2021-08-19

世界金融システムが貧しい国から富を奪う/『エンデの遺言 根源からお金を問うこと』河邑厚徳、グループ現代


『金持ち父さん 貧乏父さん アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』ロバート・キヨサキ、シャロン・レクター
『国債は買ってはいけない! 誰でもわかるお金の話』武田邦彦
『平成経済20年史』紺谷典子
『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎

 ・貨幣経済が環境を破壊する
 ・紙幣とは何か?
 ・「自由・平等・博愛」はフリーメイソンのスローガン
 ・ミヒャエル・エンデの社会主義的傾向
 ・世界金融システムが貧しい国から富を奪う
 ・利子、配当は富裕層に集中する

・『税金を払う奴はバカ! 搾取され続けている日本人に告ぐ』大村大次郎
・『無税国家のつくり方 税金を払う奴はバカ!2』大村大次郎
『デジタル・ゴールド ビットコイン、その知られざる物語』ナサニエル・ポッパー

必読書リスト その二

 世界をおおう金融システムとその上に乗って自己増殖しながら疾駆する「貨幣」は、人間労働の成果と自然を含む価値高い資源を、貧しい国から富める国へと移す道具となっている。
 本来の役割を終えた貨幣は「利が利を生むことをもって至上とするマネー」となった。この変質する貨幣の全体が『エンデの遺言』に凝縮されている。エンデは予言している。
「今日のシステムの犠牲者は、第三世界の人びとと自然にほかなりません。このシステムが自ら機能するために、今後もそれらの人びとと自然は容赦なく搾取されつづけるでしょう」(NHK番組『エンデの遺言』より)
 今日、世界をめぐるマネーは300兆ドルといわれる(年間通貨取引高)。地球上に存在する国々の国内総生産(GDP)の総計は30兆ドル。同じく世界の輸出入高は8兆ドルに過ぎない。
 この巨大な通貨の総体はそのままコンピューターネットワークを従僕とした世界金融システムと同義であり、その世界金融システムは「商品として売買される通貨」をこそ前提としている。
 そのゆえに「世界市場化」(グローバライゼーション)の本意は、自由奔放なる商品としてのマネーの襲撃から地域と社会を遮断(しゃだん)するいかなる防衛システムも機能不全に陥れるか、あるいはまたそのような防衛システム不在のバリアフリー社会を普遍化すべく、高度なノウハウを総動員しようとはかる強烈な意思のなかに見ることができる。
 言葉を換えていえば、いまや世界のすべての地域と人は、そのようなマネーの暴力の前に裸で身をさらすことを余儀なくされているのである。
(『エンデの遺言』 その深い衝撃/内橋克人)

【『エンデの遺言 根源からお金を問うこと』河邑厚徳〈かわむら・あつのり〉、グループ現代(NHK出版、2000年/講談社+α文庫、2011年)】

 行き過ぎた資本主義の形を戒めるとすれば社会主義的な色彩が強くなるのは当然なのだが、そこに党派性があれば話は少し変わってくる。ある政治信条を鼓吹する姿勢が隠されているならば批判は誘導のための道具と化す。今再読すれば印象はかなり変わることだろう。

 初版は2000年2月1日の刊行である。9.11テロの7ヶ月前だ。内橋克人〈うちはし・かつと〉の指摘は正確にグローバリゼーションの本質を衝いている。しかしながら、「だから地域通貨」とはならない。

 本来は巨大資本の暴力性に対抗すべく考案されたのがビットコインであった(『デジタル・ゴールド ビットコイン、その知られざる物語』ナサニエル・ポッパー)。金融は既に融資から、コントロール~支配へと変貌を遂げた。

 マネーの歴史や意味を知る上では良書だが、ドル崩壊後の世界を見通せるほどの眼力はない。

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