2019-07-16

クラッチの仕組みとは?



 そのシフトダウン時もクラッチを切ってギヤを下の段に入れ、そのままパッとクラッチをつなぐと回転差が生じガクッと大きなシフトショックが出てしまう……。そのシフトショックを軽減するために半クラッチを使う方法もあるが、できればシフトチェンジに合わせ軽くブリッピング(空ぶかし)をして回転数をシンクロさせてあげれば、半クラッチを使わずシフトショックのないシフトチェンジができるのでこれは鍛錬してもらいたい。

教習所で教わる半クラッチ! 無意味な多用は寿命を縮めるので要注意 – WEB CARTOP

MT車のクラッチ・ディスクを長くもたせる方法 シフトチェンジに伴うクラッチの繋ぎ方

自らのイデオロギーのためにはプロパガンダもいとわない新聞/『チベット大虐殺と朝日新聞 朝日新聞はチベット問題をいかに報道してきたか』岩田温


 ・自らのイデオロギーのためにはプロパガンダもいとわない新聞

・『悪の論理 地政学とは何か』倉前盛通
・『崩壊 朝日新聞』長谷川煕
・『さらば群青 回想は逆光の中にあり』野村秋介
『人種差別から読み解く大東亜戦争』岩田温
・『だから、改憲するべきである』岩田温
『平和の敵 偽りの立憲主義』岩田温

「朝日新聞」と言った場合、どんなイメージが思い浮かぶだろうか。
「インテリの新聞」、「高所得者が読む新聞」、「受験に出る新聞」、「リベラル色が強い新聞」といったイメージが一般的なのではないか。「自らのイデオロギーのためにはプロパガンダもいとわない新聞」、「利潤のためであれば、いくらでも節操を曲げる新聞」だと正確に理解している良識派は少ないはずである。
 北朝鮮のことを「地上の楽園」と呼び、カンボジアのポルポト派が大虐殺を行っているときに、ポルポトをして「アジア的優しさにあふれている」と書いた朝日新聞。それにもかかわらず朝日新聞のことを、今なお正しく認識している日本人は、残念ながらまだまだごく少数に留まっている。

【『チベット大虐殺と朝日新聞 朝日新聞はチベット問題をいかに報道してきたか』岩田温〈いわた・あつし〉(オークラ出版、2008年)以下同】

 イデオロギーは事実をも歪める。朝日新聞は社会主義国の大量虐殺には目をつぶり容認する。なぜなら正しい目的のためなら行き過ぎた手段は常に正当化されるからだ。志を同じくする同志の殺人を糾弾することのない彼らが一方では人権を主張するのだから片腹痛い。イデオロギーは自分たちの矛盾も見て見ぬふりをする。正しいイデオロギーに生きる者は何をしても許されるのだ。



 朝日新聞に次の川柳が掲載されたという。「五輪前 どうにも邪魔な 生き仏」(2008年3月20日の「朝日歌壇」に載った川柳)。

 チベット問題に関してはチベット側に一点の瑕疵(かし)もないことは明らかである。(中略)それゆえに論説や社説で堂々とダライ・ラマを批判できないから、奇策として、風刺と言いながら誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)を行う。

 日本人がチベット問題を知ったのは長野五輪(1998年)の時であった。「フリーチベット」(チベットに自由を)を叫ぶ人々に中国人が襲いかかったのだ。中国人の行動は明らかに組織立ったもので計画性さえ窺わせた。さすが暴力革命の国である。いかにも集団の暴発と見せかけながらきっちりと目的を果たした。日本の警察は上からの指示があったのか指をくわえてじっと見守った。

 チベット問題に関しては倉前盛通〈くらまえ・もりみち〉著『悪の論理 地政学とは何か』(日本工業新聞社、1977年)の第5章を参照せよ。また朝日新聞の逃げ口上については野村秋介〈のむら・しゅうすけ〉の本が詳しい。

 岩田温〈いわた・あつし〉には小室直樹や倉前盛通の衣鉢(いはつ)を継ぐ論客になってもらいたい。

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2019-07-15

西薗良太選手の自転車トレーニング講座


 西薗良太〈にしぞの・りょうた〉は東大出身のプロレーサー。

・坂を登る。
・距離を乗る。1000km/月×3年。
・距離を乗っても伸びない段階がくる→トレーニングは時間で行う。
・二人以上で走る機会を増やす。
・トレーニング後→30分以内に糖質とタンパク質を摂取(少量でよい)→シャワー後、脚を高く上げる→少し寝る。




 1000km/月×3年=3.6万kmである。私がこの1年間で走った距離は2271kmだ(55日)。話にならない。1000km/月は単純計算すれば33km/日となる。日本の平均雨日数は47.6日らしい(Yahoo!知恵袋)。もちろん仕事もあるわけだから毎日自転車に乗ることは難しい。もしも毎日乗るとすれば雨用の自転車が必要となろう。そしてタイヤ交換のコストも嵩(かさ)む(3000~5000km/クリンチャータイヤの寿命はどれくらい? | サイクリングパーツ・ウェアーのワールドサイクル)。更には交通事故のリスクも高まる。とすれば本気で取り組むのならスピンバイクかローラー台が必要だ。スピンバイクに1時間乗れば、33km程度の距離と考えてよかろう。ところがどっこい私は30分しか乗れない(涙)。ま、2セットやればいいわけだが。石の上にも3年、サドルの上にも3年ということだ。

ヨーグルトおから/『からだの中からキレイにやせる おからレシピ100』浜内千波





 ヨーグルトおからを作ってみたのだが「カッテージチーズのようなさっぱりとした味わい」はない。そこでオリーブ油を加えてみた。

オリーブ油おから

 生おから 300g
 オリーブ油 50g
 黒こしょう 小さじ1

 1.生おからは、耐熱容器に入れてかるくラップをしてレンジで約3分間加熱する。
 2.1にオリーブ油と黒こしょうを加えて混ぜ合わせる。

【『からだの中からキレイにやせる おからレシピ100』浜内千波〈はまうち・ちなみ〉(東京書店、2014年)】

 それでもまだ味にインパクトがない。塩二つまみとマヨネーズも加えた。何とか「よかろう」という味になった。やはり調理には労力+αの効果が求められる。足し算ではなく掛け算となるところに調理の醍醐味があるのだ。

 ウイリアム・デイビス著『小麦は食べるな!』(日本文芸社、2013年)を読んでから小麦をできるだけ控えるようにしている。グルテンフリー・ダイエットが正しいかどうかはわからない。正しい判断は知識の量によって左右される。知識がなければ信じてしまうのが人の性質だ。マインドは知らず知らずのうちにコントロールされる。

 それでも無性にパンが食べたくなることがある。そこで血糖値を上げないための工夫をしてみようというのがおからヨーグルトを作った動機である。初めて乾燥おからを水で戻したのだが、これだけでも面白い体験であった。

 本書は基本となるおから――納豆おから、ひき肉おから、カレーおから、梅干しおから、味噌しょうがおから、はちみつおからなど――とそれを使ったレシピが収められている。ふりかけ4種も簡単に作れそうだ。

 おからはこってり感が足りないのでアボカドやゴマ油を加えてもいいと思う。

からだの中からキレイにやせる おからレシピ100
浜内千波
東京書店
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 尚、温暖なこの時期はヨーグルトメーカーがなくても手作りヨーグルトを作ることができる。種菌はLG21やR-1でもOK。

カスピ海ヨーグルト作り40回目も美味しく完成☆次のヨーグルトができるって経済的! | 使って楽しいモノコト手帖
よくある質問 - ヨーグルトの作り方について | 手づくりヨーグルト
【7.5倍パルテノ】濃密ギリシャヨーグルト「パルテノ」を100均の手作りヨーグルト容器で増やして100均の薬味ケースで水切りヨーグルトにしてみた結果 | ロケットニュース24

カスピ海ヨーグルトの乳酸菌 ヨーグルトの願い 1g×5包
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2019-07-14

【怒れるスリーメン】加藤×髙橋×岩田温 岩田温参戦!! 偽善者の見破り方









偽善者の見破り方 リベラル・メディアの「おかしな議論」を斬る
岩田 温
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オートミール攻略法


「趣味は料理です」と言い切っておくぞ。私にとって本を読むのは仕事だ。

 中年となり健康に留意するようになると自ずと主食の問題に行き当たる。お米は確かに美味しい。だが炭水化物は糖尿病の原因でもある。私が初めて糖質制限を知ったのはもう15年ほど前のことだ。宮本輝と丸山健二が「ご飯を食べるのをやめた」と証言していた。当時は「フム、そんなもんか」と思っていたものの年を重ねるごとにご飯が美味しく感じられるのだから困ったものだ。

 手っ取り早い方法としては炊飯の際、小麦などの雑穀や大豆を混ぜるという手がある。乾燥ひじきも合う。

 国民的な二大疾病といえば2型糖尿病とアルツハイマー病である(違ったらゴメン)。そして驚くべきことに二つの病は生活習慣病であり同じ原因によって発症する。アルツハイマー病は「脳の糖尿病」とまで指摘されるようになった。糖尿病とは長い時間をかけて血管がボロボロになってゆく病気である。血糖値を上げないためには炭水化物を始めとする高GI値の食品を控えるのが手っ取り早い(PDF:GI値一覧表)。

 私は周期的にフルグラ中毒を発症することがある。そこでオートミールに注目した(シリアル大調査! グラノーラ、ミューズリー、オートミールって何が違う? - 価格.comマガジン)。


 しかしながら攻略法が難しい。美味といえるほどの領域に達する簡単レシピが見当たらない。で、最近までは味噌汁に投入していた。私の味噌汁は根菜に鮭のあらを入れる。で、丼3杯分ほど作るのだが、1杯目をよそった後で一握りか二握りのオートミールを加えればそのままで粥(かゆ)状態となる。

 今朝新たなレシピを開発した。オートミール+素煎り大豆+塩を電子レンジで3分間温める。


 戻した大豆や水煮あるいは冷凍むき枝豆でもいいかもしれない。


 そこに、かつおのふりかけを大量にかける。


 これは普通に食べられる。まったく普通のお粥だ。オートミールが場外乱闘していたのでラップをするのが正解か。豆乳や卵を使えばかなり贅沢な朝ごはんとなろう。豆腐を混ぜるのもよさそうだ。

 私は乾燥おからとホエイプロテインを1:1で混ぜたものを何にでもかけるのだがオートミールにも大変よく合う。

2019-07-13

雨の牧馬峠


牧馬峠に挨拶
牧馬峠(道志みち側)を制覇
地獄の牧馬峠(相模湖側)

 ・雨の牧馬峠

 土山峠~宮ヶ瀬湖~道志みち~県道76号~雨の牧馬峠。二度目だが苦しさは相変わらずだ。ほんの少しも楽になっていない。そもそも幾度となく登っている土山峠すら苦しいのだ。自動車の多い道路が厭(いや)なので国道412号から牧馬(まきめ)峠を登るのは避けた。で、少しばかり距離を伸ばして県道76号からアクセスすれば主要な登坂は行える。


【湯口沢橋から荒井沢を見下ろす】

 曇りの天気予報がまんまと外れた。小雨だったのでそのまま進む。


【道志ダムの下流側】


【道志ダムの上流側は霞(かす)んでいた】



【道志ダムの少し先にあった小さな滝】

 道志村(どうしむら)は山梨県だがここはギリギリ神奈川県である。


 素晴らしい県道だ。私の誕生日を記念して作られたのだろうか? きっとそうに違いない。県道76号は緩やかなアップダウンが続き、温厚で優しい私の性格を示しているかのようであった。藤野南小学校の丁字路を右折すれば牧馬峠に出る。ゴルフ場付近の道が少しわかりにくいが、とにかくどんどん左側に進めばよい。

 雨が強くなってきた。前輪の弾く水しぶきが顔に当たる。ペダルを強く踏みすぎると後輪がスリップする。そして既に見慣れた感のある真空コンクリートが現れた。「親の仇!」と声に出して輪っかを踏みつける。雨が煙(けぶ)る。ハンドルを握る手が時々滑る。ダンシングを休める唯一のカーブに差し掛かった時少し意識が薄れた。後ろから来たクルマが私を追い越した。そして停車した。クルマの脇にギフチョウの看板が見えた。親の仇は討(う)った。

 降りしきる雨が止むことはなかった。帰りも通ったことのない道を走った。今日の走行距離は91km。

読み始める

悪の論理―地政学とは何か (角川文庫 白 267-1)
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生物進化を考える (岩波新書)
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日本の生き筋ーー家族大切主義が日本を救う
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ロードバイク スキルアップトレーニング
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2019-07-10

レッドからグリーンへ/『環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』石弘之、安田喜憲、湯浅赳男


『砂糖の世界史』川北稔
『砂の文明・石の文明・泥の文明』松本健一

 ・動物文明と植物文明という世界史の構図
 ・黒船ペリーが開国を迫ったのは捕鯨船の補給地を確保するためだった
 ・中東が砂漠になった理由
 ・レッドからグリーンへ

『一神教の闇 アニミズムの復権』安田喜憲
『石田英一郎対談集 文化とヒューマニズム』石田英一郎

必読書リスト その四

石●「レッドからグリーンへ」というのが、最近の皮肉をこめたスローガンとなっているぐらいです。つまりマルキシズムの居城を失った思想家たちの一部が、環境に生きる道を見出したわけです。

【『環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』石弘之〈いし・ひろゆき〉、安田喜憲〈やすだ・よしのり〉、湯浅赳男〈ゆあさ・たけお〉(洋泉社新書y、2001年)】

 第二次世界大戦中におけるマルキストの浸透については以下の書評に書いた。

大衆運動という接点/『折伏 創価学会の思想と行動』鶴見俊輔、森秀人、柳田邦夫、しまねきよし

 ソビエトスパイの暗号解読文書「ヴェノナ」(Wikipedia/『ヴェノナ』ジョン・アール・ヘインズ、ハーヴェイ・クレア)は公開されたものの歴史を修正するところにまでは至っていないのが現状だ。

 学生運動や安保闘争が高まる昭和30年代、左翼は公害病にもコミットしていた。石牟礼道子〈いしむれ・みちこ〉の言葉はあまりにも有名だ。「極端な言い方かもしれませんが、水俣を体験することによって、私たちがいままで知っていた宗教はすべて滅びたという感じを受けました」(水俣病事件と「もうひとつのこの世」:萩原修子)。

 左翼勢力は更に空港(三里塚闘争)やダム建設の反対運動にも関わる。

 公害問題は環境意識への芽生えではあったが、企業vs.被害者というレベルの意識に留(とど)まっていた。1962年(昭和37年)にレイチェル・カーソンの『沈黙の春』が、そして1972年(昭和47年)にドネラ・H・メドウズの『成長の限界 ローマ・クラブ「人類の危機」レポート』が刊行された。日本では1974年(昭和49年)から有吉佐和子が朝日新聞に『複合汚染』の連載を開始した。

 人々の概念が少しずつ変化する中でオゾン層破壊が明らかとなる(1974年)。1985年にオゾン層の保護のためのウィーン条約が採択され、日本も1988年に加わった。これが環境問題のハシリだろう。その後1990年代から家庭ゴミの分別が始まる(「環境問題の歴史」を参照した)。

 環境問題は左翼にとっては渡りに舟であった。「地球に優しい」という標語には誰一人逆らえない。「レッドからグリーンへ」運動表現を変えた赤組はその後、人権~性差解消~ポリティカル・コレクトネスと看板を掛け替える。

 この間、進歩的文化人は良心的勢力・リベラルと仮面を付け替えた(進歩的文化人については谷沢永一著『こんな日本に誰がした 戦後民主主義の代表者・大江健三郎への告発状』『悪魔の思想 「進歩的文化人」という名の国賊12人』『誰が国賊か 今、「エリートの罪」を裁くとき』が詳しい)。

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中東が砂漠になった理由/『環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』石弘之、安田喜憲、湯浅赳男


『砂糖の世界史』川北稔
『砂の文明・石の文明・泥の文明』松本健一

 ・動物文明と植物文明という世界史の構図
 ・黒船ペリーが開国を迫ったのは捕鯨船の補給地を確保するためだった
 ・中東が砂漠になった理由
 ・レッドからグリーンへ

『一神教の闇 アニミズムの復権』安田喜憲
『石田英一郎対談集 文化とヒューマニズム』石田英一郎

必読書リスト その四

石●結局イスラムは、ブタを捨ててヤギとヒツジに頼ったわけです。ヤギとヒツジは、ある意味でいちばん自然を破壊する家畜ですよ。イスラム文化の支配したところが砂漠化していったのは理解できます。アラビア半島から始まってインド亜大陸、中央アジア、北アフリカ、スペイン南部まで、イスラムの支配した地域はほとんど砂漠です。ヤギとヒツジのせいだといってもいい。

湯浅●根まで食べちゃうわけですからね。

安田●インドがなぜ肉食をやめたのかということは、いずれにしても21世紀の大きなテーマになる。いずれ人類はそんなに肉を食えない時代を迎えるはずです。インドの紀元前5世紀における肉食の放棄は、結局、放棄するしかなかったということかもしれません。

【『環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』石弘之〈いし・ひろゆき〉、安田喜憲〈やすだ・よしのり〉、湯浅赳男〈ゆあさ・たけお〉(洋泉社新書y、2001年)/新版、2013年)以下同】

 するってえとヤギとヒツジこそは一神教の父というわけだな。ユダヤ教からキリスト教が生まれ、キリスト教からイスラム教が生まれた。この三つを総称してアブラハムの宗教という。

 一神教は砂漠の宗教(『離散するユダヤ人 イスラエルへの旅から』小岸昭)で、多神教は森の宗教と考えられている。砂漠に存在するのは砂と風だけだ。呆気(あっけ)なく死んでしまうことも多かったことだろう。人々は救いを求めて天を仰ぐ。これが「信仰」の謂(いわ)れだ(東洋は信心)。

「砂漠では、心を動かされる何もないので、人の思考は自然に天に向かう。そして唯一の神を崇拝する宗教が誕生したわけだ」(長谷川良、2015年)。

「砂漠の中では砂か風しかない。そういうものでは人間の無力さを克服できない。だからこそ、もう「絶対的なもの」を求めないと、砂漠風土ではやっていけないと。こうなると、もう強大な力を持った一つの神様しか選択できない。こういう心理状況が働いたと考えたほうが理解し易いんじゃないでしょうか。だから砂漠の神が一神教。自然の豊かなものがあるところでは多神教が普通になる。そんな風土が生み出したものでもあるんです」(安岡譽)。

 新約聖書ではイエスを「善き羊飼い」に、そして信徒を「迷える羊」に喩(たと)える。ま、どっちにしてもあんたたちは中東を砂漠化したわけだよ。

 彼らが希(こいねが)った天国は水が豊富で滴り落ちるような緑に溢れていたことだろう。そう。我々にとっては見慣れた風景だ。砂漠と比べれば日本はまさに天国といってよい。

 奴隷は家畜文化から生まれた。日本に奴隷制度はなかった(『日本人と「日本病」について』岸田秀、山本七平)。現代においても先進国が発展途上国の資源を搾取し、労働や兵役を国民に押しつける形でソフトな奴隷制は温存されている。

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2019-07-09

馬渡大坂~半原越


 馬渡大坂(まわたりおおさか)から半原越(はんばらごえ)にアタック。本当は牧馬峠(まきめとうげ)までも行くつもりだったのだが思った以上にきつくて帰ってきた。行きは愛川の水道みち地図)から。


 急斜面を駆け下りると里山に囲まれた田んぼが広がる。長閑(のどか)で心休まる場所だ。

 馬渡大坂は大したことがなかった。ところが半原越まで行くとなると話が変わる。最初はナメてかかっていた。「半原越よ、スピンバイクで鍛えた私の足元にひざまずくがいい」くらいに思ってたんだよね。56歳になった私の前に半原越は傲然と立ち塞がった。


【半原越入口付近で】

 牧馬峠(相模湖側)に次ぐ苦しさであった。ペダルを踏みながら神仏に罰せられているような気分になってくる。ま、私としては70~80代で行うはずのリハビリを先んじて行っている自覚があるから苦しいのは望むところだ。

 空気が湿っぽくなってきたので帰ることに。途中で前々から気になっていた道を確認する。Googleマップには載っていない(「Googleマップが劣化した」不満の声が相次ぐ ゼンリンとの契約解除で日本地図データを自社製に変更か - ITmedia NEWS)のだが航空写真だとはっきりわかる。ズザ沢湧水の脇にある道だ。


 ゲートの向こうの林道は舗装されていなかった。



 いつものようにJA県央愛川荒茶工場前を滑るように走り抜ける。時速57kmだ。そのまま来た道を戻る。スピンバイクの効果は平地でわかった。驚くほど足が回る。登坂で発揮できないのはどうしたことか? 筋力ではなく心肺能力の問題なのだろうか?

 今月でロードバイクに乗り始めてからちょうど1年を迎える。ヤビツ峠に挑む前にもう少しトレーニングが必要だ。

 日野晃の本を読んで思ったのだが、「背中を丸める」とか「肩甲骨を開く」というのは「胸骨を下げる」意識にすると、かなり楽になる。

2019-07-08

黒船ペリーが開国を迫ったのは捕鯨船の補給地を確保するためだった/『環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』石弘之、安田喜憲、湯浅赳男


『砂糖の世界史』川北稔
『砂の文明・石の文明・泥の文明』松本健一

 ・動物文明と植物文明という世界史の構図
 ・黒船ペリーが開国を迫ったのは捕鯨船の補給地を確保するためだった
 ・中東が砂漠になった理由
 ・レッドからグリーンへ

『一神教の闇 アニミズムの復権』安田喜憲
『石田英一郎対談集 文化とヒューマニズム』石田英一郎

必読書リスト その四

石●石炭ガスが登場する以前、大都市の街頭の燃料にクジラの油を使っていて、1740年代のロンドンでは5000もの街灯が鯨油でともされていたそうです。これでは、いくら捕鯨をやっても足りないですよ。欧米で捕鯨の圧力が少し下がるのは、19世紀に入って石炭ガスが普及してきてからです。

(中略)

石●アメリカの捕鯨産業は1650年頃東海岸で始まり、1700年頃にはそこも捕り尽くして北極海に出ていく。それも、湯浅さんがいわれたとおり、1830年頃には資源は枯渇して太平洋に進出を余儀なくされる。19世紀半ばには、もう太平洋の東ではクジラが壊滅し、さらに西へ西へと進出したわけです。しかし、捕鯨船への燃料や水の補給ができなくなり、そこで強面のペリー提督を日本に送り込んで、捕鯨船への補給のために開国の圧力をかけることになる。

【『環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』石弘之〈いし・ひろゆき〉、安田喜憲〈やすだ・よしのり〉、湯浅赳男〈ゆあさ・たけお〉(洋泉社新書y、2001年)/新版、2013年】

 しかも欧米人は鯨肉を食さなかった。油を絞った後は巨大な遺骸を捨てていたのだ。黒船来航は1853年(嘉永6年)。それから100年余りを経て、今度は日本の捕鯨が欧米から問題視される(『動物保護運動の虚像 その源流と真の狙い』梅崎義人)。

 誰が何を食べようと文句を言われる筋合いはないはずだが、白人は「知性の高い動物を食べるべきではない」と宣(のたま)う。同じ人間であるはずの黒人や黄色人を散々差別してきた白人の動物に対する憐憫(れんびん)の情はどこか歪んだものを感じさせる。

 要は「ルールを決めるのは俺たちだ」と言いたいのだろう。もちろんその裏側には「お前らは黙ってルールに従えばよい」という人種差別感情がべったりと貼り付いている。

 日米和親条約(1854年)を始めとする不平等条約は「黒船レジーム」といってよい。これを解消するために日本は日清戦争日露戦争を戦い、やっとの思いで半世紀後の1911年に関税自主権を回復した。国際社会で対等な国家として認められるのに我々の父祖がどれほどの苦労をしてきたことか。

 鯨のために開国を強いられ、開国すると鯨のために弾劾される。日本にとっては忌まわしい動物と言えなくもない。

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近未来の車輪とタイヤとロボット・ドローン






2019-07-07

黒船を歌う江戸時代の人々/『幕末外交と開国』加藤祐三


『戦国日本と大航海時代 秀吉・家康・政宗の外交戦略』平川新
『逝きし世の面影』渡辺京二

 ・黒船を歌う江戸時代の人々

日本の近代史を学ぶ
必読書リスト その四

 黒船来航、そのニュースはまたたく間に国内を駆け巡った。公文書、浮世絵、狂歌・狂句、瓦版(ミニ新聞)、手紙、日記、そして口コミ。
◎泰平の眠りをさます上喜撰(じょうきせん) たつた四はいで夜も眠れず
  煎茶の銘柄に「上喜撰」があった。「蒸気船」と同音である。煎茶を四杯も飲めば目が冴えて眠れない。四隻(四杯)の蒸気船では「夜も眠れず」。作成年代は不明、後の明治期とする説もある。似た歌に「アメリカを茶菓子に呑んだ蒸気船 たつた四杯で夜もねられず」があり、アメリカに飴をかけている。
◎井戸の水あつてよく出る蒸気船 茶の挨拶で帰るアメリカ
  井戸とは、2名置かれた浦賀奉行の一人(江戸城詰め)の井戸石見守(いわみのかみ)との語呂合わせである。水質が合って程よく出た上喜撰を飲んで、茶飲み程度の軽い挨拶で帰帆。確かに、ペリーの第1回滞在は、わずか10日間である。
◎アメリカが来ても 日本はつつがなし
  筒(大砲)がないことと、恙無い(無事)を掛けている。
◎日本へ向ひてペロリと下をだし
  ペリーの名はオランダ語風にペルリ、ヘロリなどとも書かれている。ペロリ、あかんべ~か。
◎馬具武具屋 渡人さまとそつといひ
  泰平の時代がつづき、馬具や武具を扱う商売はさびれていたが、黒船来航でいいよいよ天下大乱か。商売繁盛、だが大声では言えない。
◎兵糧の手当に米の値があがり 武家のひそかに黒船さま
  武士の俸給は米である。まずは食用にしたが、残りは売って現金に換えた。兵糧手当に米の値上り。ありがたや。
◎永き御世(みよ)なまくら武士の今めざめ アメリカ船の水戸のよきかな
  水戸とは警世家で対外強硬派ともいわれた御三家(ごさんけ)の水戸(茨城県)の徳川斉昭(なりあき)をさす。目の前の黒船が、長い平和ですっかりなまくらになった武士の覚醒剤となった。水戸殿は溜飲を下げる。
 内容からみて、これらの歌は、10日間で終わった第1回ペリー来航の時に詠まれたものであろう。安堵した気配や、揶揄や好奇心が強く出ている。艦砲射撃で街が焼かれた、武士達が艦隊に切り込んだなど、緊迫した様子のものは一つもない。これがほかならぬ現実であった。

【『幕末外交と開国』加藤祐三〈かとう・ゆうぞう〉(ちくま新書、2004年/講談社学術文庫、2012年)】

 言葉のセンスがツイッターとは桁違いである。その圧縮された情報の濃度は流行歌をも軽々と凌(しの)ぐ。更には遊びの精神が横溢(おういつ)しながらも単なる駄洒落に堕していない。

 俳句の俳という字は「おどけ、たわむれ」を表し(俳 | 漢字一字 | 漢字ペディア)、俳句の源流である「『俳諧』には、『滑稽』『戯れ』『機知』『諧謔(かいぎゃく)』等の意味が含まれる」(俳諧 - Wikipedia)。ユーモアとは現実を突き放して見つめて悲しみや苦しみをも笑い飛ばす精神である。四季を愛(め)でる美意識や、もののあはれもさることながら、日本人のユニークさは「現実を面白がる心持ち」にあるような気がする。

泰平のねむりをさますじようきせん たつた四はいで夜るも寝られず/『予告されていたペリー来航と幕末情報戦争』岩下哲典

 この手の話が好きなので紹介したが、本書は――検索しながら別の本に辿り着き、更に検索してはまた別の本を辿ってしまう悪循環が2時間以上続く。その後数本の動画を見て、結局寝てしまう――黒船来航後、仁王立ちとなって安政の改革を断行した阿部正弘〈あべ・まさひろ〉と、ペリーとの交渉役を命ぜられた林大学頭〈はやし・だいがくのかみ/林復斎〉による外交の歴史が詳述されている。

 戦前を「未発達の黒い歴史」と捉えるのが左翼の進歩史観であるが、史実を知ればマシュー・ペリー同様、江戸時代の日本人を見直さざるを得ない。

 明治維新の立役者は下級武士であったが身分という枠組みで見るのは片手落ちだ。維新~開国を成し遂げたのは知識人たちであった。豊臣秀吉はヨーロッパ人がアジア諸国を侵略し植民地化していることを知っていた(『戦国日本と大航海時代 秀吉・家康・政宗の外交戦略』平川新)。そして幕末の知識人は阿片戦争で清国がイギリスに敗れた事実を把握していた。

 黒船を歌う江戸時代の人々は実に呑気(のんき)であった。彼らの精神は江戸時代に埋没したまま日本の激動を予期し得なかった。阿部正弘が成し遂げた改革や人事を思えば、彼こそが明治維新という舞台の土台をつくったといっても過言ではないだろう。それまで発言権のなかった外様大名の声を聞き、島津斉彬〈しまづ・なりあきら〉などを幕政に参加させた。また、勝海舟を登用したのも正弘であった。

 軍事力では圧倒的に劣る日本が外交交渉を通して新しい国家の形を模索する。林大学頭のタフネゴシエーター振りも際立っている。その胆力・見識・知謀は現在の大臣級では足元にも及ばないだろう。

 こうして日本は鎖国という平衡系世界から開国という非平衡系世界へ船出する。

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2019-07-04

潮目


 有本香vs.橋下徹の論争に百田尚樹足立康史が参戦して、案の定足立が炎上させて終了しつつある。

 かつて見えなかった戦後史の真相が輪郭をくっきりと現し、長い影まで見晴かすことができるようになった現在、この論争は新しい歴史教科書をつくる会の内紛以上に大きな影響を及ぼす可能性がある。twitter上での些細な混乱が示したのは、国際社会の反応を恐れる古い政治家と祖国に誇りを抱こうとする国民の間に越え難い確執があることだった。

 4月に行われた大阪W選挙で日本維新の会は圧勝した。その驕(おご)りがあったとすれば維新は所詮ローカル政党の域を出ることはない。DHCテレビ文化人放送局は二大ネット保守放送局であるが、これまで手を携えて安倍政権と維新を支持し続けてきた。そこに亀裂が入ったわけだから保守は統合から分裂へ向かい、憲法改正にブレーキが掛かることとなろう。

 橋下徹に関してはメディアとの対決姿勢を国民に広く知らしめた一点を私は評価している。ただしその礼儀知らず振りは様々な波紋を広げ、大阪維新の会と旧太陽の党が合流する際に露見した(平沼赳夫「次世代の党」党首が傲岸不遜な橋下徹・大阪市長の非礼を告発)。今となっては平沼赳夫〈ひらぬま・たけお〉の見方が正しかったように思える(「日本維新の会」と「石原新党」―なぜ橋下徹は平沼赳夫を排除するのか)。


 橋下と足立の言動には拭い難いエリート意識がにじみ出て腐臭を放っている。まるで「お前ら国民に政治家の苦労がわかってたまるか」と言うような姿勢が透けて見える。彼らの態度は逆圧迫面接と名づけるのが相応しい。小選挙区で落選して比例復活を遂げた足立はもっと自重して然るべきだろう。

 小さな論争が意外と大きな潮目になるかもしれない。政界再編のためには分裂が必要だ。















2019-07-03

文明とエントロピー/『ほんとうの環境問題』池田清彦、養老孟司


『やがて消えゆく我が身なら』池田清彦

 ・石油とアメリカ
 ・文明とエントロピー

・『正義で地球は救えない』池田清彦、養老孟司
・『生物にとって時間とは何か』池田清彦

●文明とエントロピー

 ですから、環境問題の根本とは、文明というものがエネルギーに依存しているということです。そしてそのときに、議論に出ない重要な問題があります。それは、熱力学の第二法則です。
 文明とは社会秩序ですよね。いまだったら冷暖房完備というけれども、普通の人は夏は暑いから冷房で気持ちがいい。冬は寒いから暖房で気持ちがいいというところで話が止まってしまう。しかし根本はそうではない。夏だろうが冬だろうが温度が一定であるという秩序こそが文明にとっては大切なのだと考えるべきなのです。しかし秩序をそのように導入すれば、当然のことですが、どこかにそのぶんのエントロピーが発生する。それが石油エネルギーの消費です。
 端的に言えば文明とは、ひとつはエネルギーの消費、もうひとつは人間を上手に訓練し秩序を導入すること、このふたつによって成り立っていると言えます。人間自体の訓練で秩序を導入する際のエントロピーは人間の中で解消されるから、自然には向かいません。文明は必ずこの両面を持っています。さきほども述べたように、古代文明があったところでは、石油に頼らずとも文明が作れるという意識があったため、石油に対する意識は鈍かった。しかしアメリカは荒野だったし、そこに世界中からバラバラの人間が集まってきた。そういうところでなぜ文明ができたのかと言えば、まさに秩序を石油によって維持したためです。秩序を維持することは、エントロピーをどこで捨てるかという問題であり、それを1世紀続けたら炭酸ガス問題になったのです。アメリカ文明のいちばん端的な例は、アパートの家賃が光熱費込みだということです。これではエネルギーの節約に向かうはずがない。だから、恐ろしく単純な問題なんですよ。それを認めずに何かを言っても意味がない。
 僕が代替エネルギーを認めないというのは、どんな代替エネルギーを使おうが、エントロピー問題には変わりがないからです。(養老孟司)

【『ほんとうの環境問題』池田清彦、養老孟司〈ようろう・たけし〉(新潮社、2008年)】

 一般的にエントロピーは「乱雑さの度合い」と解釈されている。厳密ではないが熱力学第一法則がエネルギー保存則で熱力学第二法則がエントロピー増大則と覚えておけばよい。

 熱いスープは時間を経るごとに冷める。熱が空気中に分散した状態を「乱雑さ」と捉えるのである。つまり冷めたスープはエントロピーが増大したのだ。コーヒーに入れたミルクは渦を巻きながら拡散し、掻き混ぜることで全体に行き渡る。このように秩序から無秩序への変化は逆行することがない(不可逆性)。

「ホイルは、最も単純な単細胞生物がランダムな過程で発生する確率は『がらくた置き場の上を竜巻が通過し、その中の物質からボーイング747が組み立てられる』のと同じくらいだという悪名高い比較を述べている」(Wikipedia)。フレッド・ホイルのよく知られた喩え話もエントロピーという概念に裏打ちされている。

 出来上がったカレーを元の材料に戻すことは不可能だ。混ぜた絵の具を分離することも無理だ。砂で作ったお城は波に洗われて崩れる。テーブルから落ちて砕け散った茶碗が元通りになることはない。「覆水盆に返らず」という言葉は見事にエントロピー増大則を言い表している。

 やがて太陽も冷たくなり、宇宙はバラバラになった原子が均一に敷かれた砂漠と化す(熱的死)。

 冷房を効かせると熱い部屋が涼しくなる。一見するとエントロピー増大則に反しているようだが室外機の排熱とバランスすれば、やはりエントロピーは増大している。




 武田邦彦はエントロピー増大則に照らしてリサイクルを批判しているが、養老孟司の代替エネルギー批判も全く一緒である。エントロピー増大則は永久機関を否定する。

 エントロピーに逆らう存在が生物であるが、熱や排泄物(≒エントロピー)を外に捨てている。

 物理世界の成住壊空(じょうじゅうえくう/四劫)・生老病死がエントロピーなのだろう。

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エントロピー増大の法則は、乱雑になる方向に変化するというものではない。 | Rikeijin
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エントロピーとは何か(1) エネルギーの流れの法則
宇宙のエントロピー
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2019-07-02

石油とアメリカ/『ほんとうの環境問題』池田清彦、養老孟司


『やがて消えゆく我が身なら』池田清彦

 ・石油とアメリカ
 ・文明とエントロピー

・『正義で地球は救えない』池田清彦、養老孟司
・『生物にとって時間とは何か』池田清彦

石油とアメリカ

 僕は常々、文化系の人が書かない大切なことがいくつかあると思っています。そのひとつが、環境問題に関しては、アメリカとは何かということを考えざるをえないということです。実は環境問題とはアメリカの問題なのです。つまりアメリカ文明の問題です。簡単に言えばアメリカ文明とは石油文明です。古代文明は木材文明で、産業革命時のイギリスは石炭文明ですね。そしてその後にアメリカが石油文明として登場するのだけれども、一般にはそういう定義はされていませんよね。
 1901年にテキサスから大量の石油が出て、1903年にはフォードの大衆車のアイデアが登場した。アメリカはそれ以来、石油文明にどっぷりと浸かってきました。普通に考えたら、ジョン・ウェインの西部劇の世界とニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンとはまったくつながらないですよ。つながる理由が何かと言えば、石油なのです。(中略)
 石油問題に関しては、アメリカが世界の中で最も敏感で、ヨーロッパはそれより鈍かった。日本のほうはさらに鈍かった。そして最もにぶかったのが、古代文明を作った中国でありインドだった。文明というのは石油なしでも作れるという考えが頭にあった順に鈍かったということです。
 アメリカが戦後一貫して促進してきた自由経済とは、原油価格一定という枠の中で経済活動をやらせることをその実質としていました。原油価格が上がってはいけないというのは、上がった途端にアメリカが不景気になっちゃうからね。ものすごく単純な話なんですよ。自然のエネルギーを無限に供給してけば、経済はひとりでにうまくいっていた。それを自由経済という美名でごまかしてきたのが、20世紀だったわけです。ひとり当たりのエネルギー消費では、日米の差は、僕が大学を辞めることには2倍あった。ヨーロッパ人の2倍、中国人の10倍です。科学の業績などをアメリカが独占するのは当たり前でしょう。戦争に強いとか弱いとかにしてもね、日本は石油がないのに戦争をしたのだから。9割以上の石油を敵国に頼って戦争をするのがどれだけ不利だったか、ということです。それだけのことなのです。
 それからこれも文化系の人は書かないことですが、ヒトラーがソ連に侵入した理由が、歴史の本を読んでもどうも分からない。答えは簡単なことです、石油です。当時もソ連は産油国だったのですよ。コーカサスの石油が欲しかったから、ドイツはスターリングラードを攻めた。そこをはっきり言わないから色々なことが分からない。日本の場合も、「持たざる国」と言い続けてきたけれども、根本にあるのは石油、つまりエネルギーの問題です。古代文明を見てもそうでしょう。木材に依存した文明の場合、最も大量に消費できたのは始皇帝時代の秦ですからね。木を大量に伐採したから万里の長城が作られたわけですよ。現在の砂漠化の要因をたどれば、この時代になるでしょうね。(養老孟司)

【『ほんとうの環境問題』池田清彦、養老孟司〈ようろう・たけし〉(新潮社、2008年)】

 文章から察すると書き下ろしならぬ語り下ろしか。池田清彦と養老孟司という組み合わせはその語り口の違いからすると泉谷しげると小田和正ほどの差がある。二人の共通項は虫採りだ。政治的な立場は池田が反権力で、養老はよくわからない。わからないのだが保守でないのは確かだろう。

「頭のよさ」は物事の本質を抉(えぐ)り出すところに発揮される。戦争とエネルギーと経済と歴史を「石油」というキーワードで解くのは実にすっきりとした方程式で、ストンと腑に落ちる。

 ここで新たな疑問が生じる。次のエネルギーシフトは石油から何に変わるのだろうか? またぞろ何かを燃やすのか? あるいは別の方法でコンプレッサーのように圧力を掛ける方法を開発するのか? いずれにせよそれは電気エネルギーに変換する必要がある。養老はエントロピーという観点から代替エネルギーに関しては否定的だ。燃焼から去ることができないのであれば効率化を目指すのが王道となる。

 科学は核分裂のエネルギー利用を可能にはしたがゴミの問題をまだ解決できていない。21世紀のエネルギー源として核融合による発電の開発が進められているが今世紀半ばに実現されるのだろうか?

 アメリカはシェール革命をきっかけに世界の警察官を辞めた(オバマ大統領のテレビ演説、2013年9月10日/トランプ大統領、2018年12月26日)。警察官が不在になれば悪者がはびこる。つまり中東と東アジアが安定することはあり得ない。

 つくづく残念なことだが革新的な技術は戦争を通して生まれる。利権なきエネルギーが誕生するまで人類は戦争を行い続けるのだろう。

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2019-07-01

目撃された人々 73


 失敗した過去、行き詰まる現在を赤裸々に語ることができるのは心が開かれている人に限られる。四十、五十と年を重ねるごとにこれができる人は少なくなる。資本主義の哲学は成功だ。大人はあたかも自分が成功したように見せ掛ける技能を磨く。

「あたしさ……」と彼女が言った。「そうか」と私は聴いた。「こんな風に考えてしまうのは更年期障害のせいかな」と呟いた。「多分」と答えた。10年、20年前の私なら全力で励ましたことだろう。悩みとは解決されるべきマイナス要因であって停滞に他ならないと考えていたからだ。

 ところがそうでもないらしい。一つの悩みが解消されると別の悩みが芽を出し、やがて大きく生長するのだ。悩みとは観念という妄想が構築する脳のアルゴリズムなのだろう。とすれば悩むというメカニズムを見極め、悩むよりも具体的な問題処理の行動を一歩踏み出した方がよい。

 実に不思議なことだがその人の悩みは往々にして自分で自分を罰しているような側面がある。特に親子関係の複雑さが原因となっていることが多い。

 率直な言葉を通して相手の輪郭がくっきりと浮かび上がってくる。それは一人泣いている母親を見ていた幼い彼女の姿だ。母親を尊敬する彼女は自分が幸福になることを許さない。

子は親の「心の矛盾」もまるごとコピーする/『子は親を救うために「心の病」になる』高橋和巳

2019-06-29

死の恐怖を免れる簡単な方法/『やがて消えゆく我が身なら』池田清彦


 ・死の恐怖を免れる簡単な方法

『ほんとうの環境問題』池田清彦、養老孟司
・『正義で地球は救えない』池田清彦、養老孟司
・『生物にとって時間とは何か』池田清彦

 死の恐怖を免れる最も簡単な方法は、体は滅んでも心は不滅であると信ずることだ。言わずと知れたことだが、これは宗教である。すべての宗教はその教説の中に死後の世界についてのお話が入っている。天国(あるいは極楽)に行くにしても地獄に行くにしても、死んだ後もとりあえず心の存在は保証される。宗教とは、脳が巨大化して死の恐怖などという余計なことを考えるようになった人間が発明した、心が安楽になるための極めて優秀な装置である。死の恐怖も宗教も脳の発明品であることでは共通している。こういうのもマッチポンプと言うのだろうか。

【『やがて消えゆく我が身なら』池田清彦(角川書店、2005年/角川ソフィア文庫、2008年)】

 生と死にまつわるエッセイ集だ。テレビで見受ける酔っ払いみたいな口調とは打って変わって文章は端正である。

 私も生命は永遠だと長らく思っていたのだが10年ほど前に考えを改めた。スマナサーラ長老が「テーラワーダ仏教では最初に過去世を悟る」みたいな話を書いていたが私としては腑に落ちない。過去世だろうが来世だろうがその情報は現在の脳に収まっている。つまり何を語ろうとも現在の脳内情報であって、それを生前や死後にまで延長するのはどう考えても無理がある。

 よくインドあたりで生まれ変わり伝説がまことしやかに喧伝されているが、私は生まれ変わりというよりも何か生命の波長みたいなものがピタッと合致して、強く死者の生命を観じる(※「感じる」ではない)ことがあるのだろうと推察する。

 大体我々が思う生まれ変わりなんてえのあ身内や歴史上の有名人に限られていて、去年の夏に死んだ蝉や、日々食卓に上がる畜類の来世を思うことはない。

 本音を言えば死後の生命はあって欲しい。若い頃に後輩を亡くしているので彼らと会いたいからだ。ルワンダで殺戮された多くの人々も怨霊となって無慈悲な人類を祟(たた)ればいいと本気で思う。でも多分そうはならない。

 私は死と眠りは極めて似た状態だと考える。眠ってしまえば私という存在はなくなる。夢を見ているのは脳が半分覚醒しているためで完全に死んではいない。ま、幽霊なんてのがこの状態なのだろう。眠れば私は消える。これが答えだ。

 本当は永続する何かがあるかもしれないが、それは我々が考えているような「私」ではない。エネルギーの慣性みたいなものが働く可能性はある。ただし生まれ変わるような性質ではないだろう。

 諸法無我とは「物語から離れる」生き方である。因果応報で死後の極楽行きや地獄行きが決まるというのはいい物語だとは思うが、所詮物語の領域を出ていない。善因善果・悪因悪果は飽くまでも現在に収まるのである。私は死後の存在を否定するようになってから「死ねば仏」という言葉は案外正しいのかもしれないと考えるようになった。「死の瞬間に脳は永遠を体験する」(『スピリチュアリズム』苫米地英人、2007年)なら時間が止まる可能性もある。

やがて消えゆく我が身なら (角川ソフィア文庫)
池田 清彦
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2019-06-28

おからナゲット


 元々おからは好きなのだがテレビでおからパウダーの存在を知った。コーヒーやヨーグルトに混ぜることでダイエット効果があるようだ。大豆は腹持ちがいいので満腹中枢を騙すことができるのだろう。あちこち調べているうちに乾燥おからが安いことに気づいた。これはおからパウダーに比べると粒子が粗(あら)い。つまりコーヒーには溶けないがヨーグルトであればさほど問題はない。で、乾燥おからを買ったところ「おからナゲット」なるレシピが紹介されていた。

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乾燥おから4袋セット 4kgs (4袋 x 1 kg)
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 今日現在の価格は1kg780円、4kg2220円でともに送料は340円となっている。コーヒーに溶けるのは超微粉だ。



 では、おからナゲットのレシピを紹介しよう。私は何でも大量に作る癖があるので2人分を4人分に換算しておいた。

【おからナゲット】のレシピをお教え致します。 ケチャップとマスタードを添えて熱々のまま食卓に出せば、ほとんどの人は普通のナゲットと疑わず、パクパク食べてしまいますよ。 是非、お試し下さいね。

材料 2人分/ 4人分
・薄力粉 … 50g(小さじ3g、大さじ9g)計量カップ200cc=110g
・おからパウダー … 50g(小さじ2g、大さじ6g)計量カップ300cc=110g
・水 … 125cc *2.2=275cc
コーヒー用ミルク … 3個
・コンソメ … 1個
・にんにく(すりおろし) … 1かけ
・塩コショウ … 少々

 1.ボールに全ての材料を入れて混ぜ合わせる。
 2.手て丸めて潰し、ナゲットの形にする。 厚さを均一に。 フォークの背を使って、ナゲット模様を入れる。
 3.180度の油でカラリと揚げたら出来上がり。 敏感肌の方用に完全無添加で安心な入浴剤としても、 ご愛用頂いております。

 貧乏性のため少ない油で揚げてみたのだが悪くない出来だ。味はインパクトが弱いが工夫のしようはいくらでもあるだろう。尚、コーヒー用ミルクとはコーヒーフレッシュのことだと思われるが、これは植物油に水を混ぜて乳化剤で色を付けたゲテモノなので使わない。牛乳や豆乳で構わないだろう。

 参考のためにいくつかリンクを貼り付けておく。

・おから、豆腐、マヨネーズ、片栗粉、ガラムマサラ、粉チーズ、ケチャップ(【5分でできるおつまみレシピ】おからナゲット|@DIME アットダイム
・おから、豆腐、片栗粉、パン粉、鶏ガラスープの素(もっちり☆おからと豆腐のチキンナゲット風 by ゆあなママ 【クックパッド】
・おから、木綿豆腐、にんにく、こしょう、顆粒鶏ガラスープ、顆粒コンソメ、マヨネーズ、片栗粉、揚げ油(おからナゲット♪ レシピ・作り方 by ちーたまちー|楽天レシピ
・おから、豆腐(絹でも木綿でも)、スライスチーズ、片栗粉、塩コショウ(おからと豆腐のチーズナゲット~離乳食にも by Mikko6 【クックパッド】

2019-06-26

『チャイルド44』のノンフィクション版/『子供たちは森に消えた』ロバート・カレン


『チャイルド44』トム・ロブ・スミス

 ・『チャイルド44』のノンフィクション版

『標的(ターゲット)は11人 モサド暗殺チームの記録』ジョージ・ジョナス

 2周間後、ブハノフスキーはブラコフのために7ページにわたるレポートを書き上げた。レポートのなかでブハノフスキーは、捜査員たちが捜査の拠(よ)りどころとしている仮説を徹底的に批判した。この事件は、性的な人格異常が原因と考えてほぼまちがいない、と彼は断言した。犯人は、他人に苦痛を味わわせることによってのみ性的な満足をおぼえるサディストである。精神医学の文献にも、ナイフや針を使って他人に浅い傷を負わせることに快感を見いだすサディストの例が載っている――ブハノフスキーはそうつづけた。
 犯人は強い強迫観念に悩まされている。犯人の胸に殺人の衝動がいったん生じたら、ちょうど飢えた人間が食べ物を食べずにはいられず、渇きに苦しむ人間が水を飲まずにはいられないように、だれかを殺さずにはいられなくなるのだ。犯人は獲物を見つけ出すために計画を練り、そしてその計画に従って行動することができる。たとえそれが、いかに複雑で微妙な計画であっても。しかし、殺人によって開放感を得た場合をのぞき、犯人は鬱屈と苛立ちに悩まされる。頭痛や不眠症にも苦しんでいるかもしれない。月の満ち欠けや天候といった周期的な事象が、犯人の殺人衝動の引き金となっている可能性もある。

【『子供たちは森に消えた』ロバート・カレン:広瀬順弘〈ひろせ・まさひろ〉訳(早川書房、1993年/ハヤカワ文庫、2009年)以下同】

 読書は次のタイプに分かれる。1.読みたい本、2.資料、3.参考書、4.類書である。テーマを決め、腰を据えて20~30冊ほど読み込めばどんな分野でも輪郭程度はつかめる。ま、ハズレをつかむことも多いのだが、修行を積むとハズレの見極めが早くなる。このようにして読書の枝は分かれ、2~4の本を読むことが増えるわけだが、決して楽しい読書体験とはいえない。それでも珠玉のような一冊と巡り合うためには長い道のりを歩くことが必要なのだ。

 本書は類書である。『チャイルド44』に描かれた事件のノンフィクションである。1978年から1990年にかけて52人もの人々を殺害した連続殺人犯を追う物語だ。

 文章は硬質で飾り気がなく、骨太のノンフィクションとなっている。何となくジョージ・ジョナス著『標的(ターゲット)は11人 モサド暗殺チームの記録』と作風が似ている。

 猟奇殺人を犯すサイコキラーを理解しようとすれば精神の平衡を失う。異常な事実を見極めればいいのであって、そこから先へ進んでしまうと自分も闇に飲み込まれてしまう。犯罪をおかさずに済んだ可能性も考慮する必要はない。なぜなら犯行は本人が選択した結果なのだから。

 かつて進歩的文化人が礼賛したソ連の実態が見事に描かれているので教科書本とした。社会主義は進歩ではなく退化であることがよくわかる。いまだに赤い旗を掲げている人々の気が知れない。

「おれが? 証言台に立たせろ! 弁護士を呼べ!」チカチーロはアクブジャノフの説明を聞くと絶叫した。「おれは何も告白しなかったぞ! 死体があるんなら見せてみろ!」と、チカチーロは檻の鉄棒に頭を押しつけて叫んだが、兵士たちにまた地下に連れていかれた。
 傍聴席では血の復讐を求める声が渦巻いた。「あいつを犬っころのように切り裂いておくれ」と、アレクセイ・ホボトフの母リージャ・ホボトヴァが言った。「うちの息子のように、これ以上ないというくらい恐ろしい死に方をすればいいんだ」
「この手であいつをバラバラにさせて!」と、別の女性が叫んだ。

 この件(くだり)は動画があるので一番下に貼り付けておく。銃殺では死者が浮かばれないことだろう。

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撫で肩の男―ロシアの殺人鬼を追って
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ロシア52人虐殺犯 チカチーロ [DVD]
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2019-06-25

倒れた人を起こす方法


 前々回のサイクリングで家を出た直後に尻餅をついているオジイサンを見掛けた。直ぐに自転車を降りて声を掛けた。「大丈夫ですか? 起き上がれます?」と。ジイサンは「すみませんが手を貸してもらえますか」と答えた。「助けて下さい」と言わないところがさすがである。

 年寄りを立たせることは私にとって赤子の手をひねるようなものだ。「ハイ、じゃあ力を抜いて下さい。上半身を少し前屈みにして、腕を胸の前で組んで下さい」。で、一瞬にして立たせた。この時、直ぐに手を離してはいけない。目眩(めまい)でまた倒れる可能性があるためだ。きちんと立てたら打撲と骨折の確認をする。手・肘・尾骨・背骨に痛みや傷があるかどうか。特に高齢者の場合、頭を打っているかどうかを厳密に調べる必要がある。打撲による脳血管障害があった場合、症状が数日後に現れるケースがあるためだ。

 起こし方については必ず覚えておくこと。家族がいる人は実際にやってもらいたい。少し想像力を働かせればわかることだが、災害や、線路・道路などでの人命救助でこれを知っているのと知らないのとでは天地雲泥の差が出る。


 私が更に詳しい解説をして進ぜよう。相手の腕を握るのではなく、中指・薬指・小指の3本を第2関節で曲げて引っ掛けるようにして持ち上げるのが正しい(※動画の腕の位置はよくない。相手の手首と肘の間に指を引っ掛ける)。人差し指は不要だ。自分の腕には力を入れない。持ち上げる腕に力を入れれば相手の体もそれに応じて緊張してしまう。そして体を相手の背中にぴったり密着させ、一度後ろ側に揺すってから真っ直ぐに自分の腰を上げる。この時、特に非力な女性にありがちなのだが、絶対に上半身を前に倒してはならない。前屈みから垂直方向の動きが腰痛をもたらすからだ。感覚としてはスクワットと全く同じで踵(かかと)はしっかりと地面につける。

 何かあってからオロオロするよりも、普段から有事に備えて準備をしておくことが大切だ。他にも色々な方法はあるのだが一番汎用性の高いやり方を紹介した。

2019-06-24

国民に納税しろと命じるずうずうしい日本国憲法/『反社会学講座』パオロ・マッツァリーノ


 ・笑い飛ばす知性
 ・時は金なり
 ・国民に納税しろと命じるずうずうしい日本国憲法

『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎
『ピーターの法則 創造的無能のすすめ』ローレンス・J・ピーター、レイモンド・ハル
『パーキンソンの法則 部下には読ませられぬ本』C・N・パーキンソン
『新版 人生を変える80対20の法則』リチャード・コッチ

必読書リスト その三

 日本の憲法には「納税は国民の義務」という条文がありまして、例によってお上に従うのが大好きな日本人は、これをありがたく遵守しています。一方、アメリカ合衆国憲法には「議会は税を課し徴収することができる」としかありません。
 欧米諸国において憲法とは、国民の権利と国家の義務を規定したものなのです。日本はまるっきり逆。国民に納税しろと命じるずうずうしい憲法は世界的に見てもまれな例です。
 スペインの憲法には「納税の義務」が記されていますが、税は平等であるべしとか、財産を没収するようなものであってはならぬなど、国家に対する義務も併記されています。日本では納税しないと憲法違反となじられますが、役人が税金を湯水のごとくムダ遣いしても憲法違反にはならず、はなはだ不公平です。
 一方的に国民に納税を要求する取り立て屋のような憲法があるのは、日本・韓国・中国くらいものですから、こんな恥ずかしい憲法はもう、即刻改正しなければいけません。

【『反社会学講座』パオロ・マッツァリーノ(イースト・プレス、2004年/ちくま文庫、2007年)以下同】

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 憲法改正といえば9条を巡る議論となりがちだが、こうした角度を変えた視点が新たな問題意識を与えてくれる。日本が源泉徴収制度を採用したのは戦前のこと。確かナチス・ドイツが最初で日本がそれに続いた。ドイツは敗戦によって源泉徴収をやめたが日本は維持し続けた。時折、「世界最古の源泉徴収制度国家」と書いてある本があるのはこのためだ。

 源泉徴収は本来であれば納税者と税務署が行う仕事を事業者に押しつける暴挙で、税務署の負担を減らし、納税者から納税意識を奪う。むしろそれが目的なのであろう。

 日本の租税負担率(所得税+国税+地方税+消費税+社会保障費)は42.5%(平成30年/2018年)である。財務省はこれを知らせたくないようで定期的にURLを変えている。

平成30年度の国民負担率を公表します : 財務省
負担率に関する資料 : 財務省


国民負担率(対国民所得比)の国際比較(OECD加盟35カ国)

「国民負担率の内訳の国際比較」は単純にそのまま比較するわけにはいかない。なぜなら法人税の違いがわからないからだ(主要税目の税収(一般会計分)の推移)。

 2015年で赤字法人の比率は64.3%である(梶原一義)。厳密には赤字でも法人税を支払うケースはある(三井啓介)が、実際には節税を目的とした赤字化が多い。

「一番うれしいのは納税できること。社長になってから国内では税金を払っていなかった」(2014年3月期の決算発表)――豊田章男社長の衝撃的な発言を覚えているだろうか? トヨタは2009年から2013年までの5年間にわたって法人税を支払ってこなかった(『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎)。メガバンク3行は10年以上法人税を収めてなかった。「諸々の制度の活用により、大企業の税負担率は、名目上の税率よりも実際には低いものとなっている」(村井隆紘)。

 一方、源泉徴収されるサラリーマンの場合、見なし経費として給与所得控除が設けられている(No.1410 給与所得控除|所得税|国税庁)。改正された特定支出控除はそれほど旨味がある制度ではない(宮塚達夫)。税法上は収入-必要経費=所得となるが、サラリーマンの場合、一律の給与所得控除が悪平等になってしまうケースもある。

 チンパンジーの世界でも「所有と分配の両方が行なわれている」(『共感の時代へ 動物行動学が教えてくれること』フランス・ドゥ・ヴァール)。最後は全員に餌が行き渡るというのだから我々はチンパンジー以下かもしれない。

 かつてこう書いた。「もしも完璧な政府が生まれ、完璧な税制を行えば、支払った税金は100%戻ってくるはずだ。否、乗数効果を踏まえれば増えて戻ってくるのが当然である」(借金人間(ホモ・デビトル)の誕生/『〈借金人間〉製造工場 “負債"の政治経済学』マウリツィオ・ラッツァラート)。平均以下の収入の人々には該当すると思うがどうか?

 元々たばこ税は印紙税として始まり、日清・日露戦争の戦費調達を目的に対象を広げた歴史がある(Wikipedia)。戦争と税金には切っても切れない縁がある。

 要はこうだ。国民は「欲しがりません勝つまでは」と酷税に耐える。で、戦争に勝てば国家は富み栄えて国民に恩恵を施す。じゃあ負けたらどうなるんだ? その時は民主政あるいはGHQによって政府がすげ替えられる。それでもかつての日本が高度経済成長を遂げたのはアメリカの戦争に便乗したためだ。

 鎌倉幕府は二度にわたる蒙古襲来(元寇)を斥けたが、借金をして馳せ参じた武士に恩賞を施すことができず、苦肉の策として徳政令(永仁5年/1297年)という借金棒引き政策を行ったが結局失敗して滅んだ。延(ひ)いては徳政令を求める土一揆が多発し遂には応仁の乱に至るのである。政治の根幹が経済と戦争であることが理解できよう。

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