・システマ
・影武流合気体術は日本のシステマか
・西山創×雨宮宏樹
・影武流合気体術 | ~戦国の世より、門外不出で受け継がれし負けない為の術理~
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「人間は驚嘆すべき投擲手です。あらゆる動物のなかでも人間は異色の存在で、投射物を速いスピードで、かつ信じがたい精度で投げる能力をもっています」。そう語るのはジョージ・ワシントン大学のニール・ローチ博士。地球上のほかの霊長類とは異なり、なぜわれわれだけが必殺の投擲で獲物を殺せるのか、という謎に取り組んだ2013年の研究の筆頭著者だ。(中略)
では、われわれにあってチンパンジーにないものとは何か? 肩に広がる「ゴムのようなぬるぬるしたもの」――筋膜と靭帯、そして伸縮性のある腱だ。腕を振りあげることは、ぱちんこ(スリングショット)のゴム紐を引くようなものだと、ローチ博士は説明する。「このエネルギーが解き放たれると、上腕の急激な回転の動力となります。それは人体が生み出すもっとも速い動作です――プロのピッチャーなら角度にして毎秒9000度の回転(25回転)にも達するのです!」速い投擲は単なる筋肉の活動ではなく、弾力の三段階にわたる解放の賜物だ。
投げる手の反対側の足で【踏みこむ】。
腰を、つづいて肩を【回転させる】。
そして腕、手首、手の関節を弾いて【しならせる】。
われわれは昔からそんな榴弾砲を具えていたわけではない、とローチ博士はつづける。およそ200万年前、われわれの祖先はいくつか重要な構造的変化を発展させ、木登りや腐肉漁りをする者から生ける投擲器に変貌を遂げた。腰はやや広がり、肩はやや下がり、手首はしなやかさを増し、上腕は若干まわしやすくなった。いったん〈揺らぎ力〉のこつをつかみ、棒に先端をつけることを学ぶと、われわれは地球上でもっとも殺傷能力が高いばかりか、もっとも賢い生き物となった。投げ方がうまくなればなるほど、どんどん知的になっていった。
【『ナチュラル・ボーン・ヒーローズ 人類が失った“野生"のスキルをめぐる冒険】クリストファー・マクドゥーガル:近藤隆文訳(NHK出版、2015年)】
しかるにどうだ。それからわずか数年でこの虚弱(きょじゃく)な体が鋼鉄(こうてつ)の身に一変されてしまったのである。その間の経緯(けいい)を記(しる)した春充〈はるみち〉の著書が後に刊行されると、たちまち全国から講演、実演の依頼が殺到(さっとう)した。
春充が上半身裸体となって壇上(だんじょう)に立つやいなや、会場は突如(とつじょ)として一変してしまう。触(ふ)れることさえできそうなほどの緊張感が全聴衆(ちょうしゅう)を支配する。まばたきする者もなく、身動きする者もない。
「裸体となって壇上に現れた氏の体格は、古代ローマの彫像(ちょうぞう)を見るが如(ごと)く、実に男性美を発揮したるものなり。殊(こと)にその腹胸(ふくきょう)式呼吸法における腹胸部膨張(ぼうちょう)力の旺(さか)んなること、3、4升(しょう)の鍋(なべ)を飲(の)みこみたる観(かん)あり。体格の調和せる、動作の敏捷(びんしょう)なる、気力の充実(じゅうじつ)せる、思わず驚嘆(きょうたん)の目を見張らしめたり」(大阪毎日新聞の一部)
「不思議といわんか、至妙(しみょう)といわんか、神の舞踏(ぶとう)といわんか。人間業(わざ)とは思われぬ優観(ゆうかん)、美観、否、壮観……瞬間我等(われら)は頭上より足の爪先(つまさき)まで電流を通じたるが如(ごと)く、或(あ)る力に撲(う)たれたり……」(東洋大学哲学科生)
「先生の体全体が力の泉の如くに見えた。四隣(しりん)に響き渡る気合いの発生はわれわれの心肝(しんかん)を突き、覚えず茫然自失(ぼうぜんじしつ)、ただ偉大(いだい)なる魅力に圧倒されてしまった」
「私は水が滴(したた)るような裸体姿の美しいのに見惚(みほ)れてしまいました。艶(つや)があって滑(なめ)らかで、緊張すれば鉄の如くに締(し)まる筋肉が自然のままでゆったりと肥(こ)えているところは実に見事なものでした……」(中里介山〈なかざと・かいざん〉、小説『大菩薩峠』の著者として有名)
「……その結果、以前の茅棒(かやぼう)は実に絶美(ぜつび)の体格を獲得し、この道に造詣(ぞうけい)の深い二木(ふたき)医学博士も理想的自然の発達よと嘆賞(たんしょう)するに至(いた)った」(「実業之日本誌」より)
二木医学博士とは、玄米菜食(げんまいさいしょく)を唱導(しょうどう)し、桜沢如一〈さくらざわ・にょいち〉とならんで日本の食餌(しょくじ)法における草分け的存在である二木謙三〈ふたき・けんぞう〉のことだ。彼は春充の身体を「今まで見たなかでいちばん立派(りっぱ)な体だ」「即身即仏」といい、また強健術に関しては「それこそ真の理想的方法である」と絶賛(ぜっさん)した。このほか大隈重信〈おおくま・しげのぶ〉や東郷平八郎〈とうごう・へいはちろう〉などをはじめとする各界の名士も春充の肉体美を讃(たた)えている。
春充の次なる著者(ママ)『心身強健術』は非常な売れ行きで重版(じゅうはん)また重版、ついに100版を突破するに至った。
【『鉄人を創る肥田式強健術』高木一行〈たかぎ・かずゆき〉(学研プラス、1986年)】
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— 小野不一 (@fuitsuono) December 28, 2019
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私の手の動きがまったく見えないから、目が点になっている。ダンサーだから早い動きは充分できる。しかし、気配なく動く私の手や足は、まったく理解できないようだ。
そこから、肘の使い方に入っていき、自然にワークになっていた。腕を動かすためには「肘の操作」が重要で、そのためにはまず肘の力を抜くことを稽古しなければならない。
そして、肘を操作するためには上半身の柔軟性が求められるからこそ、「胸骨操作」が重要なのだ。
その一連の動きを「上半身と下半身を切り離す」稽古とともにする。
上半身と下半身の切り離しは、腹部腰部の脱力と比例する。この辺りの筋肉の緊張か弛緩かが、上半身も下半身も柔軟に、そして自由に動かすための要になる。
【『ウィリアム・フォーサイス、武道家・日野晃に出会う』日野晃〈ひの・あきら〉、押切伸一〈おしきり・しんいち〉(白水社、2005年)以下同】
全員が輪になって正座をした。その姿が初日とはくらべものにならないくらい、様になっている。夕陽に横顔を照らされた日野が口を開いた。
「私は57年間生きている。しかし私は何を目的として生きてきたのかを知らなかったが、ここフランクフルトに来て、そしてフォーサイスに出会って、はっきりした。この時期を過ごし、そして、皆と出会うためだった、と」