ラベル 政治 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 政治 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2021-12-14

民主政の欺瞞/『自由と民主主義をもうやめる』佐伯啓思


『国家の品格』藤原正彦
『日本人の誇り』藤原正彦
『日本の敵 グローバリズムの正体』渡部昇一、馬渕睦夫

 ・左翼と保守の顛倒
 ・米ソ冷戦後、左右の構図が変わった
 ・民主政の欺瞞

・『反・幸福論』佐伯啓思 2012年
・『さらば、資本主義』佐伯啓思 2015年
・『さらば、民主主義 憲法と日本社会を問いなおす』佐伯啓思 2017年
・『「脱」戦後のすすめ』佐伯啓思 2017年
・『「保守」のゆくえ』佐伯啓思 2018年
・『死と生』佐伯啓思 2018年
・『死にかた論』佐伯啓思 2021年

日本の近代史を学ぶ

 結局、民主主義的な討論の場では、ひとたびある方向に流れができると、誰もなかなか反対できない、いかにももっともらしい言葉だけが通用し、流通することになります。たいていの場合、表層的に立派なことや、情緒的なことが、まかり通っていきます。一見反対しづらい形だけの正論がまかり通る、あるいは、声の大きいものの意見が通っていきます。
 これが、私が民主主義を信頼できない大きな理由です。その意味で私は、民主的な政治の「公的」な場面で発せられる言辞よりも、「私」の微妙な感情や事情のほうが気になるのです。

【『自由と民主主義をもうやめる』佐伯啓思〈さえき・けいし〉(幻冬舎新書、2008年)以下同】

 何度も書いてきたが「民主主義」という誤訳がまずい。デモクラシーに「イズム」は付いていない。民主政あるいは民主制とするのが当然だ(『民主主義という錯覚 日本人の誤解を正そう』薬師院仁志)。佐伯は具体例として政治とカネや談合を挙げている。言いたいことはわかるが、まずは政策本位で投票するエートスを涵養するのが先だ。選挙が政策競争となっていないところに最大の問題がある。地盤・看板・カバンを投票する側が無視しないことには始まらない。

 世の中には「非合理的なものの効用」ということがあります。「あいまいなものの効用」もあるのです。大声では言えないが、大事だと思うことがある。私には、非合理的なものを改めれば世の中が豊かになるという、近代主義的・進歩主義的な考え方ですべてがうまくいくとは、とても思えませんでした。

 規制緩和をした後に言うべきことだ。自由競争を阻む規制を一掃し、既得権益を全部潰してからの話である。

 イギリスに入ってすぐ感じるのは、イギリスが、いかに近代なるものを警戒しているかということです。「近代」や「進歩」なるものを、無視こそしないものの、軽信する姿勢を、可能なかぎり避けようとする。逆に、古いものや伝統的なものをいかに守るか、それぞれの時代に合わせてどううまく活かすか、そのことに非常に腐心している。

 イギリスには古いものを尊(たっと)ぶ伝統がある。ご存じのようにイギリス車はモデルチェンジすることも少ない。よい物を長く使う文化がある。一方同じ島国でありながら日本の場合はどうか? 温故知新という言葉はあるが生活空間に占める物は新しいものばかりだろう。新奇なもの(特に舶来品など)を好む性質もあるが、雨の多さと湿度の高さが影響しているように思う。建物もそうだが100年単位で保つことは難しい。カビや腐敗には逆らえない。

 価値観が多様化すると「非合理さ」や「曖昧さ」はコミュニケーションの妨げとなる。「察する」ことも大切だが、「はっきり言いたいことを述べる」技術も必要だろう。

 民主政の欺瞞は左翼政党の政策に現れる。平和を説きながら他国を利し、人権を主張しながら外国人に行政サービスを受けさせようとする。彼らが「日本を破壊したい」「天皇制を妥当したい」と率直に語ることはない。

米ソ冷戦後、左右の構図が変わった/『自由と民主主義をもうやめる』佐伯啓思


『国家の品格』藤原正彦
『日本人の誇り』藤原正彦
『日本の敵 グローバリズムの正体』渡部昇一、馬渕睦夫

 ・左翼と保守の顛倒
 ・米ソ冷戦後、左右の構図が変わった
 ・民主政の欺瞞

・『反・幸福論』佐伯啓思 2012年
・『さらば、資本主義』佐伯啓思 2015年
・『さらば、民主主義 憲法と日本社会を問いなおす』佐伯啓思 2017年
・『「脱」戦後のすすめ』佐伯啓思 2017年
・『「保守」のゆくえ』佐伯啓思 2018年
・『死と生』佐伯啓思 2018年
・『死にかた論』佐伯啓思 2021年

日本の近代史を学ぶ

 この図式が意味することは何なのでしょうか。
 憲法にせよ、教育基本法や戦後教育システムによせ、戦後日本の体制の基軸です。戦後日本の国の柱は、公式的に言えば、国民主権、基本的人権、平和主義を三本柱とする憲法、そして、自由と平等、個性尊重を掲げる戦後教育です。
「左翼」は、この戦後体制を守ろう、もしくは、その理念をもっと実現しようと言っている。戦後の認識について言えば、左翼は徹底して「体制派」です。いわば「戦後体制」の優等生が「左翼」ということになります。
 これに対して、むしろ、「保守」のほうが「反体制的」と言えます。少なくとも心情的には、戦後社会に強い違和感を持ち、憲法や戦後教育に対して批判的です。
 左翼=反体制派、保守=体制べったり、と多くの人が思っています。だが、これはかつての話、冷戦体制時代のことです。冷戦体制のもとでは、確かに、左翼は、あわよくば革命でも起こして社会主義を実現したい、と考えていた。これは確かに反体制的でしょう。これに対して、保守のほうは、自由主義的な資本主義陣営を守りたい、と考えている。その意味では、体制派でした。
 しかし、冷戦は終わりました。すなわち、もうこのような図式は成り立たない、ということです。実際、「左翼」が「サヨク」に変わったとき、進歩主義運動は、もはや、体制を変革して、社会主義のような新たな社会をつくり出すのではなく、自由や民主主義、人権、平和主義などを謳(うた)った戦後日本を全面的に肯定し、ともかくも、戦後日本というその枠組みを守っていくという体制的なものへと変わってしまったのです。
 それに比べ、冷戦以降、いわゆる「保守」の側からこそ、戦後日本を変えていこうという様々な問題が提示されてきました。近年、もっとも真正面から「保守」と唱えた安倍元首相の掲げたテーマからして、「戦後レジームからの脱却」だったのです。
 これは、「戦後体制」の根本的変革、ということです。これほどまでに正面から、「現体制」の変革を唱えた政治家はいません。しかも政権政党の党首で、一国の首相が、「現体制」の変革を訴えるという、驚くべき提案です。
 しかし、「左翼」はこれに反対した。ある左翼のコメンテーターが、テレビで「いったい、体制を変える、などということをしてもいいのでしょうか」などというコメントをしていました。左翼と言えば「反体制」の代名詞だった時代を思うと、冗談のような話です。

【『自由と民主主義をもうやめる』佐伯啓思〈さえき・けいし〉(幻冬舎新書、2008年)】

 テキストは前回の続き。戦後教育は「日本を嫌いにするための教育」だった。特に愛国心はタブーであった。愛国は右翼の看板だった。で、右翼とは街宣右翼を意味した。民族派の台頭も功を奏したとは言い難い。

 GHQによる占領期間が日本史の空白期間であったとしても、それだけで戦後の動きを全部GHQにするのはお門違いだ。戦前に大いなる嘘があったのだろう。そう考えなければ平仄(ひょうそく)が合わない。「戦後体制」を敷いたのはGHQだが、それをよしとしたのは戦後の日本人である。

 政府与党は、日教組や日弁連、あるいは新聞社やテレビ局を長らく放置してきた。竹島も放置し、尖閣諸島も放置しつつある。極めつけは拉致被害者の放置だ。そして今、虐殺され、生きながら臓器を抜かれるウイグル人をも放置しようとしている。

左翼と保守の顛倒/『自由と民主主義をもうやめる』佐伯啓思


『国家の品格』藤原正彦
『日本人の誇り』藤原正彦
『日本の敵 グローバリズムの正体』渡部昇一、馬渕睦夫

 ・左翼と保守の顛倒
 ・米ソ冷戦後、左右の構図が変わった
 ・民主政の欺瞞

・『反・幸福論』佐伯啓思 2012年
・『さらば、資本主義』佐伯啓思 2015年
・『さらば、民主主義 憲法と日本社会を問いなおす』佐伯啓思 2017年
・『「脱」戦後のすすめ』佐伯啓思 2017年
・『「保守」のゆくえ』佐伯啓思 2018年
・『死と生』佐伯啓思 2018年
・『死にかた論』佐伯啓思 2021年

日本の近代史を学ぶ

 今日の両者(※左翼と保守)の争点は、しいて言えば、憲法問題、あるいはナショナリズムや歴史問題と言ってよいでしょう。ある意味、奇妙なことなのですが、冷戦後、90年代のグローバリズムの時代になって、ナショナリズムや歴史認識が人々の大きな関心事になってきたのです。
 憲法改正を含めて、日本の国の防衛問題をどうするのか。国際社会で日本がバカにされずに責任を果たすにはどうすればよいのか。90年代の後半あたりから、こうしたテーマが浮上します。
 また、中国、韓国の動きとも連動した形で、あらためて、「あの戦争」についての解釈問題が出てきます。アジアへの謝罪をどうするか、という問題が提示され、それとともに、「あの戦争」についての歴史観論争、さらには、歴史教育の問題、と続いていきます。
 むろん、「左翼」は憲法改正に反対、歴史教科書の見直しにも反対です。これに対して、「保守」は、憲法を改正して集団的自衛権を認めよ、と言う。歴史認識の見直しを要求して、「新しい歴史教科書」を作ったりします。
 なんとも、妙な構図ができてしまったものです。もともとは「革新」や「進歩」を唱えていた「左翼」が、徹底して新しい動きに抵抗し、憲法にせよ、教育によせ、基本的に現状維持を訴える。むしろ、「保守」の側が変革を唱える、というねじれた図式です。

【『自由と民主主義をもうやめる』佐伯啓思〈さえき・けいし〉(幻冬舎新書、2008年)】

 わかりやすい文章で丁寧に説くのが佐伯流である。保守にありがちな威勢のよさは全く見受けられない。真のリベラルは静かだ。竹山道雄中西輝政の間に位置する印象を受けた。

 1990年代の時代の動きを簡潔に素描(そびょう)している。無論、これは2000年代から振り返って初めて見える風景である。私が気づいたのは2010年代のこと。90年代はまだまだ左翼が優勢であった。新しい歴史教科書をつくる会は右翼扱いされていたし、私なんぞは友人と「谷沢永一も変わり果ててしまったな」と嘆いたものだ。保守反動という感覚はそれほど根強かったのだ。90年代のテレビ番組の動画を見れば一目瞭然である。筑紫哲也〈ちくし・てつや〉や本多勝一、加藤周一が、まだもてはやされていた。『週刊金曜日』の創刊が1993年である。94年には村山富市が首相となり、村山内閣総辞職に伴い社会党は社民党に名前を変える。1989年参院選(土井ブーム)と1990年衆院選あたりを絶頂期と見ていい。

 当時、私は6人の後輩を喪ったこともあり、世情のことはよく覚えていない。テレビを持っていなかったし、寝しなのアルコールが記憶を洗い流した感がある。きっと多忙すぎたのだろう。

 ネトウヨ(ネット右翼)という言葉を目にするようになったのは2000年代に入ってからのことである。多分、新しい歴史教科書をつくる会の動きを理解する人々が増え初めた頃だろう。ほぼ同時に自虐史観というキーワードが散見されるようになったと記憶している。第一次安倍政権の「戦後レジームからの脱却」というメッセージも大きな影響を及ぼした。

 その後、2005年の中国における反日活動が報じられると、日本人の反中国感情が一気に高まった。嫌韓本が次々と発行されたのもこの頃からだ。中韓の反日行動が、日本人を覚醒させ近代史に目を向けたさせたのだ。

 2000年代になり左翼はサヨクと変質しリベラルを名乗り始める。90年代の混乱は米ソ冷戦構造の終焉(91年、ソ連崩壊)がもたらした結果であった。それから10年を経て、左翼は環境・人権・フェミニズムに舵を切る。その有り様は「言論のゲバ棒化」といってよい。理論武装というヘルメットを着用しながら。左翼弁護士や活動家は国連や中国・韓国を焚き付け、日本の戦争責任を追求させる。そうした反日行動を全面的にバックアップしてきたのが朝日新聞であり岩波書店であった。

2021-10-31

親北朝鮮派の辻元清美と山崎拓/『世界史講師が語る 教科書が教えてくれない 「保守」って何?』茂木誠


『経済は世界史から学べ!』茂木誠
『「戦争と平和」の世界史 日本人が学ぶべきリアリズム』茂木誠
『「米中激突」の地政学』茂木誠

 ・「アメリカ合衆国」は誤訳
 ・1948年、『共産党宣言』と『一九八四年』
 ・尊皇思想と朱子学~水戸学と尊皇攘夷
 ・意識化されない無意識は強迫的に受け継がれていく
 ・GHQはハーグ陸戦条約に違反
 ・親北朝鮮派の辻元清美と山崎拓

世界史の教科書
日本の近代史を学ぶ
必読書リスト その四

 リクルート事件で首相を辞任した竹下が、キングメーカーとして擁立した海部俊樹首相に対し、小泉は宮澤派(宏池会)の加藤紘一、中曽根派の山崎拓〈やまさき・たく〉と組んで海部続投阻止を訴え、3人の頭文字からYKKと呼ばれました。
【YKKは親米派の小泉、親中派の加藤紘一、親北朝鮮派の山崎と政治信条はばらばらですが、72年初当選の同期で、経世会支配の中で干されてきたという被害者意識が共通】していました。

【『世界史講師が語る 教科書が教えてくれない 「保守」って何?』茂木誠〈もぎ・まこと〉(祥伝社、2021年)】


「自民党大阪府連は辻元氏を応援した山崎氏を問題視。除名処分を求める上申書を党本部に提出した」(10月29日:今西憲之 AERAdot.編集部)と報じられているが、自民党執行部はどのような判断をするのか。

 辻元清美といえば関西生コン事件で名前が上がった。

辻元清美議員に“ブーメラン”? 生コン業界の“ドン”逮捕で永田町に衝撃(1/2)〈週刊朝日〉 | AERA dot. (アエラドット)

 関生(正式名称は「連帯ユニオン関西地区生コン支部」)は沖縄の基地反対運動でも激しい活動を行っており、背後には北朝鮮の影がちらつく。関生とは保守系政治活動家の瀬戸弘幸が早い時期から戦ってきた。関生は組合の仮面をつけた北朝鮮系暴力集団と考えてよさそうだ(Vol.1 暴かれた虚像 - 近畿生コン業界情報サイト 結)。

 共産主義者は暴力革命の前提があるため血腥(なまぐさ)い行為には免疫が働く。かつては内ゲバで仲間同士を凄惨なリンチの末に殺害してきた歴史がある。

 山崎拓が狙っている北朝鮮利権は川砂、鉱物資源、労働力などであろう。実は宝の山なのだ。世界のレアアースの2/3が北朝鮮にあり、10兆ドルの価値があると試算されている。

 特に書きたいことはない。単なる時事ネタだ。今日は衆議院選の投票日。

GHQはハーグ陸戦条約に違反/『世界史講師が語る 教科書が教えてくれない 「保守」って何?』茂木誠


『経済は世界史から学べ!』茂木誠
『「戦争と平和」の世界史 日本人が学ぶべきリアリズム』茂木誠
『「米中激突」の地政学』茂木誠

 ・「アメリカ合衆国」は誤訳
 ・1948年、『共産党宣言』と『一九八四年』
 ・尊皇思想と朱子学~水戸学と尊皇攘夷
 ・意識化されない無意識は強迫的に受け継がれていく
 ・GHQはハーグ陸戦条約に違反
 ・親北朝鮮派の辻元清美と山崎拓

世界史の教科書
日本の近代史を学ぶ
必読書リスト その四

 GHQは、敗戦後の日本国民がいまだ昭和天皇に尊崇の念を抱き、秩序を保っていることに注目し、【天皇を元首とする大日本帝国の形を残したまま、間接統治をする】ことにしました。政府や国会の上に置かれたGHQから、超法規的な「GHQ指令」が発せられ、日本政府にこれを実行させたのです。【ナチス国家を完全に解体し、直接軍政を敷いたドイツとは対照的】です。
 GHQの統治下で内閣を組織したのは、皇族出身の東久邇宮稔彦王〈ひがしくにのみやなるひこおう〉、元外交官の幣原喜重郎〈しではら・きじゅうろう〉、同じく元外交官の吉田茂〈よしだ・しげる〉の順番です。
 幣原は、大正デモクラシー期に長く外相を務め、ワシントン海軍軍縮条約をまとめて軍と対立したことが、GHQに評価されました。この「英語ができる平和主義者」幣原のもとで、日本の交戦権を制限する新憲法を制定させることになりました。
 戦時国際法の基準とされるハーグ陸戦条約は、こう定めています。

「第43条 国の権力が事実上占領者の手に移りたる上は、占領者は、絶対的の支障なき限り、【占領地の現行法律を尊重】して、なるべく公共の秩序および生活を回復確保するため、施し得べき一切の手段を尽すべし」

 アメリカの日本占領は、1951年のサンフランシスコ平和条約発効まで続きました。この間、占領者アメリカには、ハーグ陸戦条約に基づいて【占領地日本の現行憲法を尊重する、】という国際法上の義務があったのです。
 したがって、GHQが日本の憲法を制定することはできません。そこで【マッカーサーは、幣原内閣に圧力をかけ、日本政府自らの意思で新憲法を起草したように見せかけた】のです。
 この「圧力」とは、つまり公職追放と検閲(プレスコード)です。
 公職追放は、戦時下の軍と政府の要人、思想家など「軍国主義者」に始まり、GHQを批判する者すべてを公職から解雇しました。空襲で産業が壊滅し、戦地からの帰還兵がどっと戻ってきたため、失業率が異常に高かった当時の日本で職を失うことは飢餓(きが)と直面することを意味します。幣原内閣は、組閣の直後に幣原首相、吉田外相ら3名を除く全閣僚を公職追放され、親英米派の幣原も「マックのやつ、理不尽だ」とうめきます。

【『世界史講師が語る 教科書が教えてくれない 「保守」って何?』茂木誠〈もぎ・まこと〉(祥伝社、2021年)】

 こうした屈辱の歴史を教えない限り、自民党の変節も見えてこない。

日本国憲法の異常さ/『国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動』伊藤祐靖
憲法9条に埋葬された日本人の誇り/『國破れてマッカーサー』西鋭夫
GHQは日本の自衛戦争を容認/『いちばんよくわかる!憲法第9条』西修
憲法9条に対する吉田茂の変節/『平和の敵 偽りの立憲主義』岩田温
国民の国防意志が国家の安全を左右する/『「日本国憲法」廃棄論 まがいものでない立憲君主制のために』兵頭二十八

 ただし、日本は議会制民主主義を採用しているのだから、国民の意思が問われて然るべきだろう。「日本の近代史を知らなかった」という言いわけは通用しない。無知に甘んじてきた己を恥じるのが先だ。真珠湾攻撃から敗戦までは3年8ヶ月であったが、GHQの進駐は6年半にも及んだ。実は戦争そのものよりも占領期間の方が長いのだ。どう考えてもおかしい。この間、WGIPで日本国民を洗脳し、憲法を与え、アメリカ流の民主政を押しつけた。

 だがそれは既に遠い過去のことだ。現在にあっても安全保障についてはアメリカに依存しているが、国民が自立を望めば憲法改正はいつでも可能なはずだ。それをやろうともしないのは国民の意思が戦後レジームをよしとしている証拠である。

 近代化した日本は常にロシアの南下を警戒していた。韓国を併合したのも彼(か)の国がロシアの軍門に降(くだ)ることを防ぐためだった。日清戦争が起こった1894年(明治27年)の軍事費は国家予算の69.4%を占めた。日露戦争が勃発した1904年(明治37年)は81.9%にも及んだ(帝国書院 | 統計資料 歴史統計 軍事費(第1期~昭和20年))。国家存亡の危機意識がどれほど高かったかを示して余りある。

 1969年に国連の報告書で東シナ海に石油埋蔵の可能性があることが指摘されると、それまで何ら主張を行っていなかった中国は、日本の閣議決定から76年後の1971(昭和46)年になって、初めて尖閣諸島の「領有権」について独自の主張をするようになりました。

尖閣諸島|内閣官房 領土・主権対策企画調整室

 2010年には尖閣諸島中国漁船衝突事件が起こった。仙谷由人〈せんごく・よしと〉官房長官の独自判断で釈放されたと報じられた。sengoku38なる人物が衝突動画をYou Tubeにアップロードした。当時、海上保安官だった一色正春〈いっしき・まさはる〉の義憤に駆られた行動がなければ、日本国民の国防意識は今もまだ眠ったままとなっていたに違いない(尖閣諸島中国漁船衝突映像流出事件)。

尖閣諸島周辺海域における中国海警局に所属する船舶等の動向と我が国の対処|海上保安庁

 民主政が正しく機能するためには情報公開が前提となる。私が民主政を信用しないのは情報公開がなされていない現実と、たとえ公開されたとしても国民が正しく判断するとは到底思えないためだ(『民主主義という錯覚 日本人の誤解を正そう』薬師院仁志)。

 国家は国民を欺(あざむ)き、歴史は嘘で覆われている。その最たるものが日本国憲法である。

2021-10-29

意識化されない無意識は強迫的に受け継がれていく/『世界史講師が語る 教科書が教えてくれない 「保守」って何?』茂木誠


『経済は世界史から学べ!』茂木誠
『「戦争と平和」の世界史 日本人が学ぶべきリアリズム』茂木誠
『「米中激突」の地政学』茂木誠

 ・「アメリカ合衆国」は誤訳
 ・1948年、『共産党宣言』と『一九八四年』
 ・尊皇思想と朱子学~水戸学と尊皇攘夷
 ・意識化されない無意識は強迫的に受け継がれていく
 ・GHQはハーグ陸戦条約に違反
 ・親北朝鮮派の辻元清美と山崎拓

世界史の教科書
日本の近代史を学ぶ
必読書リスト その四

 この状況(※大東亜戦争敗戦)において、国家再生のためには新しいモデルが必要でした。
【日本人はそのモデルを、恐るべき敵であったアメリカに求めた】のです。
ストックホルム症候群」という精神医学の概念があります。1973年にスウェーデンで起こった銀行強盗で、銀行員数名が人質として監禁され、死の恐怖に怯(おび)えて数日間を過ごした事件がありました。事件は結局、警察が突入して犯人を逮捕しますが、この間、人質となっていた被害者が、犯人を擁護するような言動を繰り返したのです。この事例から、極度の恐怖を体験した人間は、加害者を自分と同一視することで恐怖を免れるという心理的メカニズムがあることが理論化されました。日常的に夫から虐待を受ける妻、親から虐待を受ける子どもがなかなか被害を訴えようとしないもの、同じメカニズムによるものです。
 連日連夜の空爆を受け、原爆を投下され、米軍に軍事占領された日本人の深層心理に、同じメカニズムが働いたと私は見ています。アメリカという悪魔にこれ以上蹂躙(じゅうりん)されないためには、アメリカを理想国家として賞賛し、アメリカと一体になるしかない……。
 これは日本人の集団的な無意識として働いたものですから、文献として残っているわけではありません。しかし【この無意識は、意識化されない限り、戦後日本人に世代を超えて強迫的に受け継がれていく】のです。

【『世界史講師が語る 教科書が教えてくれない 「保守」って何?』茂木誠〈もぎ・まこと〉(祥伝社、2021年)】

「意識化されない無意識は強迫的に受け継がれていく」――衝撃的な一言である。これを読むだけでも本書には必読書の価値がある。意識化とは「見る」ことだ。ありのままに真っ直ぐ見つめれば答えは自ずから導き出される。

 黒船襲来を「強姦」と位置づけたのは司馬遼太郎であった(『黒船幻想 精神分析学から見た日米関係』岸田秀、ケネス・D・バトラー)。ただ、歴史は振り返った時にしか見えてこない。当事者たちは川の流れの中で自分たちの位置すら理解できない。

 意識化されるのは一瞬である。「あ!」と気づけば違う世界が開ける。例えば私の場合、北海道で育ったこともあって長らく皇室制度を軽んじてきた。義務教育を苫小牧~帯広~札幌で受けてきたが、君が代を歌ったことは一度しかない。それも音楽の授業で習ったのだ。国旗に対する敬意を教わることもなかった。これが社会党王国の現状だった。もちろん道民が由緒正しい血筋と無縁であった背景にも由来しているのであろう。父方の祖父は戦争で樺太から引き揚げてきたと聞いている。北海道に家意識はない。「内の嫁」「内のしきたり」という言葉を聞いたことがない。このため全国で一番離婚が多い。家を背負っていないのだから当然だ。感覚はややアメリカに近いものがある。私は上京して「なんと因習が深いのだろう」と驚いた憶えがある。寺社仏閣も桁違いに多い。

 知人のライターが東日本大震災に対する天皇のメッセージをツイッターで紹介していた。彼は「陛下」と尊称をつけていた。それを見て、「へえー」と呟き、次の瞬間に「あ!」となった。胸の内に小野田寛郎〈おのだ・ひろお〉の生きざまがまざまざと蘇った。尊皇の精神が息を吹き、血の中に流れ通った瞬間であった。様々な知識が線となってつながった。大東亜戦争の歴史的な意味合いもストンと腑に落ちた。私は日本人となったのだ。

 これは決して大袈裟な話ではない。若い時分から本多勝一や鎌田慧〈かまた・さとし〉、黒田清〈くろだ・きよし〉、浅野健一などを読んで、完全に頭の中はリベラルに洗脳されていた。彼らの反日感情を見抜くことができなかった。左翼が主張するポリティカル・コレクトネスは破壊工作の手段に過ぎない。

 日本近代史に関する書籍を読み漁り、菅沼光弘を経て、竹山道雄に辿り着き、小室直樹倉前盛通で完璧に補強した。武田邦彦の影響も大きい。

 民族的な自覚は危機の中から芽生える。戦争や災害の中で国家の輪郭が際立ってくるのだ。

尊皇思想と朱子学~水戸学と尊皇攘夷/『世界史講師が語る 教科書が教えてくれない 「保守」って何?』茂木誠


『経済は世界史から学べ!』茂木誠
『「戦争と平和」の世界史 日本人が学ぶべきリアリズム』茂木誠
『「米中激突」の地政学』茂木誠

 ・「アメリカ合衆国」は誤訳
 ・1948年、『共産党宣言』と『一九八四年』
 ・尊皇思想と朱子学~水戸学と尊皇攘夷
 ・意識化されない無意識は強迫的に受け継がれていく
 ・GHQはハーグ陸戦条約に違反
 ・親北朝鮮派の辻元清美と山崎拓

世界史の教科書
日本の近代史を学ぶ
必読書リスト その四

【専制君主・天皇親政ではなく、第4章でも挙げた天皇が「治(し)らす」姿が1000年以上つづてきた日本の伝統的統治体制であり、「国柄」「国体」というべきもの】なのです。

 その一方で、【神話とも紐づけながらその世界観への復古を理想とし、天皇を崇拝して死も厭(いと)わないという激烈な尊皇思想が、中世のある段階から登場】します。これを中国の朱子学の影響だと見抜いたのが山本七平〈やまもと・しちへい〉でした(『現人神の創作者たち』〔上・下〕ちくま文庫)(第3部393ページ参照)。(中略)
 朱子学は、【主君と臣下の区別を重んじる「大義名分論」、中華(文明)と夷狄(いてき/蛮族)を厳しく峻別(しゅんべつ)する「華夷(かい)の別」】という二つのキーワードで要約できます。
 謀反人や夷狄による政権奪取は天が定めた「大義に反する」から絶対に認めない、たとえ武力で屈しても精神において屈することはない、という不屈の精神は、モンゴルの侵略を受け続けた中国人の心をとらえました。
 南宋からの亡命者は鎌倉時代の日本にも来ており、彼らが日本にこの朱子学を伝えたのです。

【『世界史講師が語る 教科書が教えてくれない 「保守」って何?』茂木誠〈もぎ・まこと〉(祥伝社、2021年)】

「治(し)らす」については後日紹介する。

 メモ書きしておくと、朱子学を重んじた明朝が滅ぶ→満州族が建てた清朝が中国全土を支配→長崎に来航した明朝の亡命者の中に朱舜水〈シュ・シュンスイ〉がいた→噂を聞いた水戸光圀〈みと・みつくに〉が江戸に招く→水戸藩の事業として『大日本史』を開始→「万世一系の天皇が日本を統治した」という朱子学的大義名分論で貫いた大著(1906年/明治39年完成)→水戸学の編纂に携わったグループが水戸学→尊皇攘夷思想の誕生、という流れになる。いやはや勉強になった。

 これが三島由紀夫の陽明学にまでつながるとすれば、朱子学の影響を決して軽んじてはなるまい。


2021-10-24

1948年、『共産党宣言』と『一九八四年』/『世界史講師が語る 教科書が教えてくれない 「保守」って何?』茂木誠


『経済は世界史から学べ!』茂木誠
『「戦争と平和」の世界史 日本人が学ぶべきリアリズム』茂木誠
『「米中激突」の地政学』茂木誠

 ・「アメリカ合衆国」は誤訳
 ・1948年、『共産党宣言』と『一九八四年』
 ・尊皇思想と朱子学~水戸学と尊皇攘夷
 ・意識化されない無意識は強迫的に受け継がれていく
 ・GHQはハーグ陸戦条約に違反
 ・親北朝鮮派の辻元清美と山崎拓

世界史の教科書
必読書リスト その四

 19世紀、産業革命が進む欧州ではすさまじい貧富の格差を生み出され、労働者階級の解放を掲げる社会主義運動が起こりました。フランス革命前のルソーの思想を淵源(えんげん)とし、マルクスとエンゲルスが『共産党宣言』で暴力による労働者政権の樹立を訴えたのが1848年でした。暴力革命は1871年のパリ・コミューンまで断続的に起こります。
 この間、マグマのように沸騰する貧困層のエネルギーの安全弁となったのが、【アメリカへの大量移住】でした。アメリカが存在しなかったら、欧州全体がロシアのように社会主義化していたかもしれません。

 社会主義は貧困の撲滅、富の平等を目標に掲げます。自由競争が勝ち組・負け組を作るので競争そのものを禁止し、個人や私企業が土地や工場といった生産手段を持つことを規制します。土地や企業は国有化して国家がコントロールし、利益を平等に分配するのです。
 政府が経済をコントロールするわけですから、膨大な官僚機構(大きな政府)が必要となり、個人の自由は制限されます。その行き着く先は、ソ連・中国・北朝鮮で実現した共産党一党独裁体制です。
 これこそ、「自分の生活は自分で切り開く」「政府は邪魔するな」というアメリカ中西部、【レッド・ステイツの「草の根」のアメリカ人が最も嫌悪する国家体制】なのです。【アメリカ人の反共主義の源泉】はここにあります。
 一方、南北戦争に敗れた民主党は、もはや「南部の奴隷制を守る」という古い看板では選挙を戦えません。北部の資本家と組んだ共和党政権への対抗軸を示して政権を奪回するため、【「移民労働者を保護する」という新しい看板に掛け替えた】のです。まさに、生き残るためには何でもあり、というわけですが、この方針転換はアメリカの政治地図を塗り替えました。
 欧州からの大量移民は、ニューヨークの自由の女神を目指してやってくると、そのまま東海岸に住み着きます。対して、アヘン戦争に負けて衰退する中国や内旋が続くメキシコからの移民は、西海岸のカリフォルニアに定住します。
 アメリカ国籍は出生主義ですから、彼ら移民の2世は参政権を持ちます。この【移民系アメリカ人が民主党の新たな支持基盤】となったのです。これが、【ブルー・ステイツの誕生】です。
 逆に共和党は、「本来のアメリカ白人」の生活を守るため、移民の制限を主張するようになります。「アメリカ人が納めた税金で、移民にタダ飯を食わせるな」という主張です。
 こうして【民主党に幻滅したレッド・ステイツの人々は、共和党支持にくら替えした】のです。このとき生まれた政治地図が、今日まで続いているわけです。
 一方安い労働力で働く移民の流入は、産業界にとっては朗報でした。すると、【これまで共和党の基盤だったニューヨークなどの都市部の財界は「民主党政権でもよいのではないか」と考え初めます】。その結果、20世紀の初頭に財界と民主党とのある種の談合が成立し、1913年ウッドロウ・ウィルソン政権が発足しました。
 労働組合を支持基盤としつつ、財界からも政治資金を提供されるという二重人格的な政権で、ヒラリー・クリントンとそっくりです。JPモルガンを中心とするニューヨークの金融資本家グループに、米中央銀行(連邦準備制度理事会〔FRB〕)を組織させ、通貨ドルの発行権を与えたのがこのウィルソンです。このことも日本の教科書では教えていません。

【『世界史講師が語る 教科書が教えてくれない 「保守」って何?』茂木誠〈もぎ・まこと〉(祥伝社、2021年)】

 読書中。『共産党宣言』が刊行された1948年は『一九八四年』が脱稿された年でもある(刊行は翌年)。ジョージ・オーウェルは下二桁の48年を引っくり返して84年とした。

 産業革命が貧富の差を拡大したとは知らなかった。まあ、でもラッダイト運動なんかを踏まえると、「やっぱりね」という感じもある。資本主義が加速する時、貧富の差は拡がるのだろう。そしてデジタルトランスフォーメーションが一気に進み、ビッグテックが国家をも凌駕しようとする今、二極化に拍車がかかるのは当然と言うべきか。

 問題はAIやロボットの台頭により人間の仕事が減ってゆくことだ。コンビニや工場を見ても、明らかに老人より外国人の方が目立つ。大衆は暴力に訴えるほどの気力も既に持ち合わせていない。静かに困窮しつつある生活が霧のようなストレスとなり、知らずしらずのうちに無気力な日々を送っている。

 国際基準に照らせば自民党の政策はセンターレフトと言われる。中道左派だ。かつての金融業における護送船団方式を思えばわかりやすいだろう。競争を排除するのだから完璧な社会主義政策である。小渕政権までは社会民主主義政策を推進してきたものと考えてよい。終身雇用も極めて社会主義的である。振り返れば江戸時代のメンタリティも社会主義っぽい。一君万民と公平・平等は響き合うものがある。革命なき社会主義が日本人のメンタリティか。

 自分よりも世間を重んじるのが日本の文化である。これを世間体とは申すなり。中国の天よりも日本の世間は卑近である。世間は近隣の眼差しの中にある。日本には虐殺の歴史も殆どない。せいぜい村八分が関の山だ(残り二分は火事と葬式)。

 ウェブ上におけるビッグテック支配を思えば、富の偏重は恐るべきスピードで進むことだろう。しかも雇用が縮小していく事実を踏まえれば、今後は大きな政府でやり過ごすのが手っ取り早い。

 財産権を犯すような税制には反対だが、使い切れない資産を有する富豪には何らかの税制措置が必要だろう。

 茂木本は本当に勉強になる。藤井厳喜〈ふじい・げんき〉よりもはるかにお奨めだ。

「アメリカ合衆国」は誤訳/『世界史講師が語る 教科書が教えてくれない 「保守」って何?』茂木誠


『経済は世界史から学べ!』茂木誠
『「戦争と平和」の世界史 日本人が学ぶべきリアリズム』茂木誠
『「米中激突」の地政学』茂木誠

 ・「アメリカ合衆国」は誤訳
 ・1948年、『共産党宣言』と『一九八四年』
 ・尊皇思想と朱子学~水戸学と尊皇攘夷
 ・意識化されない無意識は強迫的に受け継がれていく
 ・GHQはハーグ陸戦条約に違反
 ・親北朝鮮派の辻元清美と山崎拓

世界史の教科書
必読書リスト その四

 このような【イギリス本国の「圧政」と戦うために、13ステイとが連合(ユナイト)して生まれたのが「the United States of America(アメリカ合衆国)」】でした。
 なお、「state」は「州」とも訳しますが、本来の意味は「国」ですから「the United States of America」は「アメリカ国家連合」が正しい訳語。「合衆国」は誤訳です。

【『世界史講師が語る 教科書が教えてくれない 「保守」って何?』茂木誠〈もぎ・まこと〉(祥伝社、2021年)】

 かつて本多勝一〈ほんだ・かついち〉が「アメリカ合州国」を主張していた(『アメリカ合州国』朝日新聞出版、1984年)。尚、「合衆」には共和制の意味があり、民主政の古い訳語でもあるという(Wikipedia)。国家連合は連邦と同意か。

2021-09-01

皇室制度を潰す「女系天皇」/『愛国左派宣言』森口朗


『「悪魔祓い」の戦後史 進歩的文化人の言論と責任』稲垣武
『こんな日本に誰がした 戦後民主主義の代表者・大江健三郎への告発状』谷沢永一
『悪魔の思想 「進歩的文化人」という名の国賊12人』谷沢永一
『誰が国賊か 今、「エリートの罪」を裁くとき』谷沢永一、渡部昇一
『いま沖縄で起きている大変なこと 中国による「沖縄のクリミア化」が始まる』惠隆之介
『北海道が危ない!』砂澤陣
『これでも公共放送かNHK! 君たちに受信料徴収の資格などない』小山和伸
『ちょっと待て!!自治基本条例 まだまだ危険、よく考えよう』村田春樹
『自治労の正体』森口朗
『戦後教育で失われたもの』森口朗
『日教組』森口朗
『左翼老人』森口朗
・『売国保守』森口朗

 ・社会主義国の宣伝要員となった進歩的文化人
 ・陰謀説と陰謀論の違い
 ・満州事変を「関東軍による陰謀」と洗脳する歴史教育
 ・関東軍「陰謀論」こそウソ
 ・新型コロナウイルス陰謀説
 ・皇室制度を潰す「女系天皇」

『世界史で読み解く「天皇ブランド」』宇山卓栄
『〔復刻版〕初等科國史』文部省
『知ってはいけない 金持ち悪の法則』大村大次郎

必読書リスト その四

(2)女系天皇を認めようとする政治家は皇室制度を潰す「陰謀」を企んでいる

 ご存知のように日本の皇室制度は世界に冠たる制度です。18世紀にヨーロッパで王室を守ろうとした人々が「右」、潰そうとした人々を「左」と言い出したのが、政治的「右」「左」の最初だと第1章で説明しましたが、これを21世紀の皇室制度にスライドさせると、建前では共産党以外、全て「右」ですが、「女系天皇」なるものを造ろうとしている政治家の本当の思想は全員「左」です。何故なら、皇室制度は、ヨーロッパ王室制度と異なり延々と続く男系であり、それが途絶えた時は皇室制度の終わる時だからです。
「女系天皇」なるものを造ろうとする人達は「陰謀」を企んでいると考える根拠は、次のとおりです。

・世界一長い伝統のある日本の皇室制度を妬(ねた)む外国人は多い。とりわけウソの歴史教育によって国民に反日感情をもたせ、それを権力の正当化に利用している中国共産党や北朝鮮の金一族、韓国にとって、日本の皇室制度はいち早く潰したい制度である。
・しかし、間接デモクラシーを採用する日本において、親中派や、親北朝鮮派、親韓国派が「皇室制度を潰す」と主張して国会議員に当選するのは共産党を除きほとんど不可能である。社会主義が妄想だとバレる以前には、立憲民主党の辻元清美議員は憲法を改正して皇室制度を潰せと大声で主張していたが、今ではその姿勢を隠している。
・皇室を潰す「陰謀」は、憲法改正よりも「女系天皇」なるものを創る手法の方が、成功しやすい。
・「女系天皇」に良いイメージを抱かせるために、まだお若くて今のところ彼氏がいない愛子内親王の人格を利用し「女系天皇」の現実に目を向けないように国民を騙している。
・「女系天皇」なるものができた時、最もそれに近いのは婚姻問題が生じている真子内親王と小室圭氏の子が天皇になることだ。お二人に子供ができて、天皇が「今上天皇陛下」⇒「秋篠宮」⇒「(女性天皇としての)真子内親王」⇒「(女系天皇なる)小室圭氏の子」と続く可能性が一番高い。
・小室圭氏の子供が天皇になりかねないのが「女系天皇」制度だと、多くの国民が気付けば、それだけで目が覚めて「陰謀」を見抜くが、これを推進する人達は「ヨーロッパの王室が見本だ」と言って国民を騙している。
・ヨーロッパを見本とする「女系天皇」なるものが実現すると、「小室圭氏の子」の比ではない「国民が嫌がりそうな人物」が「天皇」になれる。具体的には、内親王を口説くことに成功した中国人や韓国人、北朝鮮人、在日コリアンなど、外国人の子供である。ヨーロッパの王室では、父の国籍は問題にならず、英語を話せない人が英国王になった歴史まである。それゆえ「女系天皇」に成功すれば、皇室廃止は容易に実現できるだろう。
・男系が続いているので日本の皇室制度は、外国人から見ると「同じ王朝が続いている」と見えるが、「女系天皇」なるものが誕生すると、外国人、特に欧米人からは「王朝が変わった」と映る(戦争もしないのにヨーロッパで王朝が代わるのは女系に移る時です)。
・それゆえ、「女系天皇」に成功したら、皇室制度を廃止できなくても「世界一長い伝統のある王朝の国=日本」という外国人からの羨ましさは消える。
・日本に「女系天皇」なるモノが誕生したら、メンタル面で「巨万の富」を獲得できる国や人は世界中に存在する。

 いかがでしょう。「女系天皇」なるモノは、中国共産党、北朝鮮、韓国はもちろん、世界一長い伝統のある王朝という地位を狙っているヨーロッパ諸国の「陰謀」であり、それを推進する者達のバックにそれらの国がいる可能性も高いと思いませんか。
 新型コロナの「陰謀」が成功した2020年に、それまで愛国者ぶっていた河野太郎氏が急に「女系天皇」の話をしだしたのも、有力な状況証拠だと考えます。

【『愛国左派宣言』森口朗〈もりぐち・あきら〉(青林堂、2021年)】

 万世一系を苦々しく思っている連中は予想以上に多い。女性週刊誌の皇室スキャンダルネタはCIAが流しているという噂があるほどだ。

 先程、真子内親王の年内結婚が報じられた。皇統は日本の魂であり、アイデンティティの根幹を成すものだ。歴史的経緯からいえば天皇が先にあり、日本国の成立は後のことである。民族は血と文化から成る。例外は宗教で結びつくユダヤ人だけだ。もちろん意図的に差異を強調する必要はない。もともと我々の先祖は猿なのだから、それを思えば遺伝子の違いなどあってないようなものだ。

 問題は反日を標榜しない反日勢力が多いことで、中・韓・朝の浸透工作は政官報に及び、学術・法曹・教育は完全に牛耳られた感がある。

 現在の日本において左翼と目されるのは親中・親韓・新北朝鮮派である。その意味において与党である公明党は完全な左翼といってよい。また自民党に巣食う仮面保守を一掃する必要がある。小沢一郎を始めとする旧田中派は小泉政権で自民党を追われたが、中韓の利権を貪る自民党代議士は健在だ。

 天皇陛下の存在が世界の重石(おもし)となっている事実を日本人は知らねばならない。ローマ教皇とイギリス王室が頭を下げるのは天皇陛下だけだろう。皇統が正しく維持される限り、日本は不滅だ。

2021-08-31

新型コロナウイルス陰謀説/『愛国左派宣言』森口朗


『「悪魔祓い」の戦後史 進歩的文化人の言論と責任』稲垣武
『こんな日本に誰がした 戦後民主主義の代表者・大江健三郎への告発状』谷沢永一
『悪魔の思想 「進歩的文化人」という名の国賊12人』谷沢永一
『誰が国賊か 今、「エリートの罪」を裁くとき』谷沢永一、渡部昇一
『いま沖縄で起きている大変なこと 中国による「沖縄のクリミア化」が始まる』惠隆之介
『北海道が危ない!』砂澤陣
『これでも公共放送かNHK! 君たちに受信料徴収の資格などない』小山和伸
『ちょっと待て!!自治基本条例 まだまだ危険、よく考えよう』村田春樹
『自治労の正体』森口朗
『戦後教育で失われたもの』森口朗
『日教組』森口朗
『左翼老人』森口朗
・『売国保守』森口朗

 ・社会主義国の宣伝要員となった進歩的文化人
 ・陰謀説と陰謀論の違い
 ・満州事変を「関東軍による陰謀」と洗脳する歴史教育
 ・関東軍「陰謀論」こそウソ
 ・新型コロナウイルス陰謀説
 ・皇室制度を潰す「女系天皇」

『知ってはいけない 金持ち悪の法則』大村大次郎

必読書リスト その四

正しい可能性の高い「陰謀説」

 戦前の日本軍だけが「陰謀」をした、と信じる人はその見識に問題がある方達です。では、何故、満州事変は関東軍の陰謀だったという「ウソ」がまかり通っているのでしょう。それは、第二次世界大戦の戦勝国にも、戦後に誕生した独裁国家を牛耳る中国共産党にも、日本の左翼にも都合が良いからです。そして昭和時代の日本人はそんなウソを信じるほど「お人よし」だったからです。
 その「お人よし」達が、今度は「陰謀論」という名で、世の名の「陰謀」を全て隠そうとする人達の発言を信じようとしている。私は、これは「あってはならない」事態だと考えます。世の中で大きな事件が起き、大多数の人々が悲惨な目にあった時には、必ず、それによって「巨大な富」を獲得した者はいないか?を考えて欲しいのです。
 事実不明の「陰謀」を真実として学校教育に取り入れて良いのであれば、児童・生徒に教えて欲しいことは山のようにあります。そのいくつかの「陰謀」を挙げてみましょう。

(1)新型コロナの流行は中国共産党による「陰謀」だった

 まずは2020年から流行りだした新型コロナです。これは陰謀です。その証拠は沢山あります。

・風邪やインフルエンザなどの病気は症状が出て初めて検査しますが、新型コロナは症状のない人にもPCR検査を実施している。
・PCR法を開発した功績で1993年にノーベル化学賞を受賞したアメリカの生化学者キャリー・マリス氏は、新型コロナ騒動が起きる直前の2019年8月7日に死亡した。
・PCR検査は新型コロナのRNAを何倍にも増やしてウイルスの有無を見る検査だ。2の何乗というかたちでRNAが増えていくので増やし過ぎると感染していない人も陽性になる。
・それゆえ増幅回数は、当初、37回未満と決まっていたが、それを守っているのは台湾の36回だけで、各国は37回以上増幅させている。ちなみに50回増幅させると36回増幅の1万6384倍もRNAが増えるので、大勢の「陰性」の人が「陽性」扱いされ、その上で「患者」扱いまでされているのが今の日本だ。
・一度感染すると、当分の間、ウイルスの死骸(感染力をなくしたウイルス)のカスが感染した人の体に残るため、日本で行っている増幅回数過剰のPCR検査だと長い間「陽性」になるため、多くの場合1カ月以上「病人」のままとなった(この点は、今は改善され、早く退院できるようになった)。
・緊急事態宣言を推進した尾身茂氏は「症状のない人も人に感染させる」と主張していたが、彼の主張には元々科学的根拠がなかったうえに、最近、それに反する科学データが出てきている。
・PCR検査の原価は3500円くらいだが、日本では1万5000円の検査費用を取れると決まったので当初は公的機関が検査していたが、今では民間企業が参入して大儲けしている。
・ここまでの事実を丁寧に説明したアメリカ「ウィスコンシン医科大」名誉教授の高橋徳氏の映像が最初、You Tubeで流れていたが削除された。
・2020年のGDPは新型コロナによってほとんどの国でマイナス成長だったが、世界にコロナをバラまいた中華人民共和国だけはプラス成長だった。
・日本で真っ先に、自治体レベルの「非常事態宣言」を発したのは、夕張市長時代に中国企業に公共施設を安売りした親中派の鈴木北海道知事だった。
・それを見て首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)知事をまとめて、安倍政権に「国として非常事態宣言を出す」よに要望したのは、これまた親中派の小池都知事だった。
・小池知事は神奈川県黒岩知事から依頼があったというウソをついてまで、首都圏の非常事態宣言を延長させ日本経済の足を引っ張った。
・新型コロナで陽性になった人が亡くなった場合は全員が「新型コロナによる死亡」とカウントされるが、インフルエンザの場合はインフルエンザだけが原因でなくなった場合のみ「インフルエンザによる死亡」とされ、持病が悪化して死んだ場合は死因にカウントしない。
・インフルエンザを新型コロナと同じカウント方法にすると年間1万人の死因が「インフルエンザ」になると推定される。
・新型コロナは味が分からなくなるといった後遺症が大げさに宣伝されているが、インフルエンザの後遺症には脳炎があり、それにより認知症になった子供が毎年発生している。
・インフルエンザで死亡する人はあらゆる年齢層にいるが、新型コロナで死ぬ人はほとんどが高齢者で死亡者の平均年齢は日本人の寿命と数歳しか変わらない。
・中華人民共和国を支配する中国共産党、PCR検査実施企業、ワクチンを開発した欧米企業など、新型コロナが必要以上に騒がれたことで「巨大な富」を獲得した人達が存在する。

 いかがでしょう。これでも「新型コロナの流行」や「新型コロナで大騒ぎ」は「陰謀」というのを全否定するのでしょうか。少なくとも、満州事変が関東軍の陰謀だった可能性よりは、こちらの可能性の方が高いとするのが妥当ではないでしょうか。

【『愛国左派宣言』森口朗〈もりぐち・あきら〉(青林堂、2021年)】

 You Tubeで削除されまくっている高橋徳医師の動画を見つけた。


 マスメディアが公正な情報を流さず、GAFAMが一方的な規制(ワクチンに対する警鐘は削除対象となる)を強いるところを見ると、明らかに民主政を阻む動きと考えてよい。「お前たちはものを考える必要はない」と言われたも同然だ。新型コロナウイルスの危険を煽り、ワクチン接種へ誘導する情報操作が行われている。その有り様は「必死だな」の一言に尽きる。海外では職種によっては接種を義務づけるようにまでなってしまった。

 日本医師会は当初「マスクは有効ではない」としていたが、いつの間にかマスクを奨励するようになった。外出規制は人々の自由を損なう最たるもので、これに唯々諾々と従うのは世界広しといえども日本くらいだろう。私は「21世紀の空襲警報」だと思う。緩やかな防空壕生活を強いられているわけだから。

 国家は国民に命令を下す時、最も生き生きと振る舞う。そして国家は強権を発揮する中で必ず判断を誤る。

 9.11テロはパックス・アメリカーナの終焉を告げた。新型コロナウイルスは中国の台頭を許す可能性がある。親中派の政治家がこれほどのさばっているのがその証拠である。「衆院選は10月17日投開票で調整」と報じられたが、自民党内の混迷ぶりを見ていると、またしても小池百合子が旋風を巻き起こすのではないか。

関東軍「陰謀論」こそウソ/『愛国左派宣言』森口朗


『「悪魔祓い」の戦後史 進歩的文化人の言論と責任』稲垣武
『こんな日本に誰がした 戦後民主主義の代表者・大江健三郎への告発状』谷沢永一
『悪魔の思想 「進歩的文化人」という名の国賊12人』谷沢永一
『誰が国賊か 今、「エリートの罪」を裁くとき』谷沢永一、渡部昇一
『いま沖縄で起きている大変なこと 中国による「沖縄のクリミア化」が始まる』惠隆之介
『北海道が危ない!』砂澤陣
『これでも公共放送かNHK! 君たちに受信料徴収の資格などない』小山和伸
『ちょっと待て!!自治基本条例 まだまだ危険、よく考えよう』村田春樹
『自治労の正体』森口朗
『戦後教育で失われたもの』森口朗
『日教組』森口朗
『左翼老人』森口朗
・『売国保守』森口朗

 ・社会主義国の宣伝要員となった進歩的文化人
 ・陰謀説と陰謀論の違い
 ・満州事変を「関東軍による陰謀」と洗脳する歴史教育
 ・関東軍「陰謀論」こそウソ
 ・新型コロナウイルス陰謀説
 ・皇室制度を潰す「女系天皇」

『知ってはいけない 金持ち悪の法則』大村大次郎

必読書リスト その四

 では、「柳条湖事件」が関東軍の陰謀だったという「陰謀論」の方は、なぜ、学校教育に定着したのでしょう。当時の国際連盟がそのように判断した訳ではありません。むしろ国際連盟から派遣されたリットン調査団は、当時の満州の発展は中華民国ではなく日本の努力によるものだと認め、柳条湖事件が起きた夜の日本側の軍事行動は正当防衛とまでは認め得なかったけれども、将校達が自衛のために考え行動した(つまり誤想防衛をした)のは仕方がないとしたのです。その上で、日本の主張を一部認め、日本軍に今後の満州における匪賊(ひぞく)の討伐権を認めました。
 日本は第二次世界大戦に負けたのですから「関東軍が全面的に正しかった」と教えることは難しいでしょう。でも、せめて国際連盟から派遣されたリットン調査団の調査内容が正しい、つまり「柳条湖事件の真相は不明だが、当時の関東軍は正当防衛と考えて軍事行動を起こした」と教えるのが、正しい歴史教育のはずです。
 ところが、学校で「関東軍の陰謀により満州事変は起こった」と教え、大学でもマスコミでもあらゆるところで、それを前提にして議論しているのです。その根拠は、たった一人、花谷正(はなやただし)が戦後に語った、いかがわしい発言だけです。
 花谷が言うには、昭和6(1931)年に関東軍高級参謀(大佐)板垣征四郎と関東軍作戦参謀(中佐)石原莞爾(いしは〈ママ〉らかんじ)と、少佐だった花谷が中心となって、この陰謀を実行したそうです。全く信用できません。何故なら、板垣征四郎と石原莞爾は極めて有能で、現役時代から「陸軍の巨星」とまで呼ばれた二人でした。これに対して花谷正は、多くの作戦に失敗し部下の命を失わせたことで、また人格面においても問題の多い人物でした。彼が死んだ時には、盛大な葬儀が営まれましたが、部下は誰一人会葬(かいそう)しませんでした。
 そんな男が、両雄である板垣征四郎(昭和23(1948)年12月23日、死刑執行)も石原莞爾(昭和24(1949)年8月15日に病死)も亡くなった後の昭和30(1955)年に『満州事変はこうして計画された』(「別冊知性」昭和30年12月号 河出書房)において秦郁彦氏の取材に答える形で、「あの2人と自分が中心になって、柳条湖事件を起こしました」と発言しただけなのです。彼は、さらに関東軍司令官本庄繁中将(昭和20(1945)年11月19日GHQから戦犯に指名され翌日自決)、朝鮮軍司令官林銑十郎中将(昭和18(1943)年2月4日病死)、参謀本部第1部長建川美次(たてかわよしつぐ)少将(昭和20(1945)年9月9日死去)が、この謀略に賛同していたと言いふらしているようですが、この方々も全員が1955年までには亡くなっていました。
 花谷が「謀略に賛同した」幹部の1人と指名した中で1955年段階で唯一生き残っていたのは橋本欣五郎(当時、参謀本部ロシア班長で中佐)でした。彼は、昭和31(1956)年の第4回参議院議員通常選挙全国区に無所属で立候補し落選しているのですから、彼が「花谷の言うとおり」と発言していない限り、花谷の発言は、自分を大物に見せたいだけの「ウソ」と判断すべきでしょう。もちろん、橋本から「花谷の発言は正しい」といった発言はありません。
 常識で考えれば、花谷の証言こそが「ウソ」なのですが、昭和時代は戦前の日本を悪者にして自分だけが「いい人」ぶる行為が流行っていました。保守言論では「従軍慰安婦」なるものを創った吉田清治が有名ですが、花谷の発言こそ最大のウソではないでしょうか。

【『愛国左派宣言』森口朗〈もりぐち・あきら〉(青林堂、2021年)】

 驚愕の事実である。腰を抜かす人がいてもおかしくないほどだ。あまりにも驚いてしまったので少し調べた。どうやら工藤美代子著『絢爛たる醜聞 岸信介伝』(『絢爛たる悪運 岸信介伝』改題文庫化)に書かれている内容のようだ。同書には「(※板垣、石原の)両者ともその事実を否定したまま故人となった」との記述がある。

 著者が言いたいことは、教科書で教える歴史は事実に基づくべきであり、日本の戦争だけを詳細に取り上げて、わざわざ舞台裏まで記述し、意図的に自国を貶めることに何の意味があるのか? ということだ。「昨今の陰謀論を嘲笑う風潮」に対する批判という文脈の中で書かれているテキストであることを失念してはなるまい。

 つくづく人の脳が物語に支配されやすい事実を思い知らされた。明らかな因果関係を示されると脳は「疑う」ことを忘れる。おばあさんが川で洗濯をしていると、どんぶらこどんぶらこと桃が流れてくることになっている。いじめられている亀は助けなければならないし、わらしべは取り敢えず大事にしておく。神話、昔話、宗教はその物語性によって社会を維持する装置である。

 自虐史観という言葉は既に手垢まみれとなっているが、日本を貶める左翼の行状(ぎょうじょう)を詳(つまび)らかにして、その罪状を一々論(あげつら)うことなくして、正常な歴史を知ることはないだろう。

2021-08-30

満州事変を「関東軍による陰謀」と洗脳する歴史教育/『愛国左派宣言』森口朗


『「悪魔祓い」の戦後史 進歩的文化人の言論と責任』稲垣武
『こんな日本に誰がした 戦後民主主義の代表者・大江健三郎への告発状』谷沢永一
『悪魔の思想 「進歩的文化人」という名の国賊12人』谷沢永一
『誰が国賊か 今、「エリートの罪」を裁くとき』谷沢永一、渡部昇一
『いま沖縄で起きている大変なこと 中国による「沖縄のクリミア化」が始まる』惠隆之介
『北海道が危ない!』砂澤陣
『これでも公共放送かNHK! 君たちに受信料徴収の資格などない』小山和伸
『ちょっと待て!!自治基本条例 まだまだ危険、よく考えよう』村田春樹
『自治労の正体』森口朗
『戦後教育で失われたもの』森口朗
『日教組』森口朗
『左翼老人』森口朗
・『売国保守』森口朗

 ・社会主義国の宣伝要員となった進歩的文化人
 ・陰謀説と陰謀論の違い
 ・満州事変を「関東軍による陰謀」と洗脳する歴史教育
 ・関東軍「陰謀論」こそウソ
 ・新型コロナウイルス陰謀説
 ・皇室制度を潰す「女系天皇」

『知ってはいけない 金持ち悪の法則』大村大次郎

必読書リスト その四

 多くの日本人は、歴史教育において「満州事変は、昭和6(1931)年9月18日に関東軍(日本陸軍の一つ)が、満州の奉天(現在の中国東北部瀋陽市)近郊の柳条湖付近で、南満州鉄道の線路を爆破して、それを中国軍による犯行と発表して軍事展開の口実にした」と習い、これを信じています。
 それが事実ならば、「柳条湖事件」と呼ばれるこの事件はどう考えても関東軍の「陰謀」です。そう、私達は戦前の日本軍が「陰謀」によって日中の軍事衝突を起こしたと学校で習っているのです。
 この怪しげな歴史教育を受け入れている癖(くせ)に、「真実が解明されていない事項を、関東軍の『陰謀』だったと教えるな」と反対しない癖に、世界中から陰謀がないと主張する人間、「これは○○の陰謀ではないか」と言う人に「それは陰謀論だ」と全否定する人。それが最近増えだした大バカ者達なのです。
 鶴見俊輔という左翼言論人は、「柳条湖事件は関東軍の陰謀だった」という怪しい主張に加えて、ここをスタートとして第二次世界大戦に「15年戦争」という名前まで付けました。これを信じると第二次世界大戦そのものが関東軍の陰謀により始まったことになります。共産党系歴史学者達は、喜んでこれに賛同し、一時期、共産党系教員が中心となり学校教育に取り入れようという動きがありました。
 実際には「柳条湖事件」がきっかけで始まった満州事変の紛争は、長く続いた訳ではありませんし、「柳条湖事件」が起きた原因やその後どうするかについて国際連盟は、リットン調査団を送っています。つまり、次の日中戦争開始までの一時的な平和があったのです。「柳条湖事件」以降、日本と中華民国は延々と戦争をしていた訳ではありません。さすがに「15年戦争」という妄想は、共産党系の大学教授達にしか受け入れられませんでした。国民を騙そうとするにしてはウソのレベルが低すぎたのでしょう。

【『愛国左派宣言』森口朗〈もりぐち・あきら〉(青林堂、2021年)】

日本罪悪論の海外宣伝マン・鶴見俊輔への告発状  「ソ連はすべて善、日本はすべて悪」の扇動者(デマゴーグ)/『悪魔の思想 「進歩的文化人」という名の国賊12人』谷沢永一

 陰謀論を批判するために、やや牽強付会な言い草となっている。

 昭和3年(1928年)には張作霖爆殺事件が起こっている。田中義一首相のあやふやな態度が昭和天皇の怒りを買い、翌年7月に内閣総辞職となった。驚くべきことに2000年代に入り、「張作霖爆殺事件ソ連特務機関犯行説」がロシアから登場した。

 張作霖爆殺事件では関東軍が犯人は蔣介石軍の便衣隊とした。柳条湖事件の犯人は中国軍と発表した。関東軍による完全な陰謀である。ただし当時の評価はまた違ったのである。

陰謀説と陰謀論の違い/『愛国左派宣言』森口朗


『「悪魔祓い」の戦後史 進歩的文化人の言論と責任』稲垣武
『こんな日本に誰がした 戦後民主主義の代表者・大江健三郎への告発状』谷沢永一
『悪魔の思想 「進歩的文化人」という名の国賊12人』谷沢永一
『誰が国賊か 今、「エリートの罪」を裁くとき』谷沢永一、渡部昇一
『いま沖縄で起きている大変なこと 中国による「沖縄のクリミア化」が始まる』惠隆之介
『北海道が危ない!』砂澤陣
『これでも公共放送かNHK! 君たちに受信料徴収の資格などない』小山和伸
『ちょっと待て!!自治基本条例 まだまだ危険、よく考えよう』村田春樹
『自治労の正体』森口朗
『戦後教育で失われたもの』森口朗
『日教組』森口朗
『左翼老人』森口朗
・『売国保守』森口朗

 ・社会主義国の宣伝要員となった進歩的文化人
 ・陰謀説と陰謀論の違い
 ・満州事変を「関東軍による陰謀」と洗脳する歴史教育
 ・関東軍「陰謀論」こそウソ
 ・新型コロナウイルス陰謀説
 ・皇室制度を潰す「女系天皇」

『知ってはいけない 金持ち悪の法則』大村大次郎

必読書リスト その四

 世の中は、昔も今も陰謀だらけです。もちろん強者の陰謀は、真実が不明なまま時間が経ち、いつの間にか「歴史」は強者の都合の良いように書き換えられます。否、間違えました。強者の陰謀が成功するのではなく、陰謀を成功させた者経ちこそが強者なのです。
 残念あがら大多数の人には、陰謀を暴く力はありません。私もその1人です。だからこそ、せめて「世の中は陰謀で溢れている」ということくらいは意識し、メディアが伝えるウソに騙されない人間でい続ける必要があるのです。でなければ、間接デモクラシーの社会は腐るばかりです。「陰謀」には必ず巨大な富みを獲得する人が存在します。だからこそ、彼らは、真実の姿を知られたくないのです。
 ところが、最近、様々な勢力の陰謀を誰かが主張するだけで「それは陰謀論だよ」と全否定する大バカ者が、地上波テレビを筆頭に様々なメディアに登場しました。
 断言しますが、陰謀を全否定する人は、知性か良心かあるいはその両方がない人です。
 私達日本人は歴史教育において、証明もされいない事件を日本人による「陰謀」だったと習っています。一般に「陰謀」の可能性を認める人は、証明できていないがある事件の発生は陰謀によるものとする主張を「陰謀説」と呼びます。これに対して頭から「陰謀」を否定する人は「陰謀論」という言葉を使うことが多いようです。
「陰謀論」という言葉を使って陰謀を全否定する人に知性も良心もない証拠は、彼らが現在学校で行われている歴史教育を全否定しないからです。自分達の行為の矛盾にさえ気づいていない=知性がないか、気づいても言わない=良心がないのです。

【『愛国左派宣言』森口朗〈もりぐち・あきら〉(青林堂、2021年)】

 長文のテキストを何度かに分けて紹介する。私も前々から「陰謀論」なる言葉に違和感を覚えていた。ま、ロバート・ラドラムデイヴィッド・マレルなど国際謀略モノを読んできた者としては尚更だ。

 キリスト教世界にはバイブルという脚本がある。西洋世界で映画やミュージカルなどが花開いたのも聖書文化によるものだろう。神の命令は代理者によって告げられる。例えば魔女狩りにおいて。あるいは黒人を奴隷にし、インディアンを虐殺したのもヴァチカンがそれを認めたためだ。ヨーロッパからアメリカに渡った人々が西を目指した(ゴー・ウエスト)のもマニフェスト・デスティニー(明白な使命)があったからだ。ったく、いい迷惑だ。

 帝国主義による植民地政策こそは陰謀の最たるものだろう。トルデシリャス条約で世界を二分したスペインとポルトガルは、その後イギリスとフランスに取って代わられる。アフリカ諸国の多くが英語やフランス語を採用しているのも、中東が定規で線を引いたように分割されたもの全部あいつらのせいだ。

 大体、陰謀が存在しないのであればスパイなど不要になっているはずだろう。情報化社会における陰謀は巨大すぎて全貌が見渡せない。昨今はGAFAMに注意する必要がある。

2021-08-24

社会主義国の宣伝要員となった進歩的文化人/『愛国左派宣言』森口朗


『「悪魔祓い」の戦後史 進歩的文化人の言論と責任』稲垣武
『こんな日本に誰がした 戦後民主主義の代表者・大江健三郎への告発状』谷沢永一
『悪魔の思想 「進歩的文化人」という名の国賊12人』谷沢永一
『誰が国賊か 今、「エリートの罪」を裁くとき』谷沢永一、渡部昇一
『いま沖縄で起きている大変なこと 中国による「沖縄のクリミア化」が始まる』惠隆之介
『北海道が危ない!』砂澤陣
『これでも公共放送かNHK! 君たちに受信料徴収の資格などない』小山和伸
『ちょっと待て!!自治基本条例 まだまだ危険、よく考えよう』村田春樹
『自治労の正体』森口朗
『戦後教育で失われたもの』森口朗
『日教組』森口朗
『左翼老人』森口朗
・『売国保守』森口朗

 ・社会主義国の宣伝要員となった進歩的文化人
 ・陰謀説と陰謀論の違い
 ・満州事変を「関東軍による陰謀」と洗脳する歴史教育
 ・関東軍「陰謀論」こそウソ
 ・新型コロナウイルス陰謀説
 ・皇室制度を潰す「女系天皇」

『知ってはいけない 金持ち悪の法則』大村大次郎

必読書リスト その四

 米ソが対立すると「社会主義」は各国民の「妄想」を超えて、ソ連を親分とする集団の「陰謀」へと進化します。ソ連及びその手下となった東ヨーロッパ諸国、中華人民共和国、北朝鮮などが、先進国を陥れる「陰謀」の一貫として「社会主義体制の下で人々は幸せに暮らしている」というウソを流し始めたのです。でも、社会主義国が言うだけではウソは先進国の国民に届きません。そこで、先進国に住む政治家、マスコミ関係者、大学教授達が、社会主義国の宣伝員として、そのウソをバラまく役目を担当したのでした。
 ちなみに、日本の大学の少なくない文系学部は、令和時代の今でも、学生時代に民青(日本民主青年同盟)という事実上の共産党の下部組織に入っていたお陰で、学術的能力が劣るのに大学教授になれた人が大勢います。そのせいか少なくない大学の文系学部生の教員は、社会主義諸国の宣伝を信じていました。
 では、何故、昭和時代に日本人は、社会主義宣伝員のウソを信じたのでしょう。今と違って政治家、マスコミ関係者、大学教授などには多少の権威があったのが一要因でした。また、令和時代と違って戦争直後は、敗戦国日本の暮らしが厳しかったからという側面もありました。

【『愛国左派宣言』森口朗〈もりぐち・あきら〉(青林堂、2021年)】

 読書中。記憶力が読書量に追いつかないため、どんどん書いてゆく。「国立大学の反自衛隊イデオロギー/『正論』2021年6月号」関連テキストである。谷沢永一〈たにざわ・えいいち〉の国賊三部作を読めば理解が深まる。グローバリズムに関しては馬渕睦夫著『国難の正体 世界最終戦争へのカウントダウン』を参照せよ。

 最も有名で悪影響が大きかったのは本多勝一〈ほんだ・かついち〉で中国当局の情報を鵜呑みにして書いた『中国の旅』(朝日新聞社出版局、1972年)は日本社会に深刻なダメージを与えた。私の世代でも洗礼を受けた人は多い。1980~1990年代はまだまだ左翼全盛と言ってよい時代であった。日本近代史を見直す端緒を開いたのは新しい歴史教科書をつくる会であり、ネトウヨと蔑まされた人々であった。私は実際のネトウヨを目撃したことはないのだが、今となっては罪(ざい)よりも功(こう)が大きいと信ずる。

 現在にあっても「ネトウヨ」と書くのは左翼であると断定してよい。そこには歴史修正主義、反国際条約といった意味合いが含まれている。彼らはすなわち東京裁判史観絶対主義で「日本=悪」と断ずることで、日本の文化や歴史を黒く塗り潰して、赤く塗り替えようとする手合いだ。

 1970年代に学生運動が行き詰まると左翼は各界に浸透工作を図った。これを侮ってはいけない。官公庁から大企業および学校から宗教団体に至るまで浸透は進んだものと考えるべきだろう。使命や任務に生き甲斐を感じる人は多い。まして共産主義という崇高な理想があれば、孤独な任務にも耐えられる。そして忍耐が大きいほど手に入る果実もまた大きくなると錯覚するのが大脳の癖なのだ。

 高い知能の特徴は何か? それは「他人を騙(だま)すこと」である。残念ながら「思いやりが本能である」事実はフランス・ドゥ・ヴァールが指摘している(『あなたのなかのサル 霊長類学者が明かす「人間らしさ」の起源』)。騙すためには相手の信念を理解する必要がある。他人の頭の中(価値観)を理解した上で巧みな嘘を上書きするのが「騙す」という行為である。

 宗教や健康食品を見れば一目瞭然だ。マスメディアも同様で、むしろ大衆は騙されたがっているようにすら見える。我々が手品や大どんでん返しのストーリーに魅了されるのは「騙されるのが好きだから」としか言いようがない。

 左翼に騙されるのか、左翼の嘘を見抜くのかが問われる時代となった。ただし愛国心を重んじる保守派が「左翼を騙す」戦略をとることはないだろう。自国を愛する心は他国を尊重せざるを得ないからだ。グローバリズムを掲げるGAFAMが21世紀の左翼支配層である。ヨーロッパで殺され続けてきたユダヤ人の反撃と考えてもよかろう。



左翼絶賛~人気脚本家による労働組合ノススメ/『未明の砦』太田愛

2020-01-18

左翼に侵食される地方政治/『ちょっと待て!!自治基本条例 まだまだ危険、よく考えよう』村田春樹


『「悪魔祓い」の戦後史 進歩的文化人の言論と責任』稲垣武
『こんな日本に誰がした 戦後民主主義の代表者・大江健三郎への告発状』谷沢永一
『悪魔の思想 「進歩的文化人」という名の国賊12人』谷沢永一
『誰が国賊か 今、「エリートの罪」を裁くとき』谷沢永一、渡部昇一
『いま沖縄で起きている大変なこと 中国による「沖縄のクリミア化」が始まる』惠隆之介
『北海道が危ない!』砂澤陣
小野寺まさる:北海道が日本で無くなる日~中国の土地爆買いとアイヌ新法の罠[R2/5/4]
『これでも公共放送かNHK! 君たちに受信料徴収の資格などない』小山和伸

 ・左翼に侵食される地方政治

『実子誘拐ビジネスの闇』池田良子
『自治労の正体』森口朗
『戦後教育で失われたもの』森口朗
『日教組』森口朗
『左翼老人』森口朗
・『売国保守』森口朗
『愛国左派宣言』森口朗

 要するに自治基本条例の目的は次の通りである。
一、自治体を国家から切り離す。
二、自治体の市民により憲法を制定し独立共和国とする。
三、そこまでできなくても、プロ市民を、議会を経ずに市政に直接アクセスさせる経路を開く。
 この革新政治理論的指導者松下圭一氏の著作をバイブルとして、多くの学者や自治体職員(自治労)が自治基本条例を育み広めてきたのである。

【『ちょっと待て!!自治基本条例 まだまだ危険、よく考えよう』村田春樹(青林堂、2018年)以下同】

日本乗っ取りはまず地方から!恐るべき自治基本条例!』(青林堂、2014年)を書き換えたもので改訂・新訂版ではない。「篤志家がいて全国の自治体に贈ってくださった」とネット番組で村田が語っていた。数百万円のカネを出さしめた危機感を想わずにはいられない。

 江田五月、菅直人、仙谷由人ら所謂左派政治家が松下圭一の理論を実現するべく地方自治に力を注いできたという。更に「民主党内閣の理論面でのバックボーンであった」とまで村田は言い切る。ソビエト崩壊によって社会主義が低迷する中、左翼は暴力革命から地方自治に目を転じた。彼らの目的は国家の破壊・分断を工作することである。その国の歴史や文化を否定することで政治システムの変革に誘(いざな)おうと目論む。

 地方政治といえば大阪維新の会が注目されがちだが、我々の知らぬ間に地方は左翼に侵食されていた。しかも彼らは人権や平等といった誰も反対し得ない美しい文句を口にする。心の中で天皇制打倒を叫んでいることに一般人は気づかない。

「私たちは」
 豊中市自治基本条例は、豊中市に住む人だけでなく、豊中市で働き、学ぶ人、あるいはNPO活動に従事しる人や団体などを幅広く対象としています。


 一見すると何も問題がないように思える。たしかに市民の定義を市内に住所を置く住民・国民・有権者だけに限定せず、豊中市で働き、学ぶ人、あるいはNPO活動に従事する人を幅広く対象とするのはいかにも民主的で開放的である。そこで私は豊中市役所に電話で以下の通り訊いてみた。

一、豊中市に一度も住んだことはない人を市民とするのか。
二、住民税を豊中市に一円も払ったことがない人を市民とするのか。
三、豊中市議会・市長に対しての選挙権を有しない人も市民とするのか。
四、未成年、小中学生も市民とするのか。
五、外国人も市民とするのか。
六、広域指定暴力団〇〇組員も、市内でみかじめ料徴収とか恐喝とか覚醒剤を売買している人も市民とするのか。
七、オウム真理教アーレフ等のカルト宗教団体も、事務所を置いていてもいあんくても活動していれば市民とするのか。
八、朝鮮総連等破防法適用が云々されている団体の構成員も市内で活動していれば市民とするのか。
九、朝鮮学校も市民とするのか。
十、華人(中国人)参政権推進団体も市民とするのか。
十一、政党はじめ政治活動している人たちも市民とするのか。

 市役所は私の質問すべてに対し「イエス」との回答であった。
 豊中市だけではない。すべての自治基本条例は上記の十一項目に対してイエスである。

 つまりこれらの人々にも住民投票が認められるのだ。左派政党の支持率は全く伸びる様子がない。それをプロ市民の運動量でカバーしようとする企(たくら)みだ。

 市区町村議会議員の数は29839人で所属政党の割合は以下の通りである(平成30年〈2018年〉12月31日現在、総務省)。

・公明党 2729人(9.1%)
・共産党 2611人(8.8%)
・自民党 2041人(6.8%)
・社民党 239人(0.8%)
・日本維新の会 55人(0.2%)
・国民民主党 45人(0.2%)
・立憲民主党 34人(0.1%)
・自由党 4人(0.0%)
・諸派 1123人(3.8%)

 都道府県議会議員は自民党が圧倒的に多い。公明党と共産党は組織政党であり、党の代表選挙がない点や、候補者選出の経緯がブラックボックス化しているところに共通点がある。また手弁当で働く運動員が多いのが強味となっている。両党とも市民相談を精力的に行っており、真面目に仕事をする議員が多い。組織力は断然創価学会の方がリードしており、高齢化が進んでいるとはいえ日常的に若い人々を育てる努力をしている。一方の共産党は団塊の世代を中心とする老人党員が目立つ。興味がある人は赤旗まつりに行ってみればいい。

 創共協定(1974年)が直ぐに破綻してから両者は犬猿の仲となる。共産党は選挙前になると創価学会のデマビラをまき、創価学会は反共学習会を開くといった具合だ。ところが彼らには外国人参政権という共通の目的がある。ここが怖い。なにかの拍子で手を握ることがあれば地方自治は瓦解することを避けられない。しかも揃って親中派である。

 公明党はかつての政敵であった自民党と手を結んで政権与党入りした(1999年)。トップの判断で右にも左にも動くのが組織政党の恐ろしいところである。村田春樹の孤軍奮闘によって自治基本条例の流れは止まったが、決して油断してはならないと思う。

2019-08-14

貴族政=ミシュランガイド、民主政=ザガットサーベイ/『民主主義という錯覚 日本人の誤解を正そう』薬師院仁志


 ・民主的な議員選出法とは?
 ・統治形態は王政、貴族政、民主政
 ・現在の議会制民主主義の実態は貴族政
 ・真の民主政とは
 ・理性の開花が人間を神に近づけた
 ・選挙と民主政
 ・貴族政=ミシュランガイド、民主政=ザガットサーベイ

『悪の民主主義 民主主義原論』小室直樹

 フランスで最も有名なレストランの案内書といえば、『ミシュランガイド』である。いろいろと問題も指摘されているが、依然として非常に権威ある案内書であることには変わりない。一方、アメリカで同じ地位にあるのは、これまた有名な『ザガットサーベイ』である。どちらも、レストランの紹介と格づけを幅広く行っている点では、似たような案内書であるように見える。ただし、両者は、似ているようで、その本質は全く違うのである。
 フランスの『ミシュラン』の場合、レストランの格づけは、選び抜かれた専門家によってなされている。料理に詳しく味覚を鍛えた調査員が客を装ってレストランを回りながら、専門知識に基づいて評価を下すのである。一方、アメリカの『ザガット』では、一般読者の人気投票によってレストランの格づけが決められる。しかも、その投票権は、万人に対して同様に開かれている。誰の一票でも、一票は一票なのである。アメリカ型の民主主義は、エリートと庶民の質の差を認めない。むしろ、その差を消去することが民主的だと考えられている。だからこそ、頭数だけが問題にされるのである。おそらく、ミルやラッセルからすれば、『ザガット』的な決定法ほど、衆愚的なものはないということになろう。

【『民主主義という錯覚 日本人の誤解を正そう』薬師院仁志〈やくしいん・ひとし〉(PHP研究所、2008年)】

 私が民主政よりも貴族政(エリート政治)を支持する理由がこれだ。ただし戦前のエリート(陸軍士官学校、海軍兵学校出身者)が大東亜戦争を敗北に導いた事実を忘れてはなるまい。

 かつて北大医学部の高名な名誉教授が「統計学的に見れば10人に1人は頭がおかしい」と語っていたことを忘れられない。amazonレビューを参照する際も「10人に1人は頭がおかしく、もう1人は結構おかしく、また1人は少しおかしい」という前提で3/10の声は無視するよう心掛けている。あと「運が悪い人」とか「相性が悪い人」なんかもいるんだよね。

 人口100万人あたりの国会議員数ランキングを見ると日本の国会議員数は少ない方だ(5.63人で168位)。個人的にはもっと減らして構わないと思う。そもそも500人で議論をするのは無理だろう。100人程度でよい。参議院は廃止して元老院を設ける。元老院は引退した政治家および専門家・学者で構成する。私は政党政治も民主政を阻害していると考える。政党はあってもいいが党議拘束は禁ずる。そして国会はカメラの出入りを自由にする。また国民が直接質問できる機会を設ける。

 官僚システムと裁判システムも変える必要があろう。更に腐敗を防ぐためにはしっかりとした賃金も必要だ。

選挙と民主政/『民主主義という錯覚 日本人の誤解を正そう』薬師院仁志


 ・民主的な議員選出法とは?
 ・統治形態は王政、貴族政、民主政
 ・現在の議会制民主主義の実態は貴族政
 ・真の民主政とは
 ・理性の開花が人間を神に近づけた
 ・選挙と民主政
 ・貴族政=ミシュランガイド、民主政=ザガットサーベイ

『悪の民主主義 民主主義原論』小室直樹

 代議制民主主義の定義に従えば、選挙で選ばれた者の発言力が大きければ大きいほど、その社会は民主的だということになり、選挙で選ばれてもいない者の圧力が幅を利かせるような社会は、極めて非民主的だということになる。国王であれ貴族であれ資本家であれ労働組合であれ宗教団体であれ市民団体であれ、選挙で選ばれてもいない者が、選挙で選ばれた者たち以上の発言力を持つのであれば、そもそも普通選挙で代表者を選ぶ意味など全くないのである。
 もちろん、それらの意見や立場を無視してよいというのではない。だが、選挙で選ばれた者たちが決定し、全体の奉仕者がそれを実行するという原則だけは、最大限に尊重されなければならないのである。

【『民主主義という錯覚 日本人の誤解を正そう』薬師院仁志〈やくしいん・ひとし〉(PHP研究所、2008年)】

 それを書いた薬師院仁志が朝まで生テレビで橋下徹大阪市長(当時)に噛み付いたのには驚かされた(【朝生】に見る左翼知識人の無知と無恥 橋下改革断固支持: 依存症の独り言)。薬師院は左翼である。著書に『社会主義の誤解を解く』(2011年)があることからも明らかだ。

 薬師院が民主政を説くところに彼の二段階革命を推進する意志を見る。つまり共産党支持者であることが自動的に導かれる。

「社会主義の誤解を解く」のは勝手だが、社会主義国家が数千万単位で同胞を殺戮してきた事実は動かない。スターリン、ヒトラー、毛沢東、ポル・ポトの罪を彼はどう捉えているのか?

 社会主義は失敗した。左翼はその失敗から何一つ学ぼうとしない。その硬直した思考が時代から取り残されてゆく最大の原因だ。

 上記テキストは正しいのだが、薬師院の立ち位置からすると「党の方針に逆らうな」という共産党的エトスに過ぎない。

2019-03-06

野党を政策立案に関与させない「事前審査制」/『逃げられない世代 日本型「先送り」システムの限界』宇佐美典也


 このような体験を経て私は日本社会の問題は「改革に抵抗する国民や既成権益」にあるのではなく、むしろ日本社会に大きな問題があることそのものを覆い隠し「先送り」を続ける国会や行政の構造にあるのではないか、と考えるようになりました。

【『逃げられない世代 日本型「先送り」システムの限界』宇佐美典也〈うさみ・のりや〉(新潮新書、2018年)以下同】

「報道特注」で宇佐美典也を知った。1981年生まれの元経産省官僚。オタクっぽい語り口が面白かった。経産省時代の大先輩である足立康史にペコペコする姿勢も微笑ましかった。一読して驚いた。やはり東大卒は侮れない。確固たる視点が誰も指摘をしてこなかった問題点を浮かび上がらせる。

 思えば私は官僚時代に国会答弁を多数書きましたが、その内容のほとんどは野党の質問に真っ向から答えるというより「どのように問題を問題と思わなせないか」というごまかしの発想に立っていました。当時は野党の攻勢から逃れるためにそれが当たり前と思っていましたが、それでは日本社会を取り巻く本当の問題が世の中に伝わるはずがない、官僚がそのようなスタンスで政治と向き合わざるを得ない政治の構造こそが最も大きな問題ではないか、いまではそう考えるようになったのです。

 逆に言えば官僚のごまかしを国民の前にさらけ出すことのできる力量が野党議員にあれば、我々は「官僚に問題があること」を理解できる。

 このように日本の政治は基本的には「目の前の選挙への対策を求める政治家と、そうした政治家の要請を満たしつつ対症療法的政策を実行して問題を先送りする官僚」という2~3年間の「先送りの連鎖」が行われる構造になっています。

 それをよしとするジャーナリズムと、関心すら持たぬ国民とが彼らを強く支える。先送りの最たるものが憲法改正であろう。

 しかし残念ながら、結論から言えば日本の野党議員は与党議員以上に短期志向で、その瞬間瞬間で与党と政府の問題を指摘して世論を盛り上げて政権を追い詰めることに特化しています。野党のスタンスは「短期的」を超えて「刹那的」といってもいいほどです。
 なぜこんなことになってしまうかと言うと、日本では政権・与党が「事前審査制」と呼ばれる野党にまったく政策立案に関与させないような仕組みを整備しているからです。ここで日本の政策決定の流れというものをざっと見てみましょう。
 国会で審議される議案というのは、内閣または議員が作成することができるのですが、日本では実効性のある議員立法はほとんどなく、実質において意味のある法律案・予算案はほぼ全て各省庁が作成します。こうして作成された法律案・予算案は政府から国会に提出される前に、自民党内の「事前審査」を受けることになります。
 各省庁が作成した法律案・予算案は、事前審査でまず自民党政務調査会、通称「政調会」で審議にかけられることになります。
 政調会は各省庁・政策分野に対応して様々な部会に分かれており、各省庁の作成した政策案は各部会に所属するいわゆる「族議員」によって審査されます。この時各部会の決定は所属議員の全会一致が原則であり、官僚たちは部会に所属する族議員の要望をあらかじめ聞き回って彼らの要望に合わせて法案を修正していきます。これが俗にいう「官僚の根回し」です。
 こうして部会で官庁と族議員が調整を重ねて議案が了承されると、今度は部会から政調審議会に議案は回されることになります。政調審議会は政務調査会の幹部が委員を務めており、細分化した部会よりも広範な見地から議論がなされ、問題があると委員が判断した時は部会に議案が差し返され再検討することになります。他方政調審議会で了承を得られると政調会での審議は終了し、議案は今度は自民党総務会に回されることになります。
 総務会は「党の運営に関する重要事項」を決める場ですがその審議は通常形式的なもので、政調会に議案が差し戻されるようなことはほとんどなく、この総務会で了承が得られると国会でのその議案の審議には「党議拘束」がかけられることになります。(中略)総務会での決定が得られるとようやく事前審査は終わり、審議の舞台は国会に移ることになり、閣議決定を経て内閣から議案が国会に提出されることになります。
 こうしてようやく国会の各委員会で政府と野党が議論を交えることになるのですが、ここまで見てきたように日本では国会での審議の前に政府と与党が議論を重ねてガチガチに議案の内容を固めてしまうため、国会での議論を通じて野党の意見を聞いて法律案や予算案を修正するようなことはありません。ただ政府が野党の質問を適当にいなして時間を使うだけの審議が延々と行われ、時間が来たら採決がなされます。

 驚くべき指摘である。この国の民主政は議論ではなく談合で動いているというのだ。以前から建設業などの談合を私は日本文化と捉えてきた。ま、村の寄り合いみたいなものだろうと高(たか)を括(くく)っていた。何もわからぬ素人が好き勝手な意見を言うより、事情通同士が順繰りで利益を分かち合うことは一種の知恵だと考えた。

 それにしても不思議なのは政治家の沈黙である。参議院議員になった青山繁晴が虎ノ門ニュースで「部会、部会」とのたまわっているが、議論なき国会システムを明かしたことは多分ないだろう。

 議会で実質的な議論が行われないのであれば、しゃんしゃん総会といってよい。厖大な時間がパフォーマンスのために使われているとすれば国民はやがて政治AIを支持するようになることだろう。

 かくして日本の野党は、政策立案にあたって建設的な役割を果たすことが政権・与党によって封じられているため、その瞬間瞬間の世論にのって刹那的に政権批判を繰り返すことくらいしかできない宿命にあります。その意味では日本の野党は与党に無能であることを強いられている、ということができると思います。これは重要なことで、野党議員の中には大変優秀な方がたくさんいますが、それとは関係なく日本の野党は組織的に無能にならざるを得ないのです。これは大変残念なことです。

 私はむしろ政治の機能不全に問題の根があると思う。

 非常に刺激的な内容で大変勉強になったが、全体を通してやや社会主義的な発想が見られる。それはそれで構わないのだが果たして宇佐美に自覚があるかどうか。

逃げられない世代 ――日本型「先送り」システムの限界 (新潮新書)
宇佐美 典也
新潮社
売り上げランキング: 85,407







2018-11-13

憲法9条に対する吉田茂の変節/『平和の敵 偽りの立憲主義』岩田温


『人種差別から読み解く大東亜戦争』岩田温
『いちばんよくわかる!憲法第9条』西修

 ・憲法9条に対する吉田茂の変節

・『だから、改憲するべきである』岩田温
『日本人のための憲法原論』小室直樹
『日本の戦争Q&A 兵頭二十八軍学塾』兵頭二十八
『「日本国憲法」廃棄論 まがいものでない立憲君主制のために』兵頭二十八
『国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動』伊藤祐靖
『吉田茂とその時代 敗戦とは』岡崎久彦

 当初、憲法第9条は、どのように解釈されていたのかを確認しておこう。
 この問題について考える際、最も参考になるのが、吉田茂総理の国会答弁だ。
 昭和21年6月26日、吉田茂は、憲法と自衛権との関係について次のように答弁している。
「戦争抛棄(ほうき)に関する本案の規定は、直接には自衛権を否定はして居りませぬが、第9条第2項に於て一切の軍備と国の交戦権を認めない結果、自衛権の発動としての戦争も、また交戦権も抛棄したものであります。従来近年の戦争は多く自衛権の名に於て戦われたのであります。満州事変然り、大東亜戦争然りであります」(1946年6月26日、衆議院本会議)
 ここで吉田茂は、憲法第9条が直接自衛権を否定しているものではない、との留保をつけながらも、「自衛権の発動としての戦争」まで否定しているのだ。(中略)
 今日では考えられないことかもしれないが、こうした吉田茂の自衛権を否定する発言に対して、批判したのが日本共産党だ。日本共産党の野坂参三が、「侵略戦争」と「自衛戦争」を区別し、後者を擁護したうえで、次のように指摘した。
「戦争には我々の考えでは二つの種類の戦争がある、二つの性質の戦争がある。一つは正しくない不正の戦争である。(中略)他国征服、侵略の戦争である。是は正しくない。同時に侵略された国が自由を護るための戦争は、我々は正しい戦争と云って差支えないと思う(中略)一体此の憲法草案に戦争一般抛棄と云う形でなしに、我々は之を侵略戦争の抛棄、斯(こ)うするのがもっとも的確ではないか」(1946年6月28日、衆議院本会議)
 日本共産党の野坂は、祖国を防衛する自衛のための戦争までも放棄する必要はなく、他国を武力によって侵略する「侵略戦争」のみを禁じればよいのではないか、という極めて常識的な指摘をしている。
 これに対して、吉田茂は、次のように応じている。
「戦争抛棄に関する憲法草案の條項に於きまして、国家正当防衛に依る戦争は正当なりとせらるるようであるが、私は斯(か)くの如きことを認むることが有害であると思うのであります(拍手)近年の戦争は多くは国家防衛権の名に於(おい)て行われたることは顕著なる事実であります、(中略)故に正当防衛、国家の防衛権に依(よ)る戦争を認むると云うことは、偶々戦争を誘発する有害な考えであるのみならず、若(も)し平和団体が、国際団体が樹立された場合に於きましては、正当防衛権を認むると云うことそれ自身が有害であると思うのであります、御意見の如きは有害無益の議論と私は考えます」

【『平和の敵 偽りの立憲主義』岩田温〈いわた・あつし〉(並木書房、2015年)以下同】

 多くの書籍で引用されている会議録だがまだまだ知らない人が多いと思われるので資料として記録しておく。吉田発言は芦田修正を完全に無視した妄言で、日本の政治が気分によって動く様相をありありと映し出す。敗戦からまだ1年を経てない時期ゆえ、戦争に対する嫌悪感は理解できるが、床屋のオヤジが言うならまだしも一国の総理が議会で説くような内容ではあるまい。原理原則を軽んじ、本音と建前を器用に使い分ける国民性を恥じるべきだ。

「私は一つの含蓄をもってこの修正を提案したのであります。『前項の目的を達するため』を挿入することによって原案では無条件に戦力を保持しないとあったものが一定の条件の下に武力を持たないということになります。日本は無条件に武力を捨てるのではないということは明白であります。そうするとこの修正によって原案は本質的に影響されるのであって、したがって、この修正があっても第9条の内容には変化がないという議論は明らかに誤りであります」

芦田均の証言:昭和32(1957)年12月5日、内閣に設けられた憲法調査会

日米安保条約と吉田茂の思惑/『重要事件で振り返る戦後日本史 日本を揺るがしたあの事件の真相』佐々淳行

 しかし、こうした吉田の「自衛」を放棄するという主張は、戦後日本の一貫した国防方針とはならなかった。
 こうした国防方針を否定することになったのは国際情勢が激変したことによる。冷戦の激化にともない、日本の再軍備が必要だとアメリカが考え始めたのだ。
 1950年の元旦、マッカーサーが「日本国民に告げる声明」において、次のように指摘した。
「この憲法の規定は、たとえどのような理屈をならべようとも、相手側から仕掛けてきた攻撃に対する自己防衛の冒しがたい権利を全然否定したものとは絶対に解釈できない」
 これは、極めて重大な指摘だ。憲法の規定について、従来、吉田茂は、自衛戦争も否定する旨の発言を繰り返してきた。だが、マッカーサーが日本国憲法には、「自己防衛の冒しがたい権利」を否定したものではないと強調したのだ。
 これは、明らかに、日本の再軍備を念頭に置いたものであり、このマッカーサー発言以降、吉田茂の「自衛」論も変化を遂げることになる。

 1952(昭和27)年4月28日まで日本はGHQの占領下にあった。このため憲法制定も憲法解釈も自主的に行うことができなかった。占領下の憲法は廃棄すべきであるとの主張には一定の説得力がある。押し付け憲法論の最右翼で「青年将校」の異名を取った中曽根康弘は衆議院5期目の時に「この憲法のある限り 無条件降伏つづくなり/マック憲法守れるは マ元帥の下僕なり」と歌った(「憲法改正の歌」1956年)。



 国民は食べることに必死だった。政治家は経済発展を何よりも優先した。やがて高度経済成長を迎えた。そして国家を見失った。飽食の時代に至り、バブル景気が弾けた時、長く続いた平和が精神を蝕んできたことにようやく気づいた。

 中国が領空・領海侵犯を繰り返し、沖縄に魔手を伸ばす現実がありながらも、「平和憲法擁護」を叫ぶ人々がまだ存在する。平和の美酒は甘く、薫り高い。アメリカの核の傘の下で目覚めることのない酔いに浸(ひた)るのは無責任な快楽主義といってよい。



GHQはハーグ陸戦条約に違反/『世界史講師が語る 教科書が教えてくれない 「保守」って何?』茂木誠