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2021-11-25

正しい歩き方=疲れない歩き方/『調子いい!がずっとつづく カラダの使い方』仲野孝明


『新正体法入門 一瞬でゆがみが取れる矯正の方程式』橋本馨

 ・正しい歩き方=疲れない歩き方

『寝たきり老人になりたくないなら大腰筋を鍛えなさい』久野譜也
『生体の歪みを正す 橋本敬三・論想集』橋本敬三
『誰にでもわかる操体法』稲田稔、加藤平八郎、舘秀典、細川雅美、渡邉勝久

身体革命
必読書リスト その一

 つまり、
 無意識に立っているから、【立っていると疲れる】
 無意識に座っているから、【座っていると疲れる】
 無意識に歩いているから、【歩くだけで疲れる】
 というわけです。

 いい換えると「本来の力を発揮できていない」「体を使いこなせていない」。こんな状態で、運動したり食事に気をつかったりしても……。ん~。残念ながら効果は薄くなってしまいます。最悪の場合、せっかく運動を始めたのになんだか体が痛いなんていうことも。よかれと思ってしたことが、逆効果になる可能性もあります。

【『調子いい!がずっとつづく カラダの使い方』仲野孝明〈なかのたかあき〉(サンクチュアリ出版、2019年)以下同】

 簡単なことほど難しい。常歩(なみあし)を実践して思い知らされた。運動神経に自信があるだけに頭を抱え込んだ。結局、納得のゆく動きができるまでに3ヶ月ほどを要した。一旦、意識を確立するとそれからは少しずつ無意識で正しい動きが可能となる。

 大事なのは重い頭をどう支えるかである。骨盤と肩甲骨が要となる。よく助言するのだが、「骨盤を立てる。肩を上げてからストンと落とす。で、そのまま胸を上げる」とよい姿勢になる。


 実に巧みな説明である。「耳の後ろを引き上げる」のは背骨を伸ばす=S字弯曲(わんきょく)の保持であり、「みぞおちから脚を動かす」のは骨盤を動かすことだ。取っ掛かりの意識革命としてはわかりやすい。

 体の使い方がわかってきてから読み直せば、更に理解が深まることだろう。意識するとは、少し離れて自分を見つめることである。これすなわち瞑想である。

2021-09-07

バイクを押して歩く/『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史


『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏
『病気の9割は歩くだけで治る!PART2 体と心の病に効く最強の治療法』長尾和宏
『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
『ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング』田中宏暁
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス
『一流の頭脳』アンダース・ハンセン
『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット
『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』ロバート・ムーア
『「体幹」ウォーキング』金哲彦
『高岡英夫の歩き革命』、『高岡英夫のゆるウォーク 自然の力を呼び戻す』高岡英夫:小松美冬構成
『あらゆる不調が解決する 最高の歩き方』園原健弘
『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』みやすのんき
ナンバ歩きと古の歩術
『表の体育・裏の体育』甲野善紀
『「筋肉」よりも「骨」を使え!』甲野善紀、松村卓
『ナンバ走り 古武術の動きを実践する』矢野龍彦、金田伸夫、織田淳太郎
『ナンバの身体論 体が喜ぶ動きを探求する』矢野龍彦、金田伸夫、長谷川智、古谷一郎
『ナンバ式!元気生活 疲れを知らない生活術』矢野龍彦、長谷川智
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史

 ・バイクを押して歩く

『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午
『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史
『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本 目・耳・口・鼻の使い方を変えるだけで身体の芯から楽になる!』藤本靖

身体革命

 私は長年、スポーツ選手を中心にパフォーマンス向上のための動作改善を「歩行動作」を中心に指導してきました。また、江戸時代までの身体運動文化についても研究してきました。その指導や研究で明らかになってきたことは、現在ウォーキング教室などで指導されている「エクササイズウォーク」や「パワーウォーク」などはエネルギーのロスが大きく、特に中高年には無理がある「歩き方」だということです。これらの歩きは地面を蹴って膝などの関節を伸ばしながら歩きます。このような歩き方を「伸展(しんてん)歩き」と言います。しかし、江戸時代までの日本人が得意として歩きは、地面を蹴らずに膝を曲げて進む「屈曲(くっきょく)歩き」なのです。その「屈曲歩き」が剣術や柔術などの伝統的な動作を支えていました。

【『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史〈きでら・えいし〉(東邦出版、2015年)以下同】

 実は簡単なことほど難しい。健康であれば誰もが歩ける。だが、きちんと歩ける人は少ない。私が常歩(なみあし)を始めたのは5月のことである。既に3ヶ月以上経ったが、まだまだしっくりこない。膝を抜くことはできるのだが拇指球の蹴りを打ち消すのが難しい。ま、試行錯誤している間は成長の余地があるわけだから結構楽しい。

 ある日、突然思いついた。バイクを押しながら歩いてみようと。実は2年ほど前にエンジントラブルに見舞われ、数キロの距離を押して自宅まで戻ったことがあった。「あれを思えばどうってことはないな」と直ぐエンジンスイッチを切り、ギョサンで歩いた。案の定、ほぼ完璧な常歩(なみあし)だ。バイクを所有している人は直ぐ試してみるといい。もちろんリヤカーでも可能だ。我が原付バイクは80kgである。少し上り勾配があると尚更よい。拇指球に力を入れる余地はない。足裏全体を地面に押し付け、踵の摩擦力で前に出るのが一番楽だ。

「伸展歩き」では膝を伸ばして歩きます。すると、脚全体が内側に回ろうとします。さらに現代人はシューズを着用しています。すでにお話ししたように、一般的にはシューズのインソールはつま先よりかかと部が高くなっていますから、足関節(足首の関節)を伸展させます。足関節の伸展は膝関節の伸展を促しますので、脚は内側に回り、過剰回内の状態をつくり出すのです。現代人の8割以上が過剰回内であると言われています。(中略)
 外反母趾を発症している方はほぼ例外なく、過剰回内による「伸展歩き」をしています。さらに、過剰回内は下腿が内側にひねられていますから、足首や膝の障害を発症する危険性が高まります。

 伸展歩きで内旋するのは以前からわかっていた。大転子ウォーキングで気づいたことだ。足指が横一直線に並ぶような感覚があった。

 頭の中でまたまた電球が点(とも)った。時折閃きの神が舞い降りてくる。氷の上を歩くつもりで足を運ぶと脚は自然と屈曲する。早速やってみた。おお、これはいい。更に電球が明るさを増した。薄氷を踏む意識にまで高めるのだ。「俺って天才?」と心の底から思った瞬間だ。

 畳の上で生活する日本人は骨盤が後傾しやすい。年寄りの腰が曲がってくるのも骨盤の後傾から始まる。そして日本の国土は約75%が山である。普通に暮らしていれば伸展歩きになることはあり得ない。坂道の上り下りで腕を大きく振る人はいないだろう。まして昔の人々は荷物を持って移動することが多かっただろうから尚更である。

 膝を曲げた瞬間は自分自身では力を発揮している感覚がほとんどありませんが、大きな地面反力が得られます。つまり、膝の屈曲をうまく利用する「屈曲歩き」は地面を味方にした歩きなのです。

 これは言い過ぎだ。反力とはランニングで得られるものであって歩行程度であるわけがない。そもそも膝を抜くのだから反力は得られない。

2021-08-14

長距離ハイキング/『トレイルズ 「道」を歩くことの哲学』ロバート・ムーア


『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏
『病気の9割は歩くだけで治る!PART2 体と心の病に効く最強の治療法』長尾和宏
『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス
『一流の頭脳』アンダース・ハンセン
『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット

 ・道の本質はその機能にある
 ・長距離ハイキング
 ・よいデザインはトレイルに似ている

『ランニング王国を生きる 文化人類学者がエチオピアで走りながら考えたこと』マイケル・クローリー
『動物たちのナビゲーションの謎を解く なぜ迷わずに道を見つけられるのか』デイビッド・バリー
『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
『「体幹」ウォーキング』金哲彦
『高岡英夫の歩き革命』、『高岡英夫のゆるウォーク 自然の力を呼び戻す』高岡英夫:小松美冬構成
『あらゆる不調が解決する 最高の歩き方』園原健弘
『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』みやすのんき
ナンバ歩きと古の歩術
『表の体育・裏の体育』甲野善紀
『ナンバ走り 古武術の動きを実践する』矢野龍彦、金田伸夫、織田淳太郎
『ナンバの身体論 体が喜ぶ動きを探求する』矢野龍彦、金田伸夫、長谷川智、古谷一郎
『ナンバ式!元気生活 疲れをしらない生活術』矢野龍彦、長谷川智
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午
『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史

身体革命
必読書リスト その五

 わたしにとって何か精神的な道があるとすれば、それはトレイルそのものだった。長距離ハイキングは、わたしにとっては現実的で必要最小限のアメリカ式歩行瞑想だった。トレイルはその制約のため、より深く考える自由を精神に与える(たぶん、アウトドア愛好者のなかでもハイカーが最も思索を好むのはこれが理由だろう)。わたしの無鉄砲なトレイル教の目的は、動きを滑らかにし、シンプルに生き、自然の知恵を引き出し、現象の絶え間ない変化を静かに観察することだった。もちろん、ほとんどの場合はうまくいかなかった。当時の日記を読みかえしてみたのだが、心静かな観察の記録といったものは少なく、物資の手配や食べ物に関する心配や妄想ばかりが書かれていた。悟ることなどできなかった。それでも全体として見れば、かつてないほど幸せで健康だった。
 最初の二、三カ月くらいのあいだ、歩くペースは徐々に上がっていった。最初は1日に16キロだったが、やがて24キロ、そして32キロになった。メリーランド、ペンシルヴェニア、ニュージャージー、ニューヨーク、コネティカット、マサチューセッツなどの比較的標高の低いところでは、さらにペースは上がった。ヴァーモント州に入るころには1日に48キロ歩くようになっていた。その過程で、わたしの体は歩行という任務を遂行するための道具になっていった。歩幅が広がり、水ぶくれは硬くなった。余分な脂肪や筋肉の多くは燃料に変わった。ほとんどつねに、わたしという機械の一、二箇所は修理を必要としていた。くるぶしが痛んだり、尻がひりひりしたりした。だがごく稀に、すべてが調和し、空っぽの州間高速道路をスーパーカーで飛ばしているように、道具と任務が完全に調和していると感じられることもあった。

【『トレイルズ 「道」を歩くことの哲学』ロバート・ムーア:岩崎晋也〈いわさき・しんや〉訳(エイアンドエフ、2018年)】

「エネルギーを使えばつかうほど時間が早く進む」(『「長生き」が地球を滅ぼす 現代人の時間とエネルギー』本川達雄)。そう考えると人間にとって最適なのは歩く速度だろう。ランニングだと五官が正常に機能しない。瀬川晶司の父親はジョギング中に轢過(れきか)事故で亡くなった。

 私の脚力だと20kmが限界だ。10km程度はよく歩くが、手がパンパンに膨(ふく)れてくる。短気のせいで休憩を挟むことがない。自転車の時と同様で坂道を好む。仕事の時間が偏っていることもあって毎日歩くことは難しい。それでも10年前と比べると体調はかなりいい。

「心臓の鼓動が体中にメッセージを伝えている」(『心臓は語る』南淵明宏)とすれば、歩行による振動も体に影響を与えていることだろう。

 日常的な健康という観点からすれば長距離を歩く必要はない。むしろ短い距離で構わないから日々歩くことを心掛けるべきだろう。しかし私は長距離を目指す。なぜなら、いつか災害や戦禍によって交通が麻痺し、歩くことでしか移動できない事態を想定しているからだ。備えあれば憂いなしである。危機的な状況を想像すると「歩けない」ことは死を意味するといっても過言ではないだろう。

2021-08-10

歩幅と認知症の相関関係/『足裏を鍛えれば死ぬまで歩ける!』松尾タカシ、前田慶明監修


『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏
『病気の9割は歩くだけで治る!PART2 体と心の病に効く最強の治療法』長尾和宏
『ナンバ式!元気生活 疲れを知らない生活術』矢野龍彦、長谷川智
『足・ひざ・腰の痛みが劇的に消える足指のばし』湯浅慶朗
『本当に必要な「ゆるスクワット」と「かかと落とし」』中村幸男

 ・歩幅と認知症の相関関係

『5秒 ひざ裏のばしですべて解決 壁ドン!壁ピタ!ストレッチ』川村明
『ベッドの上でもできる 実用介護ヨーガ』成瀬雅春
『実践「免疫革命」爪もみ療法 がん・アトピー・リウマチ・糖尿病も治る』福田稔
『足の裏は語る』平澤彌一郎

身体革命
必読書リスト その二

 2017年の厚生労働省の人口動態統計によると、【転倒や転落などによって命を落とした人の数は年間約9600人。】これは交通事故によって命を落とした人の数(約5000人)より多い数字です。
 また、命を落とすほどではなくても、転倒すると「寝たきり」へとつながる可能性が高まります。

【『足裏を鍛えれば死ぬまで歩ける!』松尾タカシ、前田慶明〈まえだ・のりあき〉監修(池田書店、2018年)以下同】

 少し調べた。


 転倒・転落で死亡するのは頭部打撲が原因か。溺死は風呂。水溜まりに顔をつけて死んだ場合も溺死となる。死は日常のそこここにあるということだ。また、寝たきりの要因となるのは骨折である。特に高齢者の場合、わずかな期間で骨折→入院→寝たきりとなる。たとえ大腿骨を骨折したとしても入院させないのがよろしい。病院だと動けないのもさることながら、コミュニケーションの乏しさが認知症を促進させる。

 高齢者の事故は家の外よりも家のなかで起こっているのです。
 しかも、家庭内での事故発生場所の第1位は、階段でもお風呂場でもなく、居室で、その割合は45%にもなります(2017年の内閣府の高齢社会白書より)。加齢により足腰が衰えると、わずかな段差でも転んでしまうのです。

 50代になると誰もが実感することだろう。この私ですらそうだ。本書で紹介されている足指じゃんけんや、腿上げ、大腰筋強化が必要だ。

 最近のさまざまな研究によって、【「歩くスピードが遅くなる=認知症の危険度が高くなる」】という関係が明らかになっています。とくに注意したいのが、歩くテンポより歩幅です。東京都健康長寿医療センター研究所の研究によると、歩幅が狭い人は、そうではない人よりも認知機能が低下する危険性が2.8倍も高くなるということです。

 常歩(なみあし)だと歩幅が狭くなるので判断しにくい。フロントランジやバックランジの動きを確認するのがよさそうだ。

 私はどちらかというと、自分のためではなく高齢者を手助けするために運動の勉強を行っている。そこそこ知識は集積されてきたので、そろそろ近所にチラシでも配布しようかと思っているところだ。賢く生きれば認知症はいくらでも防ぎようがある。愚か者は後悔の海に沈みながら死ぬしかない。

2021-08-03

インターバル速歩/『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博


『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏
『病気の9割は歩くだけで治る!PART2 体と心の病に効く最強の治療法』長尾和宏

 ・インターバル速歩

『ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング』田中宏暁
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス
『一流の頭脳』アンダース・ハンセン
『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット
『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』ロバート・ムーア
『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
『「体幹」ウォーキング』金哲彦
『高岡英夫の歩き革命』、『高岡英夫のゆるウォーク 自然の力を呼び戻す』高岡英夫:小松美冬構成
『あらゆる不調が解決する 最高の歩き方』園原健弘
『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』みやすのんき
ナンバ歩きと古の歩術
『表の体育・裏の体育』甲野善紀
『「筋肉」よりも「骨」を使え!』甲野善紀、松村卓
『ナンバ走り 古武術の動きを実践する』矢野龍彦、金田伸夫、織田淳太郎
『ナンバの身体論 体が喜ぶ動きを探求する』矢野龍彦、金田伸夫、長谷川智、古谷一郎
『ナンバ式!元気生活 疲れを知らない生活術』矢野龍彦、長谷川智
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午
『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史

身体革命
必読書リスト その二

「インターバル速歩」とは、本人がややきついと感じる早歩きと、ゆっくり歩きを3分間ずつ交互に繰り返すというウォーキング方法である。それを1日5セット、週4日以上繰り返すと、5ヵ月間で体力が最大20%向上(10歳以上若返った体力が得られる)、生活習慣病の症状が20%改善し、その結果、医療費も20%削減できるということが明らかになっている。

【『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博〈のせ・ひろし〉(ブルーバックス、2019年)以下同】

 ウォーキングのやり方である。歩き方は参考にならないので注意が必要だ。自転車乗りであれば、タバタ式HIITはお馴染みのトレーニング法である。目的は心拍数を高めることだ。痩せることではない。

 まずは「言われた通り」やってみることがセオリーだ。しかも30分間で済む。物足りなければ3分ランニングにしてもいいだろう。そこからタバタ式に持っていくという手もある(20秒ダッシュ+10秒ウォーキング×8セット)。

 図1-6は生活活動度と医療費との関係を年齢別に示したものである。生活活動度が体力に比例すると考えると、体力の低下曲線と年齢別の医療費が見事に相関する。そして、体力が20代の30%レベル以下にまで低下すると要介護状態になり、自分ひとりでお風呂に入れない、トイレに行けないという状態になる。したがって、高血圧、糖尿病、肥満といった生活習慣病にとどまらず、認知症やがんに至るまで、中高年特有の疾患の根本原因は、この加齢性筋減少症に伴う体力の低下の可能性が高い、と考えられるようになった。
 最近、そのメカニズムについて、図1-7で示すように、体力の低下による「慢性炎症」の関与が指摘されている。「慢性炎症」という言葉は読者になじみがないかもしれないが、たとえば、風邪を引くと喉が痛くなる、傷口にばい菌が侵入すると化膿し、局所がはれ上がり、痛みが出たり、発熱したりする。これらの反応は、外部から体内に異物が侵入すると、それらをやっつけよう、追い出そうとする体の反応である。これを医学では「炎症反応」と呼ぶ。
 ここで、興味深いのは、外部から異物が体内に侵入しなくても、運動不足、肥満など体力低下を引き起こすような生活習慣でこの炎症反応が起こることである。ただ、この炎症反応のレベルは非常に低く、痛みが出たり、発熱を起こしたりするのはごく稀で、ほとんどの人は気がつかない。しかし、着実に全身性に起こっている。
 そして、この炎症反応が特に脂肪細胞に起これば糖尿病に、免疫細胞に起こって、その影響が血管内皮細胞に現れれば動脈硬化・高血圧症に、脳細胞に起これば認知症・うつ病に、さらに、この炎症反応によって分泌されるサイトカインという物質を介して、その影響ががん抑制遺伝子に及べばがんになる、と考えられるようになった。(中略)
 加齢によって筋力が低下すると、まず、筋肉中のミトコンドリアの機能が劣化する。さらに、筋力が低下すると運動するのが億劫になるために、筋肉以外の臓器の代謝も低下し、全身のミトコンドリア機能が低下する。その結果、全身性に活性酸素が産生され、慢性炎症が起こり、生活習慣病になるというのだ。
 では、どうすればよいか。答えは簡単。加齢性筋減少症に負けないように、運動トレーニングによって体力アップを行えばよいのだ。

炎症が現代病の原因/『シリコンバレー式 自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー

 エビデンスが豊富で一々説得力がある。慢性炎症を知る医師や看護師はまだ少ない。知ったところで彼らの利益が増えるわけではないため、患者に慢性炎症を説明することは多分ないだろう。患者も患者で運動を勧められるよりは薬を求めがちだ。「医師の仕事は薬を処方することで、病気を治すのは薬である」という思い込みは鉄板のように堅固なものとなっている。

「肥満は病気である」との認識が必要だ。少欲知足ならぬ少食知足こそが健康の基(もとい)である。



2021-08-02

膝を抜く/『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午


『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏
『病気の9割は歩くだけで治る!PART2 体と心の病に効く最強の治療法』長尾和宏
『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
『ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング』田中宏暁
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス
『一流の頭脳』アンダース・ハンセン
『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット
『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』ロバート・ムーア
『「体幹」ウォーキング』金哲彦
『高岡英夫の歩き革命』、『高岡英夫のゆるウォーク 自然の力を呼び戻す』高岡英夫:小松美冬構成
『あらゆる不調が解決する 最高の歩き方』園原健弘
『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』みやすのんき
ナンバ歩きと古の歩術
『表の体育・裏の体育』甲野善紀
『「筋肉」よりも「骨」を使え!』甲野善紀、松村卓
『ナンバ走り 古武術の動きを実践する』矢野龍彦、金田伸夫、織田淳太郎
『ナンバの身体論 体が喜ぶ動きを探求する』矢野龍彦、金田伸夫、長谷川智、古谷一郎
『ナンバ式!元気生活 疲れを知らない生活術』矢野龍彦、長谷川智
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二

 ・膝を抜く
 ・こむら返りは自分で直すことができる

『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史
『身体構造力 日本人のからだと思考の関係論』伊東義晃
『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本 目・耳・口・鼻の使い方を変えるだけで身体の芯から楽になる!』藤本靖

身体革命

 二軸動作「常歩」に取り組んでいる大阪市立桜宮高校の陸上部顧問・山本幸治先生から、レポートをいただきました。本書を読んで、これから二軸動作「常歩」を覚えようとする人にとって、たいへん参考になると思いますので、以下に紹介します。(中略)

 まず、最初に取り組んだのが「膝の抜き」でした。この動作については、いまだ感覚として体得している選手は半数くらいだと思います。最初は、自分の動作は膝が抜けているのか、どれくらい膝が曲がるのかなど、選手自身ははっきりしない、不安な状態が続きました。
 そこで取り入れたのが坂道を利用した「おんぶ走」です。最初は、坂をあがることからはじめ、拇指球で地面を蹴って坂をあがるのではなく、着地したら下腿を前に倒して、膝頭を地面に押しつけるようにして坂をあがるよう指示しました。そのとき、支持脚の膝の上へ同側の腰が乗るように上体を前方向へ移動すれば、反対側の脚が自然と前に振り出されると説明したのです。その感覚が得られるように、ひたすら繰り返し練習しました。すると、この練習で半数の生徒が「膝を抜く」感覚を体得しました。
 逆に、坂をくだることも試みました。おんぶしながら「膝を抜く」ことで、坂をあがるときよりも体の重力落下の感覚を強く感じてくれるかもしれないという意図からです。これも、予想以上に感覚をつかんだ選手が多く、ブレーキをかけないよう坂をくだりながら「膝を抜く」感覚の獲得に重点を置きました。坂をくだるときにブレーキをかけないようにするには、体幹を斜面と垂直にして、足裏全体を同時に着地(フラット着地)するような感覚が有効です。坂をあがる練習では「膝の抜き」が感覚としてつかめなかった選手が、坂をくだる練習でつかめたというのは大きな収穫でした。選手に聞いてみると、のぼりとくだりを比較した場合、やはりのぼりの方が「膝を抜く」感覚がつかみやすいようです。しかし、これには個人差もありますから、両方あわせて行うようにしています。

【『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午〈おだ・しんご〉(大修館書店、2005年)】

 必読書の量が多いため教科書本とした。常歩(なみあし)本ではない。二軸動作の総合的な概念を教える内容でスポーツ指導者は必読のこと。

 これはわかりやすい練習だ。重量を逃すために自(おの)ずから膝を抜くのだろう。ただし感覚を知るだけなら、おんぶする必要はない。既に書いた通り坂道の上り下りで膝を伸ばして着地することはできないため(膝への衝撃が大きくなるゆえ)。階段の上り下りでも同様だ。

 もっと簡単なのは小山田ウォークである。膝を抜くよりも腰を落とさせればよい。少し時間をかけて歩けばわかるが、脚全体の後ろ側の筋肉がつりそうになる。

「古武術式・縮地走法」も大変参考になる。


 小田本には必ず出てくる「疾走中の足首の最大屈曲角度と最大伸展角度」という画像がある。一瞥しただけで拇指球神話が崩壊する。

 カール・ルイスの足首は20度ほどしか曲がっていない。つまり踵で踏んで走っているのだ。

2021-07-30

踵を踏む/『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二


『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏
『病気の9割は歩くだけで治る!PART2 体と心の病に効く最強の治療法』長尾和宏
『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
『ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング』田中宏暁
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス
『一流の頭脳』アンダース・ハンセン
『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット
『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』ロバート・ムーア
『「体幹」ウォーキング』金哲彦
『高岡英夫の歩き革命』、『高岡英夫のゆるウォーク 自然の力を呼び戻す』高岡英夫:小松美冬構成
『あらゆる不調が解決する 最高の歩き方』園原健弘
『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』みやすのんき
ナンバ歩きと古の歩術
『表の体育・裏の体育』甲野善紀
『「筋肉」よりも「骨」を使え!』甲野善紀、松村卓
『ナンバ走り 古武術の動きを実践する』矢野龍彦、金田伸夫、織田淳太郎
『ナンバの身体論 体が喜ぶ動きを探求する』矢野龍彦、金田伸夫、長谷川智、古谷一郎
『ナンバ式!元気生活 疲れを知らない生活術』矢野龍彦、長谷川智
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史

 ・踵を踏む

『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午
『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史
『身体構造力 日本人のからだと思考の関係論』伊東義晃
『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本 目・耳・口・鼻の使い方を変えるだけで身体の芯から楽になる!』藤本靖

身体革命
必読書リスト その二

 身体が前に出るということは、「踵(かかと)を踏む」ことです。前に出るのに「踵を踏む」と言われても、ピンとこないかもしれません。「つま先で蹴るのでは?」と思った人もいるでしょう。しかし、踵から接地してつま先(拇指球あたり)で蹴る動きは、中心軸感覚による走歩行の典型的な特徴です。実際に、剣道の打突や陸上競技など、スポーツの現場では、何の疑いも持たずに拇指球で蹴っている人が多く見受けられます。しかし、それは「つま先を蹴れば前に行ける」という先入観によるもので、実際はまったく逆の動きによって前に出ているのです。
 では、わかりやすい実験をしてみましょう。立った姿勢から、徐々に身体を前に倒してみてください。もうすぐ倒れるというギリギリの状態まで身体を倒し、そこで止めます。足裏の感覚を確かめてみてください。つま先で踏みとどまっていることがわかるでしょう。
 これは、基本的な人間の姿勢調節に関する話です。バスや電車に乗っていて、前に倒れそうになったら、踵を上げてつま先を踏み、後ろに居直ります。このつま先で踏むという動作は、重心の位置を、つま先より前へ越えないようにするためのものです。そうやって地面を前に蹴り、後ろへの反力をもらって姿勢を調節しているのです。このとき、身体は前傾しているように感じますが、重心点は身体を支える支持点(拇指球)の真上にあり、決してそれより前には出ていません。つまり、「つま先で踏む」ことは、前に行く動きにブレーキをかけているのです。速く走りたいのに、ブレーキをかける人はいないはずです。スピードを殺さずに走るためには、つま先で蹴る動作をなくし、ブレーキを最小限に抑えなければならないのです。

【『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午〈おだ・しんご〉、木寺英史〈きでら・えいし〉、小山田良治〈おやまだ・りょうじ〉、河原敏男〈かわはら・としお〉、森田英二〈もりた・ひでじ〉(スキージャーナル、2007年)】

 小田、木寺、小山田の3人で交わしたメールは7000~8000通にもなるという。それ自体がシナプスの発火や軸索の伸びを示している。人と人とのつながりは本来そうあるべきだろう。脳が活性化するような付き合いでなければ時間の無駄だ。

 踵を踏むことはさほど難しくはない。実際にやってみるとわかるが、拇指球の力を抜くことが難しいのだ。更に踵を残すという一連の行為ができるまでは時間を要する。長年にわたって染み付いた思い込みが体を束縛しているのだ。

 大衆がスポーツに熱狂するのは力と技を純粋に競い合うためだろう。社会は社会性を重んじるあまり実力勝負の場面が乏しい。出自や損得で動くことも決して少なくない。それどころか誰の紹介で入社したかで平然と差別がまかり通る。そのスポーツをも商業主義で地に貶めたのがオリンピックだ。もはやスポーツ選手を利用した金儲けの舞台に過ぎない。

 同じ行為の繰り返しが身体の機能を損なうとすれば、人間の体が不自由になったのは農業社会に移行したのが大きいと考えられる。その上、食生活が一変した(『反穀物の人類史 国家誕生のディープヒストリー』ジェームズ・C・スコット)。

 拇指球で蹴らない効用は直ぐ実感できた。ギョサンで5km以上歩いても足裏が痛むことがなくなった。それまでは滑り止めと思われるゴムの小さな突起で歩くのが厭(いや)になるほど痛くなった。たぶん部分的な負荷が消えたのだろう。

 もう一度常歩(なみあし)を確認しよう。

 腕の動きも外旋となる。上から見た場合、腕は逆ハの字に振る。しかも通常のパワーウォークと異なり、前方向への振りを意識する。ほんの少しボクシングのアッパーカット気味にすると感覚をつかみやすい。

 初めは着地脚の膝を曲げないことだけ意識すればよい。安来節(やすきぶし)の要領で構わない。大袈裟にやった方が動きの違いがわかりやすいだろう。

 常歩(なみあし)は誤った常識に縛られた体を解放してくれる。

2021-07-29

小山田ウォーク/『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午


『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏
『病気の9割は歩くだけで治る!PART2 体と心の病に効く最強の治療法』長尾和宏
『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
『ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング』田中宏暁
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス
『一流の頭脳』アンダース・ハンセン
『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット
『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』ロバート・ムーア
『「体幹」ウォーキング』金哲彦
『高岡英夫の歩き革命』、『高岡英夫のゆるウォーク 自然の力を呼び戻す』高岡英夫:小松美冬構成
『あらゆる不調が解決する 最高の歩き方』園原健弘
『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』みやすのんき
ナンバ歩きと古の歩術
『表の体育・裏の体育』甲野善紀
『「筋肉」よりも「骨」を使え!』甲野善紀、松村卓
『ナンバ走り 古武術の動きを実践する』矢野龍彦、金田伸夫、織田淳太郎
『ナンバの身体論 体が喜ぶ動きを探求する』矢野龍彦、金田伸夫、長谷川智、古谷一郎
『ナンバ式!元気生活 疲れを知らない生活術』矢野龍彦、長谷川智
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午

 ・小山田ウォーク

『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史
『身体構造力 日本人のからだと思考の関係論』伊東義晃
『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本 目・耳・口・鼻の使い方を変えるだけで身体の芯から楽になる!』藤本靖

身体革命
必読書リスト その二

小田●じゃあいこうか。LSD。Long Slow Distance。良ちゃん(小山田)と出会ってもう20年たつけど、昔、小山田ウォークってありましたね。このなかで、やれる人いる? ちょっと小山田ウォークやってみて。ターンオーバーの一番いい練習なんだよ。

小山田●あ、浅井ができます。足関節の動きを抑えて、股関節の伸展と膝関節の伸展を同時にやるヤツ。後ろで膝が伸びて、前方では膝が曲がって着地する。前方は膝伸ばさなくて、後方で膝伸ばす(図166)。
小田●これがLSDの走り?

小山田●ハムストリングを一番効率よく使うトレーニングということで入ったのが小山田ウォークです。

小田●今回の本でハムストリングの話が出てくるけど、20年前にハムストリングから入ってるの。

小山田●はい。あの時から頭にあったことを、今回は細かく書きました。

小田●LSDの Slow に一番意味があるんですね。

小山田●そうです。 Slow に。

小田●何で Slow を考えたの?

小山田●雑に運動するんじゃなくて、一番低速で丁寧な動きをすることで、高速でもその丁寧な動きを維持できるんじゃないかというところが始まりなんです。

小田●浅井さん、山内さん、最初に小山田さんからLSDをどういう言葉で聞いた? 代々変わっていって、人によって聞いた言葉がちょっと違うと思うよ。

浅井●僕は12年前かな。この治療院へ来だした時ですね。まず前脛骨筋にテンションを入れながら、長い距離をゆっくり乗りなさいって言われました。

小田●これこれ。この「ゆっくり」が大事なんだ。

浅井●50kmの距離を3時間、4時間かけて載るぐらいの感じ。ふつうなら1時間半、2時間くらいでいけますよね。

小田●それはかえって難しいことなの?

浅井●難しいっていうか、スタートして10分くらいでもう足がつってきます。当時は脛のあたりと足の裏がつってましたね。

小田●脛骨筋と足底か。この話は、普通わからないよねえ。ゆっくりやる練習が一番楽なのかなって思いますよね。

小山田●ゆっくりやっていますが、その分、力を入れたものが抜けないじゃないですか。抜けない状態を長く続けなきゃいけないから、そこがまずはもう持久力ですよね。

小田●力を入れておくところと、入れておかないところがある。

小山田●そうですそうです。脱力と入力ですよね。

小田●入力は脛骨筋?

小山田●脛骨筋はずっと出力を掛けてなきゃいけないので。

小田●これも世間では珍しい話なんだよね。

【『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治〈おやまだ・りょうじ〉、小田伸午〈おだ・しんご〉(創元社、2019年)】

 競輪選手の山内卓也〈やまうち・たくや〉、浅井康太〈あさい・こうた〉を交えた座談会から。あちこちに火花を放つ言葉が出てくる。プロスポーツ選手の高い意識が高山の冠雪を思わせる。

 3ヶ月ほど要して私の常歩(なみあし)アプローチは、腿に手を置き、右足を前に出すタイミングで右肩甲骨を中央に寄せる(内旋)というやり方に落ち着いた。最初は矢野式ナンバで右胸骨を上げていた。肩甲骨を外旋するやり方もあるのだが、どうも歩きにくかった。

 そしてこのテキストに遭遇した。頭の中で電球が灯(とも)った。思わず「これだよ、これ!」と欣喜雀躍した。実践する前から得心した。疑問を手放さなければ答えは必ず見つかるものだ。

 BABジャパンで「小山田ウォーク」の本を企画してもらいたい。

 慣れるまでは少し難しく感じるが、実は当たり前のように行っていることに気づいた。我々は坂道の上り下りや、砂浜を歩く時、自然に小山田ウォークとなっているのだ。それゆえ平坦な道では膝抜きを大袈裟にやるくらいでいい。実際は階段を下りる時の足使いなのだが、腰を落として歩く意識で行えば感覚がつかめる。

 少し時間ができたので駆け足で紹介してきた。今となっては金哲彦~みやすのんきは読まなくてもいいように思うが、ナンバや常歩(なみあし)を理解するためには通っておくべき必要な道である。上記リンクで紹介した書籍は、ウォーキングを勧める医師ですら知らない情報である。政府が社会保障費の抑制を本気で考えているのであれば、常歩研究会に多額の助成金を出し、彼らが活躍できる場を用意するのが一番の近道である。

2021-07-28

常歩(なみあし)は文殊の知恵/『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史


『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏
『病気の9割は歩くだけで治る!PART2 体と心の病に効く最強の治療法』長尾和宏
『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
『ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング』田中宏暁
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス
『一流の頭脳』アンダース・ハンセン
『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット
『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』ロバート・ムーア
『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
『「体幹」ウォーキング』金哲彦
『高岡英夫の歩き革命』、『高岡英夫のゆるウォーク 自然の力を呼び戻す』高岡英夫:小松美冬構成
『あらゆる不調が解決する 最高の歩き方』園原健弘
『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』みやすのんき
ナンバ歩きと古の歩術
『表の体育・裏の体育』甲野善紀
『「筋肉」よりも「骨」を使え!』甲野善紀、松村卓
『ナンバ走り 古武術の動きを実践する』矢野龍彦、金田伸夫、織田淳太郎
『ナンバの身体論 体が喜ぶ動きを探求する』矢野龍彦、金田伸夫、長谷川智、古谷一郎
『ナンバ式!元気生活 疲れを知らない生活術』矢野龍彦、長谷川智

 ・常歩(なみあし)は文殊の知恵

『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午
『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史
『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本 目・耳・口・鼻の使い方を変えるだけで身体の芯から楽になる!』藤本靖

身体革命
必読書リスト その二

 さて、それでは「なんば」の考察から常歩(なみあし)が生まれてきた経緯を述べてみます。私は剣道の打突動作の考察から「なんば」、さらに常歩(なみあし)へと進んできましたが、私が意見交換に加わる前から、小田先生は「ターンオーバー」、小山田氏は「二直線歩行」などを考察し提唱されていました。(中略)
 最初に常歩(なみあし)のヒントを得たのは、ゆっくり走るという動作からです。当時、ゆっくりながらさまざまな上肢の動きを繰り返していました。ある日、上肢(腕)をだらりと下げて肩の力を抜き走っていますと、同側の足と手がほぼ同時に同方向に振られていることに気づきました。
 皆さんも試してみてください。腕をだらりと下げてゆっくり走り、充分に肩甲骨周辺が脱力していると、足と手が同方向に振れてきます。このときの足と体幹の動きを観察してみましょう。肩の動きに注目すると、「左右の半身を繰り返す」という誤解された「なんば」とは違うことがわかります。振り出される足と同側の肩が前方に動くのではなく、【振り出される足の逆側の肩が前方へ動きます】。つまり、着地している足と同側の肩が前方へ動くのです。私はこの走り方を「なんばジョギング」と名づけました。
「なんばジョギング」を繰り返していますと、もう一つ肩の動きで重要なことがわかってきます。それは、着地足側の肩が前方へ動くだけでなく、【下方向に引き込まれる】のです。これも、肩甲骨周辺の柔軟性と脱力が条件ですが、肩甲骨が腕の重さで着地足側へ引っ張られます。この「なんばジョギング」を毎日続けました。すると、徐々に身体の左右に軸感覚が生まれてきました。

【『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史〈きでら・えいし〉(スキージャーナル、2004年)以下同】

 常歩(なみあし)誕生までの試行錯誤が綴られている。木寺のホームページを見た小田伸午〈おだ・しんご〉がメールを送った。続いて小田と交友のあった小山田良治〈おやまだ・りょうじ〉からも木寺宛てにメールが寄せられた。試行錯誤を続けていた三人が寄り集まった時、文殊の如き知恵が生まれた。どこか桃園の誓いを思わせるエピソードである。

 上記テキストはかなりわかりにくい。動作を言葉で伝える難しさがここにある。常歩(なみあし)の基本動作は、二軸、着地する足の膝を伸ばさない、踵(かかと)は残す、の3点である。骨盤歩きを行えばたちどころに理解できる。慣れない内は小走り気味に歩いてみるといい。

 そこで重要な役割をするのが股関節なのです。股関節が外旋する、または外旋力が働くことにより、この骨盤の動きが誘導されることがわかってきました。股関節が外旋するというのは股関節が膝と足先が外側を向くように動くことをいいます。

 私にとってはこれが難しかった。指で地面をつかもうと意図的に内旋させていたためだ。だが数日間歩いて直ぐに理解できた。アイススケートの滑り方と一緒なのだ。足裏の動きは通常のウォーキングと一緒で踵から外側に体重を載せ、最後は親指側から抜ける。この時、拇指球に力を入れてはならない。飽くまでも推進力は踵である。

 もっとわかりやすく説明しよう。立ったまま右足を上げて、足指側は浮かせたままで静かに踵を着く。着地した瞬間に左足を上げる。すると恐ろしいほど前に進む力が現れる。しかも踵を使うことで脚の裏側の筋肉が作動する。推進力となるのは体の後ろ側の筋肉だ。

 二軸動作についてはまだ感得していない。ただし中心軸動作は既に脱却している。ここに至るまで2~3ヶ月を要した。常歩(なみあし)は実に奥が深い。

骨で歩く/『すごい!ナンバ歩き 歩くほど健康になる』矢野龍彦


『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏
『病気の9割は歩くだけで治る!PART2 体と心の病に効く最強の治療法』長尾和宏
・『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
『ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング』田中宏暁
『「体幹」ウォーキング』金哲彦
『高岡英夫の歩き革命』、『高岡英夫のゆるウォーク 自然の力を呼び戻す』高岡英夫:小松美冬構成
『あらゆる不調が解決する 最高の歩き方』園原健弘
『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』みやすのんき
ナンバ歩きと古の歩術
『表の体育・裏の体育』甲野善紀
『「筋肉」よりも「骨」を使え!』甲野善紀、松村卓
『ナンバ走り 古武術の動きを実践する』矢野龍彦、金田伸夫、織田淳太郎
『ナンバの身体論 体が喜ぶ動きを探求する』矢野龍彦、金田伸夫、長谷川智、古谷一郎
『ナンバ式!元気生活 疲れを知らない生活術』矢野龍彦、長谷川智

 ・骨で歩く

『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二

身体革命

 ナンバ歩きのメリットは、以下のとおりです。

・長く歩いても疲れない
・腰や膝、かかとが痛くならない
・身体の調子がよくなる
・歩いているうちに気分が向上する
・集中力があっぷする
・うつ気味な気持ちが解消する
・やせる

(中略)ひと言でいい表せば、【現代ウォーキングは「筋肉を酷使(こくし)した“頑張り感”がある歩き方」で、ナンバ歩きは「骨を動かして全身を運動させ、無理なく使う歩き方」】だと言えます。

【『すごい!ナンバ歩き 歩くほど健康になる』矢野龍彦〈やの・たつひこ〉(河出書房新社、2016年)】

 具体的な歩き方はこうだ。

・上半身を捻らない。
・歩幅は狭く、摺り足気味。蹴らない。
・腕は肩に“ぶら下げる”。
・踵から着地しない。

 盆踊りの動きを取り入れた歩き方が一番実践しやすい。

 動画「ナンバ歩きと古の歩術」を参照せよ。

 以前からナンバには興味があり試行錯誤してきたのだが、さっぱりわからなかった。私の志向は伊藤式胴体トレーニング~初動負荷理論~スロージョギングを経て、再びウォーキングに回帰し、ナンバ~常歩(なみあし)に辿り着いた。

 本書を読んで、「あ!」と気づいた。ナンバの正体が見えた瞬間だ。私は腿(もも)に手を置くナンバ歩きを直ぐ実践した。膝と同じ側の肩を連動させるのだ。右膝を上げる時は右肩を同時に上げる。体は正面を向いたままだ。骨盤を振る必要はない。もう少しテクニカルなことを言うと、【骨盤と胸骨】の動きを一体化させるのだ。短い距離を歩いただけで腑に落ちた。

 私はかなり運動神経がいいので直ぐ理解できたが、これは一筋縄ではいかない。盆踊り式の手を動かすやり方が確実だ。それでもわからなければロボット歩きをしてみるといい。

 本書を通ってから常歩(なみあし)に至るのが正道である。

2021-07-22

運動によって脳は物理的に変えられる/『一流の頭脳』アンダース・ハンセン


『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏
『病気の9割は歩くだけで治る!PART2 体と心の病に効く最強の治療法』長尾和宏
『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史
『ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング』田中宏暁
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス
・『脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方』ジョン・J・レイティ、エリック・ヘイガーマン

 ・運動によって脳は物理的に変えられる

『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット
『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』ロバート・ムーア

必読書リスト その二

 だが何より大きな発見は、2つのグループがまったく異なる結果を示したことである。
 ウォーキングを1年間続けた被験者たちは健康になったばかりでなく、脳の働きも改善していた。MRIの画像は、脳葉の連携、とくに側頭葉と前頭葉、また側頭葉と後頭葉の連携が強化されたことを示していた。
 簡単にいえば、脳の各領域が互いにより協調しながら働いていたということだ。脳全体の働きが1年前より向上していたのである。身体を活発に動かしたこと、つまり【ウォーキングが、何らかの作用によって脳内の結合パターンによい影響を与えた】のだ。

【『一流の頭脳』アンダース・ハンセン:御舩由美子〈みふね・ゆみこ〉訳(サンマーク出版、2018年)】

 読みやすい上に一分の隙(すき)もない良書である。説明能力の高さそのものがスタイルを確立している。科学が絶対なのではなく、科学的解釈に説得力があるということがよくわかった。

 記憶力や認知機能に関しては筋トレよりも有酸素運動の方が効果があり、ウォーキングよりもランニングが優(まさ)るとのこと。要は「狩猟採集生活に還れ」ということだ。1万年前と同じ狩猟採集生活を送る東アフリカ・タンザニアのハッザ族は一日に8~10km(1万1000~1万4000歩)歩いている。これが一つの目安となろう。

 収穫はそれだけではなかった。おそらく、こちらのほうが重要である。
 それは定期的なウォーキングが、実生活にもプラスの効果をおよぼす脳の変化をもたらしたことだ。心理テストの結果、「実行制御」と呼ばれる認知機能(自発的に行動する、計画を立てる、注意力を制御するといった重要な機能)が、ウォーキングのグループにおいて向上していたことがわかったのである。
 要するに、【身体を活発に動かした人の脳は機能が向上し、加齢による悪影響が抑制され、むしろ脳が若返る】と判明したのだ。

 ここで一旦、これまで読んだことを振り返り、もう一度じっくり考えてほしい。
 ランニングで体力がつく、あるいはウェイトトレーニングで筋肉が増強できることは知っているはずだ。それと同じく、【運動によって脳は物理的に変えられる】。
 脳の変化は、現代の医療技術で測定することができるので、そのことは確認済みだ。脳を変えれば、認知機能を最大限まで高められることもわかっている。

 まずは買い物を狩猟と捉え直すことを提案したい。一日三食摂っている人であれば三度買い物に行ってはどうだろう? 休日であれば遠くのスーパーに出向くのもいいだろう。勤め人であれば一つ手前の駅やバス停で降りて歩くことを心掛ける。もちろんエスカレーターやエレベーターは利用せず階段を上る。それだけでどんな薬やサプリメントよりも効果がある。

 ではなぜ、そんな素晴らしいことが広まらないのだろうか? もちろんカネだ。製薬会社やメーカーは儲からないため手をつけない。そして驚くべきことに消費者側もまた対価を支払わないものに対して不信感を抱いている側面がある。つまりマネーという手段を経なければコミュニケーションが成立しなくなっているのだろう。消費者はカネを支払うことで満足感を得ているのだ。

 広く知られたプラセーボ効果に「高価な薬は100%効く」というのがある。偽薬であっても高いカネを支払えば、霊験(れいげん)あらたかな妙薬と化すのだ。金銭に対する我々の信頼は既に信仰の高みにまで至っている。

2021-07-03

多剤併用(ポリファーマシー)の危険性/『病気の9割は歩くだけで治る!PART2 体と心の病に効く最強の治療法』長尾和宏


『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏

 ・多剤併用(ポリファーマシー)の危険性

『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
『ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング』田中宏暁
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス
『一流の頭脳』アンダース・ハンセン
『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット
『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』ロバート・ムーア
『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
『「体幹」ウォーキング』金哲彦
『高岡英夫の歩き革命』、『高岡英夫のゆるウォーク 自然の力を呼び戻す』高岡英夫:小松美冬構成
『あらゆる不調が解決する 最高の歩き方』園原健弘
『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』みやすのんき
ナンバ歩きと古の歩術
『表の体育・裏の体育』甲野善紀
『ナンバ走り 古武術の動きを実践する』矢野龍彦、金田伸夫、織田淳太郎
『ナンバの身体論 体が喜ぶ動きを探求する』矢野龍彦、金田伸夫、長谷川智、古谷一郎
『ナンバ式!元気生活 疲れをしらない生活術』矢野龍彦、長谷川智
『すごい!ナンバ歩き 歩くほど健康になる』矢野龍彦
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午
『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史
『足裏を鍛えれば死ぬまで歩ける!』松尾タカシ、前田慶明監修

身体革命

●歩けば、抗酸化物質が増える
●歩けば、ホルモンバランスが変わる
●歩けば、寿命を左右する「テロメア」が伸びる
●歩けば、若さの源「テストステロン」が増える
●歩けば、腸内環境が良くなる

【『病気の9割は歩くだけで治る!PART2 体と心の病に効く最強の治療法』長尾和宏〈ながお・かずひろ〉(山と渓谷社、2018年)以下同】

 長尾和宏が信用できるのは医師でありながら、医療あるいは医療行政をきちんと批判しているからだ。これは中々できそうでできることではない。ある意味で自分の首を絞めているわけだから。自分で吐いた言葉が読者から今度は自分に突きつけられるのだ。「だったら、お前さんはどうなんだ?」と。

 批判の度合いはリスク許容度と相関性がある。左翼の場合は例外だが、普通の常識人であれば利害関係者から突き上げを食らうことは容易に想像できる。正義感に駆られて告発した者が殺されるケースもある(石井紘基など)。あるいは出過ぎた真似をすると村八分にされる慣行が日本にはある。

静岡県上野村村八分事件 - Wikipedia
「私のしたことは間違っていたのでしょうか」選挙違反を告発した女子高生と家族が味わった“重すぎる報酬” 日本一の非文化村「村八分事件」 | 小池新

 つまり本当の情報が100%公開されることはあり得ない。私が民主政を支持しない理由の一つである。ディスクロージャーを欠けば選択の基準を失う。長尾の批判は穏当であるが、穏当であるがゆえに説得力を持つのだ。

「人が老いるには、3つの理由がある」は間違い。というか古い考え方だ。更新された情報は、ジョシュ・ミッテルドルフ、ドリオン・セーガン著『若返るクラゲ 老いないネズミ 老化する人間』(集英社インターナショナル、2018年)を参照せよ。

 階段昇降はとてもおすすめです。生活の中で行うスクワットのようなもの。足腰の筋肉がかなり鍛えられます。さらに、スクワット以上に優れているのが、実は平衡感覚の練習にもなること。足腰だけでなく、脳も鍛えられるのです。

 私は近頃、同じ姿勢の反復を繰り返す筋トレについてはかなり疑問を抱いている。そもそも日常生活の中でそんな単純な動きは見られない。人の行為・行動はもっと全体的で流動性がある。ダイナミックストレッチ(動的ストレッチ)のように動きの中で反射を探るのが正しいと考える。

 階段や坂道が推奨されるようになったのは20年ほど前のこと。当時はスローピングという名称で持て囃(はや)された。私の中で初めてハイキングや登山が意識されたことをよく覚えている。

 そして、「50代、60代以降の特に女性に多い悩みの一つが、めまい」だという。更年期障害や自律神経失調症などの影響もあるのだろう。

 診察室で「歩く」という話が出ることはほとんどありません。何の話になるかといえば、結局のところ、薬です。

 しかし、薬を飲めば飲むほど病気になる。これは真実です。

 薬を5~6種類以上飲むことを「多剤併用(ポリファーマシー)」といいます。その怖さについては、高齢者の医学・医療を研究・実践する「日本老年医学会」も、「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」のなかで指摘しています。
 具体的には、薬が増えると、薬物間の相互作用によって薬が効きすぎたり、逆に効果が薄れたりすること。あるいは処方や調剤の間違い、飲み忘れ、飲み間違いが増えるということ。また、薬が5種類以上で転倒しやすくなり、6種類以上になると何らかの有害事象が起こりやすくなるということを指摘しています。(中略)
 ところが現実には、5~6種類以上の薬を服用している方はたくさんいます。10種類以上の薬を飲んでいる方もたくさんおられます。実際に、多剤併用から転倒・骨折して寝たきりになったり、入院して認知症がひどくなったり……ということは珍しくありません。

 精神疾患や認知症患者はザラに20錠以上の薬を日々服用している。薬は毒である。病気の人体に対して毒を以て毒を制するのが薬の目的だ。毒には必ず副作用がある。一番簡単な例を示そう。睡眠薬と覚醒剤を併用すればどうなるだろうか? 食べ合わせですら間違えると腹痛などを起こすのだ。医学はまだ体内の化学作用を解明するほど進化していない。

 医師の仕事は処方箋を書くことに堕してしまった。特に精神疾患が「脳の病」と喧伝されるようになってからは薬物治療がメインストリームに格上げされた。製薬会社と病院は強固な利権で溶接されてしまっている。

2021-06-28

道の本質はその機能にある/『トレイルズ 「道」を歩くことの哲学』ロバート・ムーア


『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏
『病気の9割は歩くだけで治る!PART2 体と心の病に効く最強の治療法』長尾和宏
『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス
『一流の頭脳』アンダース・ハンセン
『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット

 ・道の本質はその機能にある
 ・長距離ハイキング
 ・よいデザインはトレイルに似ている

『ランニング王国を生きる 文化人類学者がエチオピアで走りながら考えたこと』マイケル・クローリー
『動物たちのナビゲーションの謎を解く なぜ迷わずに道を見つけられるのか』デイビッド・バリー
『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
『「体幹」ウォーキング』金哲彦
『高岡英夫の歩き革命』、『高岡英夫のゆるウォーク 自然の力を呼び戻す』高岡英夫:小松美冬構成
『あらゆる不調が解決する 最高の歩き方』園原健弘
『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』みやすのんき
ナンバ歩きと古の歩術
『表の体育・裏の体育』甲野善紀
『ナンバ走り 古武術の動きを実践する』矢野龍彦、金田伸夫、織田淳太郎
『ナンバの身体論 体が喜ぶ動きを探求する』矢野龍彦、金田伸夫、長谷川智、古谷一郎
『ナンバ式!元気生活 疲れをしらない生活術』矢野龍彦、長谷川智
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午
『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史
・『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史

身体革命
必読書リスト その五

 アパラチアン・トレイルを歩ききったあとも、その疑問はついて回った。それらに駆りたてられ、また新しい知の地平に導いてくれるかもしれないという思いもあって、わたしは道の意味についてのさらなる探究を始めた。数年かけてその疑問を追いかけるうちに、さらに大きな疑問が浮かびあがってきた。そもそも動物はなぜ動くようになったのだろう? 生物はどのようにして世界を認識するようになったのだろう? なぜ先導する者とあとについていく者がいるのか? わたしたち人間はどのようにして、現在のように世界をつくりかえたのか? やがて、道が地球上で欠かせない行き先案内の役割を果たしていることがわかってきた。小さな細胞からゾウの群れまで、あらゆるサイズの生き物が、道をよりどころにして圧倒的な数の選択肢からすばやく一本のルートを選んでいる。もし道がなかったら、わたしたちは迷子になってしまうだろう。

【『トレイルズ 「道」を歩くことの哲学』ロバート・ムーア:岩崎晋也〈いわさき・しんや〉訳(エイアンドエフ、2018年)以下同】

 そっと胸に抱きたくなるような本である。歩くという行動が思弁に傾くことを抑えて、脳の深層を活性化させているのだろう。クリシュナムルティの名前の出し方も上手い。「真理は途(みち)なき大地である」(『クリシュナムルティ・目覚めの時代』メアリー・ルティエンス)。ゆえに我々は辿り着くことができない。クリシュナムルティは道すら示さなかった。

 どうやら、道が道であるためには土や岩が不可欠というわけではないらしい。道はむしろ空気のように実体がなく、永続せず、流動的なものだ。道の本質はその機能にある。そして、使い手の必要に応じて変化しつづける。人は開拓者を称えるものだ。彼らは屈強な精神を持ち、比喩的にも現実にも、未知の領域を切り拓いていく。だが、あとに続く者たちもまた道ををつくるうえでそれに劣らぬ重要な役割を果たしている。不要な曲がり角を削り、通るたびに道を改善する。道が、詩人ウェンデル・ベリーの言う「経験し、慣れ親しむことによって、動きが場所にぴったりと適合する」状況になるのは、これらの人々の行動のおかげだ。それまでのやり方がうまくいかなくなり、途方にくれたときには、視線を下げ、足元にある見落とされがちな知恵を思えばいい。

 これらのテキストが興味深いのは、まるで仏教の変遷を描写しているように見えるためだ。民族性や歴史性、はたまた気候や食料、そしてそれらが時間をかけて形成した文化がブッダの教えに変化を与えたことだろう。それをよしとしてしまえば教えはプラグマティズムに堕すると私は考える。

「道の本質はその機能にある」という言葉が「筏(いかだ)の譬え」を髣髴(ほうふつ)とさせる。ただし、悟りに至る「道」や「岸」が遠くにあると私は思わない。ゆえに手段(修行)に拘泥すると目的地を見失う。



長距離自然歩道 - Wikipedia
NATS 自然大好きクラブ |長距離自然歩道を歩こう!
NATS 自然大好きクラブ|長距離自然歩道を歩こう!|首都圏自然歩道
東海自然歩道連絡協会公式サイト

2021-06-16

何はさておき歩いてみよう/『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏


 ・何はさておき歩いてみよう

『病気の9割は歩くだけで治る!PART2 体と心の病に効く最強の治療法』長尾和宏
『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
『ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング』田中宏暁
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス
『一流の頭脳』アンダース・ハンセン
『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット
『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』ロバート・ムーア
『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
『「体幹」ウォーキング』金哲彦
『高岡英夫の歩き革命』、『高岡英夫のゆるウォーク 自然の力を呼び戻す』高岡英夫:小松美冬構成
『あらゆる不調が解決する 最高の歩き方』園原健弘
『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』みやすのんき
ナンバ歩きと古の歩術
『表の体育・裏の体育』甲野善紀
『ナンバ走り 古武術の動きを実践する』矢野龍彦、金田伸夫、織田淳太郎
『ナンバの身体論 体が喜ぶ動きを探求する』矢野龍彦、金田伸夫、長谷川智、古谷一郎
『ナンバ式!元気生活 疲れをしらない生活術』矢野龍彦、長谷川智
『すごい!ナンバ歩き 歩くほど健康になる』矢野龍彦
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午
『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史
『足裏を鍛えれば死ぬまで歩ける!』松尾タカシ、前田慶明監修

身体革命

【糖尿病人口は、950万人に。
 高血圧人口は、4000万人に。
 高脂血症人口は、2000万人に。
 認知症人口は460万人、予備軍も加えると900万人に。
 そして、毎年100万人が新たにがんにかかり、年間で37万人が、がんで命を落としている――。】

 毎年、毎年、そんなニュースが次から次へと耳に飛び込んできます。「こんなに病気が増えました。10年後にはもっと増えるでしょう。大変です」と、大騒ぎしています。しかし、その大半は、歩かなくなったことが原因だと思います。

【『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏〈ながお・かずひろ〉(山と渓谷社、2015年)】

 長尾和宏はもはやベストセラー作家といってよい。ウォーキング本の刊行順は以下の通りである。

・本書、2015年
・『認知症は歩くだけで良くなる 認知症予防と改善に最良の方法は「ながら歩き」! 』2016年
・『歩き方で人生が変わる。 幸せになる10の歩き方』2017年
・『病気の9割は歩くだけで治る!PART2 体と心の病に効く最強の治療法』2018年
・『歩くだけでウイルス感染に勝てる! 歩行で、新型コロナやインフルエンザを克服しよう!』2020年
・『「生活習慣病」は歩くだけで9割治る!+食生活編』2020年

 やや粗製乱造気味と思われるので、興味が湧くタイトルを選べばいいだろう。

 尚、上記書評リストは道標(みちしるべ)として網羅を試みた。ま、古本屋の心意気みたいなものだ。心密かに「俺って天才?」と思っていることは敢えて書かない。

 特に、80歳以上では、4人に1人が認知症といわれています。

 認知症とは「私が私でなくなる病気」である。娘の顔を見て「どちら様ですか?」と言う瞬間の衝撃は筆舌に尽くし難いものがある。それまでの関係性を見失い、断ち切る深刻な病だ。当人に自覚はないが「世界から切り離された状態」に追いやられる。自我の喪失は形を変えた死といってよい。

 まず、認知症を予防するには、認知症予備軍といわれる「軽度認知障害(MCI)」の段階で注目することが一つです。MCIというのは、そのまま何もしなければ5割の人が認知症に進むけれども、気をつければまだ後戻りできるという段階。この段階で気がつけば、自力で認知症を予防することができます。
 それは現実的に可能になってきているのです。何も症状のない段階から、MCIを早期発見する「MCIスクリーニング検査」が実際に可能になりました。
 これは、アルツハイマー病の原因である「アミロイドβ」が脳内にたまっていくときにかかわっている3種類のたんぱく質を調べることで、MCIのリスクをA~Dの4段階で評価するというもの。検査は採血のみで、2万~3万円程度で受けることができるそうです。

 これは知らなかった。親が70代になったら必ず受けさせよう。認知症は静かに緩慢な進行を続け、ある日突然表面化する。氷山の一角にたじろいでからでは遅い。時間をかけて進行する病気は治すのも時間を要する。歩くことで認知症から距離を置ける。否、いっそのこと認知症から逃げるつもりで歩いた方がいいだろう。

 うつの人は、歩けば治ります。【うつ病は、脳内の「セロトニン」や「ノルアドレナリン」というホルモンが不足した状態ですが、歩けばこれらが脳内で増えるからです。】だから、1日5分でいいので、とにかく歩いてほしい。

 科学的根拠は示していないが、臨床的な実体験から述べられた言葉である。善は急げである。とにかく歩け。

 もう一つ。朝日を浴びることもとても大事です。
 朝日を浴びることが大事な理由は二つあります。一つは、朝日を浴びると、体内時計がリセットされるということ。
 体内時計は24時間よりもちょっと長い周期で働いています。ところが1日は24時間周期なので、そのままにしていると少しずつ狂ってしまう。それをリセットしてくれるのが朝日を浴びることなのです。
 また、朝日を浴びると、夜間に「メラトニン」が分泌されるようになります。メラトニンとは、睡眠ホルモンと呼ばれるもの。メラトニンが脳の松果体から分泌され、夜になると脈拍、体温、血圧が下がって自然な眠りに入っていくのです。このメラトニンは、朝、光を浴びてから14~16時間後に分泌されるといわれています。

 本書を読んでから直ぐに実行している。生活の中で自然と接触することが大切だ。人工物は死んでいる。便利な乗り物や家電製品を使うことで我々は体力を失い、風雨にさらされることを拒んで五官の感覚が衰えてゆく。安全に馴染みすぎた体はブクブクと太り、背骨は曲がり、慢性的な肩凝りや腰痛に悩まされる。我々は楽な生活を選択することで自ら生活習慣病を招き寄せているのだ。

 私は50代になってから、ウォーキング~自転車~筋トレ~スロージョギングと進み、今再びウォーキングに回帰したところである。ゆくゆくは自転車で走った宮ヶ瀬湖や相模湖まで歩いてゆくつもりだ。

 最後に重要な指摘を。長尾和宏が書いている具体的な歩行法は無視せよ。これに関しては私の方がずっと詳しい。

2021-04-01

ナンバ歩きと古の歩術


『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏
『病気の9割は歩くだけで治る!PART2 体と心の病に効く最強の治療法』長尾和宏
『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
『高岡英夫の歩き革命』高岡英夫:小松美冬構成
『あらゆる不調が解決する 最高の歩き方』園原健弘
『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』みやすのんき

 ・ナンバ歩きと古の歩術

習志野青龍窟:不眠不休で100km歩く方法!忍者の修行を体験せよ!
『ナンバ走り 古武術の動きを実践する』矢野龍彦、金田伸夫、織田淳太郎
『ナンバ式!元気生活 疲れを知らない生活術』矢野龍彦、長谷川智
『すごい!ナンバ歩き 歩くほど健康になる』矢野龍彦
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午
『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史








「神足歩行術」にある江戸時代の走り方 | 江戸時代の走り方を求めて

2020-06-20

高齢者の必須科目/『足・ひざ・腰の痛みが劇的に消える足指のばし』湯浅慶朗


・『一生元気でいたければ足指を広げなさい』湯浅慶朗

 ・高齢者の必須科目

・『足腰が20歳若返る 足指のばし ゆびのば』今井 一彰
『足裏を鍛えれば死ぬまで歩ける!』松尾タカシ、前田慶明監修
『「筋肉」よりも「骨」を使え!』甲野善紀、松村卓
『本当に必要な「ゆるスクワット」と「かかと落とし」』中村幸男
『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』みやすのんき

身体革命

手を入れるときのポイント
足指の根本にすきまを作る
 手の指を足指の間に入れるときには、足指の根本まで押し込まないで、根本にすきまができるようにしてください。
 すきまができることによって、根本を前後に動かしやすくなります。
 足指の先が、手の指の間から出ない程度の握り方でけっこうです。

足指をつかむときのポイント
力を入れないで軽くつかむ
 足指は、軽くつかんでください。力を入れてはいけません。

伸ばすときのポイント
優しくゆっくり伸ばす
 足指をそらすときも曲げるときも、力はほとんど入れません。優しく、ゆっくりです。
 私が患者さんにして差し上げると、「えっ、こんなに軽くて効果が出るんですか?」と皆さんが拍子抜けするぐらいです。
 ストレッチの効果を高めたいと思うと、つい力を入れがちです。しかし、強くやると、かえって効果は出ません。
 人間の体は、強い力で刺激すると、無意識に見を守ろうとして、逆に筋肉が緊張します。場合によっては足を痛めたりします。
【そらして伸ばしたら、その状態をしばらく保持することが重要です。健康な人なら5秒、症状のある人は長めにするといいでしょう】。

【『足・ひざ・腰の痛みが劇的に消える足指のばし』湯浅慶朗〈ゆあさ・よしろう〉、監修今井一彰(マキノ出版、2014年)】

 健康のために一番効果があるのは筋トレである。次にヨガ、そしてウォーキング・ランニング・水泳・自転車で、最後がストレッチとなる。甲野善紀は筋トレを否定しているが彼が重視する骨は鍛えようがない。あるとすれば踵落としくらいなものだろう。加齢に逆らえるのは筋肉だけだ。

 ランニング・水泳・自転車は有酸素運動で心肺機能の強化に目的がある。ただし強い負荷は心臓にダメージを与える。マラソンランナーは短命だ。平均寿命が6年短いというデータがある。更に腎機能が低下することも判明している(マラソンブームに医師が警告!いま中高年を襲う「突然死」のリスク:週刊現代)。

 私は人間の健康は狩猟時代に鍵があると考えているが、それを超える負荷はかえって健康リスクになる可能性が高いと見ている。運動部やプロスポーツ選手が繰り返し行う練習やトレーニングは体の特定の部位を破壊するまで続けられる。健康とは中道だ。体が発する声に耳を傾ければ自ずと答えは出る。

 足は体を支える土台である。だが残念なことに多くの人々が【きちんと立てていない】という。自分でも驚いたのだが私は「かがみ指」だった。普段、ギョサンを履いているのが原因だろう。沖縄県民は島ぞうりというビーチサンダルを履く人が多いので、やはりかがみ指が顕著だという。



 少し考えれば理解できるが足指が床や地面を捉えていないと足の裏がバランスを取るため微妙に歪む。これがそのまま膝の角度を狂わせ、骨盤を歪めるわけだ。基礎が歪んだ建物を想えばよい。

 足指伸ばしは1日5分行えばよく、外反母趾やO脚も矯正できると書かれている。真っ直ぐに立つことができない状態で筋トレを行えば、基礎の歪んだ建物を高層化するようなことになりかねない。

 今井本を必読書に入れる予定だが、足指伸ばしに関しては上記3冊のどれを読んでも構わない。書かれていることは一緒だ。やり方は簡単だ。片方の足を曲げてもう片方の膝の上に置き、足と反対側の手の指を足指と組んで上下に動かすだけだ。やってみるとわかるが退屈なストレッチだ。私は瞑想のつもりで行っている。高齢者の必須科目であることは言うまでもない。

2020-05-09

サンセベリアの植え替え/『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード


『悲鳴をあげる身体』鷲田清一
『ことばが劈(ひら)かれるとき』竹内敏晴

 ・不自然な姿勢が健康を損なう
 ・サンセベリアの植え替え

サンセベリアの土を考える
『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏
『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史
『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット
『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
『クレイジー・ライク・アメリカ 心の病はいかに輸出されたか』イーサン・ウォッターズ
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス
『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』アランナ・コリン
『心を操る寄生生物 感情から文化・社会まで』キャスリン・マコーリフ
『土と内臓 微生物がつくる世界』デイビッド・モントゴメリー、アン・ビクレー
・『ナチュラル・ボーン・ヒーローズ 人類が失った“野生”のスキルをめぐる冒険』クリストファー・マクドゥーガル
『小麦は食べるな!』ウイリアム・デイビス
『シリコンバレー式自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー
『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二
『医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70』牧田善二

身体革命

観葉植物をとり入れる

 観葉植物は屋内の空気によい効果を与えることで知られる(私たちの心理にも測定可能な影響を与える)。植物は毒性のあるガス(とくにベンゼン、一酸化炭素、ホルムアルデヒド)を吸収し、私たちのためにリサイクルしてくれる。土壌中の細菌が出す蒸気はセロトニンレベルを上げる(セロトニンには数々の効果があり、何より気分をよくしてくれる)。研究によれば、病人は植物のある部屋のほうが早く快復するという。空気を加湿してくれる(風邪や喉の痛みを予防する)。
 もし羽根でできた埃とりをあまり好きでないなら、植物が空気中から埃をとり除いてくれるだろう。(中略)観葉植物をとり入れると、屋内の埃が最高で40パーセント減る。これはアレルギーのある人にはとくに朗報だ。(中略)これに加えて、植物は肺に病気のある人に悪影響をおよぼすカビの胞子を分解してくれる。
 1989年、アメリカ航空宇宙局(NASA)はアメリカ造園建設業協会(ALCA)の協力を得て、宇宙ステーション内の空気をいちばんよく清浄に保つ植物を探る実験をはじめた。リストに入った植物は、屋内空間(家庭やオフィス)の少なくとも9平方メートルをきれいにする能力を持つ。セイヨウキヅタ、スパティフィラム、カンノンチク、セイヨウタマシダ、ゴムノキ、オリヅルランなどの植物は、みな空気をきれいにするすばらしい能力を持つ。なかでもすぐれているのがサンセベリア・ローレンティで、あなたが観葉植物に慣れていればまず枯らすことはないし、夜間に酸素をつくってくれるという恩恵もある。(中略)
 観葉植物を家のなかに入れたら、あなたの居間は空気農場になる。

【『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード:水谷淳〈みずたに・じゅん〉、鍛原多惠子〈かじはら・たえこ〉訳(飛鳥新社、2018年)】

 この件(くだり)を読んでサンセベリア・ローレンティを買ったのが昨年の8月のこと。本当はゼラニカの方が好みなのだが中々売っているところがない。その後、インターネットでゼラニカを手に入れたのだが実は小振りなハーニーだった(個性的で魅力あふれるサンスベリア40種類と傷んだ場合の復活方法)。

 サンスベリアという表記も多いが正確にはサンセベリアのようだ。「もともとイタリアのサン・セヴェーロ侯という人名に由来しているのですから」(Yahoo!知恵袋)。折に触れて植え替え方法を調べた。計画は常に緻密であるべきだ。ま、心配性なんだよね。相手は生き物だから。

 満を持して5月を迎えた。新型コロナウイルスの影響で自粛続行の5月である。私は勇んで土を買いに行った。目星をつけたホームセンターは2ヶ所。少しばかり遠いが後悔をしないための選択だった。ホームセンターの正面にダイソーがあった。シャベルを買おうと入ったところ、な、な、なんと土が売っていた。しかも数種類だ。いやはや驚いた(【100均】ダイソーで土【園芸・ガーデニング】をたくさん見てきた!)。さすがの私も「100円ショップ+土」で検索したことはなかった。そのうち位牌や戒名まで売り出すかもね。

 念の為ホームセンターに足を運んだ。土の量を踏まえるとホームセンターに軍配が上がった。土って安いのね。しかも大きいほど安い。持ってきたメモには「観葉植物用+鹿沼土」or「赤玉+腐葉土+軽石もしくはパーライト」と書いてあった。観葉植物用14Lと鹿沼土14Lを買った。二つで850円だった。ただし丁度よい植木鉢が見当たらなかった。一旦帰宅して近所のホームセンターに行った。思わず「ウーン」と唸(うな)ってしまった。こちらの方が土の種類が豊富だった。灯台下暗し。植木鉢を二つ買った。家に戻ると植木鉢がかなりでかいことに気づいた。やはりスケール(メジャー)を持ち歩くべきである。

 鹿沼土(かぬまつち)は土を名乗っているが実は軽石だ。ま、カニカマみたいなものだ。鉢底石代わりになるかどうか調べたところダメだった。しかも酸性であることが判明した。再度ホームセンターへゆき、鉢底石(10L)と苦土石灰(くどせっかい/20kg)を買ってきた。苦土石灰とは凄いネーミングだ。『苦海浄土』を省略したような名前だ。穢土(えど)より酷い名前だわな。

 風が強かったので作業は風呂場で行った。ローレンティとハーニーの土が全然違った。しかもローレンティは根が伸びた形跡がなかった。面倒なんで両方の土を混ぜて、買ってきた土も適当に投入した。鉢が大きいので石を多めに入れた。「ひょっとして天才?」と言いたくなるほどピッタリの量だった。子株・カビはなし(サンスベリア(トラノオ)の育て方や植え替え方法、増やし方(葉挿し、株分け))。本当は丸一日乾燥させた方がいいようだが2時間ほど放置して我慢できなくなった。

 上手く育ってくれればいいのだが。私はためつすがめつして眺めた。土をいじると元気が出てくる。生命を育むことは何という喜びなのだろう。

 そして大量の土が残った。構わん。数年後にはサンセベリア屋になるつもりなのだから。



老人ホームに革命を起こす/『死すべき定め 死にゆく人に何ができるか』アトゥール・ガワンデ

2020-01-02

手段から目的への転換/『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット


『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏
『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』みやすのんき
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
『一流の頭脳』アンダース・ハンセン

 ・手段から目的への転換

『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』ロバート・ムーア
『ランニング王国を生きる 文化人類学者がエチオピアで走りながら考えたこと』マイケル・クローリー
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午
『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史

 歩くこと、そのはじまりを思い描こう。筋肉に力が漲ってゆく。一本の脚は、柱になって体を大地と空の間に浮かべている。もう一本の脚が、振り子のように背後から振り出されてくる。踵が大地を掴む。全体重が転がるようにつま先へ繰り出されてゆく。親指が後ろへ蹴り上げると、あやういバランスを保ちながら重心が移動してゆく。そして脚は互いに役割を交代する。一歩にはじまり、さらに一歩、そしてさらに一歩と、打楽器を叩きはじめるように積み重なってゆく歩行のリズム。歩行はたやすくわたしたちを誘い出す。宗教、哲学、風景への眼差し、都市の政治、人体の解剖学、アレゴリー、そして癒やしがたく傷ついた心の奥へ。世のなかにこれほどありふれていて、これほど謎めいたものがあるだろうか。
 歩行の歴史は書かれざる秘密の物語だ。書物に書き残された何げない断片の数々や、歌、街、そして誰もが胸に抱く冒険のうちにそれは潜んでいる。身体という点からみれば、歩行の歴史は二足歩行への進化と人体の解剖学の歴史だ。たいていの場合、歩行とは二つの地点を結ぶほとんど無意識的な移動手段でしかない。しかし思索や儀式や瞑想と重なることによって、歩くという行為には特殊な領域が形成されている。それは手紙を運ぶ郵便夫や列車に向かうオフィスワーカーの動作と生理学的には同じでも、哲学的には異なる。つまり、歩行という主題は、わたしたちがありふれた行為に賦与している特殊な意味を考えることともいえる。食事や呼吸がさまざまな意味を担っているように、歩行が担いうる文化的な意味には大きな幅がある。セックスから宗教、さらに革命から芸術まで。ゆえにその歴史は、想像力と文化の歴史の一隅を占める。さまざまな時代の多様な歩行者たちとその歩行は、いかなる歓びや自由や価値を追求するものだったのだろうか。

【『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット:東辻賢治郎〈とうつじ・けんじろう〉訳(左右社、2017年)】

 左右社〈さゆうしゃ〉という出版社を初めて知った。

 3年前から歩き始めた。それまでは仕事で階段を上ることが多かったのだがいつしか坐っている時間の方が長くなった。歩き方も自分なりに工夫したつもりであったが、やはり我流だと限界がある。10kmから20kmほどの距離は歩いたが疲労が濃かった。みやすのんきを読んで完全に蒙(もう)が啓(ひら)いた。

 一昨年から自転車に乗り始め、自転車EDの症状が出てからまたぞろ歩くようになった。元々私の場合は歩くことが目的と化していたのだが本書を読んでからは歓びに変わった。歩くことが単なる移動手段であれば、その遅さと疲労は忌むべきものとなろう。いつか歩けなくなる日が来るかもしれない。その時を思えば歩けることは「大いなる歓び」であろう。

 文章が思弁に傾きすぎて読み終えることができなかった。日本人の文化的なDNAは句歌や漢詩のような圧縮度の高さが好みであり、散文であればあっさりとした情感を志向する。西洋の言葉をこねくり回す思弁、形而上学、修辞法、合理性とは極めて相性が悪い。日本人は哲学者よりも詩人であろうとする。

 環境問題が叫ばれるようになってからナチュラリストなる言葉が持て囃(はや)されるようになったが、日本人は生まれながらにしてナチュラリストであり、無神論者ですらアニミズムに支配されている。日本のアニメーションが世界的に評価されているのもアニミズムというバックボーンがあるためだ。どちらもラテン語のアニマに由来する言葉だ。アニマは生気と訳す。

 そう考えると幽霊に足がないのも理解できよう。浮かばれない霊は淡い存在として漂っている。生者は足で大地を踏む。すなわち歩くことは生きることなのだ。

 クラシック音楽で歩く速度をアンダンテという。適度な運動としてのウォーキングは1分間に100歩といわれるが(日本生活習慣病予防協会)、心拍数を考慮すれば1分間に60~100のリズムが最も心地よく感じられるのではあるまいか。また、この速度を超えると五感の情報量が下がると考えてよい。