2017-11-23

「改革」を疑え/『平成経済20年史』紺谷典子


『円高円安でわかる世界のお金の大原則』岩本沙弓
『国債は買ってはいけない! 誰でも儲かるお金の話』武田邦彦

 ・「改革」を疑え

必読書リスト その二

 小泉改革が、景気回復をもたらしたというのは、ほとんど嘘である。戦後最長のいざなぎ景気を抜いた「最長の景気回復」と政府は言ったが、そういう政府自身、デフレ経済からの脱却を宣言できなかった。

 米国とならんで、裏で改革を後押ししてきたのは財務省だ。「改革」と言われてきたものの多くが、財政支出の削減でしかなかったことを見ても、それは明らかだ。
 年金改革も医療保険改革も、保険料の値上げと、年金の削減、医療の自己負担の増加でしかなかった。国民に安心を与えるための社会保障改革は、逆に国民の不安を拡大した。財政危機が実態以上に、大げさに語られてきたからである。しかし、年金や医療の財政危機は、事実ではなかった。
 社会保障の削減はすでに限度を超している。その結果、世界一と評価されたこともある日本の医療は、もはや崩壊寸前である。
 小泉改革の「官から民へ」は行政責任の放棄であり、「中央から地方へ」移行されたのは財政負担だけだった。「郵政民営化」は、保険市場への参入をめざす米国政府の要望である。小泉首相の持論と一致したのは、米国にとっては幸運でも、国民にとっては不運だった。
 改革のたびに国民生活が悪化してきたのは、改革が国民のためのものではなかった証左である。私たちは、そろそろ「改革」とされてきたものを疑ってみるべきではないだろうか。

【『平成経済20年史』紺谷典子〈こんや・ふみこ〉(幻冬舎新書、2008年)】

 紺谷典子は小泉政権の天敵と言われ、いつしかテレビから抹殺された人物である。まずは動画をご覧いただこう。


 時間のない人は58分30秒から10分ほどだけでも必ず見てほしい。様々な圧力や美味しい話に振り回されることなく、専門家としての矜持(きょうじ)をさらりと語っている。紺谷が抜いた真剣の光に照らされて宮崎哲弥や水道橋博士の軽薄さがくっきりと見える。豊かでありながら抑制された声も今時珍しい。更に誰かが口を開くと自分の話をやめて耳を傾ける姿勢も謙虚さの表れだろう。

 番組の配信が2008年3月15日である。前年の7月末にサブプライム・ショックがあり、そして2008年の9月にリーマン・ショックがマーケットを襲う。日経平均は7000円を割り込んだ。そして2009年9月に民主党政権が産声をあげる。3年間の迷走と混乱が国民を保守に回帰せしめて今日に至る。わずか9年前の番組でありながら隔世の感がある。

 amazonレビューを見ると専門的な勉強をした人ほど低い評価のようだ。ただし具体性に欠け説得力が弱い。国民全体が貧しくなった原因と解決策を示さなければ所詮言葉遊びに過ぎない。

 大蔵省-財務省にメスを入れることのできる政治家が登場しない限り、この国の政治は旧態依然のまま利権の巣窟と化す。去る総選挙で安倍首相は消費税増税分の使途を変更する公約を掲げた。やはり長期安定政権であっても財務省には逆らえないのだろう。

平成経済20年史 (幻冬舎新書 こ 9-1)
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