魂であろうか。ビラに記された言葉はスマートフォンで綴られる「つぶやき」とは異質なものだ。

ヒトラーに抗議したドイツの学生達/『「白バラ」尋問調書 『白バラの祈り』資料集』フレート・ブライナースドルファー編
無関心な態度が凶暴な行為を支える

 時代と人々の動向が一方に振り切れようとする時、必ず反対側にバランスする力が働く。本来であれば学問や知性を生業(なりわい)とする面々が担うべき仕事であろう。しかし彼らの多くはステップアップのためとあらば上司の言いなりになるサラリーマンと一緒だ。地位と報酬目当ての彼らは結果的に体制を支える側に身を寄り添える。

 良心を支えているのは感情である。そしてナチスを支えていたのもまた国民の感情であった。「生の本質は反応である」という私の持論からすれば、異なる二つの反応があるだけだ。だが決定的な違いが見て取れる。第一次世界大戦に敗れ、ハイパーインフレに襲われたドイツ国民は熱狂を求め、感情に流されただけであった。一方、白バラには強靭な意志と柔軟な理性が働いていた。

 大衆の反応はいつだって反射的なものだ。ただ苦痛を避けて快楽を求めているのが実態であろう。民主主義は衆愚政治となることを避けられない。かつて民衆が賢明であった時代はなかったし、これからもないことだろう。

 その愚かさが白バラの5人をギロチンの下へ運んだのだ。「考えないこと」は「正しい人を殺すこと」でもあった。その歴史の刻印を忘れまい。

白いバラ
白バラの庭

「白バラ」尋問調書―『白バラの祈り』資料集 白バラの祈り -ゾフィー・ショル、最期の日々- [DVD]

sirobara
【ミュンヘン大学前につくられた記念碑】



2012-07-20

首相「日本からどうこう言う話でない」 オスプレイ配備


 野田佳彦首相は16日、米軍が沖縄に配備予定の新型輸送機オスプレイについて「配備は米政府の方針であり、同盟関係にあるとはいえ(日本から)どうしろこうしろと言う話では基本的にはない」と述べ、日本側から見直しや延期は要請できないとの認識を示した。フジテレビのニュース番組に出演して語った。

 首相は「わが国も例えば国土交通省や第三者の知見で安全性を再確認する。そのプロセスを飛ばして飛行運用することはない」と、政府として独自に安全性を検証する考えも示した。

 また、九州地方を襲った豪雨の激甚災害指定について「そういう方向で迅速に対応したい」と語るとともに、自ら被災地を視察する可能性も示した。消費増税法案の成立後に検討している補正予算については「8月(13日)にGDP(国内総生産)4~6月期の速報値が出るので、経済の動向も踏まえて対応したい」と説明。「つくる場合には主要政党に協力をいただく努力は当然すべきだ」として、自民、公明両党に協力を求める考えを示した。

朝日新聞デジタル 2012-07-16

申請却下は二審も「違法」=路上生活者の生活保護訴訟-東京高裁


 わずかな所持金しかなく、住む場所もないのに生活保護の申請を却下したのは違法だとして、路上生活者だった男性(61)が東京都新宿区に対し、却下決定の取り消しなどを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(春日通良裁判長)は18日、却下決定を取り消し、生活保護開始を決定するよう命じた一審東京地裁判決を支持し、同区の控訴を棄却した。
 同区は、男性は働く能力があるのに機会を得る努力をしておらず、支給要件を満たさないと主張していた。春日裁判長は、男性に働く意思はあったが、住居や所持金がなかったことなどから直ちに就労できたとは言えないとした一審の判断を支持した。

時事ドットコム 2012-07-18

生活保護

コペルニクスを非難したマルティン・ルター/『黒体と量子猫』ジェニファー・ウーレット


『人類が知っていることすべての短い歴史』ビル・ブライソン

 ・かつて無線は死者との通信にも使えると信じられていた
 ・コペルニクスを非難したマルティン・ルター

 1514年、ある匿名の手書きの小冊子が数人の特定の天文学者たちのあいだで回覧されるようになる。その全員がコペルニクスの個人的な友人で、つまり作者は彼本人だった。“小解説”(あるいはラテン語で「コメンタリオス」)として知られるこの冊子には、コペルニクスの新しい宇宙モデルが展開されている。太陽が中心に位置し、地球やほかの惑星がそのまわりを巡っていた。これは太陽の“動き”の年周期を説明していた。当時知られていた六つの惑星すべての並びを正確に測定――水星、金星、地球、火星、土星、木星――し、星の位置の見かけが変化するのは、実際には地球そのものが回転しているために起きる、と結論づけた。最終的に、惑星の明らかに逆行した動きは、動く地球の上からそれを観察しているから起こる、と主張した。こうした原理が『天球の回転について』の基礎を形作った。

【『黒体と量子猫』ジェニファー・ウーレット:尾之上俊彦、飯泉恵美子、福田実訳(ハヤカワ文庫、2007年)】

「コメンタリオス」は「コメンタリオルス」という表記もあるようだ。そして『天球の回転について』(『天体の回転について』とも)が刊行されたのが1543年のこと。コペルニクスは同年に死去する。彼が不本意に過ごしたであろう30年間を思わずにはいられない。

 西洋中世における教会はかように恐ろしい存在であった。そりゃそうだ。魔女の烙印を押されれば直ちに焚殺(ふんさつ)されてしまうのだから。コペルニクスやガリレオ・ガリレイ(1564-1642年)を臆病者と謗(そし)るのは見当違いの了見だ。むしろ人間の思考や興味が「神を超越した」ことに喝采を送るべきだろう。

 多くの者にとって、これは地球は動かないということを意味した。プロテスタントの改革者マルティン・ルターが1539年にコペルニクスを非難し――『天球の回転について』はまだ出版されていなかったが、「小解説」は出回っていた――こうぶちまけた。「この愚か者は天文科学すべてをひっくり返したいのだ! しかし聖書が教えるように、ヨシュアは太陽に進みをとめるようにいったのであって、地球にではない」。聖書の解釈がまちがっているかもしれないという考えが、教会指導者たちには浮かぶはずがないのは明らかだった。

 ヨシュアとはカナン人の大量虐殺を行った指導者である。宗教改革はルターが「聖書に帰れ!」と抗議(プロテスト)したことに由来する。実際は教会改革であったこの運動は当然の如く原理主義的色彩に染め上げられた。

マルティン・ルターが生まれた日

 ルターが怒りの矛先をコペルニクスへ向けたのは便秘と関係があったのかもしれぬ。彼はコペルニクスにではなく便器にぶちまけるべきであった。

 宗教は人間を盲目にする。強い信念が視点を固定化する。独断的な説をドグマと称するが、ドグマには教義・教理の意味もある。教義に基づく宗教は、人間を教義という鋳型(いがた)にはめ込み、同じ規格の人間を製造する。

 

革命の出版:コペルニクスの地動説
コペルニクス
ニコラウス・コペルニクス
「天球の回転について」について
天球回転論(コペルニクス)
高橋憲一訳・解説『コペルニクス・天球回転論』みすず書房,1993年の目次

2012-07-18

米軍がイラクから持ち出した古文書はコンテナ48000本、数百万点に及ぶ


2012-07-17

いじめられたら法務局か法律相談所に人権侵害の申し立てをするのがオススメ


バイロン・ケイティ、スティーヴン・ミッチェル


 1冊読了。

 37冊目『ザ・ワーク 人生を変える4つの質問』バイロン・ケイティ、スティーヴン・ミッチェル:ティム・マクリーン、高岡よし子監訳、神田房枝訳(ダイヤモンド社、2011年/安藤由紀子訳、アーティストハウスパブリッシャーズ、2003年)/刮目すべき一書。思考を反転させることで世界を相対化するところが、ブッダやクリシュナムルティと一致している。「ワーク」とは一種のカウンセリングだが、かくも単純な問いが劇的な効果を生む事実に驚嘆した。「それは本当でしょうか?」「その考えが本当であると、絶対言い切れますか?」「そう考えるとき、(あなたは)どのように反応しますか?」「その考えがなければ、(あなたは)どうなりますか?」――たったこれだけだ。具体的にはワークシートに書いた文章を元に行われるわけだが、それにしてもどうってことはない。ところが、ほんの数分間のやり取りで相談者は生まれ変わるのだ。偽りの解釈、誤った思考がどれほど人生を不幸にしていることか。祈りを捧げたり、修行をする必要はまったくない。ただありのままの現実を受け容れればよい。義務教育にワークを採用するべきだ。

2012-07-15

大飯原発再稼働の理由

小室直樹


 1冊読了。書き忘れ。

 36冊目『悪の民主主義 民主主義原論』小室直樹(青春出版社、1997年)/いやはや勉強になった。小室直樹の原論シリーズにはハズレがない。民主主義は「所有の絶対性」から生まれた。この絶対性を支えているのがキリスト教の神、という指摘に目から鱗が落ちる。更に民主主義と資本主義が双生児である事実も明かす。「厳選120冊」に入れた。既に120冊では収まらなくなっている。

伝統的な子育て



togetter

残業代含めた国家公務員の本当の年収は民間約2倍の808万円


 野田政権は消費税率を2014年4月から8%、2015年10月に10%に引き上げようとしている。そのほか、復興増税も加わり、国民の負担は大きく膨らむ。

 国民が増税の真の痛みに気づく頃、シロアリ役人たちはホクホク顔で給料の大幅アップの恩恵を受ける。政府は「痛みを分かち合う」と今年から高すぎる国家公務員の給料を引き下げたが、国民への消費税増税が恒久的に続くのに対して、役人の給与カットは「2年限定」だ。

 増税で国民から搾り取る税金が国庫を潤すと同時に、役人の給与は再び元の高い水準に戻され、増税の痛みを感じなくて済むカラクリなのである。だから霞が関官僚や自治労などの公務員労組は「国民に増税すれば自分たちの給料が増え、高給を維持できる」と今回の増税法案に大賛成している。

 改めてシロアリ役人の特権を調べ上げると、コイツラに国民のカネをぶん取られることに心底、怒りが湧いてくる。

 最もわかりやすい官民格差が「給与」である。人事院によれば、国家公務員(行政職)の平均年収は637万円。対して民間サラリーマンは平均412万円(2010年の国税庁の民間給与実態統計調査)。単純に比較すれば、国家公務員はサラリーマンの1.5倍の収入を得ているように見える。しかし実際の格差はさらに大きい。

 この平均年収637万円には「残業代」が含まれていないからだ。

 2012年度予算の人件費をみると、「国家公務員の給与費」は3兆7737億円。ここから自衛官の給与費1兆3482億円を引くと2兆4255億円となり、これが自衛官以外の国家公務員の給与や各種手当の総額となる。これを人数で割ると、1人当たりの金額は808万5000円。これが残業代と交通費を含めた国家公務員の「本当の年収」となる。民間サラリーマンの約2倍である。

 なお637万円の平均年収からは「指定職の給与」も除外されている。指定職とは各省の審議官以上の高級官僚のことで、全省庁に約1200人いる。その年収は局長クラスで1724万円、次官なら2265万円である。平均年収が低くなるのは当然だ。こんなイカサマの政府発表を、検証もせずにそのまま報じる記者クラブも無能で罪深い。

『週刊ポスト』2012年7月20・27日号

年収の官民格差 守衛業務は公務員686万円、民間309万円

2012-07-14

雑誌「小学一年生」の広告が秀逸すぎる

苫米地英人


 1冊読了。

 35冊目『現代版 魔女の鉄槌』苫米地英人〈とまべち・ひでと〉(フォレスト出版、2011年)/『なぜ、脳は神を創ったのか?』と『苫米地英人、宇宙を語る』を読んでおくと、より一層理解が深まる。更に小室直樹著『日本人のための宗教原論 あなたを宗教はどう助けてくれるのか』を開けば完璧だ。魔女狩りという炎の燃料になったのが『魔女に与える鉄槌』(1487年刊)であった。小室本でも詳しく取り上げている。苫米地はフェイスブックやツイッターが新たな『魔女に与える鉄槌』になり得ると指摘する。混沌としたインターネット領域を衆愚が覆い尽くすことだろう。苫米地本としては良心的な部類になるが、それでも各ページの上部に不要な余白がある(笑)。脳機能科学者というよりは、脳機能知能犯というべきか。