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2021-07-17

大航海時代の主役はスペイン、ポルトガル、オランダ/『お金の流れで探る現代権力史 「世界の今」が驚くほどよくわかる』大村大次郎


『お坊さんはなぜ領収書を出さないのか』大村大次郎 2012年
『税務署員だけのヒミツの節税術 あらゆる領収書は経費で落とせる【確定申告編】』大村大次郎 2012年
『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』大村大次郎 2015年
『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎 2015年
『お金の流れで読む日本の歴史 元国税調査官が古代~現代にガサ入れ』大村大次郎 2016年

 ・大航海時代の主役はスペイン、ポルトガル、オランダ

『お金で読み解く明治維新 薩摩、長州の倒幕資金のひみつ』大村大次郎 2018年
『ほんとうは恐ろしいお金(マネー)のしくみ 日本人はなぜお金持ちになれないのか』大村大次郎 2018年
『知ってはいけない 金持ち悪の法則』大村大次郎 2018年
・『日本人が知らない日本医療の真実』アキよしかわ
『脱税の世界史』大村大次郎 2019年

世界史の教科書
必読書リスト その二

 近現代の世界の権力を読み解くにあたって、最初に取り上げなくてはならないのは、やはりイギリスだろう。
 まず、「イギリスは、いち早く【産業革命】を成し遂げることによって世界の覇権を握った」――と思われがちだが、それは事実ではない。
 イギリスは産業革命以前にスペインの【無敵艦隊】を破り、スペインやポルトガルが世界中に持っていた植民地の大半を横取りした。そうして蓄積された資本によって、産業革命が成し遂げられたのである。
 では、イギリスはどうやってスペインをしのぐほどの強国になったのか?
 簡単に言えば、“国を挙げての海賊行為”である。
 イギリスは【大航海時代】に出遅れている。大航海時代の主役はスペイン、ポルトガル、オランダであり、イギリスは後進国だったのである。イギリスが海洋に乗り出したときには、すでにアフリカ大陸、アメリカ大陸の重要な地域は、スペイン、ポルトガルに占領されていた。
 そんな中、気を吐いていたのがイギリスの海賊たちだった。イギリスの海賊は統率の取れた船団、巧みな航海術によって、スペインやポルトガルの輸送船を襲い、財宝や貴重な産品を次々と強奪していたのだ。
 イギリス王室は、この海賊船団に目をつけ、王室が建造した船を与えて、国家事業としての海賊行為を始めた。その最たるものが、【海賊ドレイク】の航海である。  海賊ドレイクはマゼランに次いで世界一周を行い、スペインの無敵艦隊を破ったことで知られるイギリスの海軍提督である。もともとは普通の海賊だったが、【エリザベス女王】に見込まれて、国家プロジェクト的に海賊行為を行ったのである。その功績が認められてのちにイギリス海軍を任され、海軍提督にまでなったのだ。

【『お金の流れで探る現代権力史 「世界の今」が驚くほどよくわかる』大村大次郎〈おおむら・おおじろう〉(KADOKAWA、2016年)】

 厳密に言えばオランダは後発組で、八十年戦争を経てスパインからの独立を果たした。トルデシリャス条約はスペインとポルトガルで世界を二分することをローマ教皇が認めたものだ。後(おく)れを取ったイギリスとフランスが帝国主義を席巻するのだから歴史の有為転変を思わずにはいられない。

 国家が行う犯罪は正当化される。なぜなら国家を裁く機関がないゆえに。イギリス王室はともすると日本の皇室に続く伝統と見なされがちだが、海賊と手を組むようではお里が知れる。たぶん真のエンペラーは日本にしか存在しないのだろう。天皇陛下はつくづく不思議な存在であらせられる。

 第二次世界大戦以降、米ソが世界を牛耳り、46年後にソビエトが崩壊する。パックス・アメリカーナも100年は続くまい。アメリカの威光が翳りを帯び、中国が台頭してきた。世界は今静かに揺れている。チベットやウイグルに対する中国の暴虐に対して、主要国は断乎たる態度を取ることができなかった。最近になってようやくアメリカが重い腰を上げたところである。

 日本にとっては千載一遇の好機である。速やかに憲法を改正し、間もなく訪れるであろう中国戦に備えるべきだ。我が国としては一億玉砕をも辞さずの覚悟をもって戦争に臨み、日清戦争における臥薪嘗胆(がしんしょうたん)を晴らす秋(とき)である。この際、遼東半島と言わずに満州・チベット・ウイグルの独立にも手を貸すべきである。すなわち防衛や局地戦といった消極的な姿勢ではなく、一朝事ある時は万難を排して中国領土を奪取しなくてはならない。

 歴史を動かすのは強い意志である。専守防衛などという自国独善主義では世界を牽引することが不可能だ。欧米が没しつつある現在、日出る国が世界を照らすのは当然と考えるがどうか。

2021-04-28

既得権益の象徴「保育業界」/『知ってはいけない 金持ち悪の法則』大村大次郎


『お坊さんはなぜ領収書を出さないのか』大村大次郎 2012年
『税務署員だけのヒミツの節税術 あらゆる領収書は経費で落とせる【確定申告編】』大村大次郎 2012年
『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』大村大次郎 2015年
『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎 2015年
『お金の流れで読む日本の歴史 元国税調査官が古代~現代にガサ入れ』大村大次郎 2016年
『お金で読み解く明治維新 薩摩、長州の倒幕資金のひみつ』大村大次郎 2018年
『ほんとうは恐ろしいお金(マネー)のしくみ 日本人はなぜお金持ちになれないのか』大村大次郎 2018年
『愛国左派宣言』森口朗

 ・開業医丸儲け
 ・既得権益の象徴「保育業界」

・『日本人が知らない日本医療の真実』アキよしかわ
『脱税の世界史』大村大次郎 2019年

 業界団体による既得権益の保護と言えば、その最たるものが「保育所」である。

【『知ってはいけない 金持ち悪の法則』大村大次郎〈おおむら・おおじろう〉(悟空出版、2018年)以下同】

 はてな匿名ダイアリーに「保育園落ちた日本死ね!!!」がアップされたのは2016年2月15日だった。「日本死ね」という言葉が保守層の逆鱗(げきりん)に触れた。しかし、その感情は理解できる。幼子の前途に不安を感じた母親の怒りはむしろ当然であろう。その後、ハフィンポストが書き手にインタビューをしているが“予算の問題”として扱っている。

 公的な保育施設がなかなか増えないのは、実は保育業界が増やすのを拒んでいるからなのである。
 現在の保育園には、多額の補助金が支払われている。そして、保育業界にとっては、それが巨大な既得権益になっている。そのため、保育業界側が保育施設をむやみに増やそうとしたがらず、新規参入を拒んでいるのだ。つまり、それが待機児童問題がいつまでたっても解決しない、最大の要因なのである。

 守旧派は競争を嫌う。サービスの質を上げ価格を下げることが権益を損なうからだ。だったら私的な保育施設を増やせばいいのでは? と思うだろうがそうは問屋が卸(おろ)さない。

【民間の認可保育所(保育園)というのは、実は非常に儲かるビジネスなのである。】
 0歳児を一人与れば、毎月20万円以上の補助金がもらえる。規定では保育士は0歳児3人につき一人つけておけばいいことになっている。そして、保育士の給料は20~30万円だ。ということは、0歳児が3人いれば、補助金から保育士の給料を差し引いても30~40万円の収入になる。
 これにプラスして、保護者から徴収する保育料がある。保育料は、地域や保護者の所得によって異なるが、児童一人あたり2万円程度はもらえることになる。ということは、児童を30~40人も抱えていれば、毎月数百万円の収入になるのだ。
 しかも、認可保育所には固定資産税や法人税がかからない。だから、固定費も非常に安く済む。認可保育所をつくるためには土地と建物が必要なので、初期投資を行わねばならないが、それが済めば、後はかなりの収益を見込める。
 そして、もし土地と金とコネを持っているなら、これほどおいしいビジネスは滅多にないというわけだ。
 民間の保育所の経営者というのは、地主であったり、寺社であったりなど、その地域の有力者である場合が多い。彼らが自分の広い土地に保育所をつくり、税金もほとんど払わず、補助金をガッポリもらって潤い続けてきたのである。

 たまげた。わざわざ0歳児一人に20万円の補助金を出すなら、親に直接20万円与えた方が手っ取り早いだろう。数時間のベビーシッターなら十分賄(まかな)える。むしろ高齢者などの雇用促進につながるので経済的な波及効果は決して小さくない。

 驚くべきことに厚生労働省が主導して参入障壁を設けていた。

 しかも保育所は、その設置数が自治体によって調整されている。児童不足で保育所が経営難に陥らないように、自治体のほうが気を配っているのだ。
 これは、厚生労働省からの指示によるものである。
 信じがたいことに、厚生労働省は自治体に対して「需要以上に保育所をつくらないように」という通知を出しているのだ。
「児童が不足して保育所が潰れるのはまずい」
 そして、そのためには
「保育所が不足して待機児童が増えるのは構わない」
 ということなのである。
 しかも、この通知は非公開でも何でもなく、誰もが知ることができる。平成12年(2000年)に厚生労働省から全国の自治体に発せられた「保育所の設置認可について」という通知である。

 官業の完全な癒着構造がくっきりと見える。子供は日本の未来そのものだ。その子供たちを犠牲にしながら利権に与(あずか)っている保育業界は日本の将来を破壊するブラック企業といってよい。

「保育園落ちた日本死ね」から5年経っても、待機児童問題が解決しないワケ 保育所はビジネスとして儲からない

 瀬地山角〈せちやま・かく〉という東京大学教授がまるで見当違いな指摘をしている。東京大学の保育所経営に関わっている人物ですらこの程度の認識なのだ。

 高橋洋一や原英史〈はら・えいじ〉であればこうした事実を知っていることだろう。だが彼らですら、ここまで踏み込んだ発言はしていないと思われる。規制緩和・制度改革が遅々として進まないのは、牢固とした権益が存在する証拠だろう。若い母親を苦しめる厚生労働省は焼き討ちにすべきである。

2021-04-27

開業医丸儲け/『知ってはいけない 金持ち悪の法則』大村大次郎


『お坊さんはなぜ領収書を出さないのか』大村大次郎 2012年
『税務署員だけのヒミツの節税術 あらゆる領収書は経費で落とせる【確定申告編】』大村大次郎 2012年
『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』大村大次郎 2015年
『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎 2015年
『お金の流れで読む日本の歴史 元国税調査官が古代~現代にガサ入れ』大村大次郎 2016年
『お金で読み解く明治維新 薩摩、長州の倒幕資金のひみつ』大村大次郎 2018年
『ほんとうは恐ろしいお金(マネー)のしくみ 日本人はなぜお金持ちになれないのか』大村大次郎 2018年
『愛国左派宣言』森口朗

 ・開業医丸儲け
 ・既得権益の象徴「保育業界」

・『日本人が知らない日本医療の真実』アキよしかわ
『脱税の世界史』大村大次郎 2019年

 しかし残念ながら、あなたはけっして金持ちにはなれない。
 というのも、あなたには金持ちになるための決定的な要素がないからだ。
 それは「悪」である。
 誤解を恐れずに言うと、金持ちの99%は、何らかの「悪事」を働いている。それは、少しばかり「性格が悪い」というようなライトな話ではない。その実情を知れば、誰しもが激しい嫌悪感を抱くような、かなり「本格的な悪」である。

【『知ってはいけない 金持ち悪の法則』大村大次郎〈おおむら・おおじろう〉(悟空出版、2018年)以下同】

「人間らしさは何か?」と問われれば善性や思いやり、親切と答える人が多い。確かに高等知能の特徴ではあるが実は違う(『あなたのなかのサル 霊長類学者が明かす「人間らしさ」の起源』フランス・ドゥ・ヴァール)。知能という点で考えると「相手を騙(だま)す」ところに真の人間らしさがある。騙すためには相手の信念を理解する必要がある。つまり優れた共感能力を駆使して相手を不幸に陥れるところに騙す行為の本質があるのだ。

 悪の臭いを放つ金持ちと聞いて真っ先に思い浮かぶのが政治家と教祖だ。庶民が想像する金持ちは贅沢な暮らしといったレベルであるが、彼らは多くの人々や組織を自由に動かす。他人の人生を翻弄するほどの権力を有している。目には映らないその影響力を決して軽んずるべきではないだろう。敗戦後の日本が精神的な堕落を止めることができなかった理由もここらあたりにあるのだろう。富裕層は増えたがそこに国士はいなかったのだ。

 開業医がどのくらい金持ちなのかは、厚生労働省のデータでもわかる。厚生労働省の「医療経済実態調査」では、開業医や勤務医の年収は、近年、おおむね次のようになっている。

開業医(民間病院の院長を含む)  約3000万円
国立病院の院長  約2000万円
勤務医  約1500万円

 このように、開業医というのは、勤務医の約2倍の年収がある。(中略)
 なぜ、日本の開業医はこんな金持ちになれるのか、不思議に思われる方も多いはずだ。地域の診療所のようなところでは、いかにも閑散として患者などそうたくさんいそうもないところが多々ある。なのに、なぜ開業医はそんなに儲かっているのか?
 実は、この開業医という職業には巨大な利権が存在するのだ。
 開業医には、収入面や税制面でさまざまな優遇制度が設けられており、それこそが彼らが金持ちになっている最大の要因なのである。

 開業医が持っている利権のひとつが、診療報酬優遇制度である。
 信じられないことに、同じ診療報酬でも、公立病院などの報酬と私立病院(開業医)の報酬とでは額が違うのである。たとえば、再診料は普通は570円なのだが、開業医は720円となっている。他にも、開業医は「高血圧や糖尿病の管理をすれば報酬を得られる」などの特権が与えられている。
「メタボリック」という言葉が大々的に流布されて久しい。これも、開業医の収入を増やすための仕掛けだと言われている。
 現在、メタボリック予防に対応して「特定疾患療養管理料」という診療報酬点数の項目がある。これは、高血圧、糖尿病、がん、脳卒中など幅広い病気に関して、「療養管理」という名目で治療費を請求できるというものだ。
 大病院には、この「特定疾患療養管理料」を請求することは認められておらず、開業医だけに認められているのだ。
 簡単に言えば、大病院と開業医でまったく同じ治療をしても、開業医だけが「特定疾患療養管理料」という名目で、治療費を上乗せ請求できるというこである。つまり、【同じ治療を行っても開業医のほうが、たくさん医療費を請求できるのだ。】

 日本医師会や東京医師会は開業医の団体である。コロナ騒動で偉そうなことをぶち上げているが、彼らはコロナ患者を診(み)ていない。新型コロナの死亡者数も陽性者数(※PCR検査の陽性=感染者ではないことに注意)も断トツで少ない日本の医療崩壊が叫ばれるのは、開業医がコロナ患者を診療しないためだ。

 それにしても勤務医と開業医の年収が2倍もあるとは驚愕の事実である。

 また、開業医は、税金に関しても非常に優遇されている。
 社会保険診療報酬の72%を経費として認められているのだ(社会保険診療報酬が2500万円以下の場合)。
 簡単に言えば、「開業医には収入のうち28%にだけ課税をしましょう、収入の72%には税金をかけませんよ」ということである。
 本来、事業者というのは(開業医も事業者に含まれる)、事業で得た収入から経費を差し引き、その残額に課税される。
 しかし開業医は、収入から無条件で72%の経費を差し引くことができるのだ。実際の経費がいくらであろうと、である。
 開業医の税制優遇制度の内容は、右の表の通りである。

 例えば、社会保険収入が5000万円だった場合、経費は次のような計算になる。

5000万円×57%+490万円=3340万円

 この3340万円が自動的に経費として計上できるのだ。これは、実に収入の約67%にもなる。つまり、【実際には経費がいくらかかろうと、この医者は収入の67%を経費に計上できるのだ。】
 医者というのは、技術職であり、物品販売業ではない。
 材料を仕入れたりすることはほとんどないので、仕入れ経費などはかからない。だから、基本的にあまり経費がかからないのである。
 普通に計算すれば、経費はせいぜい30~40%くらいだろう。にもかからず、67%もの経費を計上できるのだ。税額にして、500万円~900万円くらいの割引になっていると言える。
 開業医が儲かるはずである。
 この制度は世間の批判を受け、縮小はされたが、廃止されることなく現在も残っている。前記の税制は、縮小された後のものである。つまり、以前はもっと税制的に優遇されていたのだ。

「つまり、開業医の実質年収は6000万円程度だと推測されるのだ」。しかもこの「3340万円」に税はかからない。異様な仕組みといってよい。政治家と官僚が医者に与えた権益なのだろう。日本医師会の会員数が16万6883人(平成21年12月)である。開業医の数を15万人とすると、その年収合計額は9兆円にもなる。あまりの額の大きさに目まいがする。

 税務知識のある者が大村の批判をしていることは承知している。ただ私にはそれを検証するほどの知識がない。一方、批判者たちは大村以上に有益な情報を社会に提供しているのだろうか? 別に著作である必要はない。ブログやホームページでも十分発信は可能だ。ケチをつけるのは簡単なことだ。大村の意欲的な著作活動を見れば、多少の過ちがあったとしても彼は修正しながら更なる飛躍を目指すことだろう。

 もう一つは大村以外で、こうした税制上の不平等を指摘する元官僚や元税務調査感を私は知らない。この一点だけでもアンタッチャブルな分野に斬り込んでいることが窺える。あまりにも大きな不正は大きすぎて人の目に映らない。

 日本医師会は自民党の有力な支持団体である。一方で共産党を支持する医師も多い。つまり自民党も共産党も手をつけることができないわけだ。まるでロスチャイルド家を思わせる狡猾さである。


https://twitter.com/oishiku_naare/status/1385632343096840195

2021-02-03

信用創造の正体は借金/『ほんとうは恐ろしいお金(マネー)のしくみ 日本人はなぜお金持ちになれないのか』大村大次郎


『緑雨警語』斎藤緑雨
『小室直樹の資本主義原論』小室直樹
『洗脳支配 日本人に富を貢がせるマインドコントロールのすべて』苫米地英人

 ・マネーと国家が現代の宗教
 ・信用創造の正体は借金

『ギャンブルトレーダー ポーカーで分かる相場と金融の心理学』アーロン・ブラウン
『エンデの遺言 「根源からお金を問うこと」』河邑厚徳、グループ現代
『〈借金人間〉製造工場 “負債"の政治経済学』マウリツィオ・ラッツァラート
『知ってはいけない 金持ち悪の法則』大村大次郎

 あなたは、お金というものが、どうやって発行され、どうやって社会に流れてくるのかご存知だろうか?
「お金は中央銀行が発行し、市中に流している」
 多くの人は、そう答えるだろう。
 では、中央銀行が発行したお金は、どういうルートで社会に流れ出てくるのだろうか?
 これは経済学を学んだ人でもなかなか答えられないケースが多い。
 実は、答えは「借金」である。誰か(主に企業)が、銀行からお金を借りることによって、お金は社会に出回るのだ。
 中央銀行からお金が社会に出てくるには、次のようなルートをたどる。

【中央銀行(日本の場合は日銀)】
  貸出
  ▼
【金融市場(一般の銀行など)】
  貸出
  ▼
【企業など】
  取引、給料などで支払い
  ▼
【個人】

 このように、お金というのは、必ず社会の誰か(主に企業)が銀行からお金を借りることで、社会に流れ出てくるのである。
 そして驚くべきことに、お金が社会に出るためのルートは、これ一本しかないのだ。
 日本銀行は紙幣を印刷しているが、それを日本銀行が自由に使うことはできない。政府もまた、日銀が発行した紙幣を勝手に使うことはできない。
 日銀が発行した紙幣は、貸出という形で一般の銀行に放出される。そして、一般の銀行も、貸出という形で企業などに流すのである。
 そのお金が、回り回って我々のところに来ているのだ。

 社会で使われているどんなお金も、元をたどれば誰かの借金なのである。あなたが会社からもらっている給料、事業で稼いだお金なども、もともとは必ず誰かの借金として社会に出てきたのだ。
 貿易などで得た外貨を円に交換するときも、新しいお金が出てくることになるが、その外貨は外国において誰かの借金により社会に流れ出たものなので、煎じ詰めれば、これも「誰かの借金」ということになる。
 あなたは誰かに借金をした覚えはないかもしれない。が、あなたが手にしたお金は、必ず、元をたどれば誰かの借金だったのだ。
 つまり、世の中に出回っているお金というのは、実は、すべてが借金なのである。
 また借金とは、いずれ返さなくてはならないものである。
 つまり、今、社会に出回っているお金すべてが「借金」である限り、いずれ銀行に回収されるべきものなのである。社会が保有し続けることはできないお金なのだ。
 しかし、社会には、お金を保有し続けたいという欲求も当然働くし、もう借金はしたくない(しない)という欲求も働く。その欲求が強くなると、社会のお金の仕組みは、たちまち機能不全に陥ってしまうのだ。
 このように今のお金の仕組みは、重大な矛盾、欠陥を抱えているのだ。そして、このお金の欠陥が、環境破壊、貧富の格差など世界中のあらゆる問題の1つの要因になっているのだ。

【『ほんとうは恐ろしいお金(マネー)のしくみ 日本人はなぜお金持ちになれないのか』大村大次郎〈おおむら・おおじろう(ビジネス社、2018年)〉】

 信用創造の正体は借金であった(信用創造のカラクリ/『ギャンブルトレーダー ポーカーで分かる相場と金融の心理学』アーロン・ブラウン)。目から鱗が落ちる。

 プールの水にお金という黒い液体を注ぐと仮定しよう。黒い液体は経済活動によって移動をしてくっきりとした濃淡を描くが、その総量は変わらない。時折、資金繰りに行き詰まって倒産する企業も出てくる。しかし黒い液体は別の場所に移動しただけで、返済できない借金がどこかに消えたわけではない。必ず誰の財布に存在するのである。徴税の網に掛からないブラックマネーもプールの中(円経済圏)から出ることはない。減るとすれば焼却した紙幣だけだが現実には考えにくい。火災被害で消失する紙幣の量は微々たるものだろう。

 企業は借金をして人や物に投資をし、付加価値を創造することで利益を得る。GDP(国内総生産)とは付加価値の総額を意味する。これを国民所得の合計と考えてもよかろう。その所得が実は借金であったとすれば、政府や企業が借金を増やすことが経済的な意味合いでの正しさとなる。

 通貨は交換手段に過ぎない。人類の歴史では通貨なき時代の方がはるかに長かった。富(余剰)が生まれたのは農業革命以降のことである。動物が必要とするのは今日の食べ物に限られる。時折貯める行為も見られるが、せいぜい一冬に備える程度である。しかも地球の自然は動物の食料を十分に供給している。

 世界人口が10億人を突破したのは1800年代のことで、第二次世界大戦以降は上昇の一途を辿る(表1-8 世界人口の推移と推計:紀元前~2050年)。この点からも19世紀を近代と考えてよかろう。陰謀論で一番多いのは人口削減計画である。最大の環境問題は増え続ける人口だ。もしも世界権力をほしいままにする者がいれば真っ先に人口を減らすことを考えるだろう。

マネーと国家が現代の宗教/『ほんとうは恐ろしいお金(マネー)のしくみ 日本人はなぜお金持ちになれないのか』大村大次郎


『お坊さんはなぜ領収書を出さないのか』大村大次郎 2012年
『税務署員だけのヒミツの節税術 あらゆる領収書は経費で落とせる【確定申告編】』大村大次郎 2012年
『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』大村大次郎 2015年
『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎 2015年
『お金の流れで読む日本の歴史 元国税調査官が古代~現代にガサ入れ』大村大次郎 2016年
『お金の流れで探る現代権力史 「世界の今」が驚くほどよくわかる』大村大次郎
『お金で読み解く明治維新 薩摩、長州の倒幕資金のひみつ』大村大次郎 2018年

 ・マネーと国家が現代の宗教
 ・信用創造の正体は借金

『知ってはいけない 金持ち悪の法則』大村大次郎
『脱税の世界史』大村大次郎 2019年

 信じられないかもしれないが、今のお金の仕組みの原型は、17世紀のヨーロッパの商人が気まぐれで始めた悪徳商売にあるのだ。その悪徳商売の発展により、なし崩し的に現在の紙幣ができあがり、世界各国が「これを通貨としましょうか」ということに、「なんとなく決めてしまった」のである。
 つまり、お金の仕組みは非常に無計画で、いい加減につくられたものなのだ。
 現在は、金融工学や経済理論が非常に発達していると言われている。
 しかし、高度に発達したはずの金融工学や経済理論も、実は、17世紀の商人の悪知恵によってつくられたお金の仕組みを前提としているのである。
 はっきり言えば、中身はとてもチャチで不完全なものだ。

 また、現在のお金は、以前(半世紀前)のような、「貴金属との兌換」もされていない。
 貴金属との交換が約束されているわけでもなく、綿密に計算されてつくららたわけでもないお金を、我々は日々血みどろになって追いかけているのだ。

【『ほんとうは恐ろしいお金(マネー)のしくみ 日本人はなぜお金持ちになれないのか』大村大次郎〈おおむら・おおじろう〉(ビジネス社、2018年)】

「17世紀のヨーロッパの商人」とは両替商を行っていたユダヤ人を指す。ヨーロッパでは伝統的にユダヤ人が排斥・弾圧されてきた。就ける職業も限られた。彼らの才能が芸術や金融で花開いたのは、そうせざるを得なかった歴史的な経緯による。

 動画を二つ紹介しよう。




 最初の動画は「Money As Debt」(負債としてのお金)の一部である。

 世界最初の紙幣は北宋の「交子」だが、たぶん信用創造には至らなかったのだろう。ユダヤ人の悪知恵は「信用」に目をつけた。その着眼の鋭さが近代の扉を開いたとも言い得る。

 紙幣こそは現代のマンダラであり、硬貨は十字架である。通貨の信用は約束事に過ぎないが、現代社会でお金の価値を疑う者はいない。すなわちマネーとそれを保証する国家こそが現代の宗教なのだ。自殺の大半が経済的困窮によるものだ。我々はお金がないと生きてゆくことができない――そう信じ込んでしまっているところに、この宗教の絶対性がある。

2021-01-08

徳川幕府の経済力/『お金で読み解く明治維新 薩摩、長州の倒幕資金のひみつ』大村大次郎


『お坊さんはなぜ領収書を出さないのか』大村大次郎 2012年
『税務署員だけのヒミツの節税術 あらゆる領収書は経費で落とせる【確定申告編】』大村大次郎 2012年
『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』大村大次郎 2015年
『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎 2015年
『お金の流れで読む日本の歴史 元国税調査官が古代~現代にガサ入れ』大村大次郎 2016年
『お金の流れで探る現代権力史 「世界の今」が驚くほどよくわかる』大村大次郎

 ・徳川幕府の経済力

『ほんとうは恐ろしいお金(マネー)のしくみ 日本人はなぜお金持ちになれないのか』大村大次郎 2018年
『知ってはいけない 金持ち悪の法則』大村大次郎
『脱税の世界史』大村大次郎 2019年

日本の近代史を学ぶ

 薩摩藩と長州藩は、関ヶ原で敵についた外様大名として、江戸時代を通じて幕府からいじめ抜かれた。江戸から遠く離れているため参勤交代で莫大な費用が掛かる上、たびたび幕府から「天下普請」(てんかぶしん)と言われる幕府関係の城の整備や治水事業などを押し付けられた。両藩とも一時期は、財政破綻(はたん)寸前にまで追い詰められた。
 が、この過酷な環境は、逆に早期の財政再建のきっかけになり、両藩は諸藩に先駆けて、産業振興にいそしみ米穀経済から脱することになった。

【『お金で読み解く明治維新 薩摩、長州の倒幕資金のひみつ』大村大次郎〈おおむら・おおじろう〉(ビジネス社、2018年)】

 関ヶ原の戦い(1600年)から戊辰戦争(1868年:明治元年~1869年)までは250年以上を経ている。恨みというものはつくづく恐ろしい。戦争や虐殺の傷は歴史に長く留(とど)まる。民族の相違を簡単に乗り越えることが難しいのも歴史的理由によるものなのだろう。

 米穀経済とは米本位性である。商品の流通が活発になれば自ずと貨幣経済にシフトする。

 江戸時代というのは、徳川幕府が経済的には優位になるシステムになっていた。
 あまり顧みられることはないが、実は江戸徳川幕府というのは、日本の歴代の武家政権の中では、【断トツで大きい経済力】を持っていた。
 江戸幕府は、約400万石の直轄領を有していた。親藩(徳川家一門)の領地を含めると800万石近くもあり、当時の日本の領土の25%に達していた。
 これは封建制度としては、かなり広い領地だといえる。
 鎌倉幕府は関東の数か国から十数か国を有していたにすぎず、せいぜい200~300万石である。室町幕府はそれよりさらに少なかったと見られている。そして豊臣政権にいたっては、家臣だった徳川家康よりも直轄領は小さかったのだ。豊臣政権は、全国の主な鉱山や港湾を支配下に置いていたため、総合的な経済力では徳川家康を上回っていたが、それでも、家康に対して圧倒的な差があったわけではない。
 このように武家政権の中では、江戸幕府がとびぬけて直轄領が広いのである。直轄領が広いということは、兵動員力の大きさにもつながる。つまりは軍事力が大きいということである。

 封建制度と聞くと前時代的なニュアンスで受け止める人が多いだろうが実は違う。近代化の前段階として欠くべからざる制度なのだ。世界でも封建社会が成立したのは西欧と日本だけだ(『自然観と科学思想』倉前盛通)。

 部族社会→封建制度→近代国家の流れは、経済および軍事のシステム化が進行した歴史である。戦後の日本が歪(いびつ)な形をしているのは軍事をなげうって経済一辺倒で発展してきたためだ。吉田茂の深慮遠謀(『重要事件で振り返る戦後日本史 日本を揺るがしたあの事件の真相』佐々淳行)は理解できるが、高度経済成長の豊かさを享受する中で独立の機運は一向に訪れなかった。政治家と国民の目を覚まさせるべく立ち上がったのが三島由紀夫であったが、命懸けのメッセージも嘲笑されただけで終わった。

 近代戦争は兵器を必要とする。その兵器を買う経済力が国家の威信を決めるといっても過言ではない。たった一度の戦争に敗れただけでこの国は国民の生命と財産を守ることもあきらめた。北朝鮮による拉致被害、東日本大震災における政治の迷走、二転三転する新型コロナ対策などを見れば一目瞭然だ。日本は国家の体(てい)をなしていない。

2020-12-14

日本に革命が起こらなかったのは税制がうまく行っていたから/『お金の流れで読む日本の歴史 元国税調査官が古代~現代にガサ入れ』大村大次郎


『お坊さんはなぜ領収書を出さないのか』大村大次郎 2012年
『税務署員だけのヒミツの節税術 あらゆる領収書は経費で落とせる【確定申告編】』大村大次郎 2012年
『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』大村大次郎 2015年
『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎 2015年

 ・日本に革命が起こらなかったのは税制がうまく行っていたから

『お金の流れで探る現代権力史 「世界の今」が驚くほどよくわかる』大村大次郎
『お金で読み解く明治維新 薩摩、長州の倒幕資金のひみつ』大村大次郎
『ほんとうは恐ろしいお金(マネー)のしくみ 日本人はなぜお金持ちになれないのか』大村大次郎
『知ってはいけない 金持ち悪の法則』大村大次郎
『脱税の世界史』大村大次郎 2019年

日本の近代史を学ぶ

 我々が中学や高校で教えられてきた日本の歴史、それも古代史には、「重税による圧政に民は苦しんでいた」という記述が多い。日本の為政者たちがずっと国民を苦しめてきたようにも思えてしまう。
 しかし、「お金の流れ」を丁寧に読むと、実はそれが大きな間違いだったということができる。
 そもそも、「税」というのは、それほど簡単に徴収できるものではない。これは私のように「税」に携わったことのある者ならば、誰でも知っていることである。
 いくら国家権力を駆使したところで、重税をかければ、民衆は必ず反抗する。そして、民衆の反抗が強くなれば、国家は運営できなくなる。
【日本は歴史上、民衆からの突き上げで革命が起きたことは一度もない】。ということは、民衆がそこまで強い不満を持ったことはない、つまりは、いつの時代でも税制はそれなりによくできたものと思われる。それは、古代日本の税制についても言えることだ。

【『お金の流れで読む日本の歴史 元国税調査官が古代~現代にガサ入れ』大村大次郎〈おおむら・おおじろう〉(KADOKAWA、2016年/中経の文庫、2017年)】

 古代は部族社会であるため現代よりも「顔の見える社会システム」である。それだけに不正もよく見えるため、叛乱や暴動は現代人が想像する以上に迅速かつ頻繁な出来事であったに違いない。

 源泉徴収制度は実に悪しき仕組みで税務署の仕事を会社にやらせた上で、サラリーマンから納税意識を失わせる効用がある。第二次世界大戦中のナチスドイツが導入し、それに続いたのが我が日本である(1940年/昭和15年)。

 国民と国家の契約関係は、国民が税と兵役に応じることで国家が国民の生命と財産を守る関係となる。日本の民主政が成熟しないのは源泉徴収制度によって国民が税意識を持たないためだ。「税金は国家と国民の最大のコミュニケーション」と小室直樹が指摘した理由もここにある(『消費税は民意を問うべし 自主課税なき処にデモクラシーなし』小室直樹)。

「日本に革命が起こらなかったのは税制がうまく行っていたから」というのは卓見だと思うが落とし穴もある。相関関係と因果関係は異なる。例えば欧米の奴隷やロシアの農奴、インドのカーストをどう考えるべきか? プーラン・デヴィナット・ターナーは酷税のために立ち上がったわけではない。シベリア抑留の場合はどうだろう? 圧倒的な暴力の前で人間はあまりにも無力である。革命を起こすためには一定程度の自由が前提となるような気がする。

 

2020-10-23

国家は税と共にある/『脱税の世界史』大村大次郎


『反穀物の人類史 国家誕生のディープヒストリー』ジェームズ・C・スコット
『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』大村大次郎

 ・国家は税と共にある

・『対論「所得税一律革命」 領収書も、税務署も、脱税もなくなる』加藤寛、渡部昇一
・『近代の呪い』渡辺京二

大村大次郎

 歴史上、「税金のない国」というのは、存在したためしがありません。(中略)
 初期の古代ローマはローマ市民から「直接の税金」はほとんど取っていませんでした。しかし関税を徴収したり、占領地から税を徴収していました。
 歴史上、国家の体(てい)をなす存在において、税金が課されなかったことは一度もないといえるのです。
 一国の政府(政権)の存在というのは、煎じ詰めれば、「いかに税金を徴収し、いかに使うか」ということになると思われます。
 役人を使って国家システムを整えるにも、インフラ整備をするにも、他国からの侵略を防ぐにも、税金が必要になります。だから、税金がないと国家というものは成り立ちません。
 王権国家であろうと、民主政国家であろうと、共産主義国家であろうと、宗教国家であろうと、それは同じです。

【『脱税の世界史』大村大次郎〈おおむら・おおじろう〉(宝島社、2019年)】

 後半の失速が惜しまれる。好著を切り捨てることで「必読書リスト」の厳選が担保されるというジレンマに苦しむ。ジェームズ・C・スコットの後で読んだだけにインパクトは大きかった。大村の著作は宗教に関する物以外は全部お勧めできる。

 哺乳類の群れは暴力と分配を軸に形成される。高度な知能はやがて技術や協力に至るが暴力と分配という軸は動かない。ともすると知能は「人間らしさ」とのフィルターを通して美しい素養を考えがちだが実は違うのではないか。チンパンジーの特筆すべき行動は「相手を騙(だま)す」ことにある。騙すためには相手が何を考えているかを知る必要がある。つまり共感~想像といった思考の飛翔が伴う。この高度な知能が犯す醜い行動が長年にわたって私の心から離れることはなかった。

 感情を排してただありのままの事実を見てみよう。現代社会の成功者とは「嘘をつくのが巧みな人物」であると言ってよい。この場合の嘘とは「自分の意のままに人々を動かす言動や振る舞い」を意味する。政治家・経営者・教師・宗教家・親・先輩は必ず何らかの信念に基づいた操作・誘導を行う。一番わかりやすいのは俳優・芸能人である。彼らは「嘘をつくのが仕事」だ。ミュージシャンも同様である。フィクション(虚構)を通して大衆に夢を見させる役割を果たしている。

 あるいは巨大宗教組織を見れば、そこには国家の萌芽ともいえるシステムが構築されている。ローマ・カトリック教会は十分の一税を徴収していた。喜捨を募らない教団は存在しない。創価学会では100万円の寄付をする信者がざらにいるし、出版を通したビジネスモデルを編み出したのはGLAの高橋信次で、現在は創価学会や幸福の科学に受け継がれている。巨大教団は宗教企業と化した。国家と異なる点は分配なき集金であることに尽きる。

「民が疲弊しないように効率的に税を徴収し、それをまた効率的に国家建設に生かす」
 というのは、国が隆盛するための絶対条件だといえます。
 そして、国が衰退するときというのは、その条件をクリアできなくなったといきだといえます。

 国家は徴税し、税負担は大きくなり、国家は国民を喰い物にした挙げ句、衰退してゆく。富の蓄積(関岡正弘)が大きく偏り歯止めが効かなくなるのだろう。情報産業を支配するGAFAなども国家弱体化の象徴であり、既に多国籍企業は国家をも超越し(『ザ・コーポレーション』)、タックスヘイブンを通して租税を回避している(『タックスヘイブンの闇 世界の富は盗まれている!』ニコラス・シャクソン、『タックス・ヘイブン 逃げていく税金』志賀櫻)。

 いずれにしろ、脱税がはびこるときには、社会は大きな変動が起きます。
 武装蜂起、革命、国家分裂、国家崩壊などには、必ずといっていいほど、「脱税」と「税システムの機能不全」が絡んでいるのです。

 アメリカ大統領選挙を前にしたBLM運動、中国共産党による香港弾圧・ウイグル人虐殺など「大きな変動」は日々報じられている。日本で格差が広がったのは消費税導入(1989年)以降のことである。

 多国籍企業に対する国家の巻き返しと、民族主義・帝国主義が渦巻く時代に入った。日本国民にはかつての米騒動を起こすほどの気概はない。中国と戦うか妥協するかで国の運命が分かれる。

2020-06-29

税務調査を恐れる必要はない/『税務署員だけのヒミツの節税術 あらゆる領収書は経費で落とせる【確定申告編】』大村大次郎


『お坊さんはなぜ領収書を出さないのか』大村大次郎
・『あらゆる領収書は経費で落とせる』大村大次郎

 ・税務調査を恐れる必要はない

『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』大村大次郎
『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎
・『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』大村大次郎
・『起業のためのお金の教科書』大村大次郎
『お金の流れで読む日本の歴史 元国税調査官が古代~現代にガサ入れ』大村大次郎
『お金の流れで探る現代権力史 「世界の今」が驚くほどよくわかる』大村大次郎
『お金で読み解く明治維新 薩摩、長州の倒幕資金のひみつ』大村大次郎
『ほんとうは恐ろしいお金(マネー)のしくみ 日本人はなぜお金持ちになれないのか』大村大次郎
『知ってはいけない 金持ち悪の法則』大村大次郎
・『知らないと損する給与明細』大村大次郎

 所得控除の中には、雑損控除というものもあります。
 雑損控除というのは、災害、盗難、横領で、生活上の資産の被害を受けた場合に受けられる控除のことです。
 この雑損控除、一般の人はあまりご存知ないですよね? サラリーマンの方などもほとんど知らないのではないでしょうか?
 でもサラリーマンの方もちゃんと使えるのです。
 災害や盗難などの被害に遭った場合、その損失額が5万円以上だったら、控除の対象となるのです。スリに財布を盗まれたような場合も該当します。
 王女できる額は(被害額-5万円)です。
 たとえば、盗難に遭って50万円の被害に遭ったとします。この場合は、
 50万円-5万円=45万円
 この45万円を、所得から控除できるのです。税額にすれば、だいたい5万円から数十万円の還付になります。ただ詐欺による被害はダメです。詐欺の場合には自己責任の部分もあるということでしょうか。

【『税務署員だけのヒミツの節税術 あらゆる領収書は経費で落とせる【確定申告編】』大村大次郎〈おおむら・おおじろう〉(中公新書ラクレ、2012年)】

「税金は国家と国民の最大のコミュニケーション」(小室直樹)である。国家は道路を始めとするインフラや安全保障を提供し、国民は税と兵役を提供する。この交換関係・契約関係に国家-国民の基盤がある。元税務調査員の大村(仮名)がなぜ節税を勧めるのだろうか? それは日本が税を支払うに値しない国家であるからだ。メディアが情報の取捨選択をすることで大衆は目隠しをされている現状がある。昨年、消費税が10%に増税されたが、新聞・テレビはこれを推進し、国民は「やむなし」と判断した。大規模な反対運動やデモは起こっていないゆえ国民は合意したと判断できる。私はこれが日本を崩壊に導く楔(くさび)になったと考える。

 税務調査員には扶養家族が多いという。なぜなら別居でも扶養家族に入れることができるからだ。初耳だ。別居している親が年金収入一人約120万円以下であれば不要家族にすることができる。仕送り額の明確なルールは存在しない。また当然ではあるががフリーターやニートの子供も扶養家族にできる。大体、38~63万円の扶養控除が受けられる。更に夫が失業した場合、パートタイマーであっても妻の扶養家族にすることができる。

 領収書というのは、経費を証明する、重要な証票類ではあります。しかし、これがなくては絶対に経費として認められないのか、というとそうではないのです。実際に支払いがあるのなら、領収書がなくても経費として認められるのです。(中略)
 ですから、ちょっとした支払いや買い物ならば、レシートで十分なのです。レシートには、その支払内容と金額、日付などが明記されていますから、証票類として立派にその役目を果たすのです。
 何かの支払いをしたときに、必ず領収書をもらわなくてはならない、と思っている方も多いようですが、決してそうではありません。コンビニなどでも、わざわざ領収書をもらっている方をときどき見かけますが、あれはまったく無駄なことです。

 これは知っていた。レシートもない場合はメモ書きで十分だ。領収書の法的規定はない。要は事業に必要な経費として「いつ」「いくら」「何に」使ったかを証明できればいいわけだ。

 そして税金の申告は、原則として申告通りに認められます。つまり、納税者が申告した内容は、原則として認められるということです。税務当局は、申告内容に間違いがあるときに限って、それを修正させたり追徴したりできるわけです。
 つまり、納税者が「自分の申告が正しい」という証明をしなければ申告が認められないのではなく、税務当局がその申告が正しくないという証明をしない限り、申告は認められるのです。
 ということは、概算での申告であっても、一旦、申告は認められます。そしてその申告に誤りがあったときに初めて修正されたり、追徴されたりするわけです。

 税務調査と聞いただけで社長や個人事業主は震え上がってしまうものだが、実はそれほど恐れる必要はないことがわかった。ビクビクしてしまえば相手はそこに付け込んでくる。連中の仕事は「違反を見つてなんぼ」の世界である。思い上がったクズが多いようなので、一朝事が起こった場合は刺し違えてみせるほどの気概を見せておいた方がいいだろう。

 納税を年貢意識で支払っていれば国民が国家の主体となることはない。税務署の捕捉率は「トーゴーサン(10:5:3)」と言われる。サラリーマンは10割、自営業者は5割、農家が3割の所得を捕捉されているという意味だ。サラリーマンは源泉徴収で所得は完全にガラス張りだ。自営業者と農家は労働人口の1割ちょっとである。彼らが優遇されているのはどう考えてもおかしい。自民党が農家に甘いことはよく覚えておくべきだろう。

 大村は国民目線で税の不平等を指摘し続けている。高橋洋一でさえ言っていないような事実も多い。特に一貫して大企業や金持ち優遇のメカニズムを暴露している。立派な国をつくるためには国民が賢くなるしかない。なぜなら民主政で選ばれた政治家は国民の平均値を上回ることはないからだ。

2020-04-07

マネーと言葉に限られたコミュニケーション/『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』大村大次郎


『お坊さんはなぜ領収書を出さないのか』大村大次郎 2012年
『税務署員だけのヒミツの節税術 あらゆる領収書は経費で落とせる【確定申告編】』大村大次郎

 ・マネーと言葉に限られたコミュニケーション

『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎 2015年
『お金の流れで読む日本の歴史 元国税調査官が古代~現代にガサ入れ』大村大次郎
『お金の流れで探る現代権力史 「世界の今」が驚くほどよくわかる』大村大次郎
『お金で読み解く明治維新 薩摩、長州の倒幕資金のひみつ』大村大次郎
『ほんとうは恐ろしいお金(マネー)のしくみ 日本人はなぜお金持ちになれないのか』大村大次郎
『知ってはいけない 金持ち悪の法則』大村大次郎
『脱税の世界史』大村大次郎

世界史の教科書
必読書リスト その二

 歴史というのは、政治、戦争などを中心に語られがちだ。「誰が政権を握り、誰が戦争で勝利したのか」という具合に。
【だが、本当に歴史を動かしているのは、政治や戦争ではない。
 お金、経済なのである。】
 お金をうまく集め、適正に分配できるものが政治力を持つ。そして、戦争に勝つ者は、必ず経済の裏付けがある。
 だからこそ、【お金の流れで歴史を見ていくと、これまでとはまったく違う、歴史の本質が見えてくる】ものなのだ。

【『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』大村大次郎〈おおむら・おおじろう〉(KADOKAWA、2015年)以下同】

 大村大次郎は脂(あぶら)が乗っている。読みやすいビジネス書だと思ったら大間違いだ。著作が多いため重複する内容も目立つが必ず新しい視点を提供してくれる。元国税庁の調査官ということもあって節税本が殆どだが、具体的なアドバイスもさることながら、税に対する認識や意識が変わる。それは「国民の自覚」と言い換えてもよかろう。

 小室直樹が「税金は国家と国民の最大のコミュニケーション」(『消費税は民意を問うべし 自主課税なき処にデモクラシーなし』)と喝破している。それをわかりやすく敷衍(ふえん)したのが上記テキストだ。

 なぜ古代エジプトだけが3000年もの間、平和で豊かな時代を送ることができたのか?
 筆者は、その大きな要因に、徴税システムがあると考える。
 古代から現代まで、その国の王や、政府にとって、一番、面倒で大変な作業というのは、徴税なのである。税金が多すぎると民は不満を持つし、少ないと国家が維持できない。
 また税金のかけ方が不公平になっても、民の不満材料になるし、徴収のやり方がまずければ、中間搾取が多くなり国の収入が枯渇(こかつ)する。
【古今東西、国家を維持していくためには、「徴税システムの整備」と「国民生活の安定」が、絶対条件】なのである。

 チンパンジーの世界でも「所有と分配の両方が行なわれている」(『共感の時代へ 動物行動学が教えてくれること』フランス・ドゥ・ヴァール)。ラットですら目の前で苦しむ仲間がいれば自分の利益を放棄する(『あなたのなかのサル 霊長類学者が明かす「人間らしさ」の起源』フランス・ドゥ・ヴァール)。

 ドゥ・ヴァールは「思いやりも本能である」と主張する動物行動学者だが、昨今の消費税増税は明らかに公平性を欠いており、段階的に下げられてきた富裕層の所得税を踏まえると、格差社会は政策によって生まれたと言いたくなる。

 バブル崩壊(1991年)後の日本を見てみよう。終身雇用が失われ非正規雇用が増え始める。学校ではいじめが日常茶飯事となり、若者の間ではニートや引きこもりが増加。人口構成は高齢化社会(65歳以上人口が7%、1970年)~高齢社会(高齢化率14%、1994年)~超高齢社会(高齢化率21%、2007年)と変遷してきた(Wikipedia)。有吉佐和子が少子高齢化を指摘したのが1972年のことである(『恍惚の人』)。200万部を超えるベストセラーとなったが政治家も国民も本気で考えようとはしなかった。

 私は少子化を問題とは思っていない。ピークを迎えた人口構成が緩やかに下がることはあるだろう。問題は「結婚したくてもできない」「恋愛をするほどの余裕もない」若者を増やし、挙げ句の果てには「子供をつくりたいと思えない」国家の有り様である。より本質的には災害や戦争が訪れることを告げているように思われてならない。

 近代以降のコミュニケーションはマネーと言葉に限定されてしまった感がある。古(いにしえ)の人々には祈り、踊り、狩り、祭りを通したコミュニケーションが存在した。現代人がスポーツや音楽に魅了されるのは「言葉を超えたコミュニケーション」を感じるためだ。コミュニケーションは交換が交感を生み交歓に至る、というのが私の持論だが、大前提として交換するものが少なすぎる。

 平等という価値観は既に左翼が汚してしまった。せめて公正さを取り戻すべきだろう。社会が崩壊する前に。

2020-03-10

税務調査官の言いなりになるな/『お坊さんはなぜ領収書を出さないのか』大村大次郎


 ・税務調査官の言いなりになるな

『税務署員だけのヒミツの節税術 あらゆる領収書は経費で落とせる【確定申告編】』大村大次郎
『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』大村大次郎
『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎
『お金の流れで読む日本の歴史 元国税調査官が古代~現代にガサ入れ』大村大次郎
『お金の流れで探る現代権力史 「世界の今」が驚くほどよくわかる』大村大次郎
『お金で読み解く明治維新 薩摩、長州の倒幕資金のひみつ』大村大次郎
『ほんとうは恐ろしいお金(マネー)のしくみ 日本人はなぜお金持ちになれないのか』大村大次郎
『知ってはいけない 金持ち悪の法則』大村大次郎
『脱税の世界史』大村大次郎

 さて、こういうグレーの領収書を調査官から咎められたときは、どうすればいいかというと…。
 絶対に引いてはなりません。
 税務申告でグレーのものがあった場合、納税者側にそれを白だと証明する義務はないのです。
 日本は申告納税制度の国です。
 申告納税制度というのは、納税者が自分で出した申告書は、明確な誤りがない限り、税務当局はそれを認めなければならないことになっているんです。
 だからグレーのものを否認するならば、税務署のほうが明確にそれが黒だという根拠を突きつける必要があるのです。
 その点を知らずに、調査官のいいなりになってしまう納税者がけっこう多いのです。調査官もずる賢いので、グレーのものを見つけると、それは「さも真っ黒」であるかのような言い方をします。
「こういう領収書は経費にはできませんね」
 などと怒ったような顔をしていいます。
 でも騙されてはいけません。彼らは、それほど自信を持っていっているわけではないのです。自信がないから怒ったフリをしているだけなのです。
 調査官の仕事というのは、申告書の誤りを見つけることです。だからそれを見つけた場合、喜びこそすれ、怒るはずはないのです。彼らが怒っているときというのは、芝居に過ぎないのです。

【『お坊さんはなぜ領収書を出さないのか』大村大次郎〈おおむら・おおじろう〉(宝島新書、2012年/日本文芸社、2007年『そば屋はなぜ領収書を出したがらないのか? 領収書からみえてくる企業会計・税金のしくみ』改題】

 大村大次郎の著書は大体1冊1000円台に抑えているので良心的だ。本書はそば屋から苦情が寄せられ改題となった作品である。日本で民主政が機能していない大きな要因の一つに税意識の低さが挙げられる。

 元国税調査官の大村大次郎は調査の手法を知悉している。検察が起訴した裁判は検察側に立証責任がある。同様に脱税・申告漏れ・所得隠しは税務当局に挙証責任があるのだ。素人は「税務調査」と聞いただけで震え上がってしまうものだが、大村は「恐れることはない」と断言する。

 仕事のために使った費用は全て経費で落とせる。そのためにはメモ書きで構わないから証拠をきちんと残しておくことだ。中小企業だとこのあたりが丼勘定の社長が多い。

 税法の不平等や二重課税を思えば、この国に税金をまともに払う価値があるかどうかが疑わしくなる。しかもサラリーマンの場合、節税は困難だ。納税実態としては資産家ほど租税を回避しており、所得の少ない者ほど痛税感を覚える仕組みとなっている。

 警察や税務署が恐れられるのは捜査や調査が可能なためだが、とてもじゃないが国民のために行われているとは言い難い。実際は自分たちの昇進のために法を曲げて得点を稼いでいるのだから。過去の冤罪事件を思えば、税務調査にだって行き過ぎがあることだろう。大企業は国税庁の天下りを受け入れることでマルサの査察調査をかわしている。

 税の不平等は国を亡ぼす。貧しい国民が増えるほど犯罪件数も増加してゆく。圧政は必ずや暴力(テロ)の温床となる。

2018-01-26

力の強いもの、ずる賢いものが得をする税金/『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎


『お坊さんはなぜ領収書を出さないのか』大村大次郎
『税務署員だけのヒミツの節税術 あらゆる領収書は経費で落とせる【確定申告編】』大村大次郎
『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』大村大次郎

 ・力の強いもの、ずる賢いものが得をする税金

・『起業のためのお金の教科書』大村大次郎
『お金の流れで読む日本の歴史 元国税調査官が古代~現代にガサ入れ』大村大次郎
『お金の流れで探る現代権力史 「世界の今」が驚くほどよくわかる』大村大次郎
『お金で読み解く明治維新 薩摩、長州の倒幕資金のひみつ』大村大次郎
『ほんとうは恐ろしいお金(マネー)のしくみ 日本人はなぜお金持ちになれないのか』大村大次郎
『知ってはいけない 金持ち悪の法則』大村大次郎
・『知らないと損する給与明細』大村大次郎

必読書リスト その二

 トヨタ自動車は、2015年3月期の連結決算で、グループの最終利益が2兆円を超えた。利益が2兆円を超えたのは、日本の企業としては初めてのことである。
 このトヨタ、2009年から2013年までの5年間、じつは国内で法人税等を払っていなかった。(中略)
 じつは、そこには巧妙なカラクリがある。そして、そこに日本税制の最大の闇が隠されているのである。
 近年の日本の税制がトヨタを中心に設計されてきたこと、ざっくり言えば、トヨタの恩恵のために税システムが改造されてきたことである。

 トヨタが5年間も税金を払っていなかった最大の理由は、「外国子会社からの受取配当の益金不算入」という制度である。
 これは、どういうことなのか。外国の子会社から配当を受け取った場合、その95%は課税対象からはずされる、ということなのである。
 たとえば、ある企業が外国子会社から1000億円の配当を受けたとする。この企業は1000億円の配当のうち、950億円を課税収入から除外できる。つまり950億円の収入については無税となるのだ。なぜこのような制度があるのか?
 これは、現地国と日本で二重に課税することを防ぐ仕組みなのだ。
 外国子会社からの配当は、現地で税金が源泉徴収されているケースが多い。もともと現地で税金を払っている収入なので、日本では税金を払わなくていいという理屈である。
 現地国で払う税金と日本で払う税金が同じならば、その理屈も納得できる。
 が、配当金の税金は世界的に見て、法人税よりも安い。
 つまり現地で払う税金は、日本で払うべき税金よりもかなり少なくて済むのだ。

【『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎〈おおむら・おおじろう〉(ビジネス社、2015年)以下同】

 昨日、「JTが6銘柄を40円値上げ わかばやエコー、旧3級品」とのニュースを目にした。わかば、エコー、しんせいがそれぞれ40円の値上げをするという。「俺は吸わないから関係ない」と思っている人は税の不平等を見過ごしていることになる。煙草の税負担率は実に63.1%で、ガソリン55.4%やビール48.4%よりも高い(たばこ税の仕組み)。

「一方的に国民に納税を要求する取り立て屋のような憲法があるのは、日本・韓国・中国くらいものですから、こんな恥ずかしい憲法はもう、即刻改正しなければいけません」(『反社会学講座』パオロ・マッツァリーノ)。しかも我々が支払っている税のトータルは所得の55.4%にも及ぶ(消費税率を上げても税収は増えない)。

 その一方で日本のリーディングカンパニーであるトヨタが税金を支払ってこなかったというのは驚愕の事実だ。銀行も不良債権処理を口実に「住友信託が07年3月期に法人税の納付を再開しただけで、三菱UFJ、三井住友、みずほの3メガバンク、りそな、中央三井は1995年3月期から15年連続、法人税を払ってない」(日本経済新聞 2010年5月24日)。

「税金は国家と国民の最大のコミュニケーション」(『消費税は民意を問うべし 自主課税なき処にデモクラシーなし』小室直樹)と言われる。国民の所得を半分以上も簒奪(さんだつ)する国家の未来は暗い。更にこうした事実に対して無自覚な国民の将来はもっと暗い。

 税金というのは力の強いもの、ずる賢いものが得をする世界である。
 だから、国民は税金に関して無知であってはならない。国民が完全に無知になってしまうと、力の強いもの、ずる賢いものの意のままになるからだ。
 そして今の日本はそういう状態になっている。

「この国は国家予算のバランスシートさえ明らかにしていない」(『独りファシズム つまり生命は資本に翻弄され続けるのか?』響堂雪乃)。予算の具体的な配分は全て官僚が行っている。そして財務省官僚は政治家よりも頭がいい。

 戦後教育は愛国心を否定し、憂国の情を奪い去った。この国のエリートは国士ではない。憲法を改正したところで既成政党と官僚の関係性が変わるとは考えにくい。戦争にでもならない限りこの国が目を覚ますことはないだろう。



国民に納税しろと命じるずうずうしい日本国憲法/『反社会学講座』パオロ・マッツァリーノ