2009-10-23

日本は「最悪の借金を持つ国」であり、「世界で一番の大金持ちの国」/『国債を刷れ! 「国の借金は税金で返せ」のウソ』廣宮孝信


 ・日本は「最悪の借金を持つ国」であり、「世界で一番の大金持ちの国」

『消費税は0%にできる 負担を減らして社会保障を充実させる経済学』菊池英博
『騙されないための世界経済入門』中原圭介
『〈借金人間〉製造工場 “負債"の政治経済学』マウリツィオ・ラッツァラート

 これは勉強になった。しかも、わかりやすい。ネット情報が多いのが気になった程度だ。著作における引用文献は、やはり書籍からにした方が紙価を高からしめる。

 不況対策は大雑把にいえば三つしかない。公共事業、利下げ、そしてバラマキである。利下げは資金需要が高ければ効果はあるものの、銀行が貸し出し基準を緩めなければ意味がない。公共事業とバラマキは何をどうやったところで批判を浴びる。結局のところ、糞づまりだ。進むも地獄、退くも地獄、止まっていても地獄……。

 大体、国家予算が富の再分配を目的としていれば二極化が進むはずがない。つまり、徴収・簒奪(さんだつ)された税金は勝ち組に流れていることになる。

「国債の30兆円枠」は小泉政権が掲げた公約であった。2002年度の予算が既にオーバーした際、「首相としては、もっと大きなことを考えなければならない。大きな問題を処理するにはこの程度の約束を守れなかったのは大したことではない」と開き直って見せた姿は今でも記憶に新しい。

 今尚、国債の30兆円枠に固執する与党の政治家は多いが、こんな連中が言うことを鵜呑みにしてはならない。そもそも、これは一般会計の話である。30兆円枠などと健全な姿勢を見せながら、もっと不透明な特別会計を不問に付そうとする目的があるに違いない。

 余談が過ぎた。本書が明かしているのは、マスコミの経済記事の欺瞞ぶりと、国家と会社は違うんだよ、ってな話だ。

 まず、日本の借金について多くの人々は甚だしい誤解をしている。

財部誠一:日本の借金時計

 初めて見た時は私も驚嘆した。特に「あなたの家庭の負債額」である。しかしながら、これは完全な大嘘。まず、日本の借金=私の負債額ではない。ちょっと考えてみればわかることだ。国家は誰から借金しているのか? 国民である。つまり、借金時計の正しい表示は「あなたの家庭の貸付額」となるのだ。そして二つ目の嘘は、国家の資産がここには計上されていない。部分的な情報をもって危機感を煽る典型的な事例といってよい。実は「日本は17年連続世界最大の債権国」なのだよ。

 そして、マクロ経済から見た場合に国の借金はいかなる意味を持つのか? 「民間企業の黒字」に決まっている。こんな基本的な事実すらマスコミは報じていない。世界経済を支えているのはアメリカの貿易赤字である。アメリカが黒字になれば世界が赤字となり、国家が黒字になれば民間が赤字となる。

 政府の借金(負債)は確かに大きい。しかし、政府の資産も巨額である。
 そして、借金というものを考えるときには、「誰かの借金は必ず誰かの資産」という原理原則を忘れてはならない。政府の借金のほとんどは民間の資産である。

【『国債を刷れ! 「国の借金は税金で返せ」のウソ』廣宮孝信〈ひろみや・たかのぶ〉(彩図社、2009年)以下同】

 世界全体で「連結」してしまえば、全ての資産と全ての負債は一致するはずである。つまり純資産(=資産から負債を差引いた残額)は全世界で合計すればゼロとなる。

 一方、日本経済全体を俯瞰するとどうか――

 非金融法人企業の金融純負債はピーク時には700兆円近くに達しているのだが、こんなことになってもマスコミは「普通の家庭に例えれば破産寸前」などと騒ぎ立てたりすることはない。
 最新(2008年3月)の政府の金融純負債はいまだ450兆円程度である。しかも、民間の純資産の伸びが政府の純負債の伸びを上回っているし、国全体で連結すれば世界最大かつ過去最高の対外純資産250兆円(資金循環統計では282兆円)があるのだ。
 本来ならマスコミ各社は「普通の家庭に例えれば、日本はビル・ゲイツやウォーレン・バフェット並みの億万長者」とでもいって騒ぎ立てるべきなのである。

 では何が問題なのか――

 問題は国の借金が大きいことではない。
 GDPが伸びないこと、資産効率が落ちていることが問題なのだ。

 サブプライムローン問題が発覚するまで、世界の先進国はバブルに沸いていた。その中にあって日本は「空白の10年」を経て、やっとこれからという時期だった。これほどの貧乏くじはない。

 世界各国を見ても借金は一貫して増えている。日本だけが特別な財務状況となっているわけではない。では、どうすればGDPを伸ばすことができるのか――

 ちなみに、詳しい計算過程は〔図表35〕に示すとおりで、数学的には「無限等比級数の和」の公式から求められる。
 つまり、政府が100万円支出を増やせば、GDPが233万円増えるということになるのだ。このような効果を「乗数効果」という。
 政府の支出は、それ以上のGDPを生み出す。政府が支出を増やせば、GDPはそれ以上に増える。これが、アメリカのGDPが借金以上に伸びていることの原理である。

 これが答えである。政府支出を増やすことで、民間企業に活力を与えれば当然のごとく税収は増える。政府与党の無策ぶりを見ていると、意図的に不況を維持しているようにすら感じてしまう。

 空白の10年のツケは大きい。終身雇用がことごとく破壊され、将来不安を招いてしまった。未来に不安を抱えたままで消費が上向きになることは考えにくい。とすると、「いつでも安心して転職できる」社会基盤が求められる。

 最後にもう一つ。資本主義経済の本質は、効率ではなく無駄(=余剰)にあると私は考える。景気対策には無駄づかいが一番。

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