・『生きぬく力 逆境と試練を乗り越えた勝利者たち』ジュリアス・シーガル
・『夜と霧 ドイツ強制収容所の体験記録』ヴィクトール・E・フランクル:霜山徳爾訳
・『それでも人生にイエスと言う』ヴィクトール・E・フランクル
・『アウシュヴィッツは終わらない あるイタリア人生存者の考察』プリーモ・レーヴィ
・『イタリア抵抗運動の遺書 1943.9.8-1945.4.25』P・マルヴェッツィ、G・ピレッリ編
・『石原吉郎詩文集』石原吉郎
・第二次世界大戦で領土を拡大したのはソ連だけだった
・瀬島龍三スパイ説
・日本の近代史を学ぶ
・必読書リスト その四
瀬島龍三は関東軍高級参謀であり、ジャリコーヴォの停戦会談に同行し、東京裁判にソ連側承認として出廷するなど、シベリア抑留では何かと話題になった人物である。瀬島についてはシベリ抑留密約説やソ連スパイ説のような疑惑が根強く流されている。
しかし、スパイとなった菅原(道太郎)は昭和22年に、志位(正二)は昭和24年に帰国していることからもわかるように、「スパイに同意すれば早く帰す」が条件だった。そうでなければ帰国後スパイとして利用価値のある高い地位に昇進できないからだ。現に、「日本新聞」編集長だったコワレンコは、シベリア抑留者から徴募する「エージェントの条件は、まず頭が切れる人、そして帰国後高い地位に就ける人だ」とし、そういう人を【早期に帰還する】グループに入れたとインタビューで証言している。(共同通信社社会部編『沈黙のファイル』)。
瀬島は「戦犯」として長期間勾留され11年後に帰還しているが、対日スパイなら監獄で長々と無駄飯を食わせず早期帰国させたはずだ。瀬島は職業軍人と受刑者という人生経験しかないのに48歳という中年で伊藤忠商事に入社し、20年でトップの会長にまで上り詰める異例の出世を遂げたし、中曽根内閣でブレーンになるなど政治の世界でも活躍した。結果的には「帰国後高い地位」に就いたとはいえ、これをしもKGBの深慮遠謀とはいえまい。
【『シベリア抑留 日本人はどんな目に遭ったのか』長勢了治〈ながせ・りょうじ〉(新潮選書、2015年)】
・瀬島龍三はソ連のスパイ/『インテリジェンスのない国家は亡びる 国家中央情報局を設置せよ!』佐々淳行
歴史の評価もさることながら人物の評価ですらかくも難しい。瀬島が寝返るのに11年を要したと考えれば長勢の見方は崩れる。一方、佐々淳行〈さっさ・あつゆき〉は印象や状況証拠に基づいており具体性を欠く。
佐々は父の弘雄〈ひろお〉が近衛文麿のブレーンであり尾崎秀実〈おざき・ほつみ〉と親しかったことが人生に長い影を落としている。また親友の石原慎太郎を「一流の政治家」とする判断力に蒙(くら)さを感じないわけでもない。それでも捜査現場で培ってきた勘を侮るわけにはいかない。個人的には「スパイの可能性がある」にとどめておきたい。
ある情報を上書き更新するためには古い情報を上回る情報量が必要となる。例えば私が東京裁判史観から抜け出すためには数十冊の本を必要とし、100冊を超えてからは確信に変わり、200冊を上回ってからは国史から世界史を逆照射することができるに至った。学校教育やメディアから受けてきた些末な左翼思想を払拭するのにもこれほどの時間を要するのである。
本書は過剰な形容がないため見過ごしてしまいそうな箇所に重要な事実が隠されている。440ページの労作が電車賃程度の値段で買えるのだから破格といってよい。敗戦の現実、列強の横暴、共産主義の非道、日本人の精神性の脆さ、国家の無責任を知るための有益な教科書である。
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