・笑い飛ばす知性
・時は金なり
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・『働かない 「怠けもの」と呼ばれた人たち』トム・ルッツ
・『ピーターの法則 創造的無能のすすめ』ローレンス・J・ピーター、レイモンド・ハル
・『パーキンソンの法則 部下には読ませられぬ本』C・N・パーキンソン
・『新版 人生を変える80対20の法則』リチャード・コッチ
・必読書リスト その三
インチキイタリア人(※翻訳者も見当たらないので多分、本当は日本人)と思われるパオロ・マッツァリーノだが、卓越した諧謔(かいぎゃく)を支えているのは広範な知識である。例えばこう――
14世紀、ルネサンス期になると、アルベルティーなる人物が「時は金なり」というキャッチフレーズコピーを使い始めます(ただし「時は金なり」を本格的に広めたのは、元祖ベストセラービジネス書ライターでもあった、18世紀アメリカのフランクリンです)。神の所有物であった時間を、人間が労働のために売り買いするようになったのです。労働者が時間で管理されるようになりました。ルネサンスというのは、人間性の尊重、個性の解放などを目指した文化の革新運動だったはずです。でも、尊重・解放されたのは金持ちだけで、貧乏人は皮肉なことに、一層キビシク管理されるようになったのです。
【『反社会学講座』パオロ・マッツァリーノ(イースト・プレス、2004年/ちくま文庫、2007年)以下同】
一般的に「時は金なり」はフランクリンの言葉として知られている。「くろご式 ことわざ辞典」でもそのように紹介している。こういった細かいところに目が行き届いているから、パオロ・マッツァリーノは侮ることができない。
で、「くろご式」にはフランクリンのテキストが掲載されている――
時は金なりということを忘れてはならない。自らの労働により1日10シリングを稼げる者が、半日出歩いたり、何もせず怠(なま)けていたりしたら、その気晴らしや怠惰に6ペンスしか使わなかったとしても、それだけが唯一の出費と考えるべきではない。彼はさらに5シリングを使った、というよりむしろ捨てたのである。
【337 時は金なり】
「時は金なり」って時給のことだったんだね。この辺りの労働文化史については、トム・ルッツ著『働かない 「怠けもの」と呼ばれた人たち』(青土社、2006年)が詳しい。
ベンジャミン・フランクリンが生きたのは、ちょうどイギリスで産業革命が起こった時代である。それまでは農業を営んでいた人々が、大量生産の担い手として新たな労働力となった。つまり、ここから「人生の切り売り」が始まったというわけだ。そして労働は、機械の一部となることを意味するようになった。上級奴隷――これは言い過ぎか。
でも、現代にしたって、労働そのもので自己実現を可能にできる人は一握りしか存在しないことだろう。とすると、労働には人それぞれに何らかの強制力が働いていると考えられる。働く行為そのものが幸福感に包まれていなければ、「何かのために」働いていることになる。最も多い理由は「食うため」だろう。ほら、やっぱり上級奴隷だ。もちろん私だってそうだ。胸を張って答えるよ。
人生の半分以上の時間を占める労働が、こんな状態でいいはずがない。一体全体、「自分の人生」はどこへ行ってしまったのだろう? 明日からでも探しに行こうと思う。「時は金なり」なんてえのあ、資本家を利するための虚言であろう。