・『奴隷船の世界史』布留川正博
・「わしら奴隷は、天国じゃ自由になれるんでやすか?」
・奴隷は「人間」であった
・人間が人間に所有される意味
・『砂糖の世界史』川北稔
・『インディアスの破壊についての簡潔な報告』ラス・カサス
・『ナット・ターナーの告白』ウィリアム・スタイロン
・『生活の世界歴史 9 北米大陸に生きる』猿谷要
・『アメリカ・インディアン悲史』藤永茂
・『メンデ 奴隷にされた少女』メンデ・ナーゼル、ダミアン・ルイス
・『エコノミック・ヒットマン 途上国を食い物にするアメリカ』ジョン・パーキンス
・『アメリカの国家犯罪全書』ウィリアム・ブルム
・『人種戦争 レイス・ウォー 太平洋戦争もう一つの真実』ジェラルド・ホーン
・世界史の教科書
動物は腹が満たされれば殺すことはしない。食物連鎖という生態系の輪からはみ出ているのは人間だけだ。他の動物には見られない支配欲、権力欲、政治欲を満足させる目的で殺す。あるいは、いつでも殺せることが可能であることを示して、生きたまま殺し、死んだ状態で生かす。これが奴隷だ。
コロンブスはアメリカ大陸を発見し、その後スペイン人キリスト教徒が1200万人もの先住民を殺戮した。アメリカ大陸にはタバコ、綿花、砂糖が豊富にあった。では、誰がそれらを生産するのだろうか? そう。アフリカ系黒人だ。最初のアメリカ製の奴隷船は「欲望号」という名前であった。
・奴隷貿易Ⅰ~奴隷制度の歴史~
元々、キリスト教ヨーロッパ社会は身分制度によって成り立っていた。かの国の文学をひもとくと、そこには必ず執事・従者・小間使い・ハウスキーパーが登場する。いわゆる「召し使い」という文化が完全に根づいている。秋葉原の「メイド文化」とは明らかに異質なもので、雑用を他人にやらせる発想こそ、奴隷制度の温床ではなかったか。その根底にあるのは、キリスト教の抱える差別観に他ならない。
奴隷とは。自動車や家や机が所有されるように、他の人間によって所有されるとは。売りとばされる財産の一部として生きるとは、──母親から売られていく子供、夫から売られていく妻。人間とは考えられずに、ひとつの《物》として考えられるとは。その《物》は、畑を耕し、木を切り、食物を料理し、他人の子供を養育する。その《物》の唯一の機能は、読者よ、あなたならあなたを所有する人間によって、決定されてしまうのだ。
奴隷とは。苦悩と権利剥奪にかかわらず、じぶんが人間であると、おまえなんか人間じゃないというものよりも、もっとじぶんのほうが人間的であると知るとは。喜び、笑い、悲しみ、涙を知り、しかもそれでいて、机と同等のものとしてしか考えられないとは。
奴隷であるとは、人間性が拒まれている条件のもとで、人間であるということだ。かれらは、奴隷ではなかった。かれらは、人間であった。かれらの条件が、奴隷制度であったのだ。
【『奴隷とは』ジュリアス・レスター:木島始〈きじま・はじめ〉、黄寅秀〈ファン・インスウ〉訳(岩波新書、1970年)】
現代においても、「人間性が拒まれている条件」はそこここに存在する。我々は皆奴隷だ。
・奴隷根性を支える“無気力”〜ドストエフスキー『死の家の記録』より
人々は、社会の奴隷であり、会社の奴隷であり、金銭の奴隷であり、時間の奴隷であり、欲望の奴隷であり、情報の奴隷であり、神仏の奴隷である。そして我々は搾取(さくしゅ)された後で、わずかばかりの自由を楽しんでいるのだ。それは、30センチの定規の中の5ミリ程度の自由だ。そう。自由は“誤差の範囲内”に収まっている。
人間を支える脳というネットワークシステムは、そのまま外側に同様のネットワーク体制を築く。ヒエラルキーというピラミッドは、自由に動かせる手足を求める。権力は腐敗するが、なくなることはない。
歴史という大波の中で、翻弄された人々は数知れず。彼等の怒りや、彼女等の涙が歴史に記されることはない。そこに想像力を働かせることができなければ、人類は永遠に奴隷であり続けることだろう。奴隷は「人間」であった。そして、奴隷制度をつくったのもまた「人間」であった。
・残酷極まりないキリスト教/『宗教は必要か』バートランド・ラッセル
・黒船の強味/『日本の戦争Q&A 兵頭二十八軍学塾』兵頭二十八
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