2009-08-13

貨幣経済が環境を破壊する/『エンデの遺言 「根源からお金を問うこと」』河邑厚徳、グループ現代


『金持ち父さん 貧乏父さん アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』ロバート・キヨサキ、シャロン・レクター
『国債は買ってはいけない! 誰でもわかるお金の話』武田邦彦
『平成経済20年史』紺谷典子
『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎

 ・貨幣経済が環境を破壊する
 ・紙幣とは何か?
 ・「自由・平等・博愛」はフリーメイソンのスローガン
 ・ミヒャエル・エンデの社会主義的傾向
 ・世界金融システムが貧しい国から富を奪う
 ・利子、配当は富裕層に集中する

・『税金を払う奴はバカ! 搾取され続けている日本人に告ぐ』大村大次郎
・『無税国家のつくり方 税金を払う奴はバカ!2』大村大次郎
『デジタル・ゴールド ビットコイン、その知られざる物語』ナサニエル・ポッパー

必読書リスト その二


 お金は不思議な存在だ。お金は本来であれば単なる約束事に過ぎない。ところが等価交換の物差しが、いつしか目的と化してしまっている。「金に物を言わせる」という表現があるように、お金は雄弁だ。そして言葉の如く流通する。

 お金の意味を我々は知っているようで知らない。学校で教わることもなかった。お金に関する何冊かの本を読んできたが、疑問は膨らむ一方だった。しかし、本書を読んで私の蒙(もう)は啓(ひら)かれた。貨幣の欺瞞、信用創造のインチキを本書は十全に暴いている。

 唯一の難点は、ミヒャエル・エンデの言葉にキリスト教的な臭みがあることだ。謙遜が慇懃無礼(いんぎんぶれい)のレベルに達している。ま、死者はいつだって美化されるということか。

 重要な内容を鑑み、何度かに分けて書く予定である。

 まずは、「貨幣経済が環境を破壊する」事実を示す――

「紙幣発行が何をもたらしたのか? 一つの実例が、ビンスヴァンガーの著書に出ています。たしかロシアのバイカル湖だったと思いますが、その湖畔の人々は紙幣がその地方に導入されるまではよい生活を送っていたというのです。日により漁の成果は異なるものの、魚を採り(ママ)自宅や近所の人々の食卓に供していました。毎日売れるだけの量を採っていたのです。それが今日ではバイカル湖の、いわば最後の一匹まで採り尽くされてしまいました。どうしてそうなったかというと、ある日、紙幣が導入されたからです。それといっしょに銀行のローンもやってきて、漁師たちは、むろんローンでもっと大きな船を買い、さらに効果が高い漁法を採用しました。冷凍倉庫が建てられ、採った魚はもっと遠くまで運搬できるようになりました。そのために対岸の漁師たちも競って、さらに大きな船を買い、さらに効果が高い漁法を使い、魚を早く、たくさん採ることに努めたのです。ローンを利子つきで返すためだけでも、そうせざるをえませんでした。そのため、今日では湖に魚がいなくなりました。競争に勝つためには、相手より、より早く、より多く魚を採らなくてはなりません。しかし、湖は誰のものでもありませんから、魚が一匹もいなくなっても、誰も責任を感じません。これは一例に過ぎませんが、近代経済、なかでも貨幣経済が自然資源と調和していないことがわかります」

【『エンデの遺言 「根源からお金を問うこと」』河邑厚徳〈かわむら・あつのり〉、グループ現代(NHK出版、2000年/講談社+α文庫、2011年)】

 これは、アーロン・ブラウンの主張と全く同じである。

帝国主義による経済的侵略/『ギャンブルトレーダー ポーカーで分かる相場と金融の心理学』アーロン・ブラウン

 ブラウンが結論を人間不信に着地させたのに対し、エンデは環境破壊に結びつけている。

 貨幣経済は、将来の価値を先取りするために現在の環境を踏みにじる。人間は未来に生きる動物といえる。そして「未来=蓄え」を意味する時、人は現在を犠牲にする。

 ここで行われていることは「未来を先取りする競争」である。つまり、貯蓄を可能にした貨幣経済は、「未来を奪い合う」社会を招来する結果となる。しかもこの未来は、人類全体のものではない。ということは、「エゴの競争」である。

 エゴイズムは限りなく肥大する。肥大したエゴイズムを地球環境は支えることができない。「自分さえよければ」という生き方が、湖の魚を獲り尽くしてしまった。人間の未来が魚の未来を奪ったのだ。共存の崩壊。

 お金は未来である。とすると、蓄えられたお金は意志を持つようになる。エゴ未来は人間を、畜生道の下の餓鬼道に引き摺り込む。ここにおいて人間は動物以下の存在と化す。

 お金はエゴイズムに火を点ける。お金を持っている人は確かに幸せだ。だが、お金から離れられる人はもっと幸せではなかろうか。

 欲望は否定されるものではなくして、コントロールされるべきものである。「少欲知足の経済」を実現しなければ、地球の寿命は短くなる一方だ。



信用創造のカラクリ/『ギャンブルトレーダー ポーカーで分かる相場と金融の心理学』アーロン・ブラウン
時は金なり/『反社会学講座』パオロ・マッツァリーノ
信用創造の正体は借金/『ほんとうは恐ろしいお金(マネー)のしくみ 日本人はなぜお金持ちになれないのか』大村大次郎

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