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2017-12-14

巧妙に左方向へ誘導する本の数々/『「知的野蛮人」になるための本棚』佐藤優


『新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論』小林よしのり
・『新ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論 2』小林よしのり
・『新ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論 3』小林よしのり
『ゴーマニズム宣言SPECIAL 天皇論』小林よしのり
『戦争論争戦』小林よしのり、田原総一朗

 ・巧妙に左方向へ誘導する本の数々

『打ちのめされるようなすごい本』米原万里
佐藤優は現代の尾崎秀実

 ――つまらない本の見分け方を教えてください。
 その前に、どうしてつまらないスカ本が出版されると思いますか?
 ――書き手に才能がないからですか?
 それもありますが、重要なのは、本は「有価証券」だということ。出せばお金に換えられるということです。
 出版社で社員が20人を超えると、編集者が作りたくなくて、営業も売りたくなくて、取次(出版社と書店の間をつなぐ流通業者)もありがたがらない、本屋も起きたくない本がどうしてもできてしまう。資本主義ですから。
 だから、読者は「スカ本と、そうでない本を見分ける方法」をちゃんと学んでおかなくてはいけません。
 どうするかというと、本の「真ん中」をまず読むのです。
 ――本のど真ん中を開いて、何を確かめるのですか?
 なぜ真ん中を読むか。時間が足りずに雑に作って出している本は、真ん中あたりに誤植が多い。
 それから、自分が知っている分野の固有名詞がでたらめな場合もダメ。そんな本を出している出版社は、いい加減な本を作る傾向があるから、警戒した方がいいでしょう。(聞き手 小峯隆生)

【『「知的野蛮人」になるための本棚』佐藤優(PHP文庫、2014年)】

 冒頭で佐藤が推す「本読み」巧者として松岡正剛〈まつおか・せいごう〉、斎藤美奈子鹿島茂立花隆佐高信〈さたか・まこと〉の5人を挙げる。松岡・佐高は言わずと知れた極左で、斎藤はフェミニズム左翼である。

 私程度の読書量でも「巧妙に左方向へ誘導する本の数々」とわかる。山口二郎や大田昌秀の名前を見て読むのをやめた。

 佐藤優が山口二郎を絶賛したのは新党大地が立ち上げた直後の講演であったと記憶する。当時、山口は北大教授だった。その後、山口は半安倍の急先鋒となり、佐藤は巧妙に沖縄の世論形成をリードしてきた。2015年に行われた辺野古基地反対の沖縄県民大会でのスピーチこそが佐藤の行ってきた工作の目的であろう。

「東京の窓から」は石原慎太郎が都知事をしていた時の番組である。YouTubeからは削除されている。私はこれを見て佐藤優という人物が信用できなくなった。


 石原慎太郎が4歳年上である。佐藤優とよく比較してもらいたい。菅沼光弘はまさしく国士である。インテリジェンスに通じた二人だが決定的な違いだ。私は菅沼の著書は全て読んできたが国士であるという一点がブレることはない。尚、菅沼がCIAに殺害されないのは山口組がガードしているため。戦後、東大を卒業しドイツに留学。ゲーレン機関(連邦情報局)で諜報教育を受ける。ラインハルト・ゲーレンにも一度会っている。








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2017-08-16

嘘つき左翼の真っ赤な真実/『打ちのめされるようなすごい本』米原万里


『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』米原万里

 ・嘘つき左翼の真っ赤な真実

『「知的野蛮人」になるための本棚』佐藤優
・『ジェノサイド』高野和明

 生物とは何か、という命題を、自然界と意識と表現における同一性と時間の関係から見つめ直そうとする池田清彦著『生命の形式 同一性と時間』(哲学書院)を読みながらのこと。「普通の人は、それぞれ少しずつ異なるイヌを見て、それらをみなイヌと同定することができる。ということはイヌをイヌたらしめる何らかの同一性を知っているわけだ」というくだりで、おあつらえ向きのニュースが聞こえてきた。

【『打ちのめされるようなすごい本』米原万里〈よねはら・まり〉(文藝春秋、2006年/文春文庫、2009年)以下同】

 文章が巧みだ。ページを開くと直ぐに引き込まれる。本書を手掛かりに数冊の本を読んだが、「これは!」と目を瞠(みは)ったのは池田清彦一冊のみであった(後に文庫化『生物にとって時間とは何か』〈角川ソフィア文庫、2013年〉)。

 米原の父親は日本共産党の幹部で衆議院議員を務めた米原昶〈よねはら・いたる〉で、姉のユリは井上ひさしの後妻である。ま、筋金入りの左翼と見ていいだろう。そして見逃せないのは米原万里と井上ひさしが佐藤優の背中を押して作家デビューさせたことだ。『国家の罠』が刊行されると米原は「外務省は、途轍(とてつ)もなく優秀な情報分析官を失った。おかげで読書界は類(たぐ)い希(まれ)なる作家を得た。退官した外交官がよく出すノー天気な自画自賛本が100冊かかっても敵(かな)わない密度の濃さと面白さ」(読売新聞 2005年4月18日)と絶賛した。既に名エッセイストとして名を馳せていた米原の影響力は大きかった。

 ってなわけで私は最初から眉に唾をつけて読み始めた。説明能力の高さと人格は必ずしも一致しない。世間では説明能力が高い嘘つきを詐欺師と呼ぶ。

 遅ればせながら、ついに買ってしまった。「新しい歴史教科書をつくる会」の中学校用歴史教科書、西尾幹二著『新しい歴史教科書―市販本』(扶桑社)。
 実は、ちょっと期待していた。中学2年の時に帰国し、近くの公立中学に編入した私は、歴史のみならず、あらゆる教科書の絶望的退屈さ加減にショックを受けた経験がある。

 一旦持ち上げてから落としているのだろうか? 違うね。落とすためにわざわざ持ち上げているのだ。しかもこのあと引用する大江健三郎の批判を引っ張り出すところに本当の狙いが隠されている。実に巧妙だ。

お笑い創価学会 信じる者は救われない』(知恵の森文庫)は、辛口な皮肉屋のテリー伊藤との対談形式で創価学会に関する論文やルポなどを紹介していく、意外に真面目な本だ。

 佐高信〈さたか・まこと〉という人物は他人の悪口で飯を食っている左翼である。こんな本を肯定的に評価するのも過去に共産党を裏切った創価学会(創共協定)を貶めるところに本意があるのだろう。

 すなわち本書は「左方向へ緩やかに誘(いざな)う書評本」というべき書物で、私に言わせれば「嘘つき左翼の真っ赤な真実」ということになる。同工異曲に佐藤優著『「知的野蛮人」になるための本棚』がある。左翼の策謀を知るためには格好の入門書といってよい。

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2011-08-31

『ロビンソン・クルーソー』は生き方の問答集である


 そう。『ロビンソン・クルーソー』の物語は、生き方の問答集である。人間とは何か、いかに生くべきかの寓話といってもよい。ここには、人間、この不可解なものの正体が、原始の姿さながらに浮き彫りにされているからである。

【『生き方の研究』森本哲郎〈もりもと・てつろう〉(新潮選書、1987年/PHP文庫、2004年)以下同】



 さいわいなことに、その島には猛獣はおらず、彼を襲ってくる人間もいなかった。だが、天涯孤独に追いやられた人間は、そこで、いわば人類史を反復しなければならない。じじつ、ロビンソンは人類として一からやり直さなければならなかった。したがって、28年にわたるロビンソンの孤島での生き方は、何万年、いや、何十、何百万年にもわたる人類史の復習だったといっていい。それを、向こう見ずのロビンソンは見事にやりとげるのである。理性的動物(ホモ・サピエンス)として、道具を使う工作人(ホモ・ファーベル)として、経済人(ホモ・エコノミクス)として。
 マルクスやマックス・ウェーバーなどがこの物語を人間の経済活動のモデルとして取りあげたのも、そのゆえであった。

「今週の本棚:富山太佳夫評 『道徳・政治・文学論集』『秘義なきキリスト教』」

生き方の研究 ロビンソン・クルーソー (集英社文庫)