・『こんな日本に誰がした 戦後民主主義の代表者・大江健三郎への告発状』谷沢永一
・『悪魔の思想 「進歩的文化人」という名の国賊12人』谷沢永一
・中国の核実験を礼賛した大江健三郎
「トロイの木馬」はギリシャ神話のひとつであるが、現代では、敵国の工作員たちに籠絡(ろうらく)された著名人や政府内部政治家や役人、そして報道機関、芸能人たちが、巧妙に自国を破壊する罠(わな)を指して、「トロイの木馬」と呼ぶ。
特に共産党独裁国家が放った工作員や、その国家や工作員と親密になった人物が創り出すトロイの木馬の破壊力は絶大である。狙われた国家の中で権力中枢や企業経営者、報道中枢、テレビ番組や映画制作中枢が、トロイの木馬になりうるから被害は甚大である。国家を内側から破壊させる威力がある。
【『脱原発は中共の罠 現代版「トロイの木馬」』高田純〈たかだ・じゅん〉(ハート出版、2021年)以下同】
高田のことはツイッターで知った。フォローしていたのだが、しばらくして解除した。今となっては理由を覚えていない。が、理由があったから解除したのは確かである。
とにかく「トロイの木馬」というキーワードがこれでもかというほど出てくる。やや合理性を欠いており、レッテル貼りに近い印象を受けた。文章もよくない。上記テキストだと、「罠を指して」とあるが、内通者を指す場合もある。また最後の文章は「破壊する」か「崩壊させる」が適当だろう。
東日本大震災が発生した2011年以来、「反原発」や「脱原発」感情を煽(あお)る集団がいる。その先導者の一人はノーベル文学賞の大江健三郎氏で、象徴的な「木馬」だ。
震災のあった平成23年6月に始まった「さようなら原発1000万人アクション」は9人の呼びかけ人=内橋克人氏、大江健三郎氏、落合恵子氏、鎌田慧氏、坂本龍一氏、澤地久枝氏、瀬戸内寂聴氏、辻井喬氏、鶴見俊輔氏を担いだ、脱原発運動である。(中略)
彼(※大江)は昭和時代、1964年10月に始まった中共の核実験・核武装に対して、
「核実験成功のキノコ雲を見守る中国の若い研究者や労働者の喜びの表情が、いかにも美しく感動的であった」(『世界』67年9月号)
と言った。その地は、中共に侵略された新疆(しんきょう)ウイグル地区である。
中共の核武装はYESで、日本の核エネルギーの平和利用はNOとする大江氏の矛盾。(中略)
彼らの目標は、「日本文明の発展と国防強化を阻止することにある」。すなわち、反国益、反日行動である。こうした「市民」運動を大々的、好意的に取り上げるマスコミは、異常だ。「市民の声」は「国民の声」なのか。
大江健三郎にノーベル賞を授与したこと自体が一種の国内分断工作なのだろう。分割統治の進化形と考えてよい。
左翼を教師にしたのはGHQの占領政策であったが、既に75年以上が経っている。今更米国の責任にはできないだろう。憲法改正もそうだが、いつまでもGHQの罪を主張したところで現実は何ひとつ変わらない。あるいは日本がアメリカの属国だとしても、それを許さない国民意識があれば国家の独立はあり得ると思う。
規制緩和についても同じことが言える。規制に阻(はば)まれている人々が、その理不尽を世間に知らしめ、関係省庁および役人の氏名を挙げ、国民の不利益を広く説いてゆけば、一定の世論は形成される。ただし何らかのプラットフォームが必要ではあるが。
「脱原発は中共の罠」かも知れないが、原発事業に多くの嘘があったのもまた確かである。その責任を誰も取っていない。きちんと責任を明らかにした上で切腹させるのが当然だろう。私は東京裁判は裁判に名を借りたリンチであったと認識しているが、戦後に敗戦責任を問うことのなかった日本国民のあり方こそ大きな問題だと考える。