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2017-12-14

巧妙に左方向へ誘導する本の数々/『「知的野蛮人」になるための本棚』佐藤優


『新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論』小林よしのり
・『新ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論 2』小林よしのり
・『新ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論 3』小林よしのり
『ゴーマニズム宣言SPECIAL 天皇論』小林よしのり
『戦争論争戦』小林よしのり、田原総一朗

 ・巧妙に左方向へ誘導する本の数々

『打ちのめされるようなすごい本』米原万里
佐藤優は現代の尾崎秀実

 ――つまらない本の見分け方を教えてください。
 その前に、どうしてつまらないスカ本が出版されると思いますか?
 ――書き手に才能がないからですか?
 それもありますが、重要なのは、本は「有価証券」だということ。出せばお金に換えられるということです。
 出版社で社員が20人を超えると、編集者が作りたくなくて、営業も売りたくなくて、取次(出版社と書店の間をつなぐ流通業者)もありがたがらない、本屋も起きたくない本がどうしてもできてしまう。資本主義ですから。
 だから、読者は「スカ本と、そうでない本を見分ける方法」をちゃんと学んでおかなくてはいけません。
 どうするかというと、本の「真ん中」をまず読むのです。
 ――本のど真ん中を開いて、何を確かめるのですか?
 なぜ真ん中を読むか。時間が足りずに雑に作って出している本は、真ん中あたりに誤植が多い。
 それから、自分が知っている分野の固有名詞がでたらめな場合もダメ。そんな本を出している出版社は、いい加減な本を作る傾向があるから、警戒した方がいいでしょう。(聞き手 小峯隆生)

【『「知的野蛮人」になるための本棚』佐藤優(PHP文庫、2014年)】

 冒頭で佐藤が推す「本読み」巧者として松岡正剛〈まつおか・せいごう〉、斎藤美奈子鹿島茂立花隆佐高信〈さたか・まこと〉の5人を挙げる。松岡・佐高は言わずと知れた極左で、斎藤はフェミニズム左翼である。

 私程度の読書量でも「巧妙に左方向へ誘導する本の数々」とわかる。山口二郎や大田昌秀の名前を見て読むのをやめた。

 佐藤優が山口二郎を絶賛したのは新党大地が立ち上げた直後の講演であったと記憶する。当時、山口は北大教授だった。その後、山口は半安倍の急先鋒となり、佐藤は巧妙に沖縄の世論形成をリードしてきた。2015年に行われた辺野古基地反対の沖縄県民大会でのスピーチこそが佐藤の行ってきた工作の目的であろう。

「東京の窓から」は石原慎太郎が都知事をしていた時の番組である。YouTubeからは削除されている。私はこれを見て佐藤優という人物が信用できなくなった。


 石原慎太郎が4歳年上である。佐藤優とよく比較してもらいたい。菅沼光弘はまさしく国士である。インテリジェンスに通じた二人だが決定的な違いだ。私は菅沼の著書は全て読んできたが国士であるという一点がブレることはない。尚、菅沼がCIAに殺害されないのは山口組がガードしているため。戦後、東大を卒業しドイツに留学。ゲーレン機関(連邦情報局)で諜報教育を受ける。ラインハルト・ゲーレンにも一度会っている。








「知的野蛮人」になるための本棚 (PHP文庫)
佐藤 優
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2016-06-15

イエスの復活~夢で見ることと現実とは同格/『サバイバル宗教論』佐藤優


『日本人のための宗教原論 あなたを宗教はどう助けてくれるのか』小室直樹

 ・イエスの復活~夢で見ることと現実とは同格

『神々の沈黙 意識の誕生と文明の興亡』ジュリアン・ジェインズ
宗教とは何か?

 キリスト教の教祖であるイエス・キリストは、紀元30年ごろに復活した。復活というのは、実はそんなに異常な現象ではありません。なぜならば、近代より前の人たちの世界像というのは、日本でもヨーロッパでも中東でも同じで、哲学でいうところの素朴実在論の立場にたっているからです。すなわち、夢で見たこと、坐禅をしているときに体験したことと、現実に起こっていることとの間に差異がない。権利的に同格なんです。
 もちろん、仏教の場合は、存在論が縁起観によって構成されていますから、関係性によって実体が見えてくる。しかし、その実体というものは、そもそも虚妄であるという考え方ですから、そこにはなんら違和感がないと思うんです。
 キリスト教の場合は、夢で見たことと復活ということの間に差異はありません。基本的に同じです。あるいは白昼の幻を見る。当時サウロといってキリスト教徒を弾圧していた後の使徒パウロがダマスカスに行く途中で、光にうたれて幻を見る。これは実際に出会ったのと同じことなんです。
『源氏物語』でも、なぜ六条御息所(みやすどころ)の怨霊をみんなあんなに恐れるのか。それは、実際に六条御息所が出てくるのと同じことだからです。夢の中で見ることと現実とは同格なのです。
 この二つが分かれたのは近代に入ってからです。近代に入って分離したのですが、19世紀の終わりから20世紀になると、フロイト派、ユング派の心理学が生まれて、再び夢の権利を回復しようとしているわけです。

【『サバイバル宗教論』佐藤優〈さとう・まさる〉(文春新書、2014年)】

 臨済宗相国寺派の僧侶を対象に行った講義を再編集したもの。2012年に4回行われた。クリスチャンを講師に招くという度量もさることながら、佐藤に対する質問のレベルもかなり高い。

 カトリック教会ではペトロを初代のローマ教皇とみなすが、キリスト教神学を確立したのはパウロであり、実質上のキリスト教開祖といってよい。

 キリスト者を迫害していたサウロ(後のパウロ)はある時、光に打たれ、イエスの声を聴く。いわゆる啓示である。サウロは失明する。その後イエスの声に従って町へゆく。キリスト者が手を置き祝福を告げると、サウロの目から鱗(うろこ)のようなものが落ち、再び目が見えるようになった。これが「目から鱗が落ちる」の語源である(ペテロ、パウロ、そしてアウグスティヌス)。

 そしてキリスト教を世界宗教にしたのはコンスタンティヌス1世(272-337年)である。彼は夢のお告げによってキリスト教に改宗した(『「私たちの世界」がキリスト教になったとき コンスタンティヌスという男』ポール・ヴェーヌ)。人々は夢に支配されていた。

 これを心理学の夢分析(深層心理学)に結びつけるところに佐藤の卓見がある。夢を鵜呑みにすることは決して笑えない。現代においてもテレビや映画は非現実であり、形を変えた夢といってよい。そして我々も彼らと同じように知性と感情を刺激され、大なり小なり影響を受ける。小説や漫画も同じメカニズムである。

 他にも例えばサードマン現象というのがある(『サードマン 奇跡の生還へ導く人』ジョン・ガイガー)。一種の啓示と考えてよかろう。

 現実と非現実を意識と無意識に置き換えることも可能であろう。私も一度だけだが月明かりの下で亡き友人の声をはっきりと聴いたことがある。それは早まろうとする私を諌(いさ)める声だった。聴こえたのはたった一言だったがそれで私は思いとどまった。

 キリスト教が行ってきた殺戮の歴史を思えば、到底神がいるとは思えない。神よ、あんたが創造した世界は混乱と悲惨に覆われている。近代の扉が開き、科学技術が発達し、世俗化が進んだとはいえ、まだアメリカはキリスト教原理主義国家である。そして現在、ソ連に代わって社会主義国家の中国が台頭する。これまた一党独裁の原理主義国家だ。きっと人間の脳は支配されたがっているのだろう。

 体力の衰えが気力の衰えにつながると考え、少し前から腕立て・腹筋・背筋・スクワットを行っている。まだまだ回数は少ないものの、心地良い疲労感の中でぐっすり眠れる。夢は全く見ない。神様と巡り合うことも当分ないだろう。

『イーリアス』に意識はなかった/『神々の沈黙 意識の誕生と文明の興亡』ジュリアン・ジェインズ

サバイバル宗教論 (文春新書)
佐藤 優
文藝春秋
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2015-11-15

神保哲生×佐藤優×萱野稔人 特別対談「新・世界地図」


 ほぼ佐藤優の講義状態。遠慮なし(笑)。それでも萱野〈かやの〉が全体像を描くことに腐心しており、その全てに対して佐藤が賛同を表明する。萱野の健闘が光る。萱野は『マル激トーク・オン・デマンド』(神保、宮台)の準レギュラーを務める。

2015-11-14

田原総一朗×佐藤優×宮崎学「今なぜ"資本論"なのか!? 日本の未来とアベノミクス パート2」


 佐藤優の歴史認識は極めて正確である。特に大東亜戦争の件(くだり)では私が最近、『日本の戦争Q&A 兵頭二十八軍学塾』(兵頭二十八〈ひょうどう・にそはち〉、光人社、2007年)で初めて知った歴史的経緯もきちんと踏まえている。佐藤は返す刀で小林よしのりを批判するが、こうした印象付けの巧みさはスパイさながらだ。しかも田原が小林と親しい関係性にあることも知っているのだろう。また一貫して孫崎享〈まごさき・うける〉を小馬鹿にしているが稀に持ち上げることがある。持ち上げることで落差が際立つ。そのあたりも多分計算済みなのだろう。彼の言動がプロパガンダに見えてしまう瞬間である。どうせやるなら正面からきちんと批判すべきだろう。びっくりしたのだが宮崎学の劣化ぶりが酷い。新橋の呑み屋にいるサラリーマン以下に感じた。



資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)

2014-07-05

読書人階級を再生せよ/『人間の叡智』佐藤優


労働力の商品化
・読書人階級を再生せよ

 そこで私が必要を強く感じるのが、階級としてのインテリゲンチャの重要性です。かつての論壇、文壇は階級だったわけです。編集者も階級だった。その中では独特の言葉が通用して、独特のルールがあった。ギルド的な、技術者集団の中間団体です。国家でもなければ個人でもなく、指摘な利益ばかりを追求するわけでもない。自分たちの持っている情報は、学会などの形で社会に還元する。
 時代の圧力に対抗するにはこういう中間団体を強化するしか道はない。なんでもオープンにしてフラット化すればよい、というものではありません。
 新書を読むような人はやはり読書人階級に属しているのです。ものごとの理屈とか意味を知りたいという欲望が強い人たちで、他の人たちと少し違うわけです。読書が人間の習慣になったのは新しい現象で、日本で読書の広がりが出てきたのは円本が出版された昭和の初め頃からでしょうから、まだ80年くらいのものではないですか。円本が出るまでは、本は異常に高かった。いずれにせよ、現代でも日常的に読書する人間は特殊な階級に属しているという自己意識を持つ必要があると思います。
 読書人口は、私の皮膚感覚ではどの国でも総人口の5パーセント程度だから、日本では500~600万人ではないでしょうか。その人たちは学歴とか職業とか社会的地位に関係なく、共通の言語を持っている。そしてその人たちによって、世の中は変わって行くと思うのです。

【『人間の叡智』佐藤優〈さとう・まさる〉(文春新書、2012年)】

 読者の心をくすぐるのが巧い。しかも本書が文庫化されないことまで見通しているかのようである(笑)。ニンマリとほくそ笑んだ挙げ句に我々は次の新書を求めるべく本屋に走るという寸法だ。

 佐藤優は茂木健一郎の後を追うような形で対談本を次々と上梓している。茂木と異なり佐藤の場合は異種格闘技とも思える相手が目立つ。その目的はここでも明言されている通り「中間団体の強化」にある。佐藤なりの憂国感情に基づく行動なのだろう。

 共通言語に着目すれば佐藤のいう中間団体はサブカルチャー集団とも考えられる。共通言語から文化が生まれ、規範が成り立つ(下位文化から下位規範が成立/『消費税は民意を問うべし 自主課税なき処にデモクラシーなし』小室直樹)。人々の行動様式(エートス)を支えるのは法律ではなく村の掟、すなわち下位規範である。佐藤は驚くべき精力でそこに分け入る。

 佐藤の該博な知識は大変勉強になるのだが、どうも彼の本心が見えない。イスラエル寄りの立場が佐藤の存在をより一層不透明なものにしている。



問いの深さ/『近代の呪い』渡辺京二

2014-05-07

自由競争は帝国主義の論理/『アメリカの日本改造計画 マスコミが書けない「日米論」』関岡英之+イーストプレス特別取材班編


佐藤●なぜ、いま大川周明なのかということですが、現在、世界を新古典派経済学的な市場原理主義が席巻(せっけん)しています。「自由競争」というのは、実は最強国に有利な論理であって、19世紀であればイギリス、20世紀であればアメリカしか利さない。つまり帝国主義の論理だということです。そこに気づくかどうかが、いま問われていると思います。

関岡●「自由主義」を装った帝国主義ですね。そのことを戦中に理路整然と説き明かした大川周明の『米英東亜侵略史』(第一書房、1942年)は非常に重要な文献で、いまの日本で広く読まれる必要があると、私もかねがね思っていました。

【『アメリカの日本改造計画 マスコミが書けない「日米論」』関岡英之+イーストプレス特別取材班編(イーストプレス、2006年)以下同】

 佐藤優と関岡の対談が面白かった。他は生臭くてちょっと……。帝国主義は力の論理である。ドラえもんでいえばジャイアンが帝国主義で、メガネををかけた弱者のび太はドラえもんと手を組んでテクノロジーで勝負をする。あれは日本のよき時代を象徴したマンガであったのかもしれぬ。ま、本当はたくさんの人々をいじめるジャイアン(アメリカ)の手助けをのび太とドラえもん(日本)がしていたわけだが(『メディア・コントロール 正義なき民主主義と国際社会』ノーム・チョムスキー)。

 大川周明といえば極東軍事裁判で東條英機の頭を叩く映像が広く知られている。大川は裁判そのものが茶番劇であることを示そうとした。


佐藤●ソ連が崩壊してイデオロギーの時代が終焉(しゅうえん)すると、世界各国は露骨に自国の利益を追求する時代になりました。なかでも一番強い国は、関係国に対して「さぁ、競争だ、自由に競争させろ、競争を邪魔するな」と市場開放や規制改革をどんどん要求するようになった。自分と同じやり方でやれ、自分のルールを受け入れろ、と。
 駆け足が一番速い人は、物事をすべて駆け足で決めるのが一番有利です。そして「ウィナー・テイク・オール」、勝者が果実を独占する。『拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる』(文春新書、2004年)を私なりに解釈すると、そういうことだろうと思います。

関岡●正確に汲(く)み取ってくださって、ありがとうございます。

『拒否できない日本』はアメリカが日本に突きつける「年次改革要望書」を広く知らしめた一書で関岡英之の名を不動のものとした。そして保守の質を明らかに変えた著作であった。

 自由貿易で貧しい国が栄えたことはない。産業革命の歴史を見てもわかるように、技術力を有する国家に強味がある。発展途上国には技術どころかインフラすら整備されていない。つまり自由貿易とは経済の名を借りた侵略戦争なのだ。

関岡●井筒俊彦は、アラビア語だけでなく、古典ギリシャ語、ラテン語なども学び、イスラーム研究の範疇(はんちゅう)にとどまらず、思想史の分野の世界的権威になりましたね。深層心理学の父カール・グスタフ・ユングなどが中心的メンバーになっていたエラノス会議にも招かれ、ユング一門や、宗教学のミルチャ・エリアーデ、神話学のカール・ケレーニイなど、ヨーロッパの錚々(そうそう)たる知識人たちと交流していたようです。

佐藤●井筒俊彦は天才ですよ。

関岡●慶應の東洋史学科にはアラビア史専攻の前嶋信次(まえじましんじ)もいましたが、井筒俊彦も前嶋信次も慶應が生んだのではなく、東亜経済調査会(ママ)の「大川塾」に育てられたんですよ。竹内好(たけうちよしみ/中国文学者、文芸評論家)も指摘していますが、大川周明の隠れた偉大な功績は、日本のイスラーム研究の先駆者として学問的な礎(いしずえ)を築いたことです。戦後、巣鴨(すがも)プリズンで『コーラン』を邦訳したことが有名ですが、『復興亜細亜の諸問題』や『回教概論』(慶應書房、1942年)を発表したのは戦前ですよね。

 大川周明がA級戦犯とされたのは日本に理論的指導者が見当らず、大川の著作が英訳されていたためアメリカ当局が目をつけた。ただそれだけの話である。どのような時代であろうと優れた人物がいる事実に驚かされる。

アメリカの日本改造計画―マスコミが書けない「日米論」 (East Press Nonfiction #006)日米開戦の真実 大川周明著『米英東亜侵略史』を読み解く大川周明の大アジア主義

「年次改革要望書」という名の内政干渉/『拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる』関岡英之
シオニズムと民族主義/『なるほどそうだったのか!! パレスチナとイスラエル』高橋和夫

2014-03-09

帝国主義大国を目指すロシア/『暴走する国家 恐慌化する世界 迫り来る新統制経済体制(ネオ・コーポラティズム)の罠』副島隆彦、佐藤優


『日本の秘密』副島隆彦

 ・帝国主義大国を目指すロシア

 数日前に読了。時間がなくてまだ読書日記にも書いていないが、タイムリーな部分だけ紹介しよう。佐藤優は本に対しても人に対しても健啖家(けんたんか)のようだ。個人的には副島隆彦が苦手である。メディアから完全に無視されていることに対するルサンチマンを感じるせいだ。見ようによっては師事した小室直樹の負の部分を受け継いでいるようにも思える。裏づけはあるのだろうが結論の前に飛躍が目立ち、頑迷さを露呈することが多い。ただ侮れない人物であることは確かだ。

佐藤●石油、天然ガス、レアメタルなどの資源が豊富なロシアが再び大国の位置をめざしています。私はプーチン、メドベージェフ体制が推進するロシアは、2020年までに帝国主義大国をめざすと考えています。

【『暴走する国家 恐慌化する世界 迫り来る新統制経済体制(ネオ・コーポラティズム)の罠』副島隆彦〈そえじま・たかひこ〉、佐藤優〈さとう・まさる〉(日本文芸社、2008年)以下同】

 佐藤の予告はウクライナ危機から実現に向かいそうだ。日本のニュースは西側情報を垂れ流しているため迂闊に信用すると世界情勢を読み誤る。ロシアに対する否定的な見方は片目をつぶったも同然だ。以下のブログを参照せよ。

櫻井ジャーナル

 私は2020年までに日中戦争が起こると考えている。同年夏に開催予定の東京オリンピックは実現しないことだろう。【1940年】の再来だ。

佐藤●グルジアに対する軍事攻撃で、米ロが再び「新冷戦の時代」に入ると主張する人々がいます。しかし、冷戦はイデオロギーがないと起こりません。冷戦の条件というのはイデオロギーがあること、実際の戦争にならない状態が維持されるような次元が図られること、それができないから、今回のグルジア問題では「冷戦」には入らないと思います。(中略)
 私は新冷戦などではなく、ロシア・グルジア戦争は既に「熱い戦争」になっていると思います。
 今後、大国が絡んだ形での2国間戦争というのは「フォークランド紛争」のような形になるでしょう。

 歴史は繰り返す。なぜなら人類の知性が更新されないからだ(『先物市場のテクニカル分析』ジョン・J・マーフィー)。業(ごう)が輪廻(りんね)するのではなくして、輪廻すること自体が人類の業なのだろう。

佐藤●物事を戦争によって解決するというハードルが低くなります。現状の国境線というものを、不可侵ではなく、武力による不変更というヨーロッパ・ロシアに存在していたゲームのルールが、アブハジア、南オセチアの独立で完全に破られました。
 ですから、「新冷戦」は訪れない、新冷戦は来ないけれどそれがよい話だと勘違いしたら間違いで、軍事衝突という「熱い戦争」の時代が来ると思います。

「ロシアの防衛産業の雇用人口は250万人から300万人といわれ、製造業全体の20%を占める」(Wikipedia)。ロシアはアメリカに次ぐ武器輸出大国とされるが、軍需産業のランキングにロシア企業は見当たらない。

軍需産業
世界の軍事企業の売上高ランキング

 プーチンの狙いは軍需産業へのテコ入れも考えられよう。アメリカも同様だが在庫を処分しなければ新製品の販売が困難だ。戦争は最大のスクラップ・アンド・ビルドであり経済政策として推進される。資本主義は地球を不毛化する。

 もう一つ、ちょっと気になった部分を。

副島●ネオ・コーポラティズム Neo-Corporatism という言葉があります。これを、いちばん、手っ取り早く日本人が理解したければ、「開発独裁」とか「優れた独裁者国家」を類推すればよい。シンガポールのリー・クアン・ユーとかマレーシアのマハティールとか、韓国の朴正煕〈パク・チョンヒ〉とか、台湾の李登輝〈リー・トンホイ〉を例に挙げればいい。彼らのような優秀な指導者が出てきて、資源と国民エネルギーとを上手に配分したら、その国は急速に豊かになれるわけです。そうした新興国の開発独裁を、今、ブラジルやインド、そして中国、ロシアが一生懸命やろうとしています。
 ロシアのプーチンやメドベージェフこそは、ネオ・コーポラティズムの体現者です。ひと言で言えばイタリアのムッソリーニの再来です。イタリアのファシズム運動こそはコーポラティズムです。労働組合までも巻き込んだ国家体制づくりをしました。

 直後のページではネオ・コーポラティズムに「新統制経済国家」とルビを振っている。

 Wikipediaを見たところ、コーポラティズムおよびネオ・コーポラティズムの原義は副島の考え方が正しいようだ。日本がファシズム化する証拠として佐藤は「自動車の後部座席シートベルトの着用義務」を挙げ、副島は「ATMでの送金が10万円を上限」としたことを金融統制と言い切っている。

 私が本書を知ったのは「コーポラティズム」で検索したことによる。ナオミ・クライン著『ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く』を読んだ直後であった。ナオミ・クラインが説くコーポラティズムは巨大資本を有する私企業が米国政府の政策決定に深く関与し、世界各国の戦争や災害に便乗して他国をエコノミック・レイプする手口であった。実に紛らわしい。日本語だとコーポレーション主義にした方がよさそうだ。いっそのこと「ハゲタカ」と呼んだらどうだ?

 アメリカが吹聴する「自由」とは、戦争をする自由であり、簒奪(さんだつ)する自由のことである。日本は敗戦以降、ひたすら奪われ続けてきた。TPPによって収奪は極限まで加速し、円安が極まった時点で日本は暴走することだろう。その後ドルの価値が崩壊する。

2013-04-26

労働力の商品化/『人間の叡智』佐藤優


・労働力の商品化
読書人階級を再生せよ

 その論理(※『資本論』に書かれた資本主義発展の論理)のカギになる概念が、「労働力の商品化」です。人間が働く能力は、本来商品にされるものではなかったのに、商品にされたというのはどういうことか。労働者は働いて賃金をもらいますが、その賃金は三つの要素から成り立っている。
 一番目は、1カ月生活して、家を借りて、ご飯を食べ、服を買い、いくばくかのレジャーをする。それによってもう1カ月働くエネルギーが出て来る。そのための費用です。
 二番目の要素は、労働者階級の「再生産」。すなわち、子供を産み、育て、教育を受けさせ、労働者にして社会に送り出すまでの費用が賃金に入っていないといけないのです。独身者の場合は、将来のパートナーを見つけるためのデート代が入っていないといけない。そうでないと資本主義システムの再生産ができない。
 三番目は技術革新に対応するための教育の経費です。資本主義には科学技術の革新が常にある。労働者がそれに対応するための自己学習の費用が入っていないといけない。
 その三要素がないと資本主義はまともに回らないのです。ところが個別の資本は、少しでも搾取を強めようとする。だから二番目、三番目の要素は切られてしまいがちです。一番目の要素もどんどん切り詰めて行く。それによって搾取率を強化する。資本とは本来そういうものなのです。搾取は、不正なことではありません。労働者は嫌だったら契約しなければいいのだから、収奪ではない。収奪というのは、たとえば米を10トン作ったら地主が来て、そのうち6トンを持って行く。出さないと殺すと言う。これが収奪ですね。搾取は資本家と労働者の合意の上で成り立って、システムの中に階級闘争が埋め込まれている。だから自由平等といいながら自由でも平等でもない実態は、社会構造を見ないとわからないというのがマルクスの主張です。ちょっと難しい言い方でしょうか。要するに経営者がいい人、悪い人というのは別の話で、資本主義というシステムにおいては、労働者の取り分が減らされることは避けられないということです。

【『人間の叡智』佐藤優〈さとう・まさる〉(文春新書、2012年)】

 久し振りに佐藤本を読んだが、まあ凄いもんだ。語り下しでこれほどの内容なら、佐藤は執筆の時間を惜しんで語った方がよいかもしれぬ。

 著者の博覧強記は広く知られるところだが、飽くなき知への健啖(けんたん)ぶりが怪獣を思わせるほどだ。いかなる書籍であろうが佐藤にかかれば、鋼鉄製の歯で粉々に咀嚼され、野菜ジュースみたいにされてしまうのだ。まさに知の破砕機といったところ。

 具体的には次の通りだ。1ヶ月の読書量、平均150冊~200冊、うち熟読は5~6冊。書籍購入費は年間200万円、他に資料・データに200万円、勉強会に100万円。1日の読書時間、6時間。(※「東洋経済 特集/最強の「読書術」と佐藤優:e-徒然草」を参照した)

 実はまだ読み終えていない。あと20ページほど残っている。200ページあまりの新書が付箋だらけになってしまった。

 タイトルが『人間の叡智』となっているがミスマッチだと思う。内容からすると、「新・帝国主義ノススメ」「マルクスから読み解く21世紀の政治学」「新たなるエリート主義」といったところだ。佐藤が普及させたインテリジェンスという語は、私からすると叡智というよりは、むしろ戦略やリテラシー的色彩を帯びている。


 それでも尚、私は彼の著作を開かざるを得ない。学問のスタンダードを学ぶために。

 バブル経済が崩壊し、失われた10年を経て、労働者派遣事業の解禁が行われた。言い出しっぺはオリックスグループCEOを務める宮内義彦だ。この政策転換がデフレ化における格差拡大に拍車をかけた。

 売り上げから搾取するのではなくして、最初の賃金設定から既に搾取するわけだから、企業家としては利益を勘定しやすい。経団連はその後、ホワイトカラーエグゼンプションの導入を目論んだが実現しなかった。彼らは外国人労働者の輸入も再三にわたって推進しようとしている。

 ワーキングプアとは奴隷の異名であろう。貧困とは「ゆっくりと殺される」ことだ。とすると人口減少下での格差拡大はこの国を滅ぼす可能性が高い。



甘やかして、世界で勝てるのか ファーストリテイリング・柳井正会長が若手教育について語る


 今後私は「しまむら」へ行くことに決めた。

 柳井正は開き直っているにようにしか見えない。金持ち特有の傲慢さが脂(あぶら)のように滴り落ちる。

 お金は人々をだめにします。富者特有の傲慢さがあります。どの国でも、ごくわずかの例外を除いて、富者にはあらゆるものを──神々すらをも──ひねりつぶすことができるというあの特有の尊大な雰囲気があり、そして彼らは神々をも買うことができるのです。豊かさは金銭的な貯えによってだけではなく、能力の持ち主はまた、自分は他の人々より勝っている、彼らとは違うと感じます。このすべてが彼に一種の優越感を与えます。彼は、どっかりと腰かけて、他の人々が身もだえしているのを見守るのです。彼は、自分自身の無知、自分自身の精神の暗さに気づかないのです。お金と能力はこの暗さからの格好の逃げ口を提供します。結局、逃避は一種の抵抗であり、それはそれ自身の問題を生み出すのです。人生とは不思議なものです。無である人は幸いなるかな!

【『しなやかに生きるために 若い女性への手紙』J・クリシュナムルティ:大野純一訳(コスモス・ライブラリー、2005年)】

 富者は所有物の重みで必ず転落してゆく。っていうか転落して欲しいもんだね(笑)。いや実際は転落しているんだよ。所有への飽くなき欲望が常に恐怖を生むからだ。巨大な建築物は完成した瞬間から崩壊へと向かっている事実を忘れてはなるまい。

もっとも、けた外れに巨大な建造物は、往々にして人間の不安の度をなによりも如実に写しているものなのです

 巨大企業も一緒だ。


 少し前にこう呟いたのだが、本書を読んで更にその思いを深くした。

2011-07-26

愚行権


 人間には、愚行権があります。それは、他人が考えると愚かな行為に見えても、自分がやりたいと思うことを行う権利です。

【『インテリジェンス人生相談 個人編』佐藤優〈さとう・まさる〉(扶桑社、2009年)】

インテリジェンス人生相談 [個人編]インテリジェンス人生相談 [社会編]