目が醒めると喉が痛んだ。まずい。無呼吸症候群があるため仰向けで寝ていると口が開いてしまう。で、慢性化した扁桃腺炎がぶり返す。痛みが酷くなると喉にカミソリが入っているような症状に至る。取り敢えず薬が欲しかったので咽喉科を探した。どこもかしこも休みだ。近所の総合病院はやっていたが混雑しているようで電話がつながらなかった。少し遠い個人病院に予約が取れた。
待合室で普段はつけることのないマスクを着用しようとしたところ右側のゴムが千切れた。証券会社が送ってきたものだ。届いた時の感謝は跡形もなく消え失せた。
私よりも後から入ってきた母子が先に案内された。少女はまだ3歳になっていない年頃だ。診察室に入るや否や少女の叫び声が建物を震わせた。必死で恐怖と戦っているのだろう。泣き声はしばし止むことがなかった。母親も医師も少女の真意を聞き出そうとしなかった。かくも強烈なメッセージをどうして無視できるのか不思議でならなかった。
診察を終えた少女は既に泣き止んでいた。私と目が合った。ちょっとばかり変顔(へんがお)をしたところ、クスッと笑った。反応がいい。母親や医師よりもはるかに反応がいい。
少女は去ったが泣き声の余韻はそこここに残っていた。私の待ち時間は軽く1時間を超えていた。読んでいた『怒りについて』(セネカ)をパタンと閉じた。病院の待合室は身体の苦痛と待たされ続ける心理的苦痛を交換する場所だ。朝方は煙草を吸うのも難儀したほどだが、痛みは軽くなっていた。受け付けに「時間がないので……」と告げて病院を後にした。
さつきは旧暦の呼称で五月晴れは梅雨の晴れ間を表わす言葉。更に「さわやか」は秋の季語で5月に使うのは適切ではない。/「五月晴れ」の使い方は? | ことば(放送用語) - 放送現場の疑問・視聴者の疑問 | NHK放送文化研究所 https://t.co/2dIMO6stBp
— 小野不一 (@fuitsuono) May 8, 2020