・『小室直樹vs倉前盛通 世界戦略を語る』世界戦略研究所編
・『悪の論理 ゲオポリティク(地政学)とは何か』倉前盛通
・『新・悪の論理』倉前盛通
・『西洋一神教の世界 竹山道雄セレクションII』竹山道雄:平川祐弘編
・『情報社会のテロと祭祀 その悪の解析』倉前盛通
・紋章の情報美学
・『世界のしくみが見える 世界史講義』茂木誠
・『悪の超心理学(マインド・コントロール) 米ソが開発した恐怖の“秘密兵器”』倉前盛通
・『悪の運命学 ひとを動かし、自分を律する強者のシナリオ』倉前盛通
・『悪の戦争学 国際政治のもう一つの読み方』倉前盛通
・『悪の宗教パワー 日本と世界を動かす悪の論理』倉前盛通
日本の伝統文化を考える上で忘れてはならない事は、日本の紋章の事である。世界で紋章を有する地域は西欧と日本のみである。これは正当な意味の封建社会の成立した地域であり、古代官僚制や古代帝王制が最近まで続いていた地域には紋章は発生しなかった。シナ、ロシア、インドのような雑然たる農業社会にも、中央アジア、アラブのような遊牧社会にも家紋は発達せず、日本や西欧のように農業社会に専門武士団が発生し、封建領主が一定の領域を確保して統治するという地方自治的な、自律的な武士団のすんでいた社会に、それぞれの家系を示す紋章が生れてきたと云える。遊牧社会などでも家畜の識別のため、焼印を押したりするのに、ごく簡単な符号は存在しているが、高度に情報化され、すぐれたデザインによって洗練された美しさを持つ紋章は生じなかった。
遊牧社会などでは部族という意識がつよく、それぞれが独立自営する家族という意識が余り育たなかった。それゆえ、家紋を象徴する紋章が発達しなかったのであろう。封建制の下では、家族単位の自立自営がすすんだので紋章が必要になったと考えられる。
紋章の美しさでは、日本は世界に比類がない。西欧の紋章は王家や貴族のものとして、主にライオンや熊や鷲のような猛獣や猛禽をかたどったものが主である。そして庶民には紋章はない。
それに比べ、日本の紋章は花鳥風月を題材にえらび、簡潔で美しいデザインを完成した。その紋章の数は6000に達し、今や、どこの家庭でも紋章を持っている。戦後の憲法が家族制度を否定する立場を示しているにもかかわらず、日本人は核家族化してゆきながら、それぞれが紋章を有するようになった。日頃は意識しなくても、何かの時には紋章が気になるし、きちんとした正式の服装には紋が入る。洋装の場合でもカフス・ボタンに紋章入りのものを使ったりする。(中略)
情報科学と云う言葉は最近非常に普及してきたが、日本の紋章は「情報美学」の結晶である。日本人は四季の美的情感を紋章の形に情報化したのである。
【『自然観と科学思想』倉前盛通〈くらまえ・もりみち〉(南窓社、1976年/Kindle版、2018年)】
紋章については稲垣栄洋〈いながき・ひでひろ〉著『弱者の戦略』も参照せよ。
私は辛うじて古書を手に入れることができたがamazonにも在庫はない。序盤は西洋を中心に自然観の変遷を辿る科学史を俯瞰し、日本古来の自然観と宗教的感覚の相違を論じ、更に最新の科学的知見を網羅している。書籍では初めてルイセンコ論争を目にしたが、武田邦彦はきっと本書を読んでいたのだろう。入手しにくいので教科書本としておくが、もう一度読んで必読書にするかもしれない。
封建時代とは前近代的な有り様を罵る言葉と化した感があるが実はそうではなかった。藩は一種の独立国であり軍隊を持っていた。参勤交代は幕府による人質戦略で諸藩の軍事力を削ぐ目的があった。最終的には明治維新で幕府は薩長の軍事力に膝を屈した。封建制とは農業革命の次の段階と考えてよい。
私が小学生だった1970年代は家制度や家父長制を嘲笑する教師が多かった。現在は夫婦別姓を唱えている連中がその類いだ。打倒天皇制とともに家族意識を薄めることで日本を弱体化させることができる。形を変えた御家断絶といってよい。
・日清戦争によって初めて国民意識が芽生えた/『日本人と戦争 歴史としての戦争体験 刀水歴史全書47』大濱徹也
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