・『錯視芸術の巨匠たち 世界のだまし絵作家20人の傑作集』アル・セッケル
・『46年目の光 視力を取り戻した男の奇跡の人生』ロバート・カーソン
・『脳は美をいかに感じるか ピカソやモネが見た世界』セミール・ゼキ
・『「見る」とはどういうことか 脳と心の関係をさぐる』藤田一郎
・『もうひとつの視覚 〈見えない視覚〉はどのように発見されたか』メルヴィン・グッデイル、デイヴィッド・ミルナー
・視覚というインターフェース
・『ユーザーイリュージョン 意識という幻想』トール・ノーレットランダーシュ
・『ポスト・ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるとき』レイ・カーツワイル
・必読書リスト その五
実在に関する真実を告知しないのなら、知覚はどうして有用でありうるのか? いかに私たちの生存に資するのか? 直観を導いてくれるたとえ(メタファー)を用いて説明しよう。あなたが編集しているファイルは、デスクトップ画面の中央に青い長方形のアイコンで示されていたとする。この事実は、そのファイル自体が青く、長方形をし、コンピューターの中央部に存在していることを意味するのか? もちろんそうではない。アイコンの色はファイルの色ではない。それには色などなく、アイコンの形や位置は、ファイルの真の形や位置を示しているのではない。そもそも形、位置、色に関する言葉は、コンピューター上のファイルを記述することなどできない。
デスクトップインターフェース[この例ではデスクトップ画面を指す]の目的は、利用者にコンピューターの「真実」を開示することにあるのではない。ちなみに、このたとえでの「真実」とは、電子回路や電圧や一連のソフトウェアを指す。むしろインターフェース[インターフェースについては訳者あとがき参照]の目的は、「真実」を隠して、Eメールを書く、画像を編集するなどといった有用な作業がしやすくなるよう、単純な図解(グラフィック)を提示することにある。Eメールを書くために自分で電圧を調節しなければならなかったら、あなたが書いたEメールが友人のもとに届くことは決してないだろう。
これは進化がなし遂げた仕事である。つまり進化は、真実を隠して、子孫を生み育てるのに十分なだけ生存するために必要とされる単純なアイコンを表示する感覚作用を私たちに与えてくれたのだ。周囲を見渡したときにあなたが知覚する空間は三次元のデスクトップ画面であり、リンゴやヘビやその他の物体は、この三次元デスクトップ画面上のアイコンにすぎない。それらのアイコンが有用である理由の一つは、実在の持つ複雑さを隠蔽してくれるからだ。
【『世界はありのままに見ることができない なぜ進化は私たちを真実から遠ざけたのか』ドナルド・ホフマン:高橋洋〈たかはし・ひろし〉訳(青土社、2020年/原書、2019年)】
つまり感覚が捉えているのは「シンボル」に過ぎないというわけだ。中々スリリングなアイディアだ。私にとっては意外でも何でもない。なぜなら視覚は種(しゅ)によって全く違う世界が現れる。同じものの姿が違うのだ。
視覚は種にとって有益な情報を取捨選択するように進化したのだろう。
英単語の「Interface」の直訳は「境界面」「接点」であり、ビジネス用語の「インターフェース」はここから「異なる2つのものを仲介する」という意味で使われます。
【「インターフェース」ってどういう意味? わかりやすい使い方と例文】
我々が視覚情報を絶対視してしまうのは触覚など別の感覚によって補強できるためだ。世界と接触した時の感覚全てがインターフェースに過ぎないと考えれば、我々が「ありのままの世界」を認識することは不可能であることが理解できよう。
世界は感覚の中に存在すると考えたのが唯識(ゆいしき)である。しかしこれだと世界=インターフェースとなってしまう。むしろ感覚は世界を知る手掛かりと考えるべきだろう。
・視覚情報は“解釈”される/『人体大全 なぜ生まれ、死ぬその日まで無意識に動き続けられるのか』ビル・ブライソン