2021-07-26

左翼とは何か/『左翼老人』森口朗


『「悪魔祓い」の戦後史 進歩的文化人の言論と責任』稲垣武
『こんな日本に誰がした 戦後民主主義の代表者・大江健三郎への告発状』谷沢永一
『悪魔の思想 「進歩的文化人」という名の国賊12人』谷沢永一
『誰が国賊か 今、「エリートの罪」を裁くとき』谷沢永一、渡部昇一
『いま沖縄で起きている大変なこと 中国による「沖縄のクリミア化」が始まる』惠隆之介
『北海道が危ない!』砂澤陣
『これでも公共放送かNHK! 君たちに受信料徴収の資格などない』小山和伸
『ちょっと待て!!自治基本条例 まだまだ危険、よく考えよう』村田春樹
『自治労の正体』森口朗
『戦後教育で失われたもの』森口朗
『日教組』森口朗

 ・左翼とは何か
 ・「リベラル」と「左翼」の見分け方
 ・マルクス思想の圧倒的魅力

・『売国保守』森口朗
『愛国左派宣言』森口朗
『知ってはいけない 金持ち 悪の法則』大村大次郎

必読書リスト その四

 本書は、1人でも多くの高齢者が「左翼」であることを悔い改め、死にゆく前に祖国日本の発展に貢献していただくために書いた本です。
 ですから、その大前提として「左翼」とは何かを明らかにしておかなければなりません。ただし、定説と呼べるほどの学説はないので、これから述べることは、あくまで本書における「左翼」であることをお断りしておきます。
 人々の政治スタンスは、基本的に「左翼」「左派」「中道」「右派」「右翼」に大別できると考えられています。新聞や地上波テレビなどのオールドメディアでは、これらがあたかも連続的であるかのごとく伝えられていますが、「左翼」「右翼」と「左派」「中道」「右派」の間には大きな断絶があると考えるべきです。
 現在の日本は、「主権国家を基本とする国際秩序」の中で、「資本主義という経済システム」と「間接民主制と権力分立を基礎とする政治システム」を採用していますが、これらのいずれかを、抜本的に破壊・変更しようとする勢力が「左翼」「右翼」であり、これらの枠組みの中で自分が大切と考える価値を実現しようと考えるのが「左派」と「右派」(「左派」は平等、「右派」は自由)、常に双方のバランスを取ろうとするのが「中道」です。
 左翼思想の中で最も強力なものは言うまでもなくマルクス思想ですが、これは理念的には「主権国家を基本とする国際秩序」「資本主義という経済システム」「間接民主制と権力分立を基礎とする政治システム」のすべての破壊を目指す思想です。

【『左翼老人』森口朗〈もりぐち・あきら〉(扶桑社新書、2019年)以下同】

 実にわかりやすい図式である。森口の価値観を踏襲すると政治イデオロギーとは「異なる意見に対する態度」にあるのだろう。左翼と右翼は原理主義で、中道両派は共に生きるという点において町内会的関係(歩み寄り≒妥協)が窺える。

 もっと驚いたのは自分が左派であることに気づかされた(笑)。っていうか私は元々リベラルのつもりだったんだよね。10年ほど前までは。なぜ右派でないのかというと、官僚支配が横行する日本の資本主義制度で自由競争の実現はあり得ないと考えているためだ。

 マルクス思想は元来過激な思想ですから、それを信じる人々の行動が先鋭的になりがちです。マルクス思想を基礎にしてソビエト連邦(以下「ソ連」)という悪夢のような帝国を創り上げたレーニンは、過激な行動をする人やマルクスからさらに思想を先鋭的にする人々を「左翼小児病」と評しました。現在の老人たちが若かりし頃、日本ではマルクス・レーニン思想が大流行したのですが、レーニンの左翼小児病への警鐘は届かなかったのか、多くの人がこの病も併発していました。そして、数十年経った今でも、若かりし時の症状が出てしまうのです。
 左翼小児病は、大学に進学して学生運動をしていた人たちだけが罹(かか)った訳ではありません。学校教育やオールドメディアの宣伝(プロパガンダ)を通じて、あの時代を生きた大多数の人が感染していた病と言っても過言ではないのです。そして、この左翼小児病の後遺症から私たち日本人、とりわけ老人たちはいまだに自由になっていません。左翼小児病の困ったところは、自分が幸せになれないだけでなく、周りの人までも不幸にする点ですが、それは本書で詳述します。
 左翼小児病の主な症例としては次のようなものがあります。
「主権国家を基本とする国際秩序」を否定するのがマルクス思想ですから、彼らは主権国家に住む住人の基本道徳である愛国心を忌み嫌います。また、暴力で主権国家を乗っ取る(彼らが言うところのプロレタリア革命)のが当面の目標ですから、それを妨げる自衛隊や警察にも敵意をむき出しにします。
 彼らは「資本主義という経済システム」こそが貧富の格差をつくっていると確信しているので、大企業や金持ちを目の敵(かたき)にし、それを公言して恥じません。ただし、大企業に勤務していた方は大企業全体が悪いのではなく自分がなれなかった地位の人(ヒラ社員で終わった人なら管理職以上、部課長で終わった人は経営層の人たち)だけを悪者と捉(とら)え、1000万円以上の給与を得ていた方は倒すべき金持ちは年収3000万とか5000万といった超富裕層だけとします。また、労働運動を労働条件改善のためではなく、社会主義政権樹立のための道具だと考えているので、本来の活動に使うべき組合費を、政治活動に費やすことにためらいがありません。
 さらに「間接民主制と権力分立を基礎とする政治システム」は偽りの民主主義だと考えているので選挙結果で左翼政党が支持されなかった時は「民意」は別にあると考えます。

 左翼小児病に該当するのは、創価学会を始めとする日蓮系新興教団、エホバの証人統一教会ヤマギシ会なども同様だ。彼らは既成の社会秩序を否定することで自分たちの正義を鼓吹する。家族や友人たちとの関係をズタズタにするところにささやかな殉教精神を見出す。むしろ過去の人間関係を断絶するのがイニシエーション(通過儀礼)となっている。

 端(はな)から政権を取る気のない立憲民主党や共産党も左翼小児病と考えてよい。彼らは責任がないから理想を語れるのだ。ま、小学生が将来の夢を発表するようなものだ。ただし厄介なのは理想を語りながら伝統的な価値観の破壊を目論むところだ。女系天皇や夫婦別姓、あるいは在日外国人や女性の権利など、ポリティカルコレクトネスの概念に基づいて弱者を擁護するポーズを示す。

 民主党政権の失敗以降、左翼が民意を勝ち取ることができない政治状況に業を煮やして、佐藤優池上彰あたりが本音を漏らし始めた。佐藤優はラジオ番組などで一貫して民主党政権を援護射撃してきた人物である。その後創価学会に急接近する。

 それにしても暴力革命を成し遂げ、粛清と大虐殺を断行したレーニンが心配する「先鋭」とは、常人が考えるそれとは別次元のものだろう。

「20歳の時にリベラルでなければ情熱が足りない。40歳の時に保守主義者でなければ思慮が足りない」とはチャーチルのよく知られた言葉であるが、リベラルを左翼と誤訳する向きも多い。地位もカネもない若者が「世の中を変えたい」と望むのは尊いことだが、その感情を利用して破壊へと誘(いざな)うのが左翼である。若さには破壊への衝動もある。例えば団塊ジュニア(1970年代生まれ)の琴線に触れる政策を示すことができれば、彼らを左翼に取り込むことは容易であったはずだ。いつの世代も社会に対する負の感情を抱いているものだが、彼らが受けた仕打ちは目に余るものがあった。就職面接会場でテロが頻発してもおかしくはなかった。彼らは政治の犠牲者であった。

 日本は世界最古の国である。この国に革命は馴染まない。もしも政権が代わり得るとすれば天皇陛下を中心に据えた社会民主主義政党であると推測する。

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