『ロビンソン・クルーソー』は生き方の問答集である
そう。『ロビンソン・クルーソー』の物語は、生き方の問答集である。人間とは何か、いかに生くべきかの寓話といってもよい。ここには、人間、この不可解なものの正体が、原始の姿さながらに浮き彫りにされているからである。
【『生き方の研究』森本哲郎〈もりもと・てつろう〉(新潮選書、1987年/PHP文庫、2004年)以下同】
さいわいなことに、その島には猛獣はおらず、彼を襲ってくる人間もいなかった。だが、天涯孤独に追いやられた人間は、そこで、いわば人類史を反復しなければならない。じじつ、ロビンソンは人類として一からやり直さなければならなかった。したがって、28年にわたるロビンソンの孤島での生き方は、何万年、いや、何十、何百万年にもわたる人類史の復習だったといっていい。それを、向こう見ずのロビンソンは見事にやりとげるのである。理性的動物(ホモ・サピエンス)として、道具を使う工作人(ホモ・ファーベル)として、経済人(ホモ・エコノミクス)として。
マルクスやマックス・ウェーバーなどがこの物語を人間の経済活動のモデルとして取りあげたのも、そのゆえであった。
【「今週の本棚:富山太佳夫評 『道徳・政治・文学論集』『秘義なきキリスト教』」】
生き方の研究
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