2011-08-08

モンサント社が開発するターミネーター技術/『自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する』安田節子


 世界はカラクリで動いている。金融というゼンマイを巻くことで経済という仕掛けが作動する仕組みだ。そもそも資本主義経済は壮大なねずみ講といってよい。消費者に損をしたと思わせないために広告代理店がメディアを牛耳っている。テレビCMは五感を刺激し欲望を掻(か)き立てる。経済通は口を開けばGDPの成長を促す。生産と消費は食物摂取と排泄(はいせつ)みたいなものだ。あ、そうか、我々は無理矢理エサを食べさせられるガチョウってわけだな。

フォアグラができるまでアヒルのワルツver.

 ローマクラブが『成長の限界』で人類の危機を指摘したのが1972年のこと。これが椅子取りゲームの合図であった。エネルギーと食糧を先進国で支配し、発展途上国が豊かになることを未然に防ごうとしたわけだ。

世界中でもっとも成功した社会は「原始的な社会」/『人間の境界はどこにあるのだろう?』フェリペ・フェルナンデス=アルメスト

 先物相場で取引されるものをコモディティ(商品)というが、貴金属と非鉄金属以外は食糧とエネルギーである。元々生産者を保護するための先物相場は大阪の堂島米会所から始まったものだ。ところが現在は完全に投機の対象となっている。

 日本の食糧自給率はカロリーベースで40%、生産額ベースで70%となっている(2009年)。これは多分、アメリカの戦後支配によって誘導されてきた結果であろう。敗戦の翌年(1946年)、学校給食にパンが用いられた。アメリカ国内で小麦が余っていたためだ。

戦後の食の歴史を学ぶ:「日本侵攻 アメリカ小麦戦略」
現在のアレルギー性疾患増加は戦後の「栄養改善運動」と学校給食、そしてアメリカの小麦戦略によって作られた

 食糧とエネルギー、はたまた軍事に至るまで外国頼みである以上、日本が国家として独立することは極めて困難だ。

 そしてアメリカはTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)という新ルールを日本に課すことで、カラクリを一層強化しようと目論んでいる。

中野剛志

 アグロバイオ(農業関連バイオテクノロジー〔生命工学〕)企業が、特許をかけるなどして着々と種子を囲い込み、企業の支配力を強めています。究極の種子支配技術として開発されたのが、自殺種子技術です。この技術を種に施せば、その種子から育つ作物に結実する第二世代の種は、自殺してしまうのです。次の季節にそなえて種を取り置いても、その種は自殺してしまいますから、農家は毎年種を買わざるを得なくなります。
 この技術は別名「ターミネーター・テクノロジー」と呼ばれています。『ターミネーター』という映画(1985年、米国)をご覧になった方もあるでしょう。(中略)次の世代を抹殺する自殺種子技術の非道さは、まさに映画の殺人マシーン〈ターミネーター〉と重なります。
 この技術の特許を持つ巨大アグロバイオ企業が、世界の種子会社を根こそぎ買収し、今日では、出資産業が彼ら一握りのものに寡占化されています。彼らは、農家の種採りが企業の大きな損失になっていると考え、それを違法とするべく活動を進めているのです。

【『自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する』安田節子(平凡社新書、2009年)以下同】

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 検索したのだが、創業者であるジョン・F・クイーニーの情報がネット上に見当たらない。完全支配の発想がユダヤ的だと思うのだがどうだろうか。種の生殺与奪を握る権限という考え方はアジアからは生まれそうにない。砂漠で生きてきた民族の思考に由来するものだろう。

 病的な発想だ。きっと宗教的な妄想に取り付かれているのだろう。こんな連中が世界を支配しているのだから、貧困がなくなるわけもない。というよりはむしろ、彼らによって貧困が維持されていると考えるべきだろう。

 途上国はおしなべて農業国といえるのですが、農業国でなぜ飢えるのか。それは世界銀行が指南してきた開発モデルに従い、債務を返済するために地場の自給農業をやめて、農地ではもっぱら先進国向けの換金作物を生産しているからです。バナナ、サトウキビ、綿花、コーヒー、パーム椰子などを生産し輸出する、穀物は米国やフランスなど先進国からの輸入に依存するという構造を押しつけられてきました。
 世界銀行やIMF(国際通貨基金)の「助言」に従って自給農業を犠牲にした結果、主食を金で買うしかない、こうした貧しい国々が穀物高騰の直接的影響を蒙ったといえます。

 世界銀行を知るには以下の2冊が参考になる。

世界銀行の副総裁を務めた日本人女性/『国をつくるという仕事』西水美恵子
経済侵略の尖兵/『エコノミック・ヒットマン 途上国を食い物にするアメリカ』ジョン・パーキンス

 世界銀行とIMFの仕事は発展途上国を債務超過にすることである。つまり借金漬けにした上でコントロールするのだ。これを親切に涼しい顔でやってのけるのが白人の流儀だ。

 経済とは交換(trade,swap)である。その取引(deal)においてインチキがなされているのだ。アフリカがいつまで経っても貧困と暴力に喘いでいるのは、ヨーロッパが植民地化し、アメリカが奴隷化した歴史のツケが回っているためだ。彼らは有色人種や異教徒を同じ人間とは見なさない。

 いまでは全米のトウモロコシの3割がバイオエタノール用に降り向けられた結果、食用向けが逼迫して高騰しました。トウモロコシが高値で取引されることから、農家は大豆や小麦の生産をやめ、トウモロコシへ転換するようになりました。生産量の減少で小麦と大豆も価格が上がりました。
 原油の値上がりもバイオ燃料ブームを引き起こした一因です。

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 食べ物が工業用エネルギーに化けた。経済的合理性は利潤を追求するので、生産者はより高い作物を育てようとする。政治や市場はこのようにして人々の生活を破壊する。過当競争が終われば必要な物が不足している。

 特定の方向に傾きやすいのは不安に根差しているのだろう。これがファシズムの温床となる。アメリカの農業は既に工業の顔つきをしている。

 モンサント社は遺伝子組み換え技術を使った牛成長ホルモンrBST(recombinant Bovine Somatotoropin' 商品名「ポジラック」)を開発し、米国では1994年より大人の乳量増加のために使用されてきました。「ポジラック」を乳牛に注射すると、毎日出す乳の量が15~25%増えるうえに、乳を出す帰還も平均30日ほど長くなるといいます。(EUはrBSTに発ガン性があるとして輸入禁止。カナダ政府保健省はrBSTによって牛の不妊症、四肢の運動麻痺が増加すると報告した。日本には規制がないためフリーパスで入ってきた。)

 生産性を上げるためなら、こんな残酷な真似までするのだ。我々人類は。

家畜の6割が病気!

 日本の場合、屠畜上で検査されて、抗菌性物質の残留や屠畜場法に定められた疾病(尿毒症、敗血症、膿毒症、白血病、黄疸、腫瘍など)や奇形が認められることが頻発しています。その場合、屠殺禁止、全部廃棄、また内蔵など一部廃棄となるのですが、その頭数は牛・豚ともに屠殺頭数の6割にも達します(2006年度)。出荷される家畜の多くが病体であるという現実はほとんど知られていません。疾患のある内装は廃棄されるとはいいえ、その家畜の肉が健康な肉といえるでしょうか。
 私たちの身体は食べたものでできており、何を食べるかで健康は大きく左右されます。この意味からも、病体の家畜を大量に生み出す生産方式を問い直す必要があるのです。

 元々食肉業界は闇に包まれている部分が大きい。

アメリカ食肉業界の恐るべき実態/『ファストフードが世界を食いつくす』エリック・シュローサー

 ターミネーター技術とは、作物に実った二世代の種には毒ができ、自殺してしまうようにする技術のことです。この技術を種に施して売れば、農家の自家採種は無意味になり、毎年種を買わざるを得なくなります。この自殺種子技術を、「おしまいにする」という意味の英語 terminate から、RAFI(現ETC、カナダ)がターミネーターと名づけました。

 更にこの技術を進化させているそうだ。

 また業界はターミネーター技術をさらに進化させた、トレーター技術も開発しています。植物が備えている発芽や実り、耐病性などにかかわる遺伝子を人工的にブロックして、自社が販売する抗生物質や農薬などの薬剤をブロック解除剤として散布しない限り、それらの遺伝子は働かないようにしてあります。農薬化学薬品メーカーでもあるこれらの企業の薬剤を買わなければ、作物のまともな生育は期待できないのです。RAFIが、この技術を指す専門用語 trait GURT にかけて traitor (裏切り者)技術と名づけました。自社薬剤と種子のセット売りは、除草剤耐性GM作物の「自社除草剤と種子のセット売り」戦略と同じです。ターミネーター技術やトレーター技術を開発するのをみれば、アグロバイオ企業の真の狙いは種子の支配なのだと思わされます。

 最終的に彼らは太陽の光や空気も支配するつもりなのだろうか?

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 遺伝子組み換え作物に導入した特性は、次世代にも引き継がれます。そのためモンサント社の種子を購入する農家は、特許権を尊重するテクノロジー同意書に署名させられ、どんな場合でも収穫した種子を翌年に播くことは許されません。毎年種会社から種を買うことが求められます。

 これをパテント(特許)化することで完全支配が成立する。実際に行われている様子が以下。

 2003年7月、市民団体が招いたシュマイザーの講演によると、北米で、農民に対してモンサント社が起こした訴訟は550件にも上るといいます。モンサント社は、組み換え種子の特許権を最大限に活用する戦略を展開しています。遺伝子組み換え種子を一度買った農家には、自家採種や種子保存を禁じ、毎年確実に種子を買わせる契約を結ばせます。そうでない農家には、突然特許権侵害の脅しの手紙を送りつけるというものです。農家の悪意によらない、不可抗力の花粉汚染であるなら、裁判では勝てると常識的に思うのですが、法廷に持ち込まれることはほとんどないといいます。農民は破産を恐れ、巨大企業モンサント社との裁判を避けるために、示談金を払うしかないのだそうです。

 こうしてモンサント社は訴訟をもビジネス化した。

 モンサント社は特許権を守るというより、損害賠償をビジネスとして展開しています。ワシントンにある食品安全センター(FSC)の2007年の調査によると、モンサント社は特許侵害の和解で1億700万~1億8600万ドルを集め、最高額はノースカロライナ農民に対しての305万ドル(約3億500万円)だったそうです。モンサント社は訴訟分野を強化するため、75人のスタッフを擁する、年間予算1000万ドルの新部門を設置したといいます(03年)。

 なぜ、これほど悪辣な企業が大手を振って歩いているのだろうか? それは多額の政治献金を行っているからだ。そして天下りも受け入れている。抜かりはない。

 また次の改定では、研究機関の新品種へのアクセスは、10年間禁止し、その後、登録とロイヤリティの支払いを求めるとしています。そしてこれを実行ならしめるため、種子銀行システムを構築するとしています。品種育成のために使用できる合法種子は、種子銀行から正式な手順に従って許可された種子だけとなり、それにはロイヤリティの支払いを伴うことになります。

 文字通り農業を根こそぎ私物化し、自分たちの言い値で販売する戦略だ。もはや戦略というレベルではなく、世界全体の植民地化といってよい。

 彼らは何を目指しているのか?

 この種子銀行システム構想の下敷きになっているのが、国際農業研究協議グループ(CGIAR)の遺伝子銀行やノルウェー領に建造された週末趣旨貯蔵庫ではないでしょうか。
 ビル・ゲイツのビルアンドメリンダゲイツ基金、ロックフェラー財団、モンサント社、シンジェンダ財団などが数千万ドルを投資して、北極圏ノルウェー領スヴァールバル諸島の不毛の山に終末趣旨貯蔵庫を建造し、2008年2月に活動を開始しています。ノルウェー政府によれば、それは、核戦争や地球温暖化などで趣旨が絶滅しても再生できるように保存するのが目的といいます。
 この貯蔵庫は、自動センサーと二つのエアロックを備え、厚さ1メートルの鋼鉄筋コンクリートの壁で出来ています。また爆発に耐える二重ドアになっています。北極点から約1000キロメートル、摂氏マイナス6度の永久凍土層深くに建てられた終末種子貯蔵庫には、さらに低温のマイナス8度の冷凍庫3室があり、450万種の趣旨を貯蔵できます。
 核戦争や自然災害など深刻な災害に世界の農業が見舞われたとき、果たして各国はこの貯蔵庫から種子を取り出し、食料生産を再開することができるのでしょうか。

終末の日の要塞 スヴァールバル世界種子貯蔵庫

 種子のマネー化である。農業の金融化。利息が利息を生んで自動的に増殖する仕組みだ。

信用創造のカラクリ
「Money As Debt」

 グローバリゼーションがニュー・ワールド・オーダー(新世界秩序)を目指したものであるならば、彼らは用意周到に恐るべき忍耐力を発揮しながら、それを必ず実現させることだろう。

 世界の仕組みを理解するための必読書であることは確かだが、如何せん最初から最後まで市民的な正義が全開となっており疲れを覚える。

自殺する種子―アグロバイオ企業が食を支配する (平凡社新書)

モンサント社の世界戦略が農民を殺す
巨大企業モンサント社の世界戦略 遺伝子組換 バイオテクノロジー
遺伝子組み換えトウモロコシを食べる害虫が増殖中、米国
「遺伝子組換食品の脅威」ジェフリー・M・スミス
穀物メジャーとモンサント社/『面白いほどよくわかる「タブー」の世界地図 マフィア、原理主義から黒幕まで、世界を牛耳るタブー勢力の全貌(学校で教えない教科書)』世界情勢を読む会
資本主義経済崩壊の警鐘/『ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く』ナオミ・クライン
癌治療の光明 ゲルソン療法/『ガン食事療法全書』マックス・ゲルソン
アメリカの穀物輸出戦略/『この国の不都合な真実 日本はなぜここまで劣化したのか?』菅沼光弘

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