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2022-02-24

6挺が放つ銃弾をかわす植芝盛平/『生命力を高める身体操作術 古武術の達人が初めて教える神技のすべて』河野智聖


 ・6挺が放つ銃弾をかわす植芝盛平

『身体構造力 日本人のからだと思考の関係論』伊東義晃

身体革命

 この話は陸軍の砲兵官が、合気道という素晴らしい武道があるからと軍の関係者を9人ばかり連れて植芝道場に見学にやってきたことからはじまります。そのときにいっしょにきた人たちというのは鉄砲の検査官でした。そういう人たちを前にして演武を行った植芝翁が、そのとき「ワシには鉄砲は当たらんのや」と言ってしまったのです。しかし彼らは鉄砲検査官。プライドを傷つけられ、怒ってしまいました。
「本当に当たりませんか?」
 彼らが先生に詰め寄ると、「ああ当たらん」「じゃあ、試してみていいですか」「けっこうや」と売り言葉に買い言葉となりました。
 植芝翁は撃たれて死んでも、文句が言えないように、その場で何月何日に大久保の射撃場で鉄砲の的になる、と拇印まで押し誓約書を書かされます。彼らはその写しを軍の裁判所のようなところへ持っていって、確認までしてもらったそうです。奥さまやお弟子さんに大変心配されても、「いや、大丈夫。あんなもん当たらんよ」とのんきに答えたそうです。そして射撃場での拳銃の一斉射撃となるのです。
 たっている植芝翁に向かって六つのピストルの引き金が引かれます。ところが、次の瞬間には、25メートルの距離を移動して、人一人投げ飛ばしているのです。
 25メートルの距離を瞬時に移動して投げ飛ばすなんて、信じられますか? その時にお供したお弟子さんの一人は合気道養神館館長、故・塩田剛三〈しおだ・ごうぞう〉先生です。
 塩田先生は現代武術において達人と尊敬される武術家です。その塩田先生が、何が起こるか見極めてやろうと目をこらしていても植芝翁の動きはなにひとつ見えなかったと告白しています。【あまりにも凄まじい話なので、誰もが嘘だと思ってしまうかもしれません。それを嘘だと疑ってかかるか、または人間の潜在的な力の実例ととらえるかでは自己の能力開発において大きな違いが生まれるでしょう】。

【『生命力を高める身体操作術 古武術の達人が初めて教える神技のすべて』河野智聖〈こうの・ちせい〉(経済界、2005年)】

 小野田寛郎もまた射撃をかわすことができると語っている。

小野田寛郎の悟り

 予備動作を見抜く以上の何かがあるのだろう。気配に先んじる何かがあるとすれば、それはもう量子力学的な世界だ。人間の認知能力には限りがないということか。

 河野智聖はユニークな武術家である。ただし文章があまりよくない。本書が一番おすすめできる。

2021-11-08

骨盤体操/『棗田式 胴体トレーニング』棗田三奈子


『究極の身体(からだ)』高岡英夫
『フェルデンクライス身体訓練法 からだからこころをひらく』モーシェ・フェルデンクライス
『運動能力は筋肉ではなく骨が9割 THE内発動』川嶋佑
『ウィリアム・フォーサイス、武道家・日野晃に出会う』日野晃、押切伸一
『大野一雄 稽古の言葉』大野一雄著、大野一雄舞踏研究所編
『武学入門 武術は身体を脳化する』日野晃
『ことばが劈(ひら)かれるとき』竹内敏晴
『スーパーボディを読む ジョーダン、ウッズ、玉三郎の「胴体力」』伊藤昇
『気分爽快!身体革命 だれもが身体のプロフェッショナルになれる!』伊藤昇、飛龍会編

 ・骨盤体操

『月刊「秘伝」特別編集 天才・伊藤昇と伊藤式胴体トレーニング「胴体力」入門』月刊「秘伝」編集部編
『火の呼吸!』小山一夫、安田拡了構成
『ストレス、パニックを消す! 最強の呼吸法システマ・ブリージング』北川貴英
・『新正体法入門 一瞬でゆがみが取れる矯正の方程式』佐々木繁光監修、橋本馨
・『仙骨姿勢講座 仙骨の“コツ”はすべてに通ず』吉田始史

身体革命

・やりづらい動きは回数を増やして
・筋肉を押す、揉む、叩くは厳禁
・「吐く」呼吸を意識して

【『棗田式 胴体トレーニング』棗田三奈子〈なつめだ・みなこ〉(KKKKベストセラーズ、2011年)】

 慣れないうちはどうしても息を止めてしまう。吸うことは誰でも自然にできるので吐くことに意識を集中する。


 真向法を行ったことがあれば、この体操の意味を理解できよう。


 私の場合、ストレッチは必ず真向法(まっこうほう)から始める。植芝盛平や中井祐樹も実践してきた体操である。


 本書にはDVDが付いているので大変わかりやすい。一通りできるようになってから再度視聴することで、最初は見えなかったものが必ず見えてくることだろう。

2021-11-07

股関節で地面をとらえる/『スーパーボディを読む ジョーダン、ウッズ、玉三郎の「胴体力」』伊藤昇


『究極の身体(からだ)』高岡英夫
『フェルデンクライス身体訓練法 からだからこころをひらく』モーシェ・フェルデンクライス
『運動能力は筋肉ではなく骨が9割 THE内発動』川嶋佑
『ウィリアム・フォーサイス、武道家・日野晃に出会う』日野晃、押切伸一
『大野一雄 稽古の言葉』大野一雄著、大野一雄舞踏研究所編
『武学入門 武術は身体を脳化する』日野晃
『ことばが劈(ひら)かれるとき』竹内敏晴

 ・「すべての身体表現の源は、胴体にあり」
 ・股関節で地面をとらえる

『気分爽快!身体革命 だれもが身体のプロフェッショナルになれる!』伊藤昇、飛龍会編
『棗田式 胴体トレーニング』棗田三奈子
『月刊「秘伝」特別編集 天才・伊藤昇と伊藤式胴体トレーニング「胴体力」入門』月刊「秘伝」編集部編
『火の呼吸!』小山一夫、安田拡了構成
『ストレス、パニックを消す! 最強の呼吸法システマ・ブリージング』北川貴英
・『新正体法入門 一瞬でゆがみが取れる矯正の方程式』佐々木繁光監修、橋本馨
・『仙骨姿勢講座 仙骨の“コツ”はすべてに通ず』吉田始史

身体革命

 私は「胴体の動きを磨き続ければ、60代で動きのピークを迎える」とつねづね言ってきた。これは理想論ではない。これまで私が出会った武道の名人たちには、その年齢で若い者たちを寄せつけない動きが確かにあった。胴体を使った動きは、意識して創り上げていくもので、さまざまな経験が蓄積されていく。中途半端に“ナマの体力”(磨いていないもともとの力)があると、胴体で動こうという意識が薄くなってしまうという面があるのだ。(中略)
 そして、胴体の動きの土台となるのが、「股関節で地面をとらえる」([股関節のとらえ])ことである。もちろん、これは私の感覚に基づいた造語だが、これは動く前の、「究極のニュートラル・ポジション」である。簡単に言ってしまえば、「股関節と脚の骨(大腿骨など)が正しい角度にある状態」となるのだが、“正しい角度”は万人にとって同じではない。これについては後で説明するが、立ったとき、座ったときにかかわらず、股関節でとらえることができれば、全身は解放され自由な動きが可能に楽になる。意識的に股関節でとらえられるかどうかは、レベルの高い動きかどうかを見分けるキーポイントであり、股関節でとらえた状態で胴体のトレーニングをすれば上達も早い。

【『スーパーボディを読む ジョーダン、ウッズ、玉三郎の「胴体力」』伊藤昇(マガジンハウス、1998年/改訂版、2011年)】

 あれこれと運動を試行錯誤してゆく中で肩甲骨と骨盤の意識が芽生えてきた。日常生活でも「肩甲骨を動かす」ことと「骨盤を起こす」ことを心掛けている。最初に骨盤を意識したのは大転子ウォーキングを行った時である(みやすのんき)。 「60代で動きのピークを迎える」とは俄(にわか)には信じがたいが、甲野善紀が50代の時に「今までで一番体が動く」と語った言葉が蘇る。

「子曰く、吾十有五にして学に志す。三十にして立つ。四十にして或(くぎ)らず。五十にして天命を知る。六十にして耳順(したが)ふ。七十にして心の欲する所に従へども、矩(のり)を踰(こ)えず」(『論語』「為政」)の金言を思えば、60代は反発することがなくなるわけだ。つまり体内の力が環境と完全に適応した状態と言えようか。何かを倒す、何かを克服するといった状態から、水が流れるようなバランス感覚が開花するのだろう。スピードやパワーが衰えても、平衡感覚や判断力が研ぎ澄まされることは十分あり得る。

 で、股関節の位置である。

「股関節(こかんせつ)がどこにあるのか、知っていますか? 股(また)という言葉から、いわゆる股間のあたりを連想する人が多いようです。実際にはもう少し奥のお尻に近いあたりで、太ももの骨が骨盤と接する部分の関節が、股関節です」(股関節(こかんせつ)を鍛えてスムーズな歩きを | オムロン ヘルスケア)。


 想像以上に上である。長時間坐ったままの生活をしているため我々の股関節は眠ったままだ。まずは股関節の感覚を覚醒めさせる必要がある。今ここに心を砕いて、様々な運動を試しているところである。

「股関節で地面をとらえる」ためには、骨を積み木のように意識すればよい。筋肉を脱力して骨の位置を確認する。なかなか自覚することが難しいのだが、立ち上がってから踵を持ち上げてストンと落とすと股関節に衝撃が伝わる。坐位や臥位(がい)で股関節を動かすのも有効である。何でもそうだが最終的には自分なりに工夫するしかない。

 この箇所については読んだ時はそれほどピンと来なかった。それがどうだ。少しばかり意識が高まると全く別の意味が現れてくるのだ。まるで炙り出しだ。この味わい深さは経典のレベルに近い。

2021-11-05

骨盤の細分化/『天才・伊藤昇の「胴体力」 伊藤式胴体トレーニング入門』月刊「秘伝」編集部編


『究極の身体(からだ)』高岡英夫
『フェルデンクライス身体訓練法 からだからこころをひらく』モーシェ・フェルデンクライス
『心をひらく体のレッスン フェルデンクライスの自己開発法』モーシェ・フェルデンクライス
『運動能力は筋肉ではなく骨が9割 THE内発動』川嶋佑
『ウィリアム・フォーサイス、武道家・日野晃に出会う』日野晃、押切伸一
『大野一雄 稽古の言葉』大野一雄著、大野一雄舞踏研究所編
『武学入門 武術は身体を脳化する』日野晃
『ことばが劈(ひら)かれるとき』竹内敏晴
『スーパーボディを読む ジョーダン、ウッズ、玉三郎の「胴体力」』伊藤昇
『気分爽快!身体革命 だれもが身体のプロフェッショナルになれる!』伊藤昇、飛龍会編
『棗田式 胴体トレーニング』棗田三奈子

 ・柔軟性よりも胴体力
 ・動きの「細分化」
 ・骨盤の細分化

『火の呼吸!』小山一夫、安田拡了構成
『身体構造力 日本人のからだと思考の関係論』伊東義晃
『ストレス、パニックを消す! 最強の呼吸法システマ・ブリージング』北川貴英
・『新正体法入門 一瞬でゆがみが取れる矯正の方程式』佐々木繁光監修、橋本馨
・『仙骨姿勢講座 仙骨の“コツ”はすべてに通ず』吉田始史

身体革命
必読書リスト その二

【『天才・伊藤昇の「胴体力」 伊藤式胴体トレーニング入門』月刊「秘伝」編集部編(BABジャパン出版局、2006年/新装改訂版、2021年)】

 運動はしているがスポーツをしていないことにはたと気づいた。バドミントンはもう2~3年やっていない。本当は近接格闘術をやりたいのだが、58歳のオヤジを受け入れてくれる道場があるのかどうかわからない。

 何が問題かというと、運動は単調な動きの反復となりやすい。決まりきった単純な動きなのだ。極めて狭い範囲の動きは鍛えられるが、それが逆に体の自由度を失わせる場合がある。更に全身の筋肉の連係を考えるとバランスが悪くなりそうな気がする。

 ウォーキングも単調だ。本来であればインターバル速歩が望ましいが時計やタイマーを持つのが面倒だ。自転車に乗っていたこともあって身軽にする癖がついてしまった。私は外出する際、小銭も持たないように心掛けている。例えばサイドステップや後ろ向き歩行、立ち幅跳びやフロントランジ・バックランジ、腿上げなどを加えれば体全体が連動する。

 そこで伊藤式胴体トレーニングをしようと思いついた。で、「骨盤の細分化」をやってみた。全くできなかった。いやあ本当に泣きそうになったよ。まず前に出した足を伸ばすことができない。その状態で丸める・反るをやろうとしたところ胴体が全く動かないのだ。「あれ?」と思った。何度やっても首しか動かない。「われ泣きぬれて蟹とたはむる」という気分になった。一応探したが蟹はいなかった。

柔軟性よりも胴体力」だと都合のいいように解釈してきたが、やはり最低限の柔軟性は必要だ。しばらくの間、ストレッチを重点的に行うことを決意した。


 新装改訂版の動画を見つけたのだが実に参考になる。画像だけだと動きがつかみにくい。これをつまらない体操だと思ったら大間違いだ。天才伊藤が辿り着いたエッセンスが凝縮しているのだ。還暦までは肩甲骨と骨盤を集中的に行うつもりである。ここには指の届かない動脈が走っている。

2021-11-03

体のセンサーが狂っていると疲れが取れない/『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本 目・耳・口・鼻の使い方を変えるだけで身体の芯から楽になる!』藤本靖


『ことばが劈かれるとき』竹内敏晴
『悲鳴をあげる身体』鷲田清一
『身体が「ノー」と言うとき 抑圧された感情の代価』ガボール・マテ
『ストレス、パニックを消す!最強の呼吸法 システマ・ブリージング』北川貴英
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二

 ・疲れないタイピングのコツ
 ・体のセンサーが狂っていると疲れが取れない

『君あり、故に我あり 依存の宣言』サティシュ・クマール
『呼吸による癒し 実践ヴィパッサナー瞑想』ラリー・ローゼンバーグ

身体革命
悟りとは

【疲れがとれないのは、身体の「センサー」の使い方の問題です。】(中略)

 身体のセンサーがうまく働かなくなると、身体は緊張して固くなります。目の奥が痛くなったり、首のつけ根が重くなったり、みぞおちのあたりが窮屈(きゅうくつ)になって呼吸が浅くなったり……。そんな経験をしたことはないでしょうか?
 これらは身体のセンサーをうまく使えず、身体の緊張がとれなくなってしまった状態なのです。

【『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本 目・耳・口・鼻の使い方を変えるだけで身体の芯から楽になる!』藤本靖〈ふじもと・やすし〉(さくら舎、2012年/講談社+α文庫)】

 再読。私の場合、疲れたら寝る。それだけで十分だ。生まれてこの方マッサージをしたことが一度もない。床屋で頭を叩いてもらった程度である。体は硬い方だが特に困ったことはない。身体操作に関しては日常的に意識を研ぎ澄ましている。階段を上る時は必ず一段飛ばしで、尚且つ下の足の踵を浮かせないようにしている。これは10代の頃に雑誌で読んだヒップアップトレーニングだ。また、1日に10回くらいは肩甲骨を動かし可動域を広げるよう心掛けている。更に坐る際は骨盤を立てるようにし、歩く時は骨盤を動かすことを心掛けている。

 筋トレはケトルベルと懸垂のみ。大胸筋がついてくると動きの妨げになる。メインは常歩(なみあし)だ。本当は走りたいのだが右の膝痛があって養生(ようじょう)している。起床直後は血管マッサージと三角倒立を必ず行う。食はあまり気にしていない。基本は粗食で食べ過ぎないようにしている。主食はご飯とオートミールを交互に摂っている。ご飯の時は血糖値上昇を防ぐため必ず納豆かオクラを合わせる。オートミールには卵を。私は昨年まで肉を避けてきたのだが現在は遠慮しないで食べている。後はサバ缶タマネギと味噌汁でどうにでもなる。

 体のセンサーを確認する方法がいくつか紹介されている。やってみると「ほほう」という感じなのだが、どうも物足りない。体のセンサーを正すためには柔術系格闘技がいいと思う。日常生活では倒れたり転がったりすることが全くない。常に頭を高い位置にしているわけだから平衡感覚だって、そりゃ狂ってくるだろう。ブラジリアン柔術、合気道、システマの道場を探しているところだ。

2021-10-22

動脈指圧/『血管指圧で血流をよくし、身心の疲れをスッと消す! 秘伝!即効のセルフ動脈指圧術』浪越孝


『血管マッサージ 病気にならない老化を防ぐ』妹尾左知丸
『いつでもどこでも血管ほぐし健康法 自分でできる簡単マッサージ』井上正康
『「血管を鍛える」と超健康になる! 血液の流れがよくなり細胞まで元気』池谷敏郎

 ・動脈指圧

身体革命
必読書リスト その二

 指圧で動脈を軽く刺激すると、それだけで血管を取り巻く血管拡張神経が反応して血流が促されます。結果、すみやかに全身にエネルギーチャーチが行われ、同時に痛みや疲れの「もと」が排除されます。
 一般的なマッサージは静脈やリンパ管を刺激するものが主流ですが、心臓から直接血液を運ぶ動脈を刺激する動脈指圧のほうが、末端の静脈や心臓とつながっていないリンパ管を刺激するより、はるかに効率がよく確実です。(中略)
 また、全身をめぐる動脈は、数本の大きな血管から次第に枝分かれしているので、大きな血管を刺激すれば、末端への血流も自然に促されます。

【『血管指圧で血流をよくし、身心の疲れをスッと消す! 秘伝!即効のセルフ動脈指圧術』浪越孝〈なみこし・たかし〉(さくら舎、2016年)以下同】

 指圧は「心臓に近い位置から末端へ向けて」行う。この「遠心性」に指圧の特徴がある。一般的なマッサージとは逆方向なので注意する必要がある。やや微妙なのはエビデンスが全く示されていないことだ。上記テキストには「刺激できる」としか書かれていない。

 私たちは、身体のどこかが痛かったり、しびれたりすると、自然にその部位に手を当てて、なでたり、おしたり、さすったりして自分で症状を緩和しようとします。いわゆる「手当て」という癒やしの方法を、本能的に知っているのです。
 その「手当て」が、中国では「あん摩」に、ヨーロッパでは「マッサージ」に、日本では「指圧」にと、治療技術として発展し、確立されていったのです。

 知らなかった。しかも、

 指圧の創始者は私の祖父の浪越徳治郎〈なみこし・とくじろう〉です(※大正14年、北海道室蘭市で指圧治療所を開業)。

 吃驚仰天である。「指圧の心は母心、押せば命の泉湧く」の浪越徳治郎だ。私の世代であればテレビでお馴染みの人物である。指圧が近代の産物であるとは驚きだ。病弱な母親の体をさする中で徳治郎は指圧の手技を編み出したという。泣かせるエピソードだ。徳治郎は新婚旅行で来日したマリリン・モンローが胃痙攣を起こした際に指圧を行ったことで名を馳せた。

 基本のおし方は、バイタルポイント1点につき3秒3回が目安です。ただし、おす時間や回数などは、バイタルポイントや症状によって変わります。
 力の強さは「快圧」です。いわゆる「イタ気持ちいい」と感じる状態では、力の入れすぎ。痛みを感じると、交感神経が緊張して血管が収縮してしまい、逆効果です。
 また、初めから圧をかけすぎないこと。おすときはゆっくりと息を吐きながら、柔らかくじんわりと指先に圧をかけ、深部までほぐしていくよう心がけてください。

 私は血管マッサージに指圧を盛り込んでいる。この辺りは好みというか、体の声に耳を傾けるのがいいだろう。

 何となく日本指圧専門学校のサイトを見て驚いた。近頃は驚くことが多くて驚いている。初年度の学費が182万円もするのだ。卒業には3年間を要するので総額は500万円近くなることだろう。国立大学の2倍、私立の理系大学と変わらぬ料金だ。たぶん鍼灸専門学校の学費に準じた考え方なのだろうが、完全なボッタクリだと思う。

 独立して飯を食っていけるという前提があったとしても適正価格とは考えにくい。母親思いの子供の手が生んだ技は金儲けの道具に出した模様である。学費を見る限り「いたわりと思いやりの心」は感じられない。しかも問題なのは、日本指圧専門学校が増えていない事実だ。徳治郎の子が理事長・校長を兼務しているのもどうかと思う。一族郎党が繁栄するための法人であれば株式会社と変わらない。

 指圧の効果が確かなものであったとしても、指圧師によって大きな差があることだろう。医師と同じである。否、それが技術であれば医師よりも大きな違いがあると考えられる。芸術やスポーツと一緒で素質やセンスが物を言う世界だ。既に老いつつある私は、幼い徳治郎に想いを馳せながら、自分なりに研究してゆくつもりである。

 本日で血管マッサージを開始して4日目であるが、昨日からブルブル体操~血管マッサージ~倒立という順番で行っている。目がよく見えるようになり、頭は冴え渡っているのだが、耳鳴りが酷い。好転反応だと思い込むようにしている。

2021-10-21

「NO力」を高める/『「血管を鍛える」と超健康になる! 血液の流れがよくなり細胞まで元気』池谷敏郎


『血管マッサージ 病気にならない老化を防ぐ』妹尾左知丸
『いつでもどこでも血管ほぐし健康法 自分でできる簡単マッサージ』井上正康

 ・「NO力」を高める

『血管指圧で血流をよくし、身心の疲れをスッと消す! 秘伝!即効のセルフ動脈指圧術』浪越孝
『別冊Newton 人体の取扱説明書』
『実践「免疫革命」爪もみ療法 がん・アトピー・リウマチ・糖尿病も治る』福田稔

身体革命
必読書リスト その二

 両者(※血管年齢の老若)をよく調べてみると、心臓から全身に至る太い動脈(大動脈)はどちらも年齢相応で、【末端の動脈のしなやかさに大きな差がある】らしいのです。

【『「血管を鍛える」と超健康になる! 血液の流れがよくなり細胞まで元気』池谷敏郎〈いけたに・としろう〉(知的生きかた文庫、2014年)以下同】

 いい知らせだ。福音(ふくいん)と言ってよい。大動脈をマッサージすることは難しい。末端であればこそ触れることができる。たぶん凍傷と似たメカニズムなのだろう。人体は内蔵を守るために手足から死なせてゆく。手足がなくとも生きてゆけるが内蔵はそうはいかない。川を考えてもそうだ。氾濫(はんらん)し、堆積(たいせき)し、汚れるのは川下である。

 19世紀の内科医オスラーが【「人は血管とともに老いる」】の名言を残したように、血管の老化は全身の老化の根本的な原因となります。

 若いころは弾力があり、しなやかな血管も、年を重ねるほどに弾力が失われ、硬くなっていきます。残念ですが、これは、自然なことでどんな人も避けられません。
 おそろしいのは、血管が硬くなるだけでなく、血管の内側が盛り上がり、血液の通り道が狭くなって血流が滞るということです。
 これが、いわゆる【「動脈硬化」という血管の老化】です。

 体の内部は見えないからこそ怖い。意識もしにくい。老いは自ずと体に目を向けさせる。肩凝りや躓(つまづ)きに始まり、ビンの蓋を開けることができなくなり、プラスチック袋のノッチも切れなくなってくる。かつては持てた物が持てなくなり、歩けば息が切れ、やがては転んでも手が出なくなる。寝たきりの原因で多いのは転倒による骨折だ。体も心も使わなくなれば廃用症候群となる。

「血管内皮細胞」は血管にとって、とても大切なものです。血液が血管外に漏れ出さないようにしているだけでなく、血圧をコントロールしたり、血管についた傷の修復を促したりする機能も備わっています。  それらを主に担っているのが「NO(エヌオー/一酸化窒素)です。
「NO」は必要に応じて「血管内皮細胞」から分泌され、【血流をよくしたり、しなやかで弾力のある血管を維持する】ために働いています。【動脈硬化や高血圧の予防】などにもひと役買っています。

 NOの機能がわかったのは1980年代だという。私も初耳だ。外部のNOは毒なのに、内部のNOが薬として働くのが不思議である。

「NO」のもっともわかりやすい働きは、【「動脈を拡張させて」「血液の流れをよくし」「血圧を安定させる」】ことです。

 文句なしだ。私の苗字にNOが含まれているので実に好ましい(笑)。

 確かに、リンパや静脈はもんだりマッサージしたりすることで流れがよくなりますが、動脈を拡張させて血液循環をよくするには、【「有酸素運動」による筋肉の収縮がより効果的】です。
 ウォーキングなどの「有酸素運動」は、動脈にとっては、やさしくもみほぐしてくれる【“リラックスマッサージ”】のようなものです。
 反対に、短時間で一気に筋肉に負荷をかける「無酸素運動」は力まかせにギュウギュウと押しつける“暴力的なマッサージ”のようなもので、血管にはむしろ負担がかかります。「NO力(エヌオーりょく)」を高めるにはおすすめできません。

 フム。これについては異論を挟みたい。血流だけで血管がきれいになるとは思えない。血管に付着したカルシウムなどを考えれば、やはり血管マッサージが最強だろう。池谷本人も最初はマッサージを否定しておきながら、結局「リラックスマッサージ」と書いているのがその証拠である。血管マッサージという浚渫(しゅんせつ)と有酸素運動による血流の組み合わせが私の血管強靭化政策である。

 歩くときにちょっとした工夫をすると、その効果をさらに高めることができます。
 まず、お腹と背中をくっつけるようなイメージで下腹をぐっと凹(へこ)ませます。そのまま背スジを伸ばした状態で歩きます。
 これは【「ドローイン」】というトレーニング法で、お腹を凹ますだけで、【体の奥にある筋肉(インナーマッスル)を鍛える】ことができます。
 インナーマッスルを鍛えると、【姿勢がよくなり、胃や腸など内蔵の機能を助ける】ことにもつながります。

 ドローインとは呼吸法である。ま、有り体に言ってしまえば腹式呼吸なのだが順逆のバージョンがある(ぽっこり下腹を撃退! 正しいドローインで腹横筋を鍛えよう | GetNavi web ゲットナビ)。池谷が説くドローインは考え方としてはプランクに近い。

 他にも簡単な体操が紹介されている。私の研究だと、ゆる体操や肩甲骨周りのストレッチが効果的だと思われる。

 今日で血管マッサージを行って3日目である。驚くほど目がよく見えるようになった。また今日からマッサージ後に倒立も行っている。健康の道は戒律に近いものがある。

 尚、図解版も出ているようだ。

 

2021-09-07

バイクを押して歩く/『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史


『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏
『病気の9割は歩くだけで治る!PART2 体と心の病に効く最強の治療法』長尾和宏
『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
『ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング』田中宏暁
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス
『一流の頭脳』アンダース・ハンセン
『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット
『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』ロバート・ムーア
『「体幹」ウォーキング』金哲彦
『高岡英夫の歩き革命』、『高岡英夫のゆるウォーク 自然の力を呼び戻す』高岡英夫:小松美冬構成
『あらゆる不調が解決する 最高の歩き方』園原健弘
『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』みやすのんき
ナンバ歩きと古の歩術
『表の体育・裏の体育』甲野善紀
『「筋肉」よりも「骨」を使え!』甲野善紀、松村卓
『ナンバ走り 古武術の動きを実践する』矢野龍彦、金田伸夫、織田淳太郎
『ナンバの身体論 体が喜ぶ動きを探求する』矢野龍彦、金田伸夫、長谷川智、古谷一郎
『ナンバ式!元気生活 疲れを知らない生活術』矢野龍彦、長谷川智
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史

 ・バイクを押して歩く

『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午
『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史
『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本 目・耳・口・鼻の使い方を変えるだけで身体の芯から楽になる!』藤本靖

身体革命

 私は長年、スポーツ選手を中心にパフォーマンス向上のための動作改善を「歩行動作」を中心に指導してきました。また、江戸時代までの身体運動文化についても研究してきました。その指導や研究で明らかになってきたことは、現在ウォーキング教室などで指導されている「エクササイズウォーク」や「パワーウォーク」などはエネルギーのロスが大きく、特に中高年には無理がある「歩き方」だということです。これらの歩きは地面を蹴って膝などの関節を伸ばしながら歩きます。このような歩き方を「伸展(しんてん)歩き」と言います。しかし、江戸時代までの日本人が得意として歩きは、地面を蹴らずに膝を曲げて進む「屈曲(くっきょく)歩き」なのです。その「屈曲歩き」が剣術や柔術などの伝統的な動作を支えていました。

【『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史〈きでら・えいし〉(東邦出版、2015年)以下同】

 実は簡単なことほど難しい。健康であれば誰もが歩ける。だが、きちんと歩ける人は少ない。私が常歩(なみあし)を始めたのは5月のことである。既に3ヶ月以上経ったが、まだまだしっくりこない。膝を抜くことはできるのだが拇指球の蹴りを打ち消すのが難しい。ま、試行錯誤している間は成長の余地があるわけだから結構楽しい。

 ある日、突然思いついた。バイクを押しながら歩いてみようと。実は2年ほど前にエンジントラブルに見舞われ、数キロの距離を押して自宅まで戻ったことがあった。「あれを思えばどうってことはないな」と直ぐエンジンスイッチを切り、ギョサンで歩いた。案の定、ほぼ完璧な常歩(なみあし)だ。バイクを所有している人は直ぐ試してみるといい。もちろんリヤカーでも可能だ。我が原付バイクは80kgである。少し上り勾配があると尚更よい。拇指球に力を入れる余地はない。足裏全体を地面に押し付け、踵の摩擦力で前に出るのが一番楽だ。

「伸展歩き」では膝を伸ばして歩きます。すると、脚全体が内側に回ろうとします。さらに現代人はシューズを着用しています。すでにお話ししたように、一般的にはシューズのインソールはつま先よりかかと部が高くなっていますから、足関節(足首の関節)を伸展させます。足関節の伸展は膝関節の伸展を促しますので、脚は内側に回り、過剰回内の状態をつくり出すのです。現代人の8割以上が過剰回内であると言われています。(中略)
 外反母趾を発症している方はほぼ例外なく、過剰回内による「伸展歩き」をしています。さらに、過剰回内は下腿が内側にひねられていますから、足首や膝の障害を発症する危険性が高まります。

 伸展歩きで内旋するのは以前からわかっていた。大転子ウォーキングで気づいたことだ。足指が横一直線に並ぶような感覚があった。

 頭の中でまたまた電球が点(とも)った。時折閃きの神が舞い降りてくる。氷の上を歩くつもりで足を運ぶと脚は自然と屈曲する。早速やってみた。おお、これはいい。更に電球が明るさを増した。薄氷を踏む意識にまで高めるのだ。「俺って天才?」と心の底から思った瞬間だ。

 畳の上で生活する日本人は骨盤が後傾しやすい。年寄りの腰が曲がってくるのも骨盤の後傾から始まる。そして日本の国土は約75%が山である。普通に暮らしていれば伸展歩きになることはあり得ない。坂道の上り下りで腕を大きく振る人はいないだろう。まして昔の人々は荷物を持って移動することが多かっただろうから尚更である。

 膝を曲げた瞬間は自分自身では力を発揮している感覚がほとんどありませんが、大きな地面反力が得られます。つまり、膝の屈曲をうまく利用する「屈曲歩き」は地面を味方にした歩きなのです。

 これは言い過ぎだ。反力とはランニングで得られるものであって歩行程度であるわけがない。そもそも膝を抜くのだから反力は得られない。

2021-08-10

歩幅と認知症の相関関係/『足裏を鍛えれば死ぬまで歩ける!』松尾タカシ、前田慶明監修


『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏
『病気の9割は歩くだけで治る!PART2 体と心の病に効く最強の治療法』長尾和宏
『ナンバ式!元気生活 疲れを知らない生活術』矢野龍彦、長谷川智
『足・ひざ・腰の痛みが劇的に消える足指のばし』湯浅慶朗
『本当に必要な「ゆるスクワット」と「かかと落とし」』中村幸男

 ・歩幅と認知症の相関関係

『5秒 ひざ裏のばしですべて解決 壁ドン!壁ピタ!ストレッチ』川村明
『ベッドの上でもできる 実用介護ヨーガ』成瀬雅春
『実践「免疫革命」爪もみ療法 がん・アトピー・リウマチ・糖尿病も治る』福田稔
『足の裏は語る』平澤彌一郎

身体革命
必読書リスト その二

 2017年の厚生労働省の人口動態統計によると、【転倒や転落などによって命を落とした人の数は年間約9600人。】これは交通事故によって命を落とした人の数(約5000人)より多い数字です。
 また、命を落とすほどではなくても、転倒すると「寝たきり」へとつながる可能性が高まります。

【『足裏を鍛えれば死ぬまで歩ける!』松尾タカシ、前田慶明〈まえだ・のりあき〉監修(池田書店、2018年)以下同】

 少し調べた。


 転倒・転落で死亡するのは頭部打撲が原因か。溺死は風呂。水溜まりに顔をつけて死んだ場合も溺死となる。死は日常のそこここにあるということだ。また、寝たきりの要因となるのは骨折である。特に高齢者の場合、わずかな期間で骨折→入院→寝たきりとなる。たとえ大腿骨を骨折したとしても入院させないのがよろしい。病院だと動けないのもさることながら、コミュニケーションの乏しさが認知症を促進させる。

 高齢者の事故は家の外よりも家のなかで起こっているのです。
 しかも、家庭内での事故発生場所の第1位は、階段でもお風呂場でもなく、居室で、その割合は45%にもなります(2017年の内閣府の高齢社会白書より)。加齢により足腰が衰えると、わずかな段差でも転んでしまうのです。

 50代になると誰もが実感することだろう。この私ですらそうだ。本書で紹介されている足指じゃんけんや、腿上げ、大腰筋強化が必要だ。

 最近のさまざまな研究によって、【「歩くスピードが遅くなる=認知症の危険度が高くなる」】という関係が明らかになっています。とくに注意したいのが、歩くテンポより歩幅です。東京都健康長寿医療センター研究所の研究によると、歩幅が狭い人は、そうではない人よりも認知機能が低下する危険性が2.8倍も高くなるということです。

 常歩(なみあし)だと歩幅が狭くなるので判断しにくい。フロントランジやバックランジの動きを確認するのがよさそうだ。

 私はどちらかというと、自分のためではなく高齢者を手助けするために運動の勉強を行っている。そこそこ知識は集積されてきたので、そろそろ近所にチラシでも配布しようかと思っているところだ。賢く生きれば認知症はいくらでも防ぎようがある。愚か者は後悔の海に沈みながら死ぬしかない。

2021-08-03

インターバル速歩/『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博


『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏
『病気の9割は歩くだけで治る!PART2 体と心の病に効く最強の治療法』長尾和宏

 ・インターバル速歩

『ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング』田中宏暁
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス
『一流の頭脳』アンダース・ハンセン
『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット
『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』ロバート・ムーア
『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
『「体幹」ウォーキング』金哲彦
『高岡英夫の歩き革命』、『高岡英夫のゆるウォーク 自然の力を呼び戻す』高岡英夫:小松美冬構成
『あらゆる不調が解決する 最高の歩き方』園原健弘
『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』みやすのんき
ナンバ歩きと古の歩術
『表の体育・裏の体育』甲野善紀
『「筋肉」よりも「骨」を使え!』甲野善紀、松村卓
『ナンバ走り 古武術の動きを実践する』矢野龍彦、金田伸夫、織田淳太郎
『ナンバの身体論 体が喜ぶ動きを探求する』矢野龍彦、金田伸夫、長谷川智、古谷一郎
『ナンバ式!元気生活 疲れを知らない生活術』矢野龍彦、長谷川智
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午
『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史

身体革命
必読書リスト その二

「インターバル速歩」とは、本人がややきついと感じる早歩きと、ゆっくり歩きを3分間ずつ交互に繰り返すというウォーキング方法である。それを1日5セット、週4日以上繰り返すと、5ヵ月間で体力が最大20%向上(10歳以上若返った体力が得られる)、生活習慣病の症状が20%改善し、その結果、医療費も20%削減できるということが明らかになっている。

【『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博〈のせ・ひろし〉(ブルーバックス、2019年)以下同】

 ウォーキングのやり方である。歩き方は参考にならないので注意が必要だ。自転車乗りであれば、タバタ式HIITはお馴染みのトレーニング法である。目的は心拍数を高めることだ。痩せることではない。

 まずは「言われた通り」やってみることがセオリーだ。しかも30分間で済む。物足りなければ3分ランニングにしてもいいだろう。そこからタバタ式に持っていくという手もある(20秒ダッシュ+10秒ウォーキング×8セット)。

 図1-6は生活活動度と医療費との関係を年齢別に示したものである。生活活動度が体力に比例すると考えると、体力の低下曲線と年齢別の医療費が見事に相関する。そして、体力が20代の30%レベル以下にまで低下すると要介護状態になり、自分ひとりでお風呂に入れない、トイレに行けないという状態になる。したがって、高血圧、糖尿病、肥満といった生活習慣病にとどまらず、認知症やがんに至るまで、中高年特有の疾患の根本原因は、この加齢性筋減少症に伴う体力の低下の可能性が高い、と考えられるようになった。
 最近、そのメカニズムについて、図1-7で示すように、体力の低下による「慢性炎症」の関与が指摘されている。「慢性炎症」という言葉は読者になじみがないかもしれないが、たとえば、風邪を引くと喉が痛くなる、傷口にばい菌が侵入すると化膿し、局所がはれ上がり、痛みが出たり、発熱したりする。これらの反応は、外部から体内に異物が侵入すると、それらをやっつけよう、追い出そうとする体の反応である。これを医学では「炎症反応」と呼ぶ。
 ここで、興味深いのは、外部から異物が体内に侵入しなくても、運動不足、肥満など体力低下を引き起こすような生活習慣でこの炎症反応が起こることである。ただ、この炎症反応のレベルは非常に低く、痛みが出たり、発熱を起こしたりするのはごく稀で、ほとんどの人は気がつかない。しかし、着実に全身性に起こっている。
 そして、この炎症反応が特に脂肪細胞に起これば糖尿病に、免疫細胞に起こって、その影響が血管内皮細胞に現れれば動脈硬化・高血圧症に、脳細胞に起これば認知症・うつ病に、さらに、この炎症反応によって分泌されるサイトカインという物質を介して、その影響ががん抑制遺伝子に及べばがんになる、と考えられるようになった。(中略)
 加齢によって筋力が低下すると、まず、筋肉中のミトコンドリアの機能が劣化する。さらに、筋力が低下すると運動するのが億劫になるために、筋肉以外の臓器の代謝も低下し、全身のミトコンドリア機能が低下する。その結果、全身性に活性酸素が産生され、慢性炎症が起こり、生活習慣病になるというのだ。
 では、どうすればよいか。答えは簡単。加齢性筋減少症に負けないように、運動トレーニングによって体力アップを行えばよいのだ。

炎症が現代病の原因/『シリコンバレー式 自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー

 エビデンスが豊富で一々説得力がある。慢性炎症を知る医師や看護師はまだ少ない。知ったところで彼らの利益が増えるわけではないため、患者に慢性炎症を説明することは多分ないだろう。患者も患者で運動を勧められるよりは薬を求めがちだ。「医師の仕事は薬を処方することで、病気を治すのは薬である」という思い込みは鉄板のように堅固なものとなっている。

「肥満は病気である」との認識が必要だ。少欲知足ならぬ少食知足こそが健康の基(もとい)である。



2021-08-02

こむら返りは自分で直すことができる/『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午


『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏
『病気の9割は歩くだけで治る!PART2 体と心の病に効く最強の治療法』長尾和宏
『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
『ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング』田中宏暁
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス
『一流の頭脳』アンダース・ハンセン
『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット
『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』ロバート・ムーア
『「体幹」ウォーキング』金哲彦
『高岡英夫の歩き革命』、『高岡英夫のゆるウォーク 自然の力を呼び戻す』高岡英夫:小松美冬構成
『あらゆる不調が解決する 最高の歩き方』園原健弘
『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』みやすのんき
ナンバ歩きと古の歩術
『表の体育・裏の体育』甲野善紀
『「筋肉」よりも「骨」を使え!』甲野善紀、松村卓
『ナンバ走り 古武術の動きを実践する』矢野龍彦、金田伸夫、織田淳太郎
『ナンバの身体論 体が喜ぶ動きを探求する』矢野龍彦、金田伸夫、長谷川智、古谷一郎
『ナンバ式!元気生活 疲れを知らない生活術』矢野龍彦、長谷川智
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二

 ・膝を抜く
 ・こむら返りは自分で直すことができる

『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史
『身体構造力 日本人のからだと思考の関係論』伊東義晃
『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本 目・耳・口・鼻の使い方を変えるだけで身体の芯から楽になる!』藤本靖

身体革命

 そのようなとき、他人にたよるのではなく、けいれんを自分で直す方法があるのです。まずは膝(ひざ)を伸ばすだけで、けいれんして収縮がおさまらない腓腹筋(ひふくきん)が引き伸ばされます。(中略)下腿三頭筋のなかの腓腹筋は、足首と膝の二つの関節にまたがった部位なので、膝を伸ばせば腓腹筋は伸びます。これが、けいれんをおさめる第一段階です。
 次に、膝を伸ばした状態にして、自分で足首を曲げる筋肉である前脛骨筋に力を入れて、自分で足首を曲げるのです。そうすると、足首が曲がって、強烈に収縮していたふくらはぎの筋肉に「休め!」の指令がいき、けいれんしているふくらはぎの筋肉がスーッと軽減します。痛みが消えるその瞬間は、スイッチが切り替わったような、なんとも不思議な感覚です。

【『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午】

 年をとると寝ている間にこむら返りが起こることがある。

「夜間のこむら返りを繰り返すような場合、こむら返りを引き起こす原因となる病気が潜んでいる場合があります。下肢静脈瘤、肝硬変、甲状腺機能低下症、脊髄疾患、多発神経炎、腎不全(血液透析)、糖尿病、不安定狭心症などが疑われます。胃切除術後のカルシウム不足、ビタミンD不足からくる骨障害として見られることもあります。利尿剤を服用しているために電解質異常を起こしているケースや、下痢による脱水があるケースもあります」(こむら返りについて|埼玉県さいたま市浦和区のアキ循環器・血管外科クリニック)。

 糖尿病の神経障害が原因の場合もある(糖尿病で足がつるのはなぜ?〜原因・対処法を分かりやすくまとめました〜 | H2株式会社)。

 いざという時に備えることが大切だ。備えとは構えでもある。

膝を抜く/『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午


『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏
『病気の9割は歩くだけで治る!PART2 体と心の病に効く最強の治療法』長尾和宏
『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
『ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング』田中宏暁
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス
『一流の頭脳』アンダース・ハンセン
『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット
『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』ロバート・ムーア
『「体幹」ウォーキング』金哲彦
『高岡英夫の歩き革命』、『高岡英夫のゆるウォーク 自然の力を呼び戻す』高岡英夫:小松美冬構成
『あらゆる不調が解決する 最高の歩き方』園原健弘
『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』みやすのんき
ナンバ歩きと古の歩術
『表の体育・裏の体育』甲野善紀
『「筋肉」よりも「骨」を使え!』甲野善紀、松村卓
『ナンバ走り 古武術の動きを実践する』矢野龍彦、金田伸夫、織田淳太郎
『ナンバの身体論 体が喜ぶ動きを探求する』矢野龍彦、金田伸夫、長谷川智、古谷一郎
『ナンバ式!元気生活 疲れを知らない生活術』矢野龍彦、長谷川智
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二

 ・膝を抜く
 ・こむら返りは自分で直すことができる

『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史
『身体構造力 日本人のからだと思考の関係論』伊東義晃
『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本 目・耳・口・鼻の使い方を変えるだけで身体の芯から楽になる!』藤本靖

身体革命

 二軸動作「常歩」に取り組んでいる大阪市立桜宮高校の陸上部顧問・山本幸治先生から、レポートをいただきました。本書を読んで、これから二軸動作「常歩」を覚えようとする人にとって、たいへん参考になると思いますので、以下に紹介します。(中略)

 まず、最初に取り組んだのが「膝の抜き」でした。この動作については、いまだ感覚として体得している選手は半数くらいだと思います。最初は、自分の動作は膝が抜けているのか、どれくらい膝が曲がるのかなど、選手自身ははっきりしない、不安な状態が続きました。
 そこで取り入れたのが坂道を利用した「おんぶ走」です。最初は、坂をあがることからはじめ、拇指球で地面を蹴って坂をあがるのではなく、着地したら下腿を前に倒して、膝頭を地面に押しつけるようにして坂をあがるよう指示しました。そのとき、支持脚の膝の上へ同側の腰が乗るように上体を前方向へ移動すれば、反対側の脚が自然と前に振り出されると説明したのです。その感覚が得られるように、ひたすら繰り返し練習しました。すると、この練習で半数の生徒が「膝を抜く」感覚を体得しました。
 逆に、坂をくだることも試みました。おんぶしながら「膝を抜く」ことで、坂をあがるときよりも体の重力落下の感覚を強く感じてくれるかもしれないという意図からです。これも、予想以上に感覚をつかんだ選手が多く、ブレーキをかけないよう坂をくだりながら「膝を抜く」感覚の獲得に重点を置きました。坂をくだるときにブレーキをかけないようにするには、体幹を斜面と垂直にして、足裏全体を同時に着地(フラット着地)するような感覚が有効です。坂をあがる練習では「膝の抜き」が感覚としてつかめなかった選手が、坂をくだる練習でつかめたというのは大きな収穫でした。選手に聞いてみると、のぼりとくだりを比較した場合、やはりのぼりの方が「膝を抜く」感覚がつかみやすいようです。しかし、これには個人差もありますから、両方あわせて行うようにしています。

【『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午〈おだ・しんご〉(大修館書店、2005年)】

 必読書の量が多いため教科書本とした。常歩(なみあし)本ではない。二軸動作の総合的な概念を教える内容でスポーツ指導者は必読のこと。

 これはわかりやすい練習だ。重量を逃すために自(おの)ずから膝を抜くのだろう。ただし感覚を知るだけなら、おんぶする必要はない。既に書いた通り坂道の上り下りで膝を伸ばして着地することはできないため(膝への衝撃が大きくなるゆえ)。階段の上り下りでも同様だ。

 もっと簡単なのは小山田ウォークである。膝を抜くよりも腰を落とさせればよい。少し時間をかけて歩けばわかるが、脚全体の後ろ側の筋肉がつりそうになる。

「古武術式・縮地走法」も大変参考になる。


 小田本には必ず出てくる「疾走中の足首の最大屈曲角度と最大伸展角度」という画像がある。一瞥しただけで拇指球神話が崩壊する。

 カール・ルイスの足首は20度ほどしか曲がっていない。つまり踵で踏んで走っているのだ。

2021-07-30

踵を踏む/『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二


『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏
『病気の9割は歩くだけで治る!PART2 体と心の病に効く最強の治療法』長尾和宏
『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
『ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング』田中宏暁
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス
『一流の頭脳』アンダース・ハンセン
『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット
『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』ロバート・ムーア
『「体幹」ウォーキング』金哲彦
『高岡英夫の歩き革命』、『高岡英夫のゆるウォーク 自然の力を呼び戻す』高岡英夫:小松美冬構成
『あらゆる不調が解決する 最高の歩き方』園原健弘
『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』みやすのんき
ナンバ歩きと古の歩術
『表の体育・裏の体育』甲野善紀
『「筋肉」よりも「骨」を使え!』甲野善紀、松村卓
『ナンバ走り 古武術の動きを実践する』矢野龍彦、金田伸夫、織田淳太郎
『ナンバの身体論 体が喜ぶ動きを探求する』矢野龍彦、金田伸夫、長谷川智、古谷一郎
『ナンバ式!元気生活 疲れを知らない生活術』矢野龍彦、長谷川智
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史

 ・踵を踏む

『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午
『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史
『身体構造力 日本人のからだと思考の関係論』伊東義晃
『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本 目・耳・口・鼻の使い方を変えるだけで身体の芯から楽になる!』藤本靖

身体革命
必読書リスト その二

 身体が前に出るということは、「踵(かかと)を踏む」ことです。前に出るのに「踵を踏む」と言われても、ピンとこないかもしれません。「つま先で蹴るのでは?」と思った人もいるでしょう。しかし、踵から接地してつま先(拇指球あたり)で蹴る動きは、中心軸感覚による走歩行の典型的な特徴です。実際に、剣道の打突や陸上競技など、スポーツの現場では、何の疑いも持たずに拇指球で蹴っている人が多く見受けられます。しかし、それは「つま先を蹴れば前に行ける」という先入観によるもので、実際はまったく逆の動きによって前に出ているのです。
 では、わかりやすい実験をしてみましょう。立った姿勢から、徐々に身体を前に倒してみてください。もうすぐ倒れるというギリギリの状態まで身体を倒し、そこで止めます。足裏の感覚を確かめてみてください。つま先で踏みとどまっていることがわかるでしょう。
 これは、基本的な人間の姿勢調節に関する話です。バスや電車に乗っていて、前に倒れそうになったら、踵を上げてつま先を踏み、後ろに居直ります。このつま先で踏むという動作は、重心の位置を、つま先より前へ越えないようにするためのものです。そうやって地面を前に蹴り、後ろへの反力をもらって姿勢を調節しているのです。このとき、身体は前傾しているように感じますが、重心点は身体を支える支持点(拇指球)の真上にあり、決してそれより前には出ていません。つまり、「つま先で踏む」ことは、前に行く動きにブレーキをかけているのです。速く走りたいのに、ブレーキをかける人はいないはずです。スピードを殺さずに走るためには、つま先で蹴る動作をなくし、ブレーキを最小限に抑えなければならないのです。

【『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午〈おだ・しんご〉、木寺英史〈きでら・えいし〉、小山田良治〈おやまだ・りょうじ〉、河原敏男〈かわはら・としお〉、森田英二〈もりた・ひでじ〉(スキージャーナル、2007年)】

 小田、木寺、小山田の3人で交わしたメールは7000~8000通にもなるという。それ自体がシナプスの発火や軸索の伸びを示している。人と人とのつながりは本来そうあるべきだろう。脳が活性化するような付き合いでなければ時間の無駄だ。

 踵を踏むことはさほど難しくはない。実際にやってみるとわかるが、拇指球の力を抜くことが難しいのだ。更に踵を残すという一連の行為ができるまでは時間を要する。長年にわたって染み付いた思い込みが体を束縛しているのだ。

 大衆がスポーツに熱狂するのは力と技を純粋に競い合うためだろう。社会は社会性を重んじるあまり実力勝負の場面が乏しい。出自や損得で動くことも決して少なくない。それどころか誰の紹介で入社したかで平然と差別がまかり通る。そのスポーツをも商業主義で地に貶めたのがオリンピックだ。もはやスポーツ選手を利用した金儲けの舞台に過ぎない。

 同じ行為の繰り返しが身体の機能を損なうとすれば、人間の体が不自由になったのは農業社会に移行したのが大きいと考えられる。その上、食生活が一変した(『反穀物の人類史 国家誕生のディープヒストリー』ジェームズ・C・スコット)。

 拇指球で蹴らない効用は直ぐ実感できた。ギョサンで5km以上歩いても足裏が痛むことがなくなった。それまでは滑り止めと思われるゴムの小さな突起で歩くのが厭(いや)になるほど痛くなった。たぶん部分的な負荷が消えたのだろう。

 もう一度常歩(なみあし)を確認しよう。

 腕の動きも外旋となる。上から見た場合、腕は逆ハの字に振る。しかも通常のパワーウォークと異なり、前方向への振りを意識する。ほんの少しボクシングのアッパーカット気味にすると感覚をつかみやすい。

 初めは着地脚の膝を曲げないことだけ意識すればよい。安来節(やすきぶし)の要領で構わない。大袈裟にやった方が動きの違いがわかりやすいだろう。

 常歩(なみあし)は誤った常識に縛られた体を解放してくれる。

2021-07-29

小山田ウォーク/『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午


『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏
『病気の9割は歩くだけで治る!PART2 体と心の病に効く最強の治療法』長尾和宏
『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
『ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング』田中宏暁
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス
『一流の頭脳』アンダース・ハンセン
『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット
『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』ロバート・ムーア
『「体幹」ウォーキング』金哲彦
『高岡英夫の歩き革命』、『高岡英夫のゆるウォーク 自然の力を呼び戻す』高岡英夫:小松美冬構成
『あらゆる不調が解決する 最高の歩き方』園原健弘
『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』みやすのんき
ナンバ歩きと古の歩術
『表の体育・裏の体育』甲野善紀
『「筋肉」よりも「骨」を使え!』甲野善紀、松村卓
『ナンバ走り 古武術の動きを実践する』矢野龍彦、金田伸夫、織田淳太郎
『ナンバの身体論 体が喜ぶ動きを探求する』矢野龍彦、金田伸夫、長谷川智、古谷一郎
『ナンバ式!元気生活 疲れを知らない生活術』矢野龍彦、長谷川智
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午

 ・小山田ウォーク

『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史
『身体構造力 日本人のからだと思考の関係論』伊東義晃
『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本 目・耳・口・鼻の使い方を変えるだけで身体の芯から楽になる!』藤本靖

身体革命
必読書リスト その二

小田●じゃあいこうか。LSD。Long Slow Distance。良ちゃん(小山田)と出会ってもう20年たつけど、昔、小山田ウォークってありましたね。このなかで、やれる人いる? ちょっと小山田ウォークやってみて。ターンオーバーの一番いい練習なんだよ。

小山田●あ、浅井ができます。足関節の動きを抑えて、股関節の伸展と膝関節の伸展を同時にやるヤツ。後ろで膝が伸びて、前方では膝が曲がって着地する。前方は膝伸ばさなくて、後方で膝伸ばす(図166)。
小田●これがLSDの走り?

小山田●ハムストリングを一番効率よく使うトレーニングということで入ったのが小山田ウォークです。

小田●今回の本でハムストリングの話が出てくるけど、20年前にハムストリングから入ってるの。

小山田●はい。あの時から頭にあったことを、今回は細かく書きました。

小田●LSDの Slow に一番意味があるんですね。

小山田●そうです。 Slow に。

小田●何で Slow を考えたの?

小山田●雑に運動するんじゃなくて、一番低速で丁寧な動きをすることで、高速でもその丁寧な動きを維持できるんじゃないかというところが始まりなんです。

小田●浅井さん、山内さん、最初に小山田さんからLSDをどういう言葉で聞いた? 代々変わっていって、人によって聞いた言葉がちょっと違うと思うよ。

浅井●僕は12年前かな。この治療院へ来だした時ですね。まず前脛骨筋にテンションを入れながら、長い距離をゆっくり乗りなさいって言われました。

小田●これこれ。この「ゆっくり」が大事なんだ。

浅井●50kmの距離を3時間、4時間かけて載るぐらいの感じ。ふつうなら1時間半、2時間くらいでいけますよね。

小田●それはかえって難しいことなの?

浅井●難しいっていうか、スタートして10分くらいでもう足がつってきます。当時は脛のあたりと足の裏がつってましたね。

小田●脛骨筋と足底か。この話は、普通わからないよねえ。ゆっくりやる練習が一番楽なのかなって思いますよね。

小山田●ゆっくりやっていますが、その分、力を入れたものが抜けないじゃないですか。抜けない状態を長く続けなきゃいけないから、そこがまずはもう持久力ですよね。

小田●力を入れておくところと、入れておかないところがある。

小山田●そうですそうです。脱力と入力ですよね。

小田●入力は脛骨筋?

小山田●脛骨筋はずっと出力を掛けてなきゃいけないので。

小田●これも世間では珍しい話なんだよね。

【『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治〈おやまだ・りょうじ〉、小田伸午〈おだ・しんご〉(創元社、2019年)】

 競輪選手の山内卓也〈やまうち・たくや〉、浅井康太〈あさい・こうた〉を交えた座談会から。あちこちに火花を放つ言葉が出てくる。プロスポーツ選手の高い意識が高山の冠雪を思わせる。

 3ヶ月ほど要して私の常歩(なみあし)アプローチは、腿に手を置き、右足を前に出すタイミングで右肩甲骨を中央に寄せる(内旋)というやり方に落ち着いた。最初は矢野式ナンバで右胸骨を上げていた。肩甲骨を外旋するやり方もあるのだが、どうも歩きにくかった。

 そしてこのテキストに遭遇した。頭の中で電球が灯(とも)った。思わず「これだよ、これ!」と欣喜雀躍した。実践する前から得心した。疑問を手放さなければ答えは必ず見つかるものだ。

 BABジャパンで「小山田ウォーク」の本を企画してもらいたい。

 慣れるまでは少し難しく感じるが、実は当たり前のように行っていることに気づいた。我々は坂道の上り下りや、砂浜を歩く時、自然に小山田ウォークとなっているのだ。それゆえ平坦な道では膝抜きを大袈裟にやるくらいでいい。実際は階段を下りる時の足使いなのだが、腰を落として歩く意識で行えば感覚がつかめる。

 少し時間ができたので駆け足で紹介してきた。今となっては金哲彦~みやすのんきは読まなくてもいいように思うが、ナンバや常歩(なみあし)を理解するためには通っておくべき必要な道である。上記リンクで紹介した書籍は、ウォーキングを勧める医師ですら知らない情報である。政府が社会保障費の抑制を本気で考えているのであれば、常歩研究会に多額の助成金を出し、彼らが活躍できる場を用意するのが一番の近道である。

動きの「細分化」/『月刊「秘伝」特別編集 天才・伊藤昇と伊藤式胴体トレーニング「胴体力」入門』月刊「秘伝」編集部編


『究極の身体(からだ)』高岡英夫
『フェルデンクライス身体訓練法 からだからこころをひらく』モーシェ・フェルデンクライス
『心をひらく体のレッスン フェルデンクライスの自己開発法』モーシェ・フェルデンクライス
『運動能力は筋肉ではなく骨が9割 THE内発動』川嶋佑
『ウィリアム・フォーサイス、武道家・日野晃に出会う』日野晃、押切伸一
『大野一雄 稽古の言葉』大野一雄著、大野一雄舞踏研究所編
『武学入門 武術は身体を脳化する』日野晃
『ことばが劈(ひら)かれるとき』竹内敏晴
『スーパーボディを読む ジョーダン、ウッズ、玉三郎の「胴体力」』伊藤昇
『気分爽快!身体革命 だれもが身体のプロフェッショナルになれる!』伊藤昇、飛龍会編
『棗田式 胴体トレーニング』棗田三奈子

 ・柔軟性よりも胴体力
 ・動きの「細分化」
 ・骨盤の細分化

『火の呼吸!』小山一夫、安田拡了構成
『身体構造力 日本人のからだと思考の関係論』伊東義晃
『ストレス、パニックを消す! 最強の呼吸法システマ・ブリージング』北川貴英
・『新正体法入門 一瞬でゆがみが取れる矯正の方程式』佐々木繁光監修、橋本馨
・『仙骨姿勢講座 仙骨の“コツ”はすべてに通ず』吉田始史

身体革命
必読書リスト その二

伊藤●胴体の三つの動きの質がよくなると、身体の動きが、全く変わります。それは、力が出るようになるとか、元気になるとか、動きが速くなる等、ただ動けるようになるだけではありません。胴体が動くようになると、肩、胸、骨盤が更に動くようになり、動きの「細分化」が生まれます。そこまでゆくことがひとつのポイントなのです。
 骨盤や肋骨をどう動かすか、鎖骨と肩甲骨はどうするのか、といったことが分かってくると、身体の軸が分かってくるようになります。軸が分かるようになると、身体の緊張がスーッととれて、人との距離関係がハッキリしてくるので、気配や間合いなどが簡単に感じられるようになります。逆にこの感覚がなければ、格闘技としても、護身術としても不完全なわけですから。

【『月刊「秘伝」特別編集 天才・伊藤昇と伊藤式胴体トレーニング「胴体力」入門』月刊「秘伝」編集部編(BABジャパン出版局、2006年/新装改訂版、2021年)】

 朗報である。明日(7月30日)、新装改訂版が出る。しかも1760円と価格も据え置き。伊藤昇は55歳で逝去した。努力の果てに才を花開かせた人物だ。少林寺拳法と沖ヨガを通して独創的な運動理論に辿り着いた。アスリートが体幹トレーニングに注目する遥か以前から胴体力を解明した。

 意識するのは筋肉ではなく骨である。細分化とは骨を動かすことだ。すると全身は鞭のようにしなりが出る。我々の意識は手足という抹消に向かいがちだが、胴体から力を伝えることで筋肉に負荷をかけない動きが実現する。

 丹田を中心に骨盤・胸骨・肩甲骨を自在に動かすことができれば水中を泳ぐ魚のようにしなやかな体を手に入れることができる。

2021-07-28

ストレスの一番の害は楽しさを奪い去ってしまうこと/『ナンバ式!元気生活 疲れを知らない生活術』矢野龍彦、長谷川智


『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
ナンバ歩きと古の歩術
『表の体育・裏の体育』甲野善紀
『「筋肉」よりも「骨」を使え!』甲野善紀、松村卓
『ナンバ走り 古武術の動きを実践する』矢野龍彦、金田伸夫、織田淳太郎
『ナンバの身体論 体が喜ぶ動きを探求する』矢野龍彦、金田伸夫、長谷川智、古谷一郎

 ・ストレスの一番の害は楽しさを奪い去ってしまうこと

『すごい!ナンバ歩き 歩くほど健康になる』矢野龍彦
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午
『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史
『足裏を鍛えれば死ぬまで歩ける!』松尾タカシ、前田慶明監修
『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン

身体革命

 そもそも健康法というものも、すべての人に当てはまるものではありません。まず、自分で試してみて、自分にあったものだけを取りいれるようにすればいいのです。
「~するべきだ」「~してはいけない」というのは、心にとってかなり強い縛(しば)りとなって相当なストレスになりますから、注意しなければいけません。それが証拠に、健康を意識すると、食べること運動することから途端に楽しさが奪われてしまいます。
【ストレスの一番の害は、楽しさを奪い去ってしまうこと】です。楽しめないということは、要注意です。健康を意識するというストレスが、結果として健康を害しているのも皮肉な話です。
 そもそも「健康を求める」ということが間違っているのかもしれません。「健康」というものは求めるものではなく、結果的にそうなるというもの。こういう生活をしていたから、結果的に健康になったというものです。生活の仕方が反映されたものが、健康ということの尺度だろうと思います。
 あなたも、「健康」に振りまわされていないか、ふりかえってみましょう。

【『ナンバ式!元気生活 疲れを知らない生活術』矢野龍彦〈やの・たつひこ〉、長谷川智〈はせがわ・さとし〉(ミシマ社、2008年)以下同】

 パラパラとページをめくってガックリきた。具体的な体操の数があまりにも少なかったからだ。気が乗らないまま読み始め、そのまま読み終えた。矢野龍彦は桐朋学園大学教授で体育の専門家だ。桐朋高校バスケット部コーチも務め、バスケットボールにナンバの動きを導入した。本書はナンバの概念をわかりやすく教える優れたエッセイである。

 ストレスについてはガボール・マテ著『身体が「ノー」と言うとき 抑圧された感情の代価』が詳しいが、「ストレスの一番の害は楽しさを奪い去ってしまうこと」という簡にして要を得た一言が見事に本質を言い当てている。仕事も人間関係も楽しくなければ苦しみに変わる。

「痩せたい」という気持ちも魔物です。
「なぜ痩せたいか」
 と自分に問うてみてください。もっといい服が着られる、人から魅力的に見られるなどというのは動機が不純であるし、まさに邪心です。外見を気にしている人は、いつも不安を持っています。人からどう見られるか、人にどう思われるかというのは、自分ではどうしようもないから不安の種になります。ですから、動機に明るさが感じられません。
「人によく思われたい」という邪心はストレスとなり、ますます痩せにくくなります。結局、そういうあなたは、何度も痩せようと挑戦して、いつも失敗しているのではないでしょうか。いい加減に目を覚まさなくてはいけません。
 痩せたら世界が変わるというのは、あなたの間違った思い込みです。あなたが痩せても、世界はそんなあなたに気がつかず、何も変わらない。
【あなたの中身が変わらないかぎり、世界は変わらない】。
「肥っているから~だ」と言い訳をしているあなたが、肥っているなどということを何も気にもしなくなったとき、初めて世界は変わる。そして、自然にあなたにあった適正体重になってきます。

 さすが体育系だけあってズバリと痛いところを突いている。「痩せたい」という思いは世間への迎合に他ならない。もう一つは、食べ過ぎもまたストレスの現れであることだ。スナック菓子など栄養の乏しい食べ物はいくら食べても食欲が満たされない。砂糖は味覚を操作し、「食べられる時に食べておかないと飢えるぞ」とDNAに埋め込まれた記憶を呼び覚ます。

 美の基準が自分の外側にある人はどうしても流される。自分らしく溌剌(はつらつ)と生きるところに美は滲み出るものだ。私は道端で掃き掃除をしている女性を見ると心の底から美しさを感じる。老若は関係ない。箒(ほうき)で掃き清める所作には、地神(ちじん)をも鎮(しず)める効果があると考えている。

 女性はすべからく見た目の美醜よりも、生き方の美醜を問うべきである。テレビを見よ。可愛い顔をした醜い女どもがウヨウヨしている。

2021-07-22

運動によって脳は物理的に変えられる/『一流の頭脳』アンダース・ハンセン


『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏
『病気の9割は歩くだけで治る!PART2 体と心の病に効く最強の治療法』長尾和宏
『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史
『ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング』田中宏暁
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス
・『脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方』ジョン・J・レイティ、エリック・ヘイガーマン

 ・運動によって脳は物理的に変えられる

『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット
『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』ロバート・ムーア

必読書リスト その二

 だが何より大きな発見は、2つのグループがまったく異なる結果を示したことである。
 ウォーキングを1年間続けた被験者たちは健康になったばかりでなく、脳の働きも改善していた。MRIの画像は、脳葉の連携、とくに側頭葉と前頭葉、また側頭葉と後頭葉の連携が強化されたことを示していた。
 簡単にいえば、脳の各領域が互いにより協調しながら働いていたということだ。脳全体の働きが1年前より向上していたのである。身体を活発に動かしたこと、つまり【ウォーキングが、何らかの作用によって脳内の結合パターンによい影響を与えた】のだ。

【『一流の頭脳』アンダース・ハンセン:御舩由美子〈みふね・ゆみこ〉訳(サンマーク出版、2018年)】

 読みやすい上に一分の隙(すき)もない良書である。説明能力の高さそのものがスタイルを確立している。科学が絶対なのではなく、科学的解釈に説得力があるということがよくわかった。

 記憶力や認知機能に関しては筋トレよりも有酸素運動の方が効果があり、ウォーキングよりもランニングが優(まさ)るとのこと。要は「狩猟採集生活に還れ」ということだ。1万年前と同じ狩猟採集生活を送る東アフリカ・タンザニアのハッザ族は一日に8~10km(1万1000~1万4000歩)歩いている。これが一つの目安となろう。

 収穫はそれだけではなかった。おそらく、こちらのほうが重要である。
 それは定期的なウォーキングが、実生活にもプラスの効果をおよぼす脳の変化をもたらしたことだ。心理テストの結果、「実行制御」と呼ばれる認知機能(自発的に行動する、計画を立てる、注意力を制御するといった重要な機能)が、ウォーキングのグループにおいて向上していたことがわかったのである。
 要するに、【身体を活発に動かした人の脳は機能が向上し、加齢による悪影響が抑制され、むしろ脳が若返る】と判明したのだ。

 ここで一旦、これまで読んだことを振り返り、もう一度じっくり考えてほしい。
 ランニングで体力がつく、あるいはウェイトトレーニングで筋肉が増強できることは知っているはずだ。それと同じく、【運動によって脳は物理的に変えられる】。
 脳の変化は、現代の医療技術で測定することができるので、そのことは確認済みだ。脳を変えれば、認知機能を最大限まで高められることもわかっている。

 まずは買い物を狩猟と捉え直すことを提案したい。一日三食摂っている人であれば三度買い物に行ってはどうだろう? 休日であれば遠くのスーパーに出向くのもいいだろう。勤め人であれば一つ手前の駅やバス停で降りて歩くことを心掛ける。もちろんエスカレーターやエレベーターは利用せず階段を上る。それだけでどんな薬やサプリメントよりも効果がある。

 ではなぜ、そんな素晴らしいことが広まらないのだろうか? もちろんカネだ。製薬会社やメーカーは儲からないため手をつけない。そして驚くべきことに消費者側もまた対価を支払わないものに対して不信感を抱いている側面がある。つまりマネーという手段を経なければコミュニケーションが成立しなくなっているのだろう。消費者はカネを支払うことで満足感を得ているのだ。

 広く知られたプラセーボ効果に「高価な薬は100%効く」というのがある。偽薬であっても高いカネを支払えば、霊験(れいげん)あらたかな妙薬と化すのだ。金銭に対する我々の信頼は既に信仰の高みにまで至っている。

2021-07-05

5本指ソックスは足底筋を痛める/『「筋肉」よりも「骨」を使え!』甲野善紀、松村卓


『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
『表の体育裏の体育 日本の近代化と古の伝承の間(はざま)に生まれた身体観・鍛錬法』甲野善紀
『武術を語る 身体を通しての「学び」の原点』甲野善紀
『足・ひざ・腰の痛みが劇的に消える足指のばし』湯浅慶朗

 ・5本指ソックスは足底筋を痛める

【禁断の検証】〈5本指・足袋・ノーマル〉イス軸法と相性が良い靴下はどれだ!?
『ナンバ走り 古武術の動きを実践する』矢野龍彦、金田伸夫、織田淳太郎
『ナンバ式!元気生活 疲れを知らない生活術』矢野龍彦、長谷川智
『すごい!ナンバ歩き 歩くほど健康になる』矢野龍彦
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午

身体革命

松村●要するに、腹筋を固めてしまうと、動作の奥になる大腰筋が使えなくなってしまうんです。表層の筋肉をガチガチに硬くしてしまうことで、肝心のインナーマッスルの動きが制限されてしまうんですね。

【『「筋肉」よりも「骨」を使え!』甲野善紀〈こうの・よしのり〉、松村卓〈まつむら・たかし〉(ディスカヴァー携書、2014年)以下同】

 松村卓は骨ストレッチの考案者で、短距離の桐生祥秀〈きりゅう・よしひで〉を指導した人物。腹の柔らかさは古来から日本武術で重要視されているが、腹筋を鍛えることがインナーマッスルの動きを阻害することまでは想像が及ばなかった。知識には必ず落とし穴があるという好例だ。

松村●そうした火事場の力を引き出すのに、先生は何が大事だと思われますか?

甲野●大事なのは、先を占わない気持ちですよ。こうしたらこうだろうとか、ああだろうとか、そうしたことを思わない。火事場でおばあさんが大きなタンスを担ぎ上げて逃げたという話がありますが、そんな時にタンスを見て「これ、私に持てるかしら」って考えないでしょう?

松村●考えたら絶対に持てないですよね(笑)。

甲野●そうです。でも、普通は必ず先を占うんですよ。できるかどうか。予測を立てることが人間の習い性になっているんです。
 逆説的な言い方になりますが、できるかできないかを判断しようとするからできない。緊急時にはそんなこと言ってられない。判断する間がないから火事場の力が発揮できるということでしょう。

 実は一度挫けている本だ。私はかねがね甲野の理窟っぽさが好きになれず、実際の動きも部分に傾いていて全体性を欠いているように感じていた。ところが『甲野善紀と甲野陽紀の不思議なほど日常生活が楽になる身体の使い方 日常動作を磨く77のコツ』(山と渓谷社、2016年)を読んで見直さざるを得なくなった。彼の武術家としての姿勢は全く正しいもので、武術が振る舞いにまで昇華されていることを知った。

「先を占わない気持ち」などという言葉は中々出てくるものではない。武術家の身体を通して放たれる言葉が文学者の修辞を軽々と超えている。

甲野●5本指ソックスって、そんなに負荷がかかるんですか?

松村●結局、浮き指になっちゃうんです。ソックスをピッと強く履いてしまう人が多いんで、5本の指が反ってしまう。指が反ると接地の時に指が使えませんから、足の裏の筋肉(足底筋)が張るんですね。酷使すると足底筋膜炎になってしまう。

 余談ですが、桐生君にその話をしたら、「僕も5本指ソックスを履いた後、足底筋が痛くなったことがあります。やめたらすぐに治ったんですが、その理由がやっとわかりました」と言っていました。

甲野●5本指ソックスのほうが足の指が動かしやすいので、お遍路をする時にすすめられているという話を聞いたことがあります……。

松村●お相撲さんは、相手のまわしをしっかりつかむため、手の指をテーピングで固定させますよね? これと同様、足の指も開いていないほうが力が出せるんです。「家族が離れ離れではさみしいでしょ?」って言っているわけですが(笑)。

甲野●5本指ソックスを履くと指が分離して、力が分散してしまう。

松村●はい。ちょっと指にかぶっているくらいならいいんですが、たいていの人はピチッと履こうとしますよね? そうすると一つ一つの指が独立してしまって、過緊張を起こすので、足底が張って動きが落ちる。

 吃驚(びっくり)仰天した。私は日常的に鼻緒がある履き物を使用しているため、鼻緒の優れた操作性についてはよく理解している。よくよく考えると意外でもない。なぜなら5本指の草鞋(わらじ)が存在しないためだ。Vibram FiveFingersという5本指シューズがあるが是非とも検証してもらいたいものだ。

 近頃、地下足袋ウォーキングを行っていることもあり、今後は足袋ソックス一本にしようと考えている。



浮き指が進行すると腰が曲がる/『ひざの激痛を一気に治す 自力療法No.1』

2021-07-03

多剤併用(ポリファーマシー)の危険性/『病気の9割は歩くだけで治る!PART2 体と心の病に効く最強の治療法』長尾和宏


『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏

 ・多剤併用(ポリファーマシー)の危険性

『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
『ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング』田中宏暁
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス
『一流の頭脳』アンダース・ハンセン
『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット
『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』ロバート・ムーア
『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
『「体幹」ウォーキング』金哲彦
『高岡英夫の歩き革命』、『高岡英夫のゆるウォーク 自然の力を呼び戻す』高岡英夫:小松美冬構成
『あらゆる不調が解決する 最高の歩き方』園原健弘
『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』みやすのんき
ナンバ歩きと古の歩術
『表の体育・裏の体育』甲野善紀
『ナンバ走り 古武術の動きを実践する』矢野龍彦、金田伸夫、織田淳太郎
『ナンバの身体論 体が喜ぶ動きを探求する』矢野龍彦、金田伸夫、長谷川智、古谷一郎
『ナンバ式!元気生活 疲れをしらない生活術』矢野龍彦、長谷川智
『すごい!ナンバ歩き 歩くほど健康になる』矢野龍彦
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午
『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史
『足裏を鍛えれば死ぬまで歩ける!』松尾タカシ、前田慶明監修

身体革命

●歩けば、抗酸化物質が増える
●歩けば、ホルモンバランスが変わる
●歩けば、寿命を左右する「テロメア」が伸びる
●歩けば、若さの源「テストステロン」が増える
●歩けば、腸内環境が良くなる

【『病気の9割は歩くだけで治る!PART2 体と心の病に効く最強の治療法』長尾和宏〈ながお・かずひろ〉(山と渓谷社、2018年)以下同】

 長尾和宏が信用できるのは医師でありながら、医療あるいは医療行政をきちんと批判しているからだ。これは中々できそうでできることではない。ある意味で自分の首を絞めているわけだから。自分で吐いた言葉が読者から今度は自分に突きつけられるのだ。「だったら、お前さんはどうなんだ?」と。

 批判の度合いはリスク許容度と相関性がある。左翼の場合は例外だが、普通の常識人であれば利害関係者から突き上げを食らうことは容易に想像できる。正義感に駆られて告発した者が殺されるケースもある(石井紘基など)。あるいは出過ぎた真似をすると村八分にされる慣行が日本にはある。

静岡県上野村村八分事件 - Wikipedia
「私のしたことは間違っていたのでしょうか」選挙違反を告発した女子高生と家族が味わった“重すぎる報酬” 日本一の非文化村「村八分事件」 | 小池新

 つまり本当の情報が100%公開されることはあり得ない。私が民主政を支持しない理由の一つである。ディスクロージャーを欠けば選択の基準を失う。長尾の批判は穏当であるが、穏当であるがゆえに説得力を持つのだ。

「人が老いるには、3つの理由がある」は間違い。というか古い考え方だ。更新された情報は、ジョシュ・ミッテルドルフ、ドリオン・セーガン著『若返るクラゲ 老いないネズミ 老化する人間』(集英社インターナショナル、2018年)を参照せよ。

 階段昇降はとてもおすすめです。生活の中で行うスクワットのようなもの。足腰の筋肉がかなり鍛えられます。さらに、スクワット以上に優れているのが、実は平衡感覚の練習にもなること。足腰だけでなく、脳も鍛えられるのです。

 私は近頃、同じ姿勢の反復を繰り返す筋トレについてはかなり疑問を抱いている。そもそも日常生活の中でそんな単純な動きは見られない。人の行為・行動はもっと全体的で流動性がある。ダイナミックストレッチ(動的ストレッチ)のように動きの中で反射を探るのが正しいと考える。

 階段や坂道が推奨されるようになったのは20年ほど前のこと。当時はスローピングという名称で持て囃(はや)された。私の中で初めてハイキングや登山が意識されたことをよく覚えている。

 そして、「50代、60代以降の特に女性に多い悩みの一つが、めまい」だという。更年期障害や自律神経失調症などの影響もあるのだろう。

 診察室で「歩く」という話が出ることはほとんどありません。何の話になるかといえば、結局のところ、薬です。

 しかし、薬を飲めば飲むほど病気になる。これは真実です。

 薬を5~6種類以上飲むことを「多剤併用(ポリファーマシー)」といいます。その怖さについては、高齢者の医学・医療を研究・実践する「日本老年医学会」も、「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」のなかで指摘しています。
 具体的には、薬が増えると、薬物間の相互作用によって薬が効きすぎたり、逆に効果が薄れたりすること。あるいは処方や調剤の間違い、飲み忘れ、飲み間違いが増えるということ。また、薬が5種類以上で転倒しやすくなり、6種類以上になると何らかの有害事象が起こりやすくなるということを指摘しています。(中略)
 ところが現実には、5~6種類以上の薬を服用している方はたくさんいます。10種類以上の薬を飲んでいる方もたくさんおられます。実際に、多剤併用から転倒・骨折して寝たきりになったり、入院して認知症がひどくなったり……ということは珍しくありません。

 精神疾患や認知症患者はザラに20錠以上の薬を日々服用している。薬は毒である。病気の人体に対して毒を以て毒を制するのが薬の目的だ。毒には必ず副作用がある。一番簡単な例を示そう。睡眠薬と覚醒剤を併用すればどうなるだろうか? 食べ合わせですら間違えると腹痛などを起こすのだ。医学はまだ体内の化学作用を解明するほど進化していない。

 医師の仕事は処方箋を書くことに堕してしまった。特に精神疾患が「脳の病」と喧伝されるようになってからは薬物治療がメインストリームに格上げされた。製薬会社と病院は強固な利権で溶接されてしまっている。

2021-06-18

体幹を平行四辺形に潰す/『ナンバの身体論 体が喜ぶ動きを探求する』矢野龍彦、金田伸夫、長谷川智、古谷一郎


『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
ナンバ歩きと古の歩術
『表の体育・裏の体育』甲野善紀
『「筋肉」よりも「骨」を使え!』甲野善紀、松村卓
『ナンバ走り 古武術の動きを実践する』矢野龍彦、金田伸夫、織田淳太郎

 ・「捻(ねじ)らず」「うねらず」「踏ん張らない」
 ・体幹を平行四辺形に潰す

『ナンバ式!元気生活 疲れを知らない生活術』矢野龍彦、長谷川智
『すごい!ナンバ歩き 歩くほど健康になる』矢野龍彦
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午
『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史
『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン

 ・身体革命
 ・体幹を平行四辺形に潰す

 では体幹部を使うとはどういうことか。それは、鎖骨だけを動かすというような部分的な使い方ではなく、胸郭や骨盤を潰すということである。
 胸郭や骨盤をボックスとしてイメージする。そして、そのボックスを左右・前後・上下に、各面が平行四辺形になるように潰していくのである。また、ボックスを対角線上に引き合って潰していくやり方もある。
 このようにボックス全体を操作できるようになると、偏った部分的緊張や弛緩(しかん)がなくなる。一斉にパランスよく体幹を動かせる。
 また、胸郭や骨盤を潰すことにより、身体内部の動きに敏感になり、動きが洗練されてくる。
 動きが洗練されてくるというのは、無駄がとれてくると同時に、一つの動きに全身が参加するため、必要最小限の動きになるということである。これをリラックスした動きという。

【『ナンバの身体論 身体が喜ぶ動きを探求する』矢野龍彦〈やの・たつひこ〉、金田伸夫〈かねだ・のぶお〉、長谷川智〈はせがわ・さとし〉、古谷一郎〈こや・いちろう〉(光文社新書、2004年)】

 これは理解しにくいと思うが本書の画像を参照せよ。小田伸午の著作と併せて読むと理解が深まる。体の使い方もあるが、視線を水平に保つ意味合いもある。こうした神経系の連関を古(いにしえ)の武術家は直観で見抜いた。スポーツ指導で頭の位置を注意されることは多いが、本質的な問題は頭よりも視線にある。

 自分で強く意識するために覚え書きを残しておく。