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2014-07-19

ビスマルクとロスチャイルド家/『通貨戦争 影の支配者たちは世界統一通貨をめざす』宋鴻兵


『超帝国主義国家アメリカの内幕』マイケル・ハドソン
『ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナリオ 影の支配者たちがアジアを狙う』宋鴻兵

 ・ビスマルクとロスチャイルド家

 前著刊行後、5000万字の資料を参考にし、1日5万文字を1000日にわたって閲覧して書かれたのが本書である。

 若きビスマルクは勤勉で、勉強好きで、権力と叡智に極端なほどの憧れを抱いていた。彼の政治的野心と抱負はすぐにアムシェルとその養子のマイヤーの気に入るところとなった。ロスチャイルド家はとにかく政治的に有望な青年を育てるのが好きで、伯楽であることを自負していた。彼らはビスマルクが投資する価値のある優良株であると判断した。欧州の近代史上、若いころにロスチャイルド家に援助され、後に世界史において傑出した政治家になった人物には、ビスマルクのほかに、後のイギリス首相、ベンジャミン・ディズレーリ、そしてダービー競馬に勝つこと、資産家の令嬢を嫁にすること、イギリスの首相になること、この3つの夢をすべてかなえたロスチャイルド家の婿のローズベリー、そしてイギリスの名物首相、チャーチルがいた。
 ネイサン・ロスチャイルドは「大英帝国の通貨の発行権を握っている」と公言していた。欧州の名門貴族たちは、彼の金銭的な権勢に屈服せざるを得なかったにもかかわらず、ロスチャイルド家のような新興ユダヤ人「成金」を内心では軽蔑していた。ビスマルクも同じであった。ユダヤ銀行家たちを利用しながら軽蔑していたのである。

【『通貨戦争 影の支配者たちは世界統一通貨をめざす』宋鴻兵〈ソン・ホンビン〉: 橋本碩也〈はしもと・せきや〉監訳、河本佳世〈かわもと・かよ〉訳(武田ランダムハウスジャパン、2010年)以下同】

 資本主義は近代以降、政治とカネを切っても切れないものへと変えた。つまり「政治とカネの問題」というテーマは資本主義の否定につながる矛盾を抱えている。民主主義はカネで動くと理解した方がよさそうだ。政治が国家予算(税金)の分捕り合戦である一面を思えば腑に落ちる。

 驚くべき真実であるが、政治も文化も宗教もマネーを制した者が勝つ。「先立つものは金」というわけだ。そして潤沢な資金はプロパガンダ(広告)に費やされ、マネー獲得の目的に向かって直進する。こうしてあらゆる組織が資本増強を目指す。

 ロスチャイルド家は金融の本質を誰よりも早く知悉(ちしつ)していた。欧州貴族の軽蔑すら彼らの目には好機と映ったことだろう。名誉よりも実利が重いのだから。

 そして近代からアメリカが生まれ、そのアメリカからプラグマティズムが産声(うぶごえ)を上げたのも偶然ではあるまい。教会の権威を嫌い、信仰の実を選んだピルグリム・ファーザーズも宗教上の実利を志向している。



 戦争を通じてビスマルクは金銭の重要性を認識した。特に、大事な時に政治家は往々にして銀行家に屈服せざるを得なかった。デンマーク戦争とほぼ同時期に発生したアメリカの南北戦争リンカーン暗殺について、ビスマルクは次のように述べている。

「アメリカを南北の二つの弱い連邦に分けることは、内戦勃発前から欧州の金融権力者によって決められていたことである」

 カネがなければ戦争もできない。すなわちマネーを制する者は戦争をもコントロールできるのだ。

 20世紀末になりインターネットの普及がマネーの移動を自由自在にした。増殖するマネーはバブルとなって膨らんでは弾ける。バブル-バブル崩壊を繰り返しながらマネーはウイルスのように襲いかかる。バブルは富める者を更に富ませ、中産階級を貧困化する。極端な富の集中が資本主義そのものを崩壊させるのも時間の問題だ。

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ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナリオ 影の支配者たちがアジアを狙う
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2014-06-02

ネイサン・ロスチャイルドの逆売りとワーテルローの戦い/『ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナリオ 影の支配者たちがアジアを狙う』宋鴻兵


『超帝国主義国家アメリカの内幕』マイケル・ハドソン

 ・ネイサン・ロスチャイルドの逆売りとワーテルローの戦い

『通貨戦争 影の支配者たちは世界統一通貨をめざす』宋鴻兵

 ただ、私は国家の通貨の発行を支配したいだけだ。それができれば、誰が法律を作ろうと、私はかまわない。
   ――メイヤー・ロスチャイルド(ロスチャイルド家初代)

【『ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナリオ 影の支配者たちがアジアを狙う』宋鴻兵〈ソン・ホンビン〉:橋本碩也〈はしもと・せきや〉監訳、河本佳世〈かわもと・かよ〉訳(ランダムハウス講談社、2009年)以下同】

 宋鴻兵〈ソン・ホンビン〉はファニーメイフレディマックで上級顧問を務めた新進気鋭のエコノミスト。やはり中国は大国だ。こういう人物がいるのだから侮れない。メイヤー・ロスチャイルドの言葉は「Money As Debt」(負債としてのお金)の冒頭にも出てくる。政治よりも金融にシステム性の優位があることを見抜いていたのだろう。

 社会経済にとって通貨は血液であり、中央銀行は心臓であり、金融機関は血管である。心臓が正常に鼓動しなければ、あるいは血管が詰まって血液の循環が止まれば壊死してしまう。銀行家は外部の何者にも干渉を受けることなく、心臓の鼓動を速めることも血液の循環を止めてしまうことも可能なのだ。まさに国際銀行家にとって金融とは"Silent Weapons"であり、それは誰にも気付かれず、ひっそりと音もなく我々の生活を破壊することができる。(解説)

 政治制度の違いは身体の動きとして現れる。ロスチャイルド家は血液を司ることを目論んだ(巨大金融詐欺2 通貨発行権の濫用、中央銀行という詐欺システム : ijn9266のブログ)。

 ネイサン・ロスチャイルドの逆売りとワーテルローの戦いがドラマチックに描かれている。資料的価値が高いので長文の引用をしておこう。

 ネイサン・ロスチャイルドは、ロスチャイルド家初代のマイヤー・アムシェル・ロスチャイルドの三男として生まれた。5人の兄弟のなかでもっとも度胸があり、高い識見をもっていたネイサンに、父親はイギリスでロスチャイルド家のために銀行事業を開拓するように命じた。
 1798年、ネイサンはフランクフルトからイギリスに赴いた。仕事では警戒心が強く、かたくなに意志を押し通すネイサンの心のなかを読み取れる人間は周りに誰もいなかった。それかあらぬか、彼は天賦の才と神がかり的な豪腕を発揮し、1815年にはロンドン屈指の大銀行を作り上げたのである。
 その後、長男アムシェルはフランクフルトの本店(M.A. Rothschild and Sons)、次男サロモンはオーストリアのウィーン支店(S.M. Rothschild and Sons)、四男のカールはナポリの銀行、五男ジェームズはパリの銀行(Messieus de Rothschild and Sons)と、ロスチャイルド家の5兄弟は世界初の国際銀行ネットワークを構築した。そんな彼らが虎視眈々と注目していたのは1815年のヨーロッパの戦況であった。
 この戦争でナポレオンが勝利すれば、フランスはヨーロッパの支配者になり、ウェリントン公が勝てば、イギリスがヨーロッパの国々を傘下に置くことになる。まさに、ヨーロッパ大陸の未来を左右する天下分け目の戦いだった。
 ロスチャイルド家は将来を見越し、この戦いの前から、チャイルドと呼ばれる密偵団を組織し、ロスチャイルド家独自の情報収集ネットワークを作り上げていた。ヨーロッパ各国の首都、大都市、取引センター、ビジネスセンターに派遣され(ママ)チャイルドたちの手により、ビジネス、政治、その他のあらゆる情報が、ロンドン、パリ、フランクフルト、ウィーン、ナポリの間を飛び交ったのである。ロスチャイルド家は驚くほどのスピードと正確さと効率で、これらの情報を入手した。それは当時のどのような官製情報網よりもはるかに優れたものであり、ロスチャイルド家の競争相手はこの情報収集力に対抗できず、ほとんどの国際競争においてロスチャイルド銀行が、断然、優位に立っていた。
「ロスチャイルド銀行の馬車がヨーロッパの街道を疾走し、ロスチャイルド銀行の船が海峡狭しと行き交い、ロスチャイルド銀行の密偵たちがヨーロッパの町や街路のいたるところに現れると、そのたびにロスチャイルド家は莫大な現金と債券と書簡と情報とをつかみ取っていた。そして彼らが独占していた最新情報は株式市場や商品市場に徐々に流された。そのなかでも“ワーテルローの戦い”の情報はロスチャイルド家にとって出色のものであった」
 1815年6月18日、ベルギーのブリュッセル郊外が主戦場となったワーテルローの戦いは、ナポレオン軍とウェリントン軍が雌雄を決する場であった。だが、それだけではなかった。勝った者だけが空前の富を手に入れ、負けた者はすべてを灰燼(かいじん)に帰す、幾千万の投資家の賭けの場でもあったのだ。
 その日、ロンドン証券取引所は極度の緊張感に包まれていた。イギリス軍が敗退すれば、コンソル公債(英国政府により1751年以降に発行された永久国債。償還の期限を設けず、金利を支払い続ける契約の債券)の価値は奈落の底まで暴落し、勝てば天まで高騰する。投資家たちは決戦の結果をやきもきしながら待っていた。
 今、二つの狭い道を挟んで両軍が命運をかけて戦っているまさにそのとき、ロスチャイルド家の密偵たちは両軍陣営の内部を駆け回り、あらゆる策を講じて戦況を収集していた。さらに、彼らは入手したての最新情報を戦場にもっとも近いロスチャイルド家の“情報センター”であるアジトへ送っていた。
 夕刻になり、ナポレオン軍の敗戦が決定的となった戦況を目の当たりにしたロスチャイルド家の急使ロスワースは、すぐさまブリュッセルを駆け抜け、オステンド港まで馬を走らせた。オステンド港に着いたときはすでに深夜であったが、彼は特別航行証のある快速船「ロスチャイルド号」に飛び乗り、船員に200フランをつかませ、風が荒れ狂い、波が逆巻く英仏海峡に乗り出した。
 ロスワースが夜を徹して英仏海峡を渡り、イギリスのフォークストンの海岸にたどり着いたのは、翌19日の朝まだきだったが、そこにネイサンが待っていた。ネイサンは封筒を開けてさっと報告書に目を通すや否や、すぐさまロンドン証券取引所に向かって馬を駆った。
 翌日、ネイサンが証券取引所の立会場に入った瞬間、戦況報告を待ちわびていた騒々しい場内は一瞬のうちに静まり返り、すべての視線がネイサンの無表情な顔に集まった。ネイサンはゆっくりと歩を進め「ロスチャイルドの柱」と呼ばれている玉座に腰を下ろした。石像を思わせる彼の顔からはかすかな感情も浮かび上がってはこない。取引所の喧騒はすでに完全に消え去り、すべての人々が静寂のなかで己の運命を託したネイサンを見つめていた。
 長い沈黙の後、ネイサンは自分の周りに立って様子をうかがっていたロスチャイルド家のトレーダーたちに目配せをした。するとその瞬間、トレーダーたちは一言も発す売ることなく取引台に突進し、コンソル公債をいっせいに売り始めたのである。場内は一瞬にして騒然となり、耳打ちをし合う者もいたが、多くはただ呆然と立ちすくんでしまった。トレーダーの手で数十万ドル相当のコンソル公債が一瞬のうちに市場に売りに出され、公債価格は下落を始め、相場はしだいに崩れ、やがて堰を切ったように暴落しだした。
 ネイサンは無表情のまま、泰然と玉座に座っていた。やがて場内の人々は夢から覚めたように、「ロスチャイルドは情報を手に入れたんだ!」、「ロスチャイルドは情報を手に入れたんだ!」、「ウェリントン将軍は負けたんだ!」と叫び出し、われ先にと公債を売り始めた。そしてそれはまたたく間に大混乱へと変わった。
 人々は理性を失い、強迫観念から他人の行動に引きずられ、自分のわずかな最後の財産を守ろうとして、ほとんど無価値となった手持ちの公債を、追い討ちをかけるように売り続けた。数時間にわたる狂乱の投げ売りが終わった後、コンソル公債は額面価格のわずか5%まで落ち込み、ただの紙切れ同然となってしまった。
 ネイサンはその一部始終を冷徹な眼差しで見続けていたが、やがて長年の訓練を受けた配下の者しか決して読み取ることのできない、ほんのわずかな目の動きによって、ロスチャイルド家のトレーダーにふたたび新たな指示を発した。彼の周りに控えていたトレーダーたちがまたもやいっせいに取引台に突き進み、驚いたことに、今度はコンソル公債を1枚1枚買い集め始めたのである。
 6月21日の夜11時、ウェリントン公の使者ヘンリー・パーシーがロンドンに到着した。そして、8時間に及ぶ激戦によりナポレオン軍は3分の1の兵士を失い、フランス軍は敗走したとの情報が――ロスチャイルド家より1日遅れて――ようやくロンドンに届けられたのだった。
 そのたった1日で、ロスチャイルド家は、ナポレオンとウェリントン公が数十年の戦争を通じて獲得した財産をはるかに上回る、元金の20倍という巨万の富を手に入れたのであった。
 ネイサンは、ワーテルローの戦いによるイギリス政府の最大の債権者となった結果、イギリス公債の発行に影響力をもち、そしてイングランド銀行をコントロールする力をも得たのである。イギリスの公債は、見方を変えれば政府の将来の歳入の証書であり、イギリス国民あ各種税金を政府に納付することは、その税金がロスチャイルド銀行にそのまま収められることを意味していた。さらに、イギリス政府の財政支出は公債を発行することにより賄われていたのだ。言い換えれば、イギリス政府は通貨の発行権をもっておらず、公債によって民間銀行から借り入れ、かつ約8%の金利を支払っていかなければならなかった。しかもその元本・金利ともすべて現金で支払うことになっていたのである。ネイサンにはコンソル公債の莫大な保有残高があったため、公債の価格を操作したり、イギリスの通貨供給量を操ることができた。イギリス経済は首根っこをロスチャイルド家に押さえられ、その生殺与奪は彼らのさじ加減一つとなっていた。
 ネイサンは、大英帝国を征服した喜びを得意満面にこう豪語した。
 私は、イギリスがどんな傀儡(かいらい)を諸国の王位に就けようと、あるいは太陽の沈まぬ帝国を治めさせようと、一切気にしない。大英帝国を支配するのは通貨供給を支配する者だ。それは私だ!

 ネイサンの天才的な狡知(こうち)は得た情報を逆手に取って最大限の利益を見出した。自分が周囲に与える影響力と人心の動きを知り尽くしたところにメディア戦略の萌芽すら見える。

 1815年、ロスチャイルド家はイングランド銀行を支配下に置き、英国の通貨発行権と管理権を手中に収めました。1913年には米国に連邦準備制度(FRB)を設立し、米国の通貨発行権と管理権を手中に収めています。 21世紀初頭、ロスチャイルド家が中央銀行の所有権を持っていない国は、全世界でアフガニスタン、イラク、イラン、北朝鮮、スーダン、キューバ、リビアの七ヵ国だけでした。その後、アフガニスタンそしてイラクに対する米国の侵攻により、現在では残り僅か五ヵ国のみになっています。

なぜ反ロスチャイルドなのか(1)-お金の仕組み- <Anti-Rothschild Alliance>

 ジョージ・W・ブッシュが悪の枢軸と呼んだ3ヶ国が目を引く。他の国々も戦乱の極みにある。決して偶然ではあるまい。平穏そうに見えるのはキューバだけだ。穿(うが)った見方をすればロスチャイルド家が金融支配をするために擾乱(じょうらん)を工作したと考えられる。

 宗教次元ではプロテスタントが生まれたわけだが、世界構造としてはプラグマティズムに重きを置くべきだろう。すなわち、イギリス産業革命(1760年代)-ロスチャイルド家の金融基盤確立(ネイサンの逆売り、1815年)がプラグマティズムの端緒となり、魔女狩りを終わらせたのだ(と言い切ってしまうぞ)。

何が魔女狩りを終わらせたのか?

「資本主義の精神とカルヴィニズムの間に因果関係がある」(マックス・ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』、1904年)とすれば、カルヴィニズムからプラグマティズムとは生まれたのだろう。そしてプロテスタントはカトリック教会が長きにわたって禁じてきた金儲け(利潤追求)を正当化させるに至った。

 資本主義の「自由な商品生産によって利潤を追求しようという精神的態度」(資本主義 - Jinkawiki)は労働力をも商品化し奴隷を生むに至った。つまりイギリスによる北米征服~アメリカ独立に資本主義のエッセンスがあるのだ。

 しかし、ドイツほど、ユダヤ人の経済力に依存した国もなかった。戦費、国家財政、貨幣の鋳造などを押さえ、三十年戦争からナポレオン支配を経て解放戦争にいたるまで、ユダヤ人の資金提供のない戦争はほとんどなかった。ヨーロッパに銀行大帝国を築いたロスチャイルド家の兄弟の母は、戦争の勃発を恐れた知り合いの夫人に対して「心配にはおよびませんよ。息子たちがお金を出さないかぎり戦争は起こりませんからね」と答えたという。

【『嬉遊曲、鳴りやまず 斎藤秀雄の生涯』中丸美繪〈なかまる・よしえ〉(新潮社、1996年/新潮文庫、2002年)】

 極東に位置する日本も例外ではなかった。

明治維新は外資によって成し遂げられた/『洗脳支配 日本人に富を貢がせるマインドコントロールのすべて』苫米地英人

 兵器売買よりも巧妙な「死の商人」といってよいだろう。

 19世紀半ばに資本主義はレッセフェール(自由放任主義)の高みに達し、対抗思想として共産主義が誕生する。20世紀末になると共産主義を掲げた社会主義国家が次々と膝を屈し、地に倒れた。そして今度は新自由主義が足音も高く登場する。レッセフェールが息を吹き返したわけだ。

 資本主義で勝利を手中にするのはより多くの資本を有する一部の資本家である。既に多国籍企業は国家を凌駕しつつある(『ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く』ナオミ・クライン)。2007年のサブプライム・ショック、2008年のリーマン・ショックを経ても尚、世界各国が量的緩和を続行している。数年以内にマネーが国家を逆襲する場面が必ず訪れることだろう。

 この手の歴史の真相を描いた本は一度絶版の憂き目にあうと二度と刊行されることがない(例えば『超帝国主義国家アメリカの内幕』マイケル・ハドソン:広津倫子〈ひろづ・ともこ〉訳、徳間書店、2002年)。武田ランダムハウスジャパンの倒産(2012年)が惜しまれる。

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戦争まみれのヨーロッパ史/『戦争と資本主義』ヴェルナー・ゾンバルト
歴史という名の虚実/『龍馬の黒幕 明治維新と英国諜報部、そしてフリーメーソン』加治将一
ロックフェラーとニュー・ワールド・オーダー/『悪の宗教パワー 日本と世界を動かす悪の論理』倉前盛通

2012-05-06

白井洋子、文月悠光、宋鴻兵


 2冊挫折、1冊読了。

ベトナム戦争のアメリカ もう一つのアメリカ史』白井洋子(刀水書房、2006年)/良書ながら学術書特有の硬さについてゆけず。序盤とインディアンの部分だけ読む。「硬さ」と書いたのは、歴史叙述が目的化しており、テーマを掘り下げる勢いに欠けているように感じたという意味である。

適切な世界の適切ならざる私』文月悠光〈ふづき・ゆみ〉(思潮社、2009年)/3分の2ほどでやめる。文月悠光は第15回中原中也賞を史上最年少の18歳で受賞。1991年生まれ。今知ったのだが道産子のようだ。瑞々しい言葉がほとばしっているのだが、五十に手が届こうとする男性が読む代物ではない(笑)。

 27冊目『通貨戦争 影の支配者たちは世界統一通貨をめざす』宋鴻兵〈ソン・ホンビン〉: 橋本碩也〈はしもと・せきや〉監訳、河本佳世〈かわもと・かよ〉訳(武田ランダムハウスジャパン、2010年)/時にひれ伏し、時に仰ぐような気持ちで読み終えた。大国の知性を思い知る。宋鴻兵〈ソン・ホンビン〉は1968年生まれ。本書を書き終えた時、まだ40歳になったばかりだというのだから恐れ入る。前著『ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナリオ 影の支配者たちがアジアを狙う』も増刷された。金融システムの本質と歴史を詳細に綴り、尚且つ近未来をも予測している。ユダヤ資本による世界の『一九八四年』化が静かに進行している。

2012-04-04

宋鴻兵


 1冊読了。

 19冊目『ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナリオ 影の支配者たちがアジアを狙う』宋鴻兵〈ソン・ホンビン〉:橋本碩也〈はしもと・せきや〉監訳、河本佳世〈かわもと・かよ〉訳(ランダムハウス講談社、2009年)/やはり中国は侮れない。私は知った。1968年生まれの恐るべき知性を。その名、宋鴻兵〈ソン・ホンビン〉。タイトルが仰々しくて陰謀モノの匂いを放っているが、ロスチャイルド家を巡る金融の歴史と手口が描かれている。この手の本の中では決定版といってよい。結局のところ、資本主義の命運が決まったのは産業革命などではなく、ナポレオンの敗退(ワーテルローの戦い)であった。本書を読むと中野剛志〈なかの・たけし〉ですら子供じみて見えてくる。