2021-06-10

ロシアのサンボ選手は筋トレで反動を使う/『ロシアンパワー養成法』足立弘成


 ・ロシアのサンボ選手は筋トレで反動を使う

『新トレーニング革命 初動負荷理論に基づくトレーニング体系の確立と展開』小山裕史
『身体を芯から鍛える! ケトルベルマニュアル』松下タイケイ
『動ける強いカラダを作る! ケトルベル』花咲拓実

 技術練習は学生と一緒に何とかこなしましたが、大学でのトレーニングは綱上りや懸垂など、専門的体力を鍛える負荷の強いものが多く、指を骨折していた私には無理な内容でした。この時ばかりは、ひたすら見学するしかありませんでしたが、ふとあることに気づきます。
 「あれーっ、めちゃくちゃ反動使ってる!」
 私がウェイトトレーニングの本から得ていた知識では、例えば、懸垂をする際は広背筋に刺激を集中させるため、反動を使わないのが常識でした。しかし、反動を使った方法を行っている選手は一人だけではありません。
 「もしかすると、日本の常識は非常識なのではないのか」――そんな思いが、私の心の中に芽生え始めました。

【『ロシアンパワー養成法』足立弘成〈あだち・ひろしげ〉(英知出版、2006年/晋遊舎復刻版、2010年)】

 読んだ瞬間、腑に落ちた。ケトルベルスイングがまさしく反動を使っているのだ。ボディビルダーが腕立て伏せを解説する際に、「腕を伸び切らせると負荷が抜けてしまう」とよく言うが、運動の実際を踏まえると持続的な負荷は悪影響しかない。彼らの目的は筋肥大であって運動能力の向上ではないのだ。

 上記テキストは初動負荷理論をも示唆している。ただし本書ではチューブトレーニングを採用しており、折角の「反動理論」が台無しになっている。

 体操選手は筋トレをしないという。彼らの筋肉は体操で自然についたもので負荷と解放の減(め)り張りが、しなやかな身体性を支えているのだ。運動をリードするのは骨と腱であると私は考える。

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